閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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新しい章に入りまーす。多分ここらへんから、この小説の山場になると思われます。


3章 混沌妖魔戦線 真影と黒神
三十八話 仲間たちの亀裂


「………ハァ」

 

 

ため息を漏らしたのは、いつも明るい飛鳥だった。教室の窓から外を覗き、ぼーっとしていた。

 

 

「どうしたんですか、飛鳥さん」

 

 

「…………あ、みんな」

 

 

そんな彼女を見るに見かねたのか、仲間である少女たちを代表するように斑鳩が声をかける。

 

 

 

『悪いな、俺は少しの間仕事に行っているから。いつ会えるかはよく分からない』

 

 

そう言ってから一週間が経つが、彼は全然戻ってこない。心から心配している飛鳥は仲間である青年が何処にいるのかと、再度ため息をしようとするが、

 

 

 

 

 

「おー、あの不良(仮)君。こんなに可愛い女の子たちと一緒なのかー、実にいけませんなー」

 

 

「誰!?」

 

 

いつの間にか横に立っていた謎の女性に飛鳥たちは不意を突かれたように驚愕する。咄嗟に飛び退く彼女たちに顔色を変えずに女性は飛鳥を見やった。

 

 

「そこの君は、ユウヤと会いたいかい?」

 

 

「ッ、誰……ですか?」

 

 

飛鳥は僅かに反応をしたものの、再度同じ質問をした。無視するかと思ったが、今度はニッコリと笑い答えた。

 

 

「私はエンデュミレア。七つの凶彗星(グランシャリオ)の構成員、君たちの知るユウヤの同僚であり親友さ♪」

 

 

そう答えた彼女は、あたかも楽しめる玩具を見つけた子供のような無邪気な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

───七つの凶彗星(グランシャリオ)

 

 

 

正式名称、世界連合所属異能特別部隊『七つの凶彗星(グランシャリオ)』。階級は構成員の一人ずつが国家元首と同等であり、この部隊は文字通り世界連合が認めた特殊部隊だが、一つの国家としての認識を受けている。

 

 

「……つまり、世界を救う為の特別な部隊なのですか?」

 

 

斑鳩の疑惑を楽しそうにエンデュミレアは頷く。飛鳥たちを率いるように彼女はとある建物に辿り着いた。

 

 

「ここが私たち七つの凶彗星(グランシャリオ)の拠点さ♪」

 

 

 

線のようなものが虹色に輝く、円方形の要塞らしき建物に飛鳥たちは目を奪われていた。科学的とも見てとれる筈なのに、どこか神秘的な要素があったのだ。

 

 

 

 

「さてと、やりますか!」

 

 

「え?…………何を」

 

 

パンッと両手を叩いたエンデュミレアに飛鳥は不安そうに声をかける。そんな彼女を遮るようにエンデュミレアは、

 

 

 

 

 

「おーい、不良(笑)くーん!天然ジゴローーーーー!」

 

 

 

「ぶっ殺すぞ!!クソ根暗野郎がァッッッ!!!」

 

 

 

エンデュミレアの叫び声に怒りを露にして青年が飛び出してきた。勢いよく拳を振り抜き殴りかかるが、遊ぶように軽く避ける。

 

 

「こんのクッソ野郎、今更なにを────」

 

 

余裕そうな態度の彼女にキレていたユウヤの動き、呼吸が止まる。彼の視線はエンデュミレアの後ろ、飛鳥たちへと向いていた。

 

 

 

「いやーね?ユウヤ君に会いたいって、彼女たちが言っていたからさ♪」

 

 

「…………………嘗めた真似すんなって言ったはずだぞ」

 

 

周りに険悪な空気が広がる。調子が良さそうに笑うエンデュミレアにユウヤは今まで見せたことのない程の殺意まで放ち、周りの空気がバヂバヂバヂィッ!と唸った。

 

 

その状況に耐えきれなくなった飛鳥は止めようとするが、

 

 

 

「まぁまぁ、二人とも喧嘩は止めるでござるよ」

 

 

二人の間に割り入ったのは侍のような男だった。時代劇に登場する和服、その懐に腕を突っ込んだ状態は気楽さが感じられる。

 

 

 

「…………悪かったな、武蔵」

 

 

 

「あれー、私は~?私に謝罪はないのー?」

 

 

しつこく構ってくるエンデュミレアをスルーし、侍の男

武蔵に頭を下げると飛鳥たちには何も言わずに何処かへ移動した。

 

 

「すまんでござるな。アイツはいっつもああいう態度でござるよ」

 

 

謝罪と言う割には少し軽いとも言えるが、彼女たちは素直に受け取った。

 

 

そして気になった飛鳥は侍の男に名前を聞いた。

 

 

「…………あの、貴方は?」

 

 

「拙者は武蔵。アイツとは悪友の関係でござってな」

 

 

カッカッカッ、と高笑い?をする武蔵は自身の腕を見やる。正確には自分の手首にある腕時計に。

 

 

「すまんな、お嬢さんの方々。アイツに会うのは少し待ってくれないか」

 

 

「?」

 

 

「拙者たち、七つの凶彗星(グランシャリオ)の定期の会議が始まるからなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個室の真ん中にある机を中心として数人の男女が座っていた。誰も声を発する者がいないため、長い間静寂が起こる。

 

 

 

「集まってくれてご苦労、妾は感謝するぞ」

 

 

それを無視するように声をあげたのは一人の女性。平安時代の姫様が着てそうな和服を身に纏い、堂々と椅子の上に立ち上がる。何処からか取り出した扇をパッと開き、白い長髪を払う女性をユウヤは静かに観察していた。

 

 

 

神威=カタストロフ。

 

 

七つの凶彗星(グランシャリオ)序列一位。凄まじいほどの戦闘センスを持ち、この場の全員の中で誰よりも強いのが、彼女だった。

 

 

ユウヤは精神的にも肉体的にも理解している。この場に居る全員が戦っても彼女には勝てはしないことを。

 

 

(序列二位が居れば楽勝だろうが………)

 

 

ふと、ユウヤは空席の一つを見る。性悪と評したエンデュミレアの反対側、神威の隣の席を。

 

 

 

第二位 時崎零次(ときざき れいじ)

 

 

神威に次ぐ実力者の人物。能力、戦闘力が不明である男は二番目の席に座しているのだ。何も知らない者たちからすれば自分の方が強い、と不満を漏らしたりするものだが、この場に居る彼等は納得していた。

 

 

───まぁ、人間じゃないから仕方ないか、と。

 

 

そんなことで納得するのかと思うかもしれないが、そこは呑み込んでいただきたい。

 

 

「………またあの二人は来てないのか」

 

 

「あの二人、世界を救う為の組織としての自覚が無いじゃない!」

 

 

素朴な服、平凡な顔の少年 志藤(しどう)は誰も座っていない二つの席に訝しげな視線を向ける。同じようにこの場にいない二人に対して、赤髪ツインテールの少女は憤慨する。

 

 

 

 

 

────事情により不在。誰も座ってない二つの椅子がそれを物語る。まぁ、先程来ていた者が一名いるのだが、

 

 

「エンデュミレアならさっき帰ったのでござるよ」

 

 

「…………あんの馬鹿、まともに会議をしたこともないじゃない」

 

 

「あの性悪の話はどうだっていい……そうだろ?」

 

 

 

飛鳥たちと共にいた黒髪の青年、ユウヤは無機質な机に脚を掛けている。そして、呆れたように全員に問いかけた。

 

だが一番驚くべきなのは、仲間であるはずのエンデュミレアの信頼が低いという事だ。いや、少し語弊があった。この場に居る全員がエンデュミレアを嫌っている、彼等の顔と態度から見れば分かるのだが………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──これが俺からの報告だ」

 

 

話を終えたユウヤ。他の全員は様々な反応を示した。深く考え込む者、興味があるように口笛をして顎を擦る者、手元にある資料を睨み付ける者、

 

 

 

「封印から解かれたケイオスと呼ばれる怪物、蛇女を裏で支配していた異能使い、『カオス』と名乗る異質な存在、そして『禍の王』の戦闘員の黄泉と言う人物か、」

 

 

 

面倒事ばかりじゃな、と神威が飄々とした態度で口にする。

 

 

「やはり、『聖杯』は保護するべきでしょうか?」

 

 

「いや、破壊よ。残しておいて他の奴に渡っても面倒じゃない」

 

 

断言する香織(かおり)の顔にはある種の決意があった。破壊を最優先、それだけが彼女なら感じられた。

 

 

 

「──妾はある現象を調べておった」

 

 

突如告げれた言葉が喧騒を止める。そして、静かになった状況で神威=カタストロフはまとめられた資料を見せつけるように掲げた。

 

 

 

「最近この国の地脈からエネルギーが減少し、とある場所へと集中しておる。このままいけば、

 

 

この地から生命が失われていく」

 

 

息を飲む音が部屋に響く。資料から手を離した神威は、浮かない顔をするユウヤへと視線を向ける。

 

 

ユウヤ自身もそれに気付き怪訝そうに睨むが、

 

 

 

「場所は聖印市、かつて災害により崩壊したとされる、お主の故郷と聞いておった場所じゃ」

 

 

ビキッ、と憔悴していた彼の心にヒビが入った。




──補足、

七つの凶彗星(グランシャリオ)

構成員は僅か七人、それだけで国家と同等の権限を持つ世界連合公認の組織。世界を救うという思想を持ち、多くの事件を解決してきた。



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