一日の間家に引きこもってたら、もう一話出来ました。
意識がゆっくりと覚醒し始める。自分がどうしていたのか分からずに、飛鳥は声を発した。
「………ここは?」
───答える者はいない。誰一人もいない部屋で返ってくるのは静寂のみ。
…………そう思っていた飛鳥だったが、現実は違かった。
「我ら、
「ひゃっ!?」
気の抜けた状態で真横から聞こえた声に驚愕する。飛鳥は声の方に振り向くと、一人の青年が壁に寄りかかっていた。
いつの間に、心の中で混乱していた飛鳥だったが、青年は平然としたまま告げる。
「近くで気を失ってたから助けたが、あまり迷惑をかけないでほしいな」
どうやって来たのかを告げずに茶髪の青年は前髪をかきあげる。そして他の誰かにも分かるよう懇切丁寧に、
「
彼 志藤の紹介、正確には彼の発言に飛鳥はようやく理解ができた。
『やっぱり人間だよ、お前も俺が大嫌いな人間だ』
「………………そうだ」
思い出した、と漏らす。ユウヤを追いかけて引き留めようとしたが、彼から告げられたのは拒絶だった。
あのときに向けられた明確な殺意を思い出すだけで、飛鳥は自分の身体が震えていることに気付く。
「「「「飛鳥(さん)(ちゃん)!」」」」
スライド式のドアが勢いよく開き、数人の少女が入ってくる。飛鳥の仲間である斑鳩たちは、飛鳥を心配そうな顔で見守っていた。
「飛鳥さん、その………」
ベッドで上半身を起こした飛鳥に斑鳩がバツの悪そうな顔をする。後ろにいる皆の雰囲気からしても彼女が言おうとしていることはよく分かった。
「………さて、君らはどうしたいの?」
飛鳥を含めた全員の視線が志藤へと集中する。彼はそんなものをお構い無しと言わんばかりに、彼女たちを睨みながら話を続けた。
「ボスからも言われてるけど…………彼を連れ戻したいなら、生半可な覚悟なら行かない方がいい────本当に死ぬぞ」
彼女たちの意思を確かめるように志藤は真顔で見下ろす。
『………俺は天星 ユウヤ。お前は?』
忍になったばかりで浮かれていた飛鳥の前に現れた彼に名前を教え、その場から立ち去った飛鳥は翌日自分の祖父である半蔵から教えられた。
───自分を追跡して捕縛しようとした悪忍たちを彼は一人で撃退した、と。
それからユウヤや仲間たちとの出来事を思い出した飛鳥は──────決断した。
「…………なるほど、それが答えか」
志藤の目の先にいるのはベッドから起き上がった飛鳥、彼女の顔だった。彼女の顔には迷いなど一つもなかった、あるのは助けたい誰かの為に戦うという信念。
その時、志藤は笑った。悪意のある陰湿な笑みを浮かべ、
「それじゃあ、その目で見てもらおうか」
志藤がそう告げた直後、パチンッ!と指を鳴らす音が響く。小さい音であるはずなのに何故か、何回も反響する。
その直後、世界が歪んだ。比喩など無しで、グニャリと気味が悪くなるように。
「目を背けるなよ。これは試練でもあるのだから」
「………何、これ」
「異能使い、天星ユウヤの過去」
まるで語り手となったように平坦な声音。その様子の志藤の瞳は笑みとは裏腹に虚無を覗き込んでいるように、真っ黒だった。
そして少女たちに試練を与える者として、その覚悟が真実か、虚偽か、試すことにした。
「彼が傭兵、我らの仲間になった理由、他人との接触を拒む理由────その目と肉体で確かめろ」
彼の力は、『幻想廻帰』。味わうことの出来ない過去、奇跡、悲劇を体現することができる能力。
それは、世界を塗り替える事が可能である、神の力。
聖印街、今現在国が立ち入り禁止をしている街のあった場所。その街の中心部、
「ここが、俺の故郷」
ポッカリと地面に開いた巨大な穴を前に、一人の青年 ユウヤが見下ろしていた。ズボンのポケットに手を入れたまま、彼は懐かしそうに呟いた。
「そして、『俺』の生まれた場所」
───???───
「『柱』の完成率 約56.8%、起動エネルギー総量 95.8%、『計画』の誤差は僅か 0.05%、修正の必要はない」
ドウンッ、ドウンッ、ドウンッ、と。
心臓の鼓動というか、重機のエンジンのような轟音が鳴り響くと同時に、空間全体が振動する。
「完璧だ、これでようやく完成する」
太古の民族が神々を崇めるために作ったような祭壇、その玉座にいるのは、一人の青年。血のように赤黒いマントの翻し、自身の腕へと手をやる。
「後は、『神の器』。それだけだ」
変貌しているグロテスクな見た目の腕を撫でて、祭壇に座する『統括者』は歓喜に口を歪め、広がる空洞に高らかな哄笑を響き渡らせた。
補足
味わうことの出来ない過去、奇跡、悲劇を体現できる『幻想廻帰』と呼ばれる異能の力を持つ。
さて、これから始まるのはユウヤの過去です。楽しみにしていただければ、幸いです。
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