本当に、嬉しい限りです!
「出よ、偉大なる深淵の魔神。全てを呑み込む深淵の王として、地上を蹂躙するがいい」
アビス・ノイモートが告げると同時に変化は起こった。謎の存在の形を作っていた黒い液体が徐々に元に戻っていったのだ。
「…………?どうした、深淵よ。命令に答えよ」
その異変に気づいたアビスに黒い液体は従おうとしない。それどころか、何処かへと動こうとしていたのだ。
「クッ!深淵よ、私に従え!…………何故だ!?何故言うことを聞かない!?私が主だ!
言いかけて、アビスは息を呑んだ。飛鳥たちは分からずにいたが、静かに聞いていたユウヤは頭を回転させてた。
(話をまとめると、アビスはシルバーの第二人格。アビスのいる体は、シルバーの体と言うのが妥当だろう)
そう、シルバーが意識が無いからこそ、アビスという人格が出てきた。それが、自分たちの考えとも言ってもいい。
(あいつの言葉が本当なら、何故出てこない?)
先程の発言を聞けば、シルバーの意識が戻ったのなら、アビスにも影響はあるはずだろう。だが、目の前の銀の青年には変化は何一つ無かった。
ならば、可能性は一つ。そのあるのかも分からない可能性を誰かに問いかけるようにユウヤは呟いた。
「シルバーとアビスは、分離してるのか?」
『なるほど、貴様が現在蛇女最強の忍だな?目にすれば、嫌とでも分かるな』
一室。飾りなどが存在しない簡素な紅色の部屋。その部屋で二人の男女がいた。もう一人、紫のロングコートを着た黒髪の青年は話ながら、肩を竦める。
『俺様は
『…………………』
『おいおい、俺様も名乗ったのだ。貴様も名乗るのが道理であろうが』
『……………雅緋だ』
中性的な男よりの美顔に多くの女性が羨ましがる程の豊満なスタイルを持つ女性、雅緋は不満そうに答えた。ガラスのカップに飲み物を入れたキラは彼女の様子にニヤニヤと笑っていたが、突然その笑みを消す。
『なぁ、雅緋。今の蛇女をどう思う?』
『……………昔と比べ、変わったな』
『そう、変わったのだ。悪い意味でだが、な』
フッと笑うとキラは手に持っていったカップを飲み干す。服の裾で口を拭い、空になったカップを弄て
『半蔵学院の忍と例の異能使いにより、この蛇女の名誉は失墜した。今では老害どもが慎重に動かしている…………………実に不愉快だ』
グシャリッと砕かれる音に続いて水滴が落ちる音がする。キラは手にしていたガラスのカップを握り潰したのだ。水滴の正体はガラスの破片が彼の手を傷つけたことにより流れた血だった。
『蛇女としての誇りはどうした?学園の存続?そんな物のために誇りを、悪としての矜持を捨てたのか?そんなものの為に、強さを捨てたのか!?ふざけている!!』
キラは声を張り上げ、怒りを見せる。その問いは近くで聞いていた雅緋へのものではない、それが誰に対するものかは、彼にも正確には分かっていない。
『俺様は強者、真なる悪を目指す。全ての人間が俺様の名前を聞けば、怖れ、畏怖する存在へと君臨する!!そうすれば……………俺様が望んだモノが、手に入る』
それを見た雅緋はたじろく。彼は両腕を振り上げ、グッとその手を握り締める、骨がへし折れるぐらいの力で。だが、彼は姿勢を戻すと、雅緋の目の前に立ち、手を差しのべた。
『雅緋よ、俺様と共に革命を起こさないか?』
『……………な、』
『貴様の敵を俺様が潰し、俺様の目的の為に貴様も協力する……………………利害が一致するだろう?』
戸惑いの色を隠せずにいる雅緋にキラは続ける。青年の笑顔にしては、少しばかり不器用な笑みを浮かべながら。
『安心しろ。協力し続けるのならば、その間は俺様が貴様を守ってやろう』
そう言った彼の瞳には、何故か悲しさが籠っていた。
アビスとの戦闘から撤退し、蛇女学園についたキラは重症を負った五人を連れて戻っていた。彼女たちは医務室のベッドに寝て、安静にしている。それを確認したキラは医務室から出た廊下に立っていた。
「…………………俺様に用があると聞いたが?」
眼鏡をかけた美人の女性 鈴音に対して、廊下の壁に寄りかかるキラは高慢な態度をする。数分の静寂を遮ったキラを鈴音は睨み付けた。
「議員の数人を殺害したのは、お前か?」
「何故?俺様が殺したと言える。議員たちの死因は傷害だったのか、それとも俺様がやったという証拠でもあったのかな?」
鈴音は口を閉じる。キラに疑いを持っていたが、肝心な証拠が無い以上、彼を糾弾する理由も答えもありはしない。
「もういいだろう、俺様も雅緋たちの無事を確認した。用はない」
何かを言いたそうな鈴音を他所に、振り替えるとキラは出口へと歩いていった。
青年の背中に、大人としてではなく、一人の教師として彼女は聞いた。
「……………お前は何がしたいんだ?」
「何も、俺様が語るわけないだろう」
ズキリっと胸の奥から響く痛みに胸元を強く押さえながら、彼は口を裂くように笑う。
そして、宣告する。
「強者になるぞ、俺様は」
表から迫害され、影へと追放された闇の青年は、自身の苦痛と渇きを癒すために、歩み出した。
だが、悲しいことに彼は知らない。
彼の望むものは、すぐ近くにあることには。
シルバーとアビスについてですが、黒い液体こと深淵はカオスによって暴走したシルバーの本来の力です。ですが、シルバーの意識の無い間は、深淵の力はアビスのものです。
キラの本名は表記したように、
まぁ、キラがどうなるかは決まってるんですが…………
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