閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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三十六話 水

「『水』のシルバー。彼はカオス様の力に耐えきれずに死にました」

 

 

あっけらかんと話された事実に雪泉は首を横に振る。嫌々と知りたくない現実から目を背けるように。

 

 

 

「え……………嘘、そんなわけが」

 

 

 

「何なら見てみますか?ちょうど彼処にありますよ…………………グチャグチャで見るに絶えないですが」

 

 

 

気力を失ったように膝をつく雪泉に哀れむような視線で見下ろし、巨大な剣を軽々と振りかぶる。

 

 

 

「止めて、黄泉!」

 

 

 

「─────あぁ、ッ!!?」

 

 

叢に名前を呼ばれたその瞬間、明らかに黄泉の様子がおかしくなる。飛び出す程に目を見開き、身体を折れるかもしれないくらいに仰け反らせる。

 

 

 

 

 

「───カハッ、………………何だ、これ?」

 

 

口先から垂れきった涎を拭い、黄泉は頭を押さえつける。酷く困憊したようだったが、すぐに落ち着いたのか、冷たい目を雪泉と叢に向けた。

 

 

 

 

「………もういい、です。貴方たちでも殺せば、気分が優れるでしょう」

 

 

 

「飛鳥、斑鳩さん、二人を頼む」

 

 

「…………ユウヤくん?」

 

 

「…………はい、分かりました」

 

 

覚悟を決めた顔つきで、紫色の瘴気を帯びる剣を軽々と持つ黄泉の前に立ちふさがる。鼻で笑った黄泉は困ったように顔をしかめる。

 

 

 

 

「あの……………話聞いてました?これ以上『鍵』を失いたくは──────」

 

 

青年の眼はギョロリと開かれる。そして、目の前に立ユウヤ、いや傷を雪泉と叢を抱えあげている二人に視線が向いた。

 

 

 

「────ないんですよっ!!」

 

 

 

黄泉がとった行動は単純なものだった。ユウヤを無視して、後ろにいる彼女たちへと疾走したのだ。一瞬で距離を積め、飛鳥たちを殺そうと剣を振り上げる。

 

 

 

 

 

「させる、かぁぁっ!!」

 

 

それをユウヤは見逃す訳がなく。勢いよく地面を、いや石を蹴り飛ばす。バヂィッ!と焼けるような音を響かせながら、音速の一撃が黄泉の身体へと吸い込まれるように放たれた。

 

 

 

魔剣を振り下ろそうとした直後、黄泉はすぐに気付くと、すぐさま対処をする。飛鳥たちに振るおうとした剣の軌道を切り替え、飛来した石を野球のように打ち払った。

 

 

その隙を狙い疾走したユウヤは黄泉の死角へと回り込む。地面を砕くような脚を踏み込み黒鉄の拳を振り絞った直後、振り替えることなく黄泉は口を開いた。

 

 

 

 

「能力上昇、移動速度」

 

 

囁くように呟かれた言葉をユウヤはハッキリと耳にした。空振った拳を勢いよく戻し、そして消えた気配を追うように、

 

 

 

「…………上ッ!?」

 

 

「移動速度、解除、能力上昇、筋力」

 

 

黒鉄の腕甲を左右に交差させ防ごうとするが、黄泉は再度呟く。それと同時に

 

 

(コイツ、さっきといい何をしてやがるッ!)

 

 

致命傷になる攻撃を回避しながら、格段に上がった戦闘能力に警戒を高める。

 

 

(能力上昇に解除……………この言葉が奴の)

 

 

「筋力、解除、武器変換、貫通細剣」

 

 

機械的に告げられた言葉にユウヤは考察を止める。大剣の持ち方を変え、突っ込んできた一撃を防ぐために左腕を上げる。

 

 

だが、ユウヤは判断を誤ったのだ。お気付きかもしれないが黄泉は何と言っただろうか?

 

 

 

『筋力、解除、武器変換、貫通細剣(・・・・)

 

 

 

 

 

纏われていた紫色の瘴気が大剣を包み込み、その形を変化させた。歪な形をしていた大きな剣は、糸のように刀身の細い鋭いレイピアのように変わった。

 

 

紫色の瘴気を纏った細剣はユウヤの腕を黒鉄の鎧ごと貫いた。突き出た細剣の先が赤く滲み、傷口から赤い液体が少しずつ垂れ落ちる。

 

 

 

 

「ぐぅ、ぎぃぃいいあああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

「理解できない、ですね」

 

 

傷口を抉るように弄くる黄泉は心底どうでもいいというように、肩に突き刺した剣を動かし、ユウヤを宙に持ち上げる。

 

 

 

「貴方は何故戦う?そこまで自分の身を省みずに、何故?」

 

 

「……………テメェには、理解できねぇよ」

 

 

そんな黄泉をユウヤは鼻で笑う。彼は視界に映る、数人の少女を見る。そして、肩に刺さる細剣を引き抜くというより、根本的に砕こうと掴んだ。

 

 

 

「誰かを傷つける奴に、誰かを守りたいと思う気持ちが理解できるかァっ!!」

 

 

「なるほど、理解できませんね」

 

 

 

 

「貴方はイカれてる。それは異常の域だ」

 

 

無邪気な笑顔とは裏腹に残忍な瞳を向ける。肩に突き刺した剣を動かそうとする。ユウヤ自身諦める気は一つもなく、放電を起こそうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、後は任せてくれ」

 

 

 

その言葉は凛として囁くような小ささ関わらず、その場にいた全員に聞こえていた。それは黄泉にも聞こえていたらしく、ギチリと首を捻り周りを探す。

 

 

 

 

 

鋭い音が炸裂した。

 

 

大砲そのものが放たれたような爆音と共に、黄泉の身体が吹き飛ぶ。瓦礫の山を崩し膝をついた黄泉は、先程の一撃の正体に気付く。

 

 

 

 

 

 

 

水、

 

近くに存在する水溜まりと僅かな間に降った雨がそれを物語っていた。衝撃を口を震わせる。

 

 

「な、に…………?」

 

 

瓦礫から飛び出した黄泉は、理解できない現実に硬直する彼は、有り得ないと首を横に振り、吼えるように叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿なッ、何故………………………何故生きているんだ、『シルバー』ッ!?」

 

 

全身血塗れでありながら、風雅な銀髪の青年、シルバーは両手に水を生成する。彼はゆっくりと歩きながら雪泉と叢を守るように立つと、

 

 

 

 

 

 

 

「決まっている、守りたい人を守るためだ!!」

 

 

高圧の水。透明の刃が全てを削る勢いの攻撃が、シルバーの両手から解き放たれた。

 

 

避けることも許されない状況に黄泉は最適な判断をとった。吹き飛んだ剣をその手に掴み、水の刃を分解するが如く斬る。

 

 

「水を、圧縮して…………打ち出したのか!?」

 

 

「自分は水の異能使い、なのに何故自分が異能を使おうとしないのか………………分かっているか?」

 

 

 

 

 

 

水が自分を否定する(・・・・・・・・・)、昔からそうだった。だけど、カオスとか言う人が与えた血が、自分に適合して─────思い通りに扱えるようになったのさっ!!」

 

 

グッ!と握り締めた拳に続き、黄泉の近距離で爆発が発生する。だが、火による爆発でなく、水が破裂したような爆発が。

 

 

無数の爆撃をほぼ避けきった黄泉は服についた埃を払う。

 

 

「フッ、なるほど………、流石に分が悪いですね」

 

 

先程までの邪悪な覇気を消し、剣を下ろした黄泉はそう呟く。その目でシルバーとユウヤを睨み、剣についた血を拭き取る黄泉は血の混じった唾を足元に吐き捨てる。

 

 

 

「でも、忘れないでくださいよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方たちは生かされてる、ということをお忘れなく。それでは」

 

 

鮮血のように真っ赤なオーラに飲まれたその直後、周りを包み込んでいた結界ごと黄泉はその場から消え去った。




多分、次回で終わります。



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