閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

57 / 125
アンケートで紅蓮さんに一票入ってましたわ。


………顔隠したの、良かったのか。


五十二話 黙示録・災厄の箱・黒騎士

黙示録(アポカリプス)、神が選ばれた預言者に与えたとする「秘密の暴露」、またそれを記録した書物。

 

 

そして、その名を冠するケイオス 黙示録(アポカリプス)の力は分かりやすいが恐ろしいものだ。

 

 

黙示、いや新旧の聖書に記されたことを現実へと昇華する力。

 

 

 

「ヨハネの黙示録 展開、及び詠唱開始。064 『神理障壁・光帯乱射(アウティマ・オーヴス)』 発動」

 

 

 

視界を埋め尽くすほどの閃光が広がる。ノイズで構成された肉体が変化していき、複数の半透明な鏡となる。

 

 

その鏡の真ん中にある小さなミラーボールのような光球。その球体から周囲を温める熱量の光が一点に注がれた。

 

 

 

ジッ!と空気を焼く音が響き、光は直進していく。そして、標的の柳生は回避しなければ一撃で貫かれる。それが普通の事象だ。

 

 

だが、光は柳生の前に出てきた半透明な鏡に直撃する。フォン!と鏡に当たった光は垂直に折れていく。

 

 

「なっ」

 

 

これには覚悟を決めようとした柳生も唖然とする。しかし、それだけではすまない。

 

 

 

フォン!フォン!フォン!フォン!フォン!フォン!フォン!

 

 

複数の鏡の障壁が光の移動する先に待ち構え、何度も屈折させ続ける。あまりの出来事に遅れた柳生はすぐさま軌道を確認しようとするが、

 

 

 

(・・・・・まずい、読みきれないっ!)

 

 

「くっ!」

 

 

何処に移動するかが読めない以上、見ているだけでは危険と判断したのか、柳生は横へと走り出す。

 

 

 

「同時多重詠唱開始、006 『自動追撃・連鎖爆弾』(オートアタック・チェインボム)

 

 

 

ノイズの至近距離で小さな爆発が発生した。だが、何が起きてるかも分からない爆発は続いていき、走り出していた柳生へ蛇のように爆発を連鎖させて迫り来る。

 

 

爆発を回避していく柳生を見たアポカリプスは ほう、と漏らす。

 

 

「素晴らしいなぁ。君は実に興味深い、実に面白い。どだ、私と来ないかね?」

 

 

「ふざけるな!誰が貴様なんかと!」

 

 

ノイズの塊の勧誘を、案の定柳生は拒絶した。そもそも普通殺し合っている相手と手を組めるなどそう簡単にいかない。

 

 

それを聞いて残念そうな声を漏らすアポカリプス。そして、彼女にとってとてつもなく恐ろしい発言をあっけらかんとした。

 

 

 

「そうか、君は妹を救うチャンスを捨てるつもりなのか。いやぁ、実に残念だなぁ」

 

 

息が、心臓が止まった。そう錯覚してしまう程の驚愕を柳生は味わった。傘を持つ手が極限の震えに達して、手から傘を落とした。

 

 

聞いてしまってはいけない、そう分かっている筈の柳生は激しく狼狽している。そして戸惑いを隠せずに、心のなかを不安と恐怖が覆っていく。

 

 

「な、何を・・・」

 

 

「君の記憶を見た。私の能力はそういうモノなのだよ」

 

 

そう言ったアポカリプスは何故か自慢気だった。ふんぞり返っていたノイズから、高低が分からない声が響いた。

 

「もう一度聞くが、チャンスを捨てるつもりなのかな?君は」

 

 

ザザ、とノイズが唸る。徐々にそれは肉体を歪ませていき、変貌していく。

 

 

「まあ別に切り捨てるのなら切り捨てればいい。淡い幻想にすがり、死んでいけばいい」

 

 

 

「だが、君には、私と同じ道を歩んだ君には、素質がある。世界を憎み、怨みを晴らす素質が」

 

 

「・・・・素質、だと?」

 

 

そう口にしたアポカリプスには感情が滲んでいた。ノイズから引き剥がされた素顔を見せた彼は柳生へと手を差し伸べる。

 

 

「私と共に()たまえ。聖杯を使い、願いを叶えようじゃないか」

 

 

目が合った。光の無い瞳をした男性は薄く嗤った。まるで、心から思ってもいないかのような。

 

 

 

◇◆◇

 

 

巨大な壁で囲われた迷宮。雲雀と志藤の二人はその迷宮を彷徨っていた。

 

 

「はぁ~、疲れたよ~」

 

 

左側の壁に沿って歩いていた雲雀が座り込む。彼女たちはこの迷路に入ってから少しも休んでなかったので、彼女の言葉は納得できるものだった。

 

 

「チッ、そういう構造かよ」

 

 

同じように壁を沿っていた志藤が辿り着いた広間を見て苛立ちを隠さずにいる。正確に、見ていたのは広間の中心にある印が付けられた柱だった。

 

 

くたびれてその場に座り込む雲雀に志藤は振り返る。

 

 

「ようやくだが、コイツについて分かったぞ」

 

 

「? それってどういう」

 

 

「─────この迷路は生きてる」

 

 

遮ってまで発せられた言葉に雲雀は首を傾げる。何を言いたいのか、よく分からない、そんな彼女の考えを読んだのか、志藤は詳しく説明する。

 

 

 

「いや、正しくは動いていると言った方が良いだろうな。どういう仕組みかは分からないが、僕たちが出ようと努力すればするほど、コイツが反応して出れなくするんだろうな」

 

 

そう言った志藤は迷路の壁を叩いた。彼はそもそも人並み外れた頭脳をもつ。一般人や普通の忍ならもっと時間がかかりそうなモノを早めに理解したのは彼の特徴からだろう。

 

 

そして、志藤の答えを誉めるモノもいた。

 

 

 

───あら、もう気付いたの?案外早かったのね。

 

 

大きさの割には迷宮を反響する声が二人の鼓膜を叩いた。驚いた二人はすぐさま周囲を見渡すが、近くに誰かがいるわけでも、スピーカーが有るわけでもない。

 

 

二人の態度を知ってか知らずか、声の主はクスクスと笑っている。そして、自身の姿を見せずに静かに自身の名前を明かした。

 

 

───私はパンドラ、五君帝(フルガール)の一人。

 

 

「パンドラ・・・・・ってことは『あの箱』を所持してるのか?」

 

 

瞬時に考察をした志藤は問いかける。隣で雲雀が首を傾げているが、志藤には説明する暇が無かった。

 

 

あら?と惚けた声が迷宮の壁に反響する。少しの静寂が起こるとすぐにクスクスと笑う声が二人の耳に入ってきた。

 

 

 

───その『箱』なら、既に貴方たちの目の前にあるじゃないの。

 

 

 

「────は?」

 

 

人並み以上の頭脳を持つ志藤が呆然とする。何を言ってるのか、まるで理解できてないようだった。志藤は周囲を見渡すが、『箱』と呼べるものは存在しな─────

 

 

「し、志藤さん!」

 

 

焦った雲雀が叫ぶ。二人の目の先で迷宮の壁が紫色に変色した。ボゴボゴボゴボゴゴゴゴ!!と石で作られた壁が膨らみ始めていく。

 

 

───私の箱、『災厄の箱(パンドラズ・ボックス)』は自由自在なのよ。どんなモノにも変化できる、今貴方たちのいる迷宮のようにね。

 

 

でこぼこになった壁から沢山の目玉が浮き出る。硬直している二人を前に、その目玉たちがギョロリと二人を捉えた。

 

 

───さて、貴方たちに教えてあげるわ。私たちの力、その一端をね

 

 

 

◇◆◇

 

 

最強のケイオス。その名はやはり伊達ではない、飛鳥はそう思わざるを得なかった。

 

 

「はあぁっ!」

 

 

掛け声と共に飛鳥は何度も切りつけるが、相手は人の大きさをした盾を少し動かすだけで全ての攻撃を防ぐ。基本的に防戦に徹底した構えを見せている。

 

 

「───フッ!」

 

 

だが、たまに飛鳥のバランスを崩させて、その隙に凄まじいほどに重く鋭い一撃を放ってくる。的確に振るわれた剣はそのまま飛鳥の脇腹に掠り傷を与える。

 

 

二本の脇差を盾に叩きつけ、距離を置こうとする飛鳥。それを視認したアルトリウスの行動は早いものだった。

 

 

 

巨大な盾を前に構え、疾駆してきたのだ。

 

 

戸惑いを見せる飛鳥に盾が突進し、彼女を吹き飛ばそうとする。何とか耐えきった飛鳥は盾の横から降り下ろされた長剣を柳緑花紅(りゅうりょくかこう)を交差させて防いだ。

 

 

 

 

「理解できない。何故そこまで戦おうとする?」

 

 

漆黒の長剣と柳緑花紅(りゅうりょくかこう)がぶつかり合うことで火花を発していく。飛鳥は吹き飛ばされないように両手で押し返そうとするが、黒騎士は片手で押し込んでいく。

 

 

 

「『聖杯』がこの地に顕現すれば、人類は永劫を約束される。──────本当の救済を得られるのだ」

 

 

「それで、どれだけの人が苦しむ」

 

 

 

「先程も言ったはずだ」

 

 

グッと長剣を再度強く握る。縦に切り裂こうとしていた剣が切り換えられ、秒単位の遅れと共に横へと薙ぎ払われる。

 

 

ギリギリ掠り傷で済んだ飛鳥を見据え、長剣を地面に突き刺す。剣から放した右腕でマントを広げ、アルトリウスはバイザーを持ち上げ、確認するように事実を告げる。

 

 

 

 

「幾千万・・・・およそ五千万以上の人間の生命エネルギーを使えば、聖杯は完全に至ると」

 

 

極めて平坦。だが、その内容が恐ろしいものだった。五千万という数は人類の総人口の数十分の一だけと言える。しかし、それだけの数の人々が知りもしない『聖杯』という存在を動かす為だけに殺されなければならないのだ。

 

 

「そんなの間違ってる」

 

 

ビキと黒騎士の方から響く。否定の声をあげた飛鳥は黒騎士の様子を確認してない。だからこそ、強く糾弾した。

 

 

「そんなこと間違ってるよ。何も知らない人を、関係ない人を、そんな理由で傷つけるなんて間違ってる!そんな事をしたって、誰も喜ぶ筈がない。そんな事で救われる訳がない!」

 

 

そうかもしれない。アルトリウスは彼女には聞こえない声で呟いた。例え、それで永劫の救済を行ったとしても、心は癒されない者もいる筈だ。確かに、救済と呼べる訳がなかった。

 

 

「それがどうした?」

 

 

だが、アルトリウスは嘲笑った。『かつての自分』なら彼女には応えただろう。しかし、『今の自分』はそれを否定した。それが自分たちの信念の邪魔になるから。

 

 

「私はアルトリウス、聖杯の守護者 五君帝(フルガール)の一人。『聖杯』の意思を望み、それをトレースする者」

 

 

 

「我らは多くの人間を殺してきた───聖杯を守るためにだ。怪物と称されても否定はしない。それでも、『聖杯』を誰にも渡すわけにはいかない。これは五君帝(フルガール)としてではない。私の、一つだけの正義だ!」

 

 

「私にだってあるよ、正義は」

 

 

飛鳥は二本の愛刀を握り直した。戦闘でついた傷や泥を拭い、必死に叫んだ。

 

 

「みんなを笑顔にするために戦う!それが私の正義!私の忍の力はそのためのものなんだ!」

 

 

「───ふん、ならば示して見せろ。その正義が我らを討ち果たすに足るか、人類を救うに足るか、ここで証明して見せるがいい!」

 

 

対するアルトリウスも叫んだ。長剣と大盾を振るい、地面に叩きつける。ゴシャッ!!!!と大地にヒビを入れた黒騎士とそれらの攻撃を避けて疾駆する忍の少女がぶつかった。




補足、

黙示録(アポカリプス)


柳生の相手として現れた存在。ノイズ状で構成された歪みという姿をしている。


今回の話では柳生を勧誘していました。そこでも分かる通り、アポカリプスは聖杯を守ろうと思ってはいません。




パンドラ。


彼女自身はそんなに強くないです。普通の忍よりも弱いと言っても過言ではないでしょう。問題は彼女の持つ『災厄の箱(パンドラズ・ボックス)』です。


彼女は箱の事を自由自在に変化すると称していますが、事実です。ただ一つだけあるとすれば、



まだ箱は開けられてないということぐらいです。


アルトリウス。


五君帝(フルガール)の実質リーダー。多分一番まともだと思える人。聖杯を覚醒させ、世界を元に戻すことを使命としている。


そして一番話が通じない人でもあります。説得は無理と思うべきです。


今回はほんかくえきてーだけで終わりましたが、

この作品のオリキャラで好きな人は誰ですか?

  • 天星ユウヤ
  • 紅蓮
  • シルバー
  • 常闇綺羅/キラ
  • カイル
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。