批判されないかな、心配だなぁ。(;゚Д゚)
あとついでにですが、アンケートを作りました。皆さんの意見を教えてください。
「戻ろう、だと…………俺に?」
差し伸べられた手にユウヤは彼女の顔を見て沈黙する。前髪で隠れたせいで表情が見えないが、諦めたような顔をしているのが声と態度で伺える。
「馬鹿言うんじゃねぇよ、お前は俺が言ったことを忘れたのか」
吐き捨てるように告げた言葉。それはただ飛鳥を諦めさせる為のものだった。だが、飛鳥は既に気付いていた。
「知ってるよ…………嘘だってことくらい」
「…………マジか、こっちは必死だったてのに」
ユウヤは苦笑いを見せるが、どう考えても嘘だと気付けてしまう。あんなに仲間だとか言って楽しそうだったのに、実は嫌いだったと言われても説得力が無さすぎる。
「あーぁ、やっぱ俺には嘘はつけねぇな。こんなに簡単にバレるんだから」
「…………」
「だが、それが嘘だと知ったからって…………俺がお前らのところには戻るつもりはない」
その言葉を聞いた飛鳥は先程見聞きしたものを思い出した。ここに来る前に流れ込んできた情報を。
苦渋の果てに、ユウヤが決断した事を。
「……………死ぬつもりなの?」
「あぁ、そうだ」
否定して欲しかった事を、即答して答えた。静かに瞳を伏せながら、ユウヤは立ち上がった。近くにある瓦礫に歩み寄り、破片を握りながら、彼は飛鳥へと声をかけた。
「聖杯、あれは希望なんかじゃなかった………絶望だよ。あれの中には、俺が見捨てた人たちがいる。これ以上、誰も苦しませる訳には!」
「……………違う、それでも」
「お前も見たんだろ、この地獄を。それなら分かるだろ?」
あたかも当然だろうと促すユウヤ。彼にとってこの地獄は自分を繋ぎ止める杭の役割を持ったものだった。
「あの日、あの時間…………俺は生き残った、いや生き残ってしまった」
強かった、だから嬉しかった。
かっこ良かった、だから憧れていた。
そして、優しかった───だから父のようになりたかったのだ。
『………とぉ、さま?』
そんな父は自分を守り、崩れ落ちた建物の倒壊に巻き込まれた。瓦礫の隙間からはみ出た腕。がっしりとして、そして優しく包んでくれたその腕は冷たく動かなかった。
足元に池があった。赤い池、この地獄を映したように赤いそれは…………血で出来ていた。その血が流れているのは、冷たくなった腕の先────、
その瞬間、ようやく理解した。
あぁ、死んだ。俺の大切な人も、そして『俺の心』も。
──だが、肉体は死ななかった。助けられたから、後少しで死ねたのに…………そう思っても何も変わらない。
自嘲するような笑いが漏れた。今覚えば、何故自分だけ生きれたのか、可笑しくて笑いが止まらなかった。
「顔を知らない誰かの為に、俺は戦い続けた。それが俺が生き延びた理由だ……………俺は誰かの為に、傷ついて、戦って、消えるべきなんだよ」
生きてしまった分だけ、死んでしまった人への報いの為に、今生きる人を死なせないように自分だけを犠牲にする。
──まさに、自己犠牲。ただのではない、正真正銘自分を犠牲にしてきたのだから。
そうして、決定した現実を吐き捨てる。それが正しいのだ、それが一番だと、自分の意見などを何も言わずに、彼は多くの者が救われる道を選んでいた。
その過程で、自分がどれだけの救済の代償を受けるかを知っていながら。
そう思っていたユウヤはフッと鼻で笑う。目の前の少女にではなく、自分に向けて。
───こうすればいい、これが一番なんだ。
そう思っていた、そう判断していた彼の耳に入ったのは一つの音だった。災害に起こされた破壊音などかき消して、それは彼の鼓膜を叩いた。
パンっ! という音が。
「っ………………?」
ユウヤがすぐに感じたのは痛みだった。ヒリヒリと頬を突き刺すような痛みに彼は眉をしかめる。
そして、ようやく気付いた。
飛鳥が自分の頬に平手打ちをしたということに。
「…………そんなこと、言わないでよ」
「自分だけが傷つくだけでいいなんて、そんなこと言わないでよ!ユウヤくんが苦しんで、悲しむ人だっているんだよ!」
「───じゃあ!一体、どうすればいいんだよ!!」
今まで溜め込んできた激情が、彼女の前に噴き出した。ずっと彼が押さえ込んできたものが、たった今飛鳥の言葉が起爆剤となり、大きな感情の爆発を起こしたのだ。
「あぁ、そうさ!最初から気付いてたよ、こんな事しても意味がないって、それぐらい分かってたさ!」
不良のような態度や仕草をして、残酷なことを口にしたりしてたのも、全て他人を遠ざけるためのものだった。
「ずっと自分を偽って、誰かの為に進み続けたその結果!………………本来の自分が何をしたいのか、分からなくなった!!───誰だよ、悲しむ人って、こんな俺のことを、涙流して悲しんでくれる奴がいるのかよ!?」
他人を助けるために戦う者は多くの者から称賛を受ける、そして英雄と呼ばれるようになっていく。だが、自分のやりたい事を少しずつ失っていったりもする。
その結果、本当の自分すら分からなくなってしまった者はどうなるだろう?
……どうにもなる訳がない、そう確信していた。当然だろう、自分を知ってるのは自分自身だ。それを忘れてしまえば、他人にはどうすることも出来ない。
「
そうしてきた結果、それがこれだった。
「そんな奴に何も変えられはしない、……無力なんだよ、俺は」
例えどれだけ強い力を持っていても、それを扱う人間に何もなければ意味をなさない。いや、力を持たない者の方がまだマシだろう、力がない分努力するのだから。
傭兵、異能使いなど、所詮名だけ。その正体は自己犠牲しか出来ない人間。それが、彼が語る天星ユウヤだった。
「確かに、ユウヤくんはそういう人かもしれない。皆がユウヤくんの言ったように言ったりするかもしれない」
「………………そうだ、だから」
「なら私たちが違うって否定する!」
今度こそ、ユウヤは呆気に取られたように声が出なかった。
「誰よりも心優しい人だってことを、誰よりも人を思いやれる人だってことを、誰よりも他人が傷つくのを怖がる、泣いたり笑ったりすることのできる…………私たちの仲間だって、否定して見せる!」
「…………………どうして」
分からなかった、理解ができなかった、何故そこまで自分を助けようとするのか、誰にも許されてはいけない、何かもが分からない、そんな自分にどうして、と彼は呻く。
「そんなの決まってるよ」
「──────ッ」
「私が、皆が、ユウヤくんのことが大好きだから」
傭兵としてでもあり、たった一人しか存在しない 天星ユウヤとして。力が抜けたように膝をついた彼の両頬に手に添え、彼女は笑顔を向けた。
眩しい輝きをもった笑顔、そして心優しい言葉、それを目に、耳にしたユウヤは心の傷が癒えてゆくのを感じる。
「───────あぁ、」
そうか、と彼はようやく答えを得た。あの地獄で死んだ者たちが自分を縛っていた訳ではない、ユウヤという青年を縛っていたのは自分自身だったのだ。
生き延びた自分が多くを救わなければいけない、という風に自身の心に軛をかけ続けてきたのだ。
「…………間違ってたのか、俺は」
───自分は救われてはいけない。
それは誰が決めた?
───誰かの為に戦わなければいけない。
その為には何もかもを捨てなければならないのか?
───本来の自分が分からない、どうすればいいか分からない。それでもか?
……簡単だ。時間をかけて、探せばいい、見つければいい。早く見つける必要はない、自分が分からなかったとしても支えてくれる大切な仲間がいるのだから。
「でもユウヤくん、自分のことを大事にして…………あっ、」
注意しようとした飛鳥は途中で自分の言ったことに気付いて顔を羞恥の赤色に染める。恥ずかしがり顔を両手で覆い悶絶する飛鳥を他所に、ユウヤは飛鳥に言われたことを徐々に理解していた。
諦めなかった一人の少女により、ユウヤは救われていたのだ。
だが、この場所にそれを許さない存在がいた。
突如、ユウヤを包んでいた闇の瘴気が動いたのだ。靄の姿を変え、自分たちの邪魔をした飛鳥を殺そうと武器へと変化して襲い掛かる。
直後、瘴気が凄まじい電撃を浴びせられた。瘴気たちは甲高い絶叫をあげ、抵抗する暇もなく青く光る電気に一つも残らず焼かれた。
膝をついた飛鳥の前に立っていたのは、ユウヤ。彼は飛鳥に背中を向けた状態で体から電気を発生させ、彼女を襲おうとした瘴気を浄化したのだ。
「………ありがとう、飛鳥」
振り返らずに、告げられた言葉に迷いはなかった。透き通るような綺麗な声音で告げた
「俺は、救われたよ」
白い奔流が世界を包み込んだ。阿鼻叫喚の地獄を元にした世界は真っ白に染まり、消失する。
世界が戻り、黒い球体に触れていた手がバチィッ!と弾かれた。勢いのままに、吹き飛んだ飛鳥は地面へと倒れ込んだ。
「飛鳥さんっ!」
結界の中から心配そうな顔で彼女たちが駆け寄ってきた。飛鳥も起き上がり、心配ないと返そうとしたが、
【─────────ッ!!!!】
黒い球体が唸る。声が出せないそれは空間を震わせ、絶叫のように響かせていた。暴走するようにその球体が膨らんだり、縮んだり、大きくなったり、小さくなったりと姿を変化させる。
一連の動きが止まった途端にピシッ、と割れ目が入る。割れ目から漏れた光が周りを照らす。それと同時に動かなかった『神の器』に変化が起きた。
黒い装甲が砂のようにサラサラと崩れ始めたのだ。あれほど凄まじい威圧感を放った神々の兵器は何千年も過ぎた建造物のように消え去ろうとする。
パァァァンッ!
黒い球体が完全に砕け散り、ガラスが割れるような音が周りに響き渡る。そして、『神の器』は真っ黒な砂、正確には砂鉄へと戻り、地面へと落下した。
「おう、少しやりすぎだろ。俺」
煙が周りを漂う中、一つの人影と聞き覚えがある声がした。白い煙から出てきた青年は体についた砂鉄を払うと、飛鳥と駆け寄ってきた彼女たちの前に立った。
「…………ごめんな、色々と迷惑をかけた」
今の彼を縛るものは何もなくなり、憑き物が落ちたように彼は彼女たちの前で見せることのなかった笑顔を浮かべた。
「そして、遅くなったが…………ただいま」
傭兵としてではなく、過去と使命に縛られた人間としてではなく、たった一人の青年として、天星ユウヤは信頼する仲間である彼女たちにそう言った。
ユウヤさんは優しすぎる人なんだよなぁ、自己犠牲って自分で卑下するくらいには。
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