閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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私が元気になります。


四十四話 『神の器』・動き出すもの

空中を漂うに浮遊している黒い機械のような存在。おぞましい威圧感だが、この感覚を飛鳥たちは知っている。

 

 

『混沌の異形』、彼女たちが一度だけではなく二度も戦った正体不明の生命体。

 

 

だが、目の前の存在を生命体と呼べるのだろうか?そう彼女たちは思っていた。

 

 

今まで見たこともない、未知の金属で構成された存在。しかし、それが生命活動をしているとは、お世辞でも言いがたい。

 

 

ならばどう呼ぶべきか、そう聞かれたら彼女たちはこう答えるだろう。

 

 

────『兵器』と。

 

 

まず、その存在には下半身がなかった。あったのは、深海のように暗い宝玉が手の甲に埋め込まれている二本の腕、それらが取り付けられた漆黒の胴体には血管のような赤黒いラインが通っている。

 

 

そして頭部と思われるものには、口が無かった。鼻が無かった。耳が無かった。目が無かった。

 

 

あったのは、頭部と思われる部位の中心にある、横一線に延びた白色の光だった。

 

 

 

ガシャンッ!ガシャンッ!と武器を装填する音が何度も鳴り響く。

 

 

目を向けると『兵器』の腕と胴体との駆動部、正確には肩と呼ばれる場所にある装備だった。

 

 

UFOを連想させる丸い円盤、その間のくぼみには複数の巨大な武器が設置、いや装着されている。

 

 

砲身の長い機関銃、四つのミサイルの装填された砲台、ギザギザの刃を走らせ唸り声をあげるチェンソー、それ以外にも人を殺すことだけではなく、国を滅ぼしかねない装備の存在が地上からでも伺える。

 

 

 

最後に、『兵器』の背中にはソレがあった。

 

 

空想上のファンタジーに実在していてもおかしくない複雑な線で描かれた円陣。まばゆく光輝くその円陣は、現実とはかけ離れていた。

 

 

 

ギチギチッと『兵器』が身体を広げる。姿が変わった時には、背中を折り曲げ自分で屈むような姿勢。

 

 

直後、

 

 

【ォォォォォォォォォォォォォ───────】

 

 

 

声を発する部位などあるはずもないのに、【兵器】は甲高い咆哮を全方位に響かせた。

 

 

 

『────『神の器』。我らが宿願の為に、奴等を祭壇に誰一人として通すな』

 

 

 

頭部にあるラインが、薄く光りを見せた。それに連動するかのように、円陣が激しく回転する。

 

 

 

ピタリと回転が止まった時には、円陣は紋様で形作られた翼へと変化していた。まるで羽化したばかりのように広げられた翼は、

 

 

 

 

ドザァッッ!!!と周りの大地へと突き立てられた。翼は巨大な刃と化し、周りの瓦礫を空間ごと引き裂いた。

 

 

轟音と同時に悲鳴があがる。逃げ惑うことしかできない兵士たちに対する彼の行動は早かった。

 

 

「全部隊!撤退しろ、出来るだけ離れろ!」

 

 

 

必死に志藤は声を張り上げ、兵士たちを後ろへと下げる。戦力は多い方が良いと聞くが、あまり多すぎても足を引っ張りかねないのだ。

 

 

その隙に、『神の器』の前に少女たちが立ち塞がる。相手もそれに気付いたらしく翼を折り曲げ、ジロリと見下ろした。

 

 

 

「「「「「忍転身!」」」」」

 

 

直後、少女たちの服装が目に見えて変化する。忍として戦闘体制へと切り替わった彼女たちに、志藤は戦えないことに忌々しそうに歯を噛みきる。その代わりに懐から結晶を取り出し、高らかと宣言した。

 

 

 

「──効果領域発動、全ステータス上昇!」

 

 

その言葉と同時に、彼女たちは自分たちの力が大きく上がったことを理解する。再度、大きく翼を広げた『神の器』に彼女たちは構えをとる。

 

 

白い光の翼が槍のように彼女たちに襲い掛かる。殺到する翼の雨を掻い潜り、宙に浮く『神の器』に辿り着いた斑鳩は鞘から、彼女が授かった鳳凰財閥の宝刀 飛燕を抜く。

 

 

 

「ッ、はぁっ!!」

 

 

斑鳩の叩きつけるかのような、正確には重く斬りつけた一撃が『兵器』の胴体に直撃する。

 

 

だが、無傷。斑鳩の一撃を受けたはずの場所には傷など一つもなく、綺麗なままだった。しかし彼女の攻撃により、変化があった。

 

 

 

 

『神の器』の目のような光が、斑鳩を捉えたのだ。飛躍したことにより、他の足場へ降り立った斑鳩を。

 

 

 

 

巨大な柱のような太さの腕を曲げ、ガシャンッ!と間接部を動かし、足場ごと吹き飛ばすそうと構える。そして、腕を振るった直後、

 

 

 

「ッ、るおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

ガゴォンッ!!と頭部へと打ち込まれた一撃に『神の器』はその体をよろめかせる。振るった剛腕も斑鳩のいた足場の奥の建物を崩しただけになる。そして、ギロリと周りを見渡して、気付いた。

 

 

 

すぐさま斑鳩の隣へと退避した葛城。そう、先程の一撃は葛城による蹴りだったのだ。

 

 

【ォォォォォォォォ───────】

 

 

今度こそ、吼えた。その咆哮には怒りが籠っているということに二人も理解したらしく、

 

 

「………怒ったぽいよな」

 

 

「………ですよね」

 

 

肩に取り付けられた円盤が回転し、両方とも同じ武器を装填した。機関銃と呼べる武器は、銃口を左右二人ずつに向け────火花か散った。

 

 

互いに別れ、他の足場に移動しするが、無数の銃弾は後を追うように二人の通った場所を削り取る。

 

 

【──、────】

 

 

銃撃をピタリと止めて機関銃を円盤の奥へと格納する。諦めたのか、と全員が思っていた。

 

 

 

だが、違かった。畳んで閉じていた翼を大きく開き、空を包み込むように広げた。真っ黒に染まった空を照らすかように神々しく光り始める。

 

 

 

翼の先が割けるように分離して、大地を串刺しにし始める。残骸と瓦礫の山を吹き飛ばしながら彼女たちへの攻撃を続けた。乱雑にも見えるが、それが一番やるべきことだろう。

 

 

 

 

 

「ッ!雲雀!」

 

 

遠くから狙撃を行っていた柳生は白い翼の雨から雲雀を守るように傘を広げ彼女の前に立つ。

 

 

残念ながら、彼女の傘では白光の翼を防げるとは言い難い。防げたとしても、二発が限界だろう。

 

 

 

だが、半透明な障壁が翼の猛威から彼女たちを守った。

 

 

「おぉ、中々にヤバイな」

 

 

雲雀と柳生を庇うように結界を張った志藤は『神の器』の蹂躙に舌を巻く。余裕そうな表情に、壊れない結界に『神の器』は翼による広範囲の破壊を止め、一点に攻撃してきた。

 

 

「あーあ、狙ってきたか」

 

 

言葉の割にはニヤニヤと笑った志藤。彼は攻撃を続ける『神の器』に聞こえる声で問いかけた。

 

 

 

 

「さっきから僕なんかに構ってる暇あるの?あるんならいいけど」

 

 

ピタリと連撃が止まった。志藤の馬鹿にするような笑みと言葉を理解したのだろう、攻撃に使った翼を戻し、即座に周りを確認する。

 

 

 

結界内にいるのは三人、そしてビルなどの残骸に跳び移って回避していた二人だけ。

 

 

───六人いた、あと一人は何処だ?

 

 

ふと、自分の真上から影が射した。小さな人の形をした影が。思い切り、顔を持ち上げた『神の器』はハッキリと見た。

 

 

「───秘伝忍法」

 

 

二本の刀、銘を柳緑花紅(りょうりょくかこう)を振り抜いた忍の少女 飛鳥の姿を。

 

 

「《半蔵流(はんぞうりゅう)(みだ)()き》!!」

 

 

彼女の忍としての力は、志藤の援護により倍増し、『神の器』の外装を幾度となく切り裂いた。外装には傷がないが、肉体に行き届くダメージは増えていく。

 

 

【ァァァァ──────、】

 

 

追撃しようと振るわれた拳が止まる。そして身体から流れるビーッ!という機械音と共に『神の器』は光を消して項垂れた。

 

 

 

 

【………ksm装甲.tjtw損傷juvjg&m15%、】

 

 

ようやく、ソレは言葉を発した。

 

だが、多くの者には聞き取れず、理解できない言語……音声と言ってもいいだろう。

 

 

───数人だけ、それを理解した者たちがいる。

 

 

(………装甲、損傷?)

 

 

(15%、なるほど、あと少しと言うわけか)

 

 

飛鳥と、志藤。この二人はその音声の意図を読み解けた。何故この二人だけなのかは、本人たちも疑問に思わず、仲間たちに伝えようとする。

 

 

【────個体kskt行動、修正】

 

 

だが、彼女たちの動きを止めるように『神の器』は音声を紡いだ。少しずつ変化したようにも聞こえる、声を。

 

 

そして出てきたのは先程のような未知の音声ではなく、

 

 

【標的、殲滅、βモード、移項】

 

 

途切れてはいるが明確に意味が分かる言葉。

 

 

ガガガガガガガガガガガガガ!!!!と騒音が響き渡る。まるで、工場にある機械が作業をしているかのような音が。

 

 

それと共に胴体の下から禍々しい負の塊が溢れだす。液体のようにドロドロとした混沌は、徐々に形作り始め、金属の部位を生み出した。

 

 

脚と呼ぶべきには、少し不完全なもの。筒からはエネルギーを吹き出し、宙を浮遊する。

 

 

二本の腕がある肩の部位から、更に腕が出現する。最初にあった腕と同じような骨格と外装だが、腕の先にあるものは五本の指の繋がった手──ではなく、何もなかった。

 

 

ポッカリと腕の先に開いた穴、ロケット砲みたいなそれはガシャンッ!と動く。

 

 

 

最後に頭部、光のラインしかない顔がパックリと横に裂けた。

 

 

裂けたところの表面はデコボコだったが、ようやくそのデコボコが歯だということが発覚する。

 

 

そして、先程の姿から変化した『神の器』は口を大きく裂き、音声を張り上げた。

 

 

先程の無機質な咆哮とは明らかに根本的に違う………言うなれば、

 

 

 

 

 

莫大な殺意と敵意を上乗せした雄叫びを裂けた口から放ち、敵を殲滅せんと地上へと突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

───聖印街、その近くの廃虚。

 

 

激しくなっていく戦闘を目にしている人物がいた。黒一色の服装で、金色の髪をした青年。仲間たちを置いて、この街に来ていた青年は顔を歓喜に歪めた。

 

 

 

 

「…………素晴らしい」

 

 

遠くからだったが、『神の器』と呼ばれる存在の力を見ていて、とてつもなく歓喜していた。押されてはいるが、その力の全貌に気づいていたキラは思っていた。

 

 

──『神の器』であの力ならば、あの街にあるとさせる『聖杯』はどれ程の物なのだろうか。

 

 

 

「クフフ、ハッハハハハハハハハハ!!」

 

 

狂ったように笑うと、彼を包むように闇が顕現する。『Dark Matter』、自動で敵を殲滅する鎧は、周りを破壊する。刃を振るい、木を切り裂き、地面を削る。

 

 

そして、今もなお争いが起こる街へと目を向ける。──正確には街中にある巨大な穴に。

 

 

 

「『聖杯』は俺様の物だ!誰にも渡すものか!アレさえ手に入れれば、俺様の心が、渇望が、満たされるんだ!!

 

 

 

 

俺様が何を望んだのかが、分かるんだよッッ!!!」

 

 

キラには見えていない、その過程で何を失うのかを。キラには聞こえない、自分を止めようとする心の声を。そして、

 

 

 

 

 

 

 

キラは気付いていない、自分が望んだものが、既にあったこと。




この戦いは中心ではない、始まりだ。


これから始まる戦争の、序章になるものだ。

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