閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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分かりにくいかも知れませんが、ユウヤの過去体験回です。


四十一話 追憶の記憶

意識が覚醒した彼女たちがいたのは、街の中だった。

 

 

正確には、子供たちが遊んでいるような公園。何が起きたか分からずに、混乱している少女たちは疑問を口にする。

 

 

「……………ここは?」

 

 

「言ったろう、理由を確かめろと」

 

 

彼の言葉にようやく理解する。これは、擬似的に再現された誰かの過去だと。

 

 

──誰の過去かは、まあ言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

「────じゃあ、なれなかったの?」

 

 

彼女たちの視線の先には一人の少年がいた。幼い見た目と口調の少年は、ベンチに腰掛けていた男性に駆け寄って話していた。

 

 

 

「ハハッ、違うさ。ならなかったのさ、母さんと一緒にいたかったからな」

 

 

「……でも、なりたかったんでしょ?『忍』さんに」

 

 

息を呑む音が周りから聞こえる。誰のものだったのか、既に彼女たちの興味には無かった。そこまで目の前の出来事に集中していたからもあるが、

 

 

そんな少年の言葉に男性は苦笑いを浮かべる。

 

 

「あぁ、なりたかったよ。あの人、半蔵様のお手伝いをしたかった」

 

 

「…………え?」

 

 

自分の祖父の名前に飛鳥は反応する。そして、その少年の容姿が、自分たちのよく知る青年に酷似していることに気付いた。

 

 

──before(少年時代)after(青年時代)の変わりようが激しいが。

 

 

「半蔵様の隣で戦って………多くの人を助けたかったけどなぁ、」

 

 

 

「じゃあ、僕が戦うよ。おとーさんの代わりに、困ってる人を助けるためにがんばる!」

 

 

ピョンピョンと跳び跳ねる少年の言葉に男性はキョトンとした顔をしていた。そして大声をあげて笑い、少年の頭を優しく撫でた。

 

 

 

「…………できるだろうな、お前なら。俺たちの息子である、お前なら」

 

 

うん!と頷き、少年は精一杯の笑顔を浮かべた。そんな少年を見ていた男性は腰を上げ歩み始めた。

 

 

「さ、帰るぞ。母さんがユウヤの大好物のシチューを作って待ってるぞ?」

 

 

「え、ほんと!?やったーっ!おとーさん、おとーさん、早くおうちに帰ろー!」

 

 

あぁ、待て待て、と困った顔の男性の服を引っ張って、少年は公園から出ていった。その幸せそうな世界に飛鳥は自然と笑みが溢れていたのに気付いた。

 

 

「これが、天星ユウヤの最初の幸せ。家族や友達、優しかった街の人に囲まれて生きたいた、楽園のような世界」

 

 

志藤がそう呟くと、公園から出ていった親子とすれ違うように男性が現れた。ローブを身に纏った、怪しい男が。

 

 

「────始まるぞ」

 

 

「?」

 

 

「何だ、分からないのか?それもまた僥倖」

 

 

不思議そうな様子の彼女たちに男性を指差して無言で指摘する。男性の手に握られていたのは、見たことのある瓶、その中に入った赤黒い液体。

 

 

怪しく笑った男性は瓶を広場の中心に放り投げ、液体は地面へとぶちまけられた。

 

 

それと同時に白く輝く世界に少しずつヒビが入り始める。それらを広げるように志藤はヒビに指先を差し込み、現実を告げた。

 

 

 

「第一の幸せを奪い尽くす、第一の絶望が」

 

 

 

その直後、世界が反転した。

 

 

純粋無垢な光を帯びた世界を、惨劇しか無い黒を帯びた世界に塗り替えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが悲鳴をあげた。それを非難するものは、誰一人としていない。志藤本人も物言わず、少女たちはその光景に目を奪われていた。

 

 

 

 

 

 

───地獄、その言葉以外に表現する事ができなかった。

 

 

あんなに楽しそうに皆が笑っていた世界が、阿鼻叫喚の世界と変化を見せる。

 

 

炎と殺戮に飲まれた街中で、膝をつく少年の姿。

 

 

声をあげることもできなかった彼女たちに、志藤は少年に、いやその一歩手前に指差した。

 

 

 

「大好きだったもの全てを目の前で奪われ、地獄の中で自分だけが生き残ったのさ」

 

 

 

その少年の前で倒れていたのは、下半身を失った父親の姿。引きちぎられた部分からはおびただしい量の血液が溢れでいた。

 

 

ついに、少年はその地獄に慟哭を響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、と……………これが第一の記憶だ」

 

 

指を鳴らす音と共に、世界が元に戻った。正確には、自分たちがいた部屋に。

 

 

「第二の記憶に続く……………訳にはいかないか」

 

 

ユウヤの記憶を見た飛鳥たちの顔色はよくはなかった。まぁ、当然だろう。彼女たちは人が死に絶えるという記憶をその目で見て、感じてしまったのだから。

 

 

 

ピピピピピッ!!と甲高い音が鳴り響いた。顔色を変えずに志藤は服の中から音の主である───携帯電話を取り出し、耳元に当てて話始める。

 

 

「──僕だ。何かあった………………なんだと?」

 

 

少しばかり距離が空いてても電話から喧騒が聞こえた。聞き取ることが出来るのか分からない程の騒ぎ声に志藤は何度も頷く、そしてようやく口を開いた。

 

 

「そうか、分かった。君たちはそこで待機だ、ボスに報告しておけ、僕らが現場に向かう」

 

 

電話の電源をブチリと切り、服の中に戻した志藤は深い溜め息を吐く。

 

 

───不味いことになった。

 

 

その表情と態度から、そう読み取れる。

 

 

「……………何かあったんですか?」

 

 

真剣に問い掛ける飛鳥に志藤は口を閉ざしたままだった。だが観念したのか、ようやく口を開き話はしめた

 

 

「単刀直入に言おう、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖印街にて発生した膨大なエネルギーの確認と同時に調査に向かったユウヤの反応が消失した」




もうお分かりの方もいるかもしれませんが、お察しください、お願いします。m(_ _)m

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