閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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一週間以上、期間を空けていた事を、この小説を気に入ってくれている方や読んでくれている方に謝罪します。本当に申し訳ありませんでした。


下手なものですが、うまくなるように努力していくのでよろしくお願いします。


五十九話 絶体絶命

「闇の力もよく馴染んできたし、そろそろ本気で暴れるとするか」

 

楽しそうな笑みを浮かべ、『Dark matter』を動かすキラ。脚を失った巨人は何故か宙を浮遊し、空から辺りを見下ろしていた。

 

 

「そんなことさせませんわ!」

 

 

キラの行いを止めようと詠は跳躍する。大剣を振るい、少しでも動きを抑えようとしていた。しかし、キラは一瞥もせずに手を払う。

 

 

そして、その一撃は防がれた。

キラではない、第三者の手によって。

 

 

それは黒一色だった。

闇のような漆黒の鎧を纏い、背中から四本の昆虫の脚のような刃を生やしている存在。

 

その乱入者は、今のキラと同じ容姿をしていた。

 

 

「おいおい、何を驚いている」

 

彼女たちの反応が見ていて楽しいのか、キラはニヤニヤと笑いながら腕を組んでいた。

 

 

「貴様らの相手をしている俺様は闇の王だぞ?この世界全ての悪意を含んだ王が、数で押しきれるば勝てる─────その程度のものかと思ったか?」

 

 

そう言ったキラが両手を広げる。腕から闇がこぼれ落ち、粘着性のある液体となって地面に染み付いた。

 

液体が闇となり黒となった時、キラが腕を動かした。勢いよく両手を合わせ、詠唱する。

 

 

「『Darkness Phantom Avatar(闇の幻影分身)』」

 

 

ドロリ、と黒が形を作る出来上がった七体が闇の中から音もなく出現した。合計八体、キラが闇から作り出した存在。

 

それらは全て、同じ姿をしていた。

 

「分身とは言ったが、偽物じゃあないぞ?血も流れてるなら脳ミソもある。思考がない状態だが、俺様の考えを理解して動く」

 

 

意志を持たずに命令だけを実行する肉体を持った分身体。機械のように起き上がったそれらは、無機質な仮面を向けた。

 

 

「貴様らの行動パターンは既に補足済み。ソイツに一体ずつ抽出、最適な能力を書き換え(インプットし)ている」

 

ガシャッ!と駆動音を響かせ、分身たちは同時に動いた。空高くに跳ぶと紅蓮と焔、雅緋から離れた詠たちを囲むように着地した。

 

背中の刃が開かれ、何時でも襲いかかれるように構えを取り始める。円陣を回りながら、相手を逃さないように。

 

「お前ら!」

 

「………クッ!」

 

 

そうはさせないと焔と雅緋が駆け出した。紅蓮も同じように走り出そうとしたが、すぐに脚を止め二人の腕を掴んでその動きを止めさせた。

 

 

何を………!と抗議しようと振り返った二人の前を熱線が横切った。

 

 

そんな事が出来るのは、この場で一人しかいない。

 

 

「おっと待てよ。貴様らの相手は俺様だろうが」

 

 

煙を吹いた剛腕を下ろし、『闇王の鎧(Dark Matter)』の上でキラはやれやれと首を振る。

 

 

「やるしかない………………二人とも」

 

紅蓮は変なマスコットのようなフードを深く被り、刀の束を握る。そして、隠れた目を後ろにいる二人に向け、アイコンタクトを取った。

 

 

二人も自身の武器を手に取り、その姿を変化させる。焔は『紅蓮の焔』に、雅緋は『深淵の雅緋』に。

 

 

万全な力を見たキラは身をよじった。先程光線を放った腕を含めた六つの砲口、胴体に取り付けられた四つの砲台、合計十の砲がエネルギーを充填し始める。

 

 

「まぁ、本気で潰しにいってやるから……………簡単に死んでくれるなよ?」

 

 

文字通り、一撃でも当たれば即死の弾幕が迫る中、三人は鎧を纏ったキラに突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その場に着いた飛鳥たちが見たのは、荒れ果てた惨状だった。激しい戦闘により、巨大なクレーターや痕が出来ている。

 

そしてもう一つ、

 

 

姿が異様に変化したゼールスと相対しているユウヤの姿だった。

 

 

ユウヤはボロボロの状態だ。体の至るところに傷ができ、血で汚れている。骨は何本折れているか分からない、いつ倒れてもおかしくなかった。

 

それでも、ユウヤは限界に近い身体を動かす。

 

口から血を吐きながらも、拳を握り締める。その直後、鋼鉄を纏ったラッシュを繰り出した。

 

 

対するゼールスは無表情、何一つ感じてないような空虚を抱きながら、立ち尽くしている。

 

それなのに、ユウヤの連撃は届かない。正面出現した半透明な障壁が全ての攻撃を無力化していた。

 

 

「うっ、らぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァッッ!!!」

 

 

地を砕くように力強く踏みつけたユウヤは叫びながら電撃と砂鉄を纏った腕を振るう。空気中で混じりあったそれらは電気の(あぎと)と化し、ゼールスへと向かっていく。

 

 

脅威と認識したのか、ゼールスは両腕を向ける。何とか防ごうと、再度半透明な障壁が張られる。

 

 

───押し勝ったのは、ユウヤの方だった。

 

 

「がっ、ばああぁぁっ!?」

 

ゼールスが呻き声をあげ、辺りに赤黒い血を散らした。

 

見れば、肘から先にあるはずの右腕と左腕が消失し、空中に二本の腕が舞っていた。

 

ユウヤの一撃が通った。強固とされたゼールスの障壁を打ち破り、大ダメージを与えることに成功したのだ。

 

だが、おかしかった。

ユウヤの攻撃を受けて、両腕を失ったゼールス。

 

何故か口を裂いて笑っていた。腕の痛みを味わっていながら、その笑みは嬉しさに染まっていた。

 

そして──────

 

 

 

ズンッ!!! と鼓膜に響くと同時に、彼の攻撃は終わっていた。

 

ゼールスの目の前、直線の方に半透明な一撃が貫いている。瓦礫の山だろうと、残骸だろうと関係なしに穴を空けていた。

 

読み取ることができない一撃は、音もなく消失した。

 

だが、忘れてはいない。ゼールスは目の前に攻撃を放った、その目の前にいたのは一体誰か────

 

 

「─────────────ご、ぶ」

 

ゴボリ、と口から赤黒い液体がドロリと吹き出る。グラリと揺れたユウヤの胸の中心は、ポッカリと削られていた。心臓があるべき場所を消し飛ばされ、ユウヤは膝をつき崩れ落ちた。

 

 

「…………障壁は守りだけではない。相手を殺すことにも使えるのだ。理解が及ばなかったな、人間」

 

 

両腕を失ったゼールスが豪語し、何かを囁く。すると切断された部分から黒いオーラが膨れ上がっていった。そして、集合したオーラが肉体となり、元通りに戻った腕を見せたのは数秒後のことだった。

 

 

「心臓を潰した。死は免れられんが、念を入れて置こうか」

 

ユウヤとの戦闘での傷をもろともしないのか、ゼールスはただ平然としていた。再生したばかりの腕を持ち上げ、ユウヤの方に向けた。

 

 

 

 

「………………ぐ、ば」

 

 

ズドォッ!!!!!と再び震動が走り、目の前が消し飛んだ。

 

何が起こったか、飛鳥自身もよく分からなかった。

 

 

空高くから落下してきた障壁。

 

それが先程の攻撃の正体、ゼールスが操る空間の力。何重にも束ねられた隕石にも及ぶ程の一撃は、ユウヤをいた場所ごと押し潰した。

 

 

彼の姿は、もう何処にも見えない。

 

 

「───ンフフ、クフフッ、フハハハ!ハーッハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

ゼールスは嬉しそうに高笑いを響かせる。両腕を広げ背中を曲げながら、彼は玉座に脚をかけた。

 

そんな彼には飛鳥たちは見えてはいない。当然だろう。今の彼にはどうでもいい、興味など起こらない些事に等しいのだから。

 

 

「これで邪魔者は消え、我が神はついに目覚めた。もう誰も、我を止めることはできん!」

 

 

上空を見上げれば、宙に浮かぶ聖杯があった。その表面に、4つの紋様が光と共に浮き出た。

 

それが先程見た、他の五君帝のものだと。アルトリウスが説明したのを、飛鳥と雪泉は聞いていた。

 

 

「そうだ、この世界に思い知らせてやるとしよう──────新たな世界の支配者である、このゼールスの存在をなぁ!!!」

 

 

───■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!

 

世界そのものを軋ませ、崩壊させると錯覚するような不協和音を雄叫びのように響かせる聖杯。鮮血のような赤色の滲んだ、白と黒の翼が世界を塗り潰すように広がっていく。

 

聖杯という最悪の切り札を手にした統括者は両手を振るい、その力を思う存分に振るう。

 

 

絶対絶命。

ゼールスが言った通りだった、飛鳥も雪泉も自分たちが勝てるとは思っていない。そして、唯一彼に届きうるかもしれないアルトリウスは片腕を失い、思うように戦うことはできない。

 

 

「ユウヤくん…………」

 

 

膝をついていた飛鳥はその青年の名が、一滴の涙と共にこぼれた。

 

 

 

直後、血の色に染まった天空に一つの星が煌めいた。

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