閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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先週は投稿できずに申し訳ありませんでした。どうしようかと悩んだ結果、日が過ぎていってしまったので謝罪が遅れてしまいました。



本編の話に何話かという数字を入れようと思っています。よろしくお願いします。


五十六話 佳境

「聖杯を守る異形たち、彼らを動かす司令官。そして、闇の巨人か」

 

遠くからその状況を確認していたカイルはそう呟く。義手をメキメキと鳴らし、深いため息を吐いた。

 

何がどうなればここまでの怪物たちが同じ場所に現れるのか。そう呆れていたが、すぐにその考えを止める。

 

 

「何をしているのか分からないが、そろそろ立ち上がるべきだろう、紅蓮」

 

 

聞こえはしない声でカイルは囁いた。視線の向けられていた所に紅蓮はいない。いるのは巨大な闇を纏った巨人、その頭の部分にいる金髪の青年を見て、言葉を続けた。

 

 

「早くしなければ、あの青年は闇から戻れなくなるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の巨人、Neo=Dark matterは未だ完全ではない。形を為しているのは上半身だけ、下半身はドロドロの闇で構成され、今にも崩れそうになっている。このまま動けば、全部壊れるのではないかと錯覚してしまう。

 

 

「…………そうだ、そうじゃないか。何を臆する」

 

 

しかし、そんなことは関係なかった。キラは力ずくで巨人を動かそうとする。そこまでするのには、理由はない。だが、やりたい事、望みがあった。

 

 

 

「俺様たちを否定した人間も、大切な人を殺していった妖魔も、そいつらを作り出した聖杯も!そして、それらを全てを許容する、こんな世界も!」

 

 

異能使いと忍、その二つを『闇』へと追いやったモノたち。

 

同じように『闇』で生きていながら、自分たちを利用しようとした老害どもも。

幾度となく彼らの未来を奪った妖魔や混沌という化け物も。

自分たちの存在も、何も知らずに生きている人間たちも。

 

 

全てを許さない、赦す訳がない。そんな感情が身体の奥から溢れ出てくる。

 

 

「Neo=Dark matter、この世界が生み出した悪意と闇の権化よ。俺様を含む全てを呑み込め!そして、一つの闇に!!」

 

 

もう、後戻りは出来ない。

自分の元いた場所には帰れない。

そう止める声があったが、キラはそんな考えを振り払った。

 

元いた場所?帰れない?何を言うのか。

 

 

この世界でずっと孤独だった自分に、そんなものなど有り得ないだろう。心地がいい闇の中でそう断じたキラは口を裂いて嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

「──ラァッ!」

 

 

「クッ、…………このガキがッ!!」

 

 

鋭い拳を剣へと叩き込んだユウヤにゼールスは剣を持ち直し吼えながら斬りかかった。

 

 

しかし、簡単に受ける訳もなく、ユウヤは地面を踏みしめると回し蹴りをゼールスの顔へと放つ。慌てたゼールスが変異した腕で強引に反らす。

 

 

何とか攻撃を回避したゼールスは轟音につられ、目を向ける。

今もなお、破壊を繰り返す闇の巨人を見て、ゴギィ!と歯軋りをした。

 

「守護者どもめ…………一体何をしている!?人間よりもあのデカブツの方が危険だろうがッ!」

 

 

統括者の考えは納得できるものだ。今は少ししか動かない闇の巨人だが、もし暴れれば柱どころか聖杯も破壊されかねない。

 

 

それだけはいけない、絶対に。己の望みのためにも、許してはいけないのだ。

 

 

「──五君帝(フルガール)!!あの巨人を集中攻撃しろ!奴は優先対象だ、目の前の状況よりも優先して動け!!」

 

 

長剣を杖へと変形させ、杖の先にある小型の宝玉にそう怒鳴った。無線のように使っているのかもしれない宝玉からは返事がなかった。

 

中々返事が返ってこない事に苛立つゼールスは杖を砕かんとばかりに力を入れた。

 

 

「…………どうした!?返答しろ、聖杯を護るのが貴様らの役目だろう!!命令に『───ぇ』…………何?」

 

 

宝玉から聞こえてきた声に眉をひそめる。蚊の鳴くような小さい声がした宝玉に怪訝そうに耳を近付け──

 

 

 

『────うるっせぇッ!!!』

 

 

鼓膜を破壊しかねない声が統括者の耳を叩いた。耳に近かった為、咄嗟に宝玉を落としそうになり慌てたゼールスは自身の耳を疑った。

 

 

………今、我に逆らったのか?

 

 

彼の、ケイオスたちの『統括者』の中心が警報を鳴らす。自然と剣を握る腕が強く音を立てるが、そんなこと関係なしに声は響いた。

 

 

『ンなことたぁ、どうだっていいンだぜ。……だってよぉ、今、俺は楽しみなンだよ!!もっと、勢いよく暴れられる………真剣に闘えることがさァ!』

 

 

ビキ、ビキビキビキと額の青筋が浮き出る。

全てが自分の思い通りにいくとは思ってなかった……だが、何故───。

 

 

『……其の力を見破るだけではなく、援軍が来るとは……これが闘いというものか』

 

 

『いやはや、本当に、実に、興味深い!だからこそ、人間には興味が尽きないのだよ。何時でもね』

 

 

『──待ッッちなさい、貴方たち!何処にいようとまとめて捕まえてあげる!だから覚悟してなさいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 

戦闘(数人は明らかに違う)をしている他の三人の声を聞こえるが、最後の一人の声だけがなかった。最後の一人はリーダーの黒騎士、奴だけは逆らいはしないな、と断じて頭を軽く押さえる。

 

 

──だが何故だ、何故こんなにも…………。

 

 

「自分の思い通りにいかない……か?」

 

 

心を読んだように、ユウヤが紡いだ。さっきから上手く戦い続けている彼を、苛立ちを隠さずにいるゼールスは双眼で睨みつける。

 

 

「いくわけがないさ、誰も信用しないお前の計画なんて。そんなもの」

 

 

「…………ガキが。貴様の言う仲間とやらが守護者たちを討ち果たすとでも言う気か?」

 

 

ゼールスは嘲るように捲し立てる。しかし、それを聞いたユウヤは「そうさ」と告げる。

 

 

突然の事にポカンとした顔のゼールスに向けて、ユウヤは拳を地面に打ちつける。ミシィ!と拳の骨が軋むが、それを無視して続けた。

 

 

「そうすると俺は信じてる。ちっぽけだと言われても関係ない!あいつらがこんな程度の障害に膝をつく訳がないって!どんな敵だろうと打ち倒す!俺もやるんだ、あいつらもやるさ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この場の全てを遅くさせたスロウは短く嘆息する。目の前にいるのは、斑鳩、叢、そして叢の秘伝忍法である狼の【小太郎】と【影郎】。彼らはスロウの『遅速』の効果を受け、その動きを制限されていた。

 

 

「ッ………秘伝忍」

 

 

「させると思うのか」

 

 

自らの秘伝忍法を発動しようとした斑鳩にスロウは冷静に対処する。彼女が抜こうとした飛燕の横に剣を叩きつけ、数メートル先に弾き飛ばした。

 

 

すぐさま叢が鉈と槍を用いてスロウに攻撃を仕掛ける。兜の目のようなラインの光が叢へと向けられ、動きが目に見えて遅くなった。

 

 

「ぐっ…………がは」

 

 

「叢さん!」

 

 

般若の面が二つに割れ、無防備な体に蹴りを入れられた叢が吐血した。斑鳩は彼女の意図を理解し、弾かれた愛刀 飛燕を取りに走る。

 

 

しかし、スロウにはその様子を黙って見逃す気など更々もない。すぐに追いつき、斑鳩へと一太刀浴びせようと構えた─────直後、

 

 

 

「ご、おおおおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

左腕に走った激痛にスロウは吼えた。首を向けると、自身よりも大きい狼が左腕の鎧に噛みついていた。

 

 

「…………よく……やった、【大五郎】」

 

 

ビキビキと鎧に牙が食い込み、スロウは兜のラインを発光させ、【大五郎】の動きを遅くするとそのまま振り払う。

 

 

グシャッ! と勢いにより噛みつかれていた腕が宙を舞った。痛みを振り切り、スロウは言葉を紡いだ。

 

 

 

「『世 界』 最 大 ま で 遅 速 せ よ」

 

 

 

全てが、遅くなった。愛刀を手に取った斑鳩も吹き飛ばされ地面に突っ伏した叢も遠くにて巨人に破壊される世界も。

 

ただ一人、甲冑の剣士は腕の喪失した左肩を、そして周囲を見回した。

 

 

(………………どうする)

 

 

スロウは遅くなる世界で思考をフル回転させる。今斑鳩は宝刀を鞘に仕舞い、構えをとっている。抜刀術の構え、それに対するスロウの対抗策は二つ。

 

 

この極限まで遅くなった世界で彼女を斬るか。

 

 

時間の早さを戻し、攻撃を行う彼女を剣ごと切り伏せるか。

 

 

(…………剣を、砕く)

 

 

考えた末に、スロウは後者をとった。五君帝(フルガール)としではなく、ただ一人の剣士として。

 

 

(何の力だろうが関係ない、其の剣で切り伏せるのみ!)

 

 

そして、遅くなった世界が元の動きを取り戻す。それと同時に斑鳩の後ろに移動する。そして右手に握った刀剣を振り上げた。

 

 

 

(終わりだ………!)

 

 

自然と不敵な笑みが溢れた。斑鳩が振り返り、再度攻撃をしようが関係ない。混沌の刃を前に何の力を持たない刀がどうにもできる訳がない。

 

 

 

───筈だったのだ。

 

 

バヂィッ!! ガキィン!!

 

 

「───なっ!?」

 

 

だが、現実で起こった出来事は違った。斑鳩を刀ごと切り裂こうとした重力の刃は刀により、防がれていた。

 

 

(……………馬鹿な)

 

 

 

(馬鹿な、そんなことは有り得ん!其の『遅速』の力を打ち消すどころか其の剣に反応した?そんなことがあるものか!!)

 

 

内心激しく混乱するスロウだったが、彼は知らなかった。

 

 

スロウは、一度でも目に入ったものを対象として、どんなものをも遅くさせることができる。だが、その力には欠点、誓約というものがあった。

 

 

スロウが遅くした分だけ、それなりの修正が入る。つまり最初に斑鳩の感覚を遅くさせた時の修正により、彼女はスロウの剣を読むことが出来たのだ。

 

 

そんなことに気づくこともなく、相手を斬ってきたスロウもそれを体験した斑鳩もその事に気づくことはなかった。

 

 

「絶・秘伝忍法、絶華鳳凰閃ッ!!!」

 

 

「──覇王重断絶斬ッ!!!」

 

 

 

炎のような蒼い光を帯びた刀と惑星を動かす重力を帯びた剣が交差する。それだけだった。音もない、武器に宿った光が消失し、周囲に四散する。

 

 

 

「…………………フッ」

 

 

ビシッ、ビシビシビシと二つのものに亀裂が入った。一つはスロウが右手で握る刀剣。そして、もう一つは──

 

 

 

「見事だ」

 

 

ガラスの割れる音と共に全身の鎧に大きな亀裂が出来る。スロウの体がグラリと横に揺れるが、踏みとどまった。

 

「なるほど……………貴公らは『それ』は其より強かったのだな。それならば負ける訳だ」

 

 

まだ立つのか、と驚きの表情を浮かべる斑鳩の前でスロウは刀剣を振りかぶり、斑鳩ではなく、彼女の後方にある巨大な柱を斬った。

 

 

キレイサッパリに切断された柱が崩れ落ち、ヒビの入った鎧をスッと撫でた。失笑の色を含み、完全に砕けた剣を地面へと放り捨てる。

 

 

「いいんですか?……それは貴方の守るべきものでは」

 

 

「生憎、其はそこまで聖杯に執着などはないのでな。君たちのような者の剣を受けただけでも満足した」

 

 

アッサリと告げるスロウに斑鳩は少しの間警戒したが、それは無用だと感じ、甲冑の剣士を目を向ける。

 

 

瓦礫に背中をかけるスロウの兜が、嬉しそうに笑ってるように見えた。

 

 

 

「お面が…………………あっ、すみません!見ないでください!見ないでください!我の汚ない顔を見ないでくださいぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

 

「…………何がどうしたというのだ?あの娘は」

 

 

ひたすら顔を隠そうとする叢にスロウが困ったような様子で(兜なので顔は見えないけど声からして分かる)斑鳩に疑問を投げ掛ける。

 

 

そうされた斑鳩はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

 

 

────五君帝(フルガール)スロウ敗北、残り四人。聖杯の柱、残り四本。

 




五君帝(フルガール)の一人、スロウの敗北です。


スロウの敗因はどちらかと言うと、強敵との戦いが少なかったことです。

そのせいで自身の力の欠点について上手く把握できてなかったことにあります。


まあ、本人も満足そうなんで、そこんところは納得してくださいお願いします(土下座しながら)

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