今回はとある異能使いのお話です。
宵闇の懸念
かつて、皆さんにはこう話しただろう。
【異能】とは、その人間の過去やトラウマ等に起因して発言するものと。
『電気』の異能使いユウヤの場合は、彼の苦々しい過去に、『炎』の異能使い紅蓮の場合は、彼自身を構成する命の火に由来しているように。
だがそれは、『闇』の異能を扱う
もし異能の力がその人物の精神に関係するならば、
───彼の『闇』は深く底に根付き、『彼』を
「フム、なるほど。こうすればいいのか」
何かを呟き読書をしながら歩く青年 キラ。蛇女学園でも特別議員の階級を持つ人物。黒一色、正に闇そのものと言えるマント付きの軽めの鎧を身に纏った彼は、今もなお訓練をしている忍の少女たちを他所に隅を通っていた。
そんな彼を観察する視線が複数あった。
「いい?あの人の隙を狙うの。そしたらイケるわ」
「えぇ、分かってる」
視線の主の正体は、近くの木々に隠れて息を潜めている忍の少女たちだった。彼女たちは読書中のキラの隙を見計らっているが、それには大きな理由があった。
「…………おっと、本が」
(────今だッッ!!!)
手から滑り落ちた本を拾おうとしたキラ。その行動が合図になったのか、辺りから数十の少女たちが飛び出す。
それぞれ武器をその手に握り締め、全方位からキラに襲いかかる。
「『Dark matter』」
その単語をトリガーとしたのか、鎧が蠢いた。一瞬で彼の身体から解離した鎧は形を変化させ、少女たちの攻撃を防ぐ。奇襲の一撃を防がれた少女たちは、鎧に力強く弾かれ体勢を崩す。
「『Chrome Auto Coordinate』」
追い討ちをするように告げた単語は鎧に命じるように発された。鎧は重なるように収束し、姿を現したのは巨大な黒い球体。球体の表面に文字の羅列が白く発光すると同時に、少女たち一人一人に一撃が放たれる。
「「「「きゃあぁぁぁぁ!!!!」」」」
急所を外した一撃に少女たちは吹き飛ぶ。そのまま意識を失った彼女たちを安静に寝かせる。
目が覚めた彼女たちにキラは、
「まず貴様らの反省だが、最初の奇襲は見事だった、一撃で仕留めようするのもだ。だが、俺様の『Dark matter』は奇襲にも対応できる、それと戦闘力もだな。
俺様が期待したのだ、存分に訓練に励むがいい」
聞く人が聞けば、傲慢だと言うであろう発言をして青年は堂々と立ち去っていった。
「凄い…………私たちが相手にならなかった」
「でもあの人の言う通り、もっと訓練が必要ね」
「あぁ、キラ様~。傲慢なところが格好いいですぅ」
「なぁ、雅緋」
「…………なんだ、キラ」
壁に寄りかかってるキラは一つの本を読みながら、雅緋に声をかけた。雅緋は無口かつ高慢なキラの行動に、疑心を抱きながら目を向けるが─────すぐに顔が変わった。
「俺様ってさぁ、よくよく考えると話したのってお前と鈴音教師ぐらいなんだ」
「………そう、か」
ペラペラとページを捲るキラ。彼に対して雅緋はバツが悪そうに顔を背ける。その様子の彼女に、キラは純粋な疑問を問いかけた。
「どうすれば、他の皆と仲良くなれると思う?」
───猿でも分かるコミュニケーションの取り方。
如何にも胡散臭げなその題名の本を必死に読書しているキラが真剣に考えての発言。(ていうか、コミュニケーション問題は多くの人が抱え込んでる問題でもあり、実際に作者も【ここからは作者が必死に隠したがった為、こういう風にさせていただきます。本当にご了承ください、お願いします。いやマジでry】)
「どうすればと言われても、私には分からないぞ?」
「そうか?俺様的には貴様は割と仲間たちと仲が良いと思うが………………ほら主に、あの──でこ眼鏡」
「……
因みに話に出てきたのは選抜メンバーの一人であり、最も雅緋の近くにいた人物である。キラの評した通り、おでこが広いが、それを告げると怒りを顕にする。頭を抱え込む雅緋は互いを傷付けない為に、キラに注意を促した。
「…………キラ」
「む?どうした、雅緋………安心しろよ、俺様もこうやって本で勉強してるからな、仲良くなってみせ」
「お前は家族や友達とかいないのか?」
それは、素朴な疑問だった。雅緋からしたら、他の人との接し方が難しいと悩むのは、目の前にいるキラが初めてだったから。だからこそ、彼の言葉を遮り気になったことを口にした、してしまった。
「────居たな」
顔色を伺わせないように、俯いたキラが呟いた。開いた本を閉じたと同時に、窓から遠くを見やる。まるで古い過去を語るかのように、口を開いた。
「俺様にも、家族と言える人が───」
それだけを語ると、キラはハッ!としたように目を見開く。ブンブンと首を横に振り、正気を取り戻そうと奮闘している俺様系の青年。その様子を見ている雅緋の視線は何故か優しい。
「っていうか!そう言う貴様は家族や友達はいるのか!?」
「あぁ、いるぞ。父親だけだが、」
「……そういえば、貴様の父親はここの学園長だったな」
その直後、キラは記憶にあったことを思い出した。雅緋の母親は彼女の目の前で妖魔に殺されたという話を、当時のキラは気紛れで調べていたが、
「…………すまん」
「何だ、いきなり」
突然の謝罪に雅緋は戸惑いの色を見せる。彼女の過去に触れてしまったかと思っての行動だった。
そんな二人に、勇敢にも声をかける人物がいた。
「あのー、雅緋先輩に常闇さん」
「キラでいいぞ、キラで」
声をかけてきたのは、忍の少女。戦いを仕掛けに来たのかと雅緋は警戒するが、キラは敵意が無いことを理解していたため平然としている。
しどろもどろで何かを言おうと躊躇う少女に二人はどうしたのか?という視線を投げ掛ける。胸に手を当て深呼吸した少女は────告げる。
「実は気になってたんですが………………、
お二人は付き合ってるんですか?」
「「ブフォッ!?」」
男のキラはともかく、女性の雅緋が勢いよく噴き出した。目の前の純粋無垢な少女から放たれた言葉の一撃はそこまで恐ろしいものだったのだ。
「───何故だ!?何故そうなった!?」
「え、でもお二人が仲良さげだと聞いたので、てっきり」
「そんなことはないッ!私とキラはそんな関係ではないッ!!」
「うぇー、すげー否定された。そこまで否定されると俺様悲しくなってくるですが」
棒読みだったキラの目尻から一滴の汗が垂れる。どうせ自分には好意を抱いてはないと理解はしてるが、ここまで否定されるとは思ってなかったらしい。
そのせいで彼は知らなかった。少女へと食いかかる勢いで否定した雅緋の顔が真っ赤になっていたことを。
「そもそも!キラは年下だから、無理に決まって」
「オイ待て、雅緋。どういうことだ」
必死に否定する雅緋の肩を掴む。微笑ましい笑顔を浮かべる彼の瞳は何も籠ってない、あるのは真っ黒──虚空だ。
「え、どういうことだって…………」
「まさかとは思うが、
──賢明な皆様ならお気づきだろう。
そう、キラは身長が低いのだ。154cmという男性では高いとは言えない数値。彼みたいな人物を分かりやすく言うと、『チビ』だ。
「だ、大丈夫だ!成長期も来るはずだからな!」
「……俺様19歳なんですけど、」
「………………てことは、キラさんはずっとこのまま小さいままなんですか!?」
「グボォッッ!!?」
無配慮かつ無遠慮な純粋な少女の発言は言葉の刃となって、キラの心を抉る。精神的なダメージが肉体と連動してるのか、彼も胸元を強く握り締め吐血した。
たとえどれだけ強い人間だろうと、心は強くなかったりする。ていうか、紙耐久の心は一撃で破壊されかねない。
とりあえず雅緋はキラの事を『チビ』と言わないようにと決意した。
補足
『Dark matter』
キラの異能によって造られた闇の鎧。遠隔操作や自動追尾、全範囲索敵、自動戦闘などの機能がある。
『Chrome Auto Coordinate』
闇の鎧の二つ目の形態。相手の座標を特定し無力化を行う。
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