『どうした?そんな顔をして』
声を聞いて、硬直する。その声に視線を向けると、女性がいた。大人のようなスタイルをしているが、子供みたいな雰囲気をもった人物。
その人を見て、ユウヤはポツリと呟いた。見知っているその人物の正体を。
「………………師匠」
聞こえるような声であったのにも関わらず、彼女は反応しなかった。おかしいと訝しむユウヤはとある結論に至った。
─────違う、現実ではない。夢なのか?
そう思っていたユウヤは師匠の前にもう一人いることに気づく。彼女に弟子入りした黒髪の少年、そう昔の自分。
『ししょー、僕は強くなりたいです』
『……』
『あの日、みんながいなくなりました。あんなことが起きないように、僕みたいに悲しむ人がいないように』
…………そうだ、そういう理由で俺は戦ってきたんだな。今まで、あいつらに会ってからも。
そう考えてた途端に、それは起きた。
『ほーい』
『イタッ!え、え!?』
……何か今チョップされたよな?されたよな!?
突然頭に手刀を叩き込まれ、混乱する過去と現在のユウヤ。頭を抱え悶絶するユウヤ(過去)に師匠は呆れたように指摘する。
『まったく、急いでばかりだと何も見えないぞ?止まるのも大事だ、大事なものを見落とさずに済むからな』
『そんなこと言う為にチョップしてきたんですか!?』
不服を漏らす少年期のユウヤに笑って誤魔化そうとする師匠。
前に聞いた言葉。当時の自分はよく分からずにいたが、今聞いてみれば、理解できていく気がする。
俺がこの力を授かったのは、誰かを守るべきだとずっと思っていた。だからこそ、生き延びたあの災厄から。
だが、違った。
結局、そんな難しい話ではなかったのだ。答えは目の前にあった、焦っていた自分にはそれが見えなかったんだ。
それを知ったのなら、行かなければいけない。待たせる訳にはいけないから。
「────師匠、行ってきます」
彼女の横を通った時にそう囁く。自分に言い聞かせる為、心を強く持つ為のものだった。
『あぁ、行ってこい。ユウヤ、私の最愛の弟子』
聞こえている筈がなかった。答える筈もなかった。だが、確かに耳にした。振り返ろうとしたが、踏み留まる。戻らなければいけない、進まなければいけない。
優しく肩を押されるのを感じながら、脚を進める。
歩いた先には、眩い光が差していた。ここを通れば、戻れる。また戦うことになるだろう。
「───待て、答えを得たか?」
ユラリと前に立った影がそう問いかけていた。突然の事に一瞬驚くが、その意図を理解する。
生半可な覚悟で行かせない。そういうつもりだと察し、彼は言葉を紡ぐ。
「いや、まだだ。俺はよく分かってない」
「俺が助けたい、俺が守りたい、これからそれだけの理由で戦う。使命だから救うんじゃない、救いたいから救う、それが俺のやり方だ!!」
言葉を聞いた影が揺れる。何を感じたのか分からないが、フッと笑うとそのまま引き下がった。
「───そうか、ならば行け。時間は少ないぞ」
分かってる、そう告げて光に向かっていく。迷いはなかった。彼自身は気付いてないが、既にその答えは得ているから。
「………………?」
ピクリと誰かが顔を上げた。
その人物、アルトリウスは何かを感じた。何も出来ずにいる飛鳥と雪泉も続いて反応する。
ゼールスは気付かない、邪魔者を消せたのがそこまで嬉しかったのか。まだ哄笑を響かせていた。
雷が、落ちた。
ズッッッドォォォォンッ!!!!
あまりの衝撃に大地に激震が走る。見たこともないくらいの大きさの雷が近くに落ちただけ、そう思うべきだろう。
雷の落ちた場所に立つ人影を見なければ。
「─────────────は?」
高笑いが止まる。この場を支配していたゼールスが、唖然としていた。目にした、目にしてしまったからこそ、声が出ずにいるのだ。
ズンッと、地面を踏みつけた彼の体には電気が帯電していた。いや、電気というには強すぎる。正確には、『雷電』だろう。
バチッ、バチッ!と唸る音の中で、彼は言葉を口にしていく。
「異能『雷神』…………神化覚醒、
金属で出来た機械のような右腕と左脚、赤色のマフラー、前より長くなり所々が白く染まった黒髪、後方に漂う金属の刃、
それらの特徴をした青年、天星ユウヤは煙の中から姿を現した。
ザッ!と立ち尽くすユウヤは傷を一つも負ってない。それどころか、無傷とも言ってもいいだろう。絶句しているゼールスを見据え、彼は指を向け啖呵を切った。
「第二ラウンドといくか、統括者。勝ってばかりもつまらないだろ?」
「────いいだろう」
敵意にも似た重圧がこの場にいた全員にのし掛かってくる。無表情となったゼールスの口がブチブチと裂け、恐ろしいくらいに冷たい声が漏れていた。
「力が覚醒した?強くなった?それが何だ、だからどうした。その程度のもので我が、統括者を打ち倒せると思ったか!?」
「見くびるなよ!我は支配者だ!人を、忍を、妖魔を、混沌を、神そして世界をも支配する者である!!絶望しろ、我という災厄を前に!!!」
ごっ!! と空気が振動する。血のようなオーラを全身に帯びたゼールスは力の限り振り上げた腕を───叩きつけた。
先程と同じように、障壁が上空から降り注いだ。流星のような質量の一撃を前にユウヤは動じない。
そんな彼に真上から障壁が叩きつけられる。
だが、変化は起こらない。障壁が地面を押し潰すことはなかった。
「──『
青白いエネルギーが肉体に通り、半透明なそれを鋼鉄の腕で掴む。ビキビキビキと五本の指を食い込ませ、手の中に歪ませていく。そして腕を振るい、障壁をガラスを砕くかのように破壊する。
「なにっ!?」
絶対不変の一撃を打ち消され、ゼールスは慌てる。彼が身構えた時には周りに散ったガラス片に隠れ、その姿を消していた。周囲を見渡すがその姿は見られないのだが。
ズッと地面を擦る音。それを耳にしたゼールスは目を下に向け、言葉を失う。ゼールスの視線の先には───
懐にまで迫り、拳を構えたユウヤがそこにいた。
「『
言葉と共に、後方に浮遊していた鋼鉄の刃が解離し、そのパーツが腕に装着される。まさに鉄槌に相応しくなった一撃が、ゼールスの顔面をぶち抜いた。
フルスイングの勢いが重なり、瓦礫の山に吹き飛ばされるゼールス。崩れる瓦礫の中からゼールスは姿を見せる様子はなく、次の行動を起こす。
文字通り、空気が突っ込んできた。
姿を見せないゼールスによる障壁弾を放ってきたのだ。挙動を見せない不意打ちとも取れる一撃にユウヤがとった行動は単純なものだった。
雷電を帯びた機甲の腕を払い、障壁が粉砕する。無数の破片が周囲に散る前に彼の雷撃を浴びて消失する。
「………ユウヤくん」
「………すごい」
飛鳥と雪泉はその圧倒的な力に驚愕する。
「彼が、人が、ここまで戦えるとは……………」
片腕を失った騎士アルトリウスはそう呟く。人を救うためにと願っていた彼だったが、彼の姿を見て何かを感じたのか、自分の片手を見下ろしていた。
ドゴォンッ!!と瓦礫を薙ぎ払い、ゼールスが起き上がる。全身に赤黒いオーラを纏い、彼は無表情ながら的確にユウヤの力を言い当てる。
「………それは、神の力。人には過ぎたものを、そこまで行使できるとは」
不愉快そうに鼻を鳴らし、オーラが消えていく。そうして現れた彼の姿は治っていた。全快ではないにしろ、完治するのは時間の問題だ。
「だがそれだけだ。神ごときの力で支配者に勝てると思うか?世界を支配するこの我に」
「………………前から気になってたんだが、
お前、何で支配者になろうとしてるだ?」
「はぁ?」
心底おかしそうにゼールスは眉をひそめる。そして、くだらないと言わんばかりに溜め息を吐く。
無視することにしたゼールスにユウヤは更に続けた。
「統括者になって世界を支配するって言うけど、さっきからよく分からないだ。そこまでやる理由が、お前がそこまでしたいと思う理由が」
ギチリ、と。
何故かその言葉がゼールスの中に疑念を抱かせた。理由、支配にこだわる理由。言われてみればそうだった、一体どれほどの理由があったから、支配を望んだのだろうか。
普通なら分かるはずのそれが分からない、そんなゼールスは突然起きた頭痛に頭を抱える。
『どうしたの?貴方一人?』
声がした。前にも聞いたことがあるような声が。
目を開くと、景色が変わっていた。自身のいた世界が相対していた青年ごと消え、別の世界へと変わっている。
彼の目の前で、一人の■の少女がそう声をかけていた。少女の目線の先にいるのは、少年。
『…………………?』
ボロボロの姿をした彼は、この世全てに絶望したような目で少女を見上げていた。
───景色が変わる
『■■くん。私ね、■■■になる。皆が幸せになれるように』
『………………?……、………』
笑顔を浮かべながら夢を語る■の少女に、少年■■は静かに聞いていた。
『ありがとうね。私も頑張るから、■■くんも見ててね』
駄目だ、駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ─────
興味の無いはずなのに、心の奥から見たくないという感情が溢れてくる。
「理由など、ない。必要ない」
それ以上、見ることを拒絶した。関係ない、訳の分からない記憶より、自分が果たすべき事だけが重要なのだ。
「我は統括者ゼールス。混沌より生み出された異形、ケイオスの王。この世界の全てを支配する、邪魔はさせんぞ!!」
「………………………そう、かよ」
ユウヤは拳を握り、憐れみの目を向ける。まるで自分の心中を見透かされたような態度にゼールスは腹が立つ。
「だったら止めてやるよ、テメェの野望とやらを。そして、教えてやる。俺たちの生きる世界が、そんな簡単に支配されるもんじゃねぇってなぁ!!」
ユウヤの叫びにゼールスは否定しようとして、また頭を抱える。まただ、さっきから頭痛がする。分からない謎に困惑しながら、ゼールスは決めた。
目の前にいる敵を潰す、確実に。
「────やってみろよ、人間風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァ!!!」
「人間を、俺たちを舐めるなよ!!統括者ァ!!!」
吼えたゼールスが自らの血液を弾丸のように飛ばし、それに応えたユウヤが同じように雷撃の武器を作り出す。
そして、跳躍した数秒後に、雷撃と混沌が激突する。互いの望みの為にぶつかり合う。
一人は全てを支配下に置くためだけに、一人は守りたい人たちを守るためだけに。
それだけの理由で彼らは戦う。望みを叶えるのに、大した理由なんて必要がないから。
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