閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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手書きイラストは下です。よろしくお願いします!


六十一話 炎獄王

圧倒的、それが三人が抱いたキラとの差についてだった。

 

どれだけ強力な攻撃を浴びせても、コンビネーションを合わせて攻撃しても、キラ本人と鎧はすぐに回復していく。ジリ貧、そう言うしなかい状況に、「二人とも」と紅蓮が声をかけてきた。

 

「詠たちのところに向かってくれ、あいつは俺が倒す」

 

「なっ!…………無茶だ、私たちでも勝てるか分からないんだ。お前だけが戦っても、意味がないだろ!」

 

雅緋の抗議に紅蓮はそれ以上答えない。その様子を静かに見ていた焔は、紅蓮に聞いた。

 

「…………やれるのか?」

 

「あぁ」

 

「…………………分かった。行くぞ、雅緋!」

 

それだけ言うと焔は雅緋を連れて走っていく。見届け終えると、キラとその鎧に相対する。

 

同じく黙って見ていたキラは高笑いを響かせ、紅蓮に対して声をあげた。

 

「倒すとは、豪語したなぁ!だが、貴様がどうやって俺様を倒すと言うのだ!?」

 

「こうやって、だ」

 

刀を地面に刺し、紅蓮は目を閉じる。長い沈黙にキラは眉をしかめるが、ようやく口を開いた。

 

 

「──造られし肉体に宿る原初の炎よ、我が意思に答えよ。肉体を薪としてくべ、煉獄の業火で世界を包め。

 

 

 

 

モード、炎獄王!!」

 

烈火の嵐が紅蓮を包み、周囲に火を撒き散らす。そして、その中から人影が動き出した。

 

 

灰色の髪に蒼い瞳、炎の如くに赤い服装。そして、地獄の炎を体現したかのような大剣を片手に構えている。

 

あまりの気迫に慌てたキラが手を振り上げ、鎧に攻撃をさせる。六本の腕から極光のレーザーを放つ。

 

姿を変化させた紅蓮は立ち尽くす。そのまま大剣を横に振るう。

 

ズザンッ!!!

 

 

「なッ!?──────コイツ…………!!」

 

キラは驚愕する。無敵と自負していた一撃が斬撃で突破され、鎧に大きなダメージを与えられた。言葉が出ないキラだが、それは目の前の出来事にではない。

 

彼は最初、紅蓮を見ていた。そして互いの目が合う、

 

 

蒼い瞳の奥に────ナニかを見た。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、俺様の鎧に傷を付けるとは。少しばかり、見くびっていたかもしれん。貴様の炎は俺様の闇を打ち消す、この事実は飲み込むべきだな」

 

巨人の外装が破壊され、怪しく渦巻いた黒い闇が隙間から覗いている。そして、前と同じく闇が破壊された箇所を包めば、元に戻っている。

 

「その上で一つ聞かせろ──────貴様は何だ?」

 

先程までの余裕を全て捨て去り、キラは問いかけた。瞳の奥に見えた、自分の言葉では説明不可能な存在。

 

彼の問い掛けに紅蓮は首を傾げる。そして、平然と答えた。

 

「俺は俺だ。他の誰でもない」

 

「………そうか、ならいい。それにしても、厄介な炎だな。貴様のそれは」

 

少し不服そうなキラだが、嘘をついて無いことは分かるので、引き下がっていく。

 

 

そして、一転。紅蓮に冷たい視線を向け、もう一つの事実を指摘した。

 

「だが、それも制限がある。例えば、莫大な火力を出すには相応の生命エネルギーを変換なければいけない、とかな」

 

直後、紅蓮は膝を付き大量の鮮血を口から吐いた。ビキビキと身体中の血管が悲鳴をあげる中、声をあげることなく紅蓮は言葉を発することはなかった。

 

 

「無謀なものだ。貴様の体は人とは違う、故に炎に耐えきれていない。同情するよ」

 

地面に大量の血を吐く人に似たモノを見下ろし、キラはそう憐れんだ。

 

地面を引っ掻くように起き上がった紅蓮は口を拭い、大剣を掴む。自身の血で出来た池を踏み締め、噛み砕くように告げる。

 

 

「────陽炎獄魔王剣(レーヴァテイン)、解凍」

 

ジュッ!と血の池が沸騰し、蒸発する。紅蓮、そして彼の持つ大剣が激しい熱と火を帯び始めたのだ。

 

 

「一気に押し切る気か。分からなくもない、それが最適解だ。

 

 

 

だから俺様もそうする」

 

 

高らかと宣言し、キラは指を鳴らす。

 

巨人は六本の腕を広げると円を作るようにしていた。全ての腕が回転し、ガチリという音と共に動きを止める。

 

そして、今までの倍以上のエネルギーを光として、砲口から見せつけていた。

 

「装填開始。有限(リミット)無限(インフィニット)、全ての因果は輪廻する」

 

 

詠唱と同時に互いのエネルギーが増幅していく。そして、対立する相手を睨み、自らの力を解き放った。

 

 

「灰燼も残さず───焼き払え、神魔焼却・閻魔=零式!!!」

 

「『THE・ZERO(ゼクード・エレメンタル・ロスト・オウルガーン)』!!!」

 

 

紅蓮は魔剣を振るい、灼熱の業火を放つ。対してキラは自身の中にある全てのエネルギーを収束し、破壊の一撃を今までのとは比較にならないビームにして放出する。

 

 

互いの最強の攻撃は一瞬だけ均衡する。しかし、一瞬だけ。二つの光はぶつかり合い、一気に縮小する。

 

そして、

 

 

 

 

 

その場を中心とした、辺りを巻き込むほどの大爆発が起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ………………」

 

「俺様の勝ち、貴様の負け。勝敗は決まったようだぞ?」

 

宣告と共に、片手で敗者を持ち上げながら、勝者は爆発の中心に立っていた。だが、キラも軽傷ではない。身体中ボロボロになり、彼の切り札だった鎧も既に破壊された。

 

だが、関係ない。勝ったのは自分なのだから。そう思い、キラはニヤリと微笑んだ。

 

 

「少し………教えて、やろう………か?」

 

「…………………聞くだけ、聞いてやろう」

 

すぐに殺されかねないこの状況で、紅蓮はそう聞く。その度胸にキラは呆れるしかなかったが、紅蓮の言葉に耳を貸す事にした。

 

 

「さっきの………爆発だけど、皆はどうなったと思う?」

 

「消し飛んだ───それ以外無いだろう。生身で受ければ即死は間違いない」

 

「……………ハッ」

 

平然と告げたキラに紅蓮は鼻で笑って見せた。不愉快そうに眉をしかめ、首を絞める手に力を入れる。苦しそうに呻いた紅蓮はゆっくりと片手で指差した。

 

 

その様子におかしく思いながら、キラはその差された先を見る。

 

 

爆発で発生した煙の隙間から見えたのは、起き上がった焔と雅緋の姿だった。

 

 

 

「は……………、なぁッ!!?」

 

混乱したキラの視界の隅に更にもう一つ見える。自身の分身たちと戦っていた筈の詠たちと忌夢たち。彼女たちは傷を負っているが、誰一人として瀕死の重体などではなかった。

 

 

「馬鹿な……なぜ誰もやられていない!? ……どうなって、あれだけの衝撃を受けて全員無事でいられるはずが」

 

「………………それだけ、じゃないだろ。よく見てみろ」

 

時間が経ち、視界を遮っていた煙が晴れていく。それにより、キラはもう一つの存在を確認した。

 

キラの分身たち、彼が闇から作り出した分離体。邪魔と認識した少女たちを排除するために戦わせていた十体の個体。

 

その彼らが、敵であるはずの彼女たちの前に立っていた。まるで、身を挺して衝撃から庇ったかのように。

 

 

「馬鹿な……そんな馬鹿な!何故、そのような行動をする!俺様の分身ども!有り得ない、何時そのような命令を下した!?」

 

「まだ、分からないのか!?」

 

混乱するように叫ぶキラに紅蓮は睨み付けるながら首を掴む腕を掴み返す。

 

 

「さっき、お前も言ったじゃないか………『分身たちは、俺様の考えを理解して動く』って」

 

「ッ!!」

 

そう、キラがどう言おうと分身体が彼女たちを庇った。その事実は変わらない。

 

 

「同じように言ったよな、誰も必要としてないって。仲間なんて思ってないって!」

 

「…………うる、せぇ」

 

「本当は、本心は違うだろ!彼女たちを仲間だって思ってるから!その心がお前の言う闇にも伝わったんだ!!」

 

「うるせぇって、言ってんだろうがぁ!!!」

 

表に見せた激情と共にキラは腕を振るった。掴まれていた紅蓮が吹き飛び、瓦礫に叩きつける。

 

紅蓮が起き上がるかどうかのタイミングで、腹に蹴りが入れられた。ボールのように転がっていく紅蓮にただひたすら、キラは殴る蹴るを続けるだけだった。

 

 

もう体力の残ってない紅蓮は避けることも防ぐことも出来ない。キラの猛攻を受けるしかなかった。

 

何度も殴り、蹴られ、地に伏した紅蓮の頭を足で踏み、キラは笑う。ようやく落ち着いたのか、息切れをしながら紅蓮を見下ろしていた。

 

「貴様は……生きてれば、奇蹟が起こるとでも思ってんのか?こんな影で生きる俺様たち異能使いや忍が、表で笑ってられるとでも思うのか?」

 

 

ゾワッとキラの全身から黒い靄が吹き出した。今まで見てきた闇とは違う───正真正銘、暗黒に染まった闇がキラの腕に纏わりつく。

 

その闇に触れた周囲の瓦礫が一瞬で消える、そこにあった存在が元々無かったと思わせる。

 

「ふざけんな!光なんて、希望なんて、そんなもの見れる訳ねぇだろ!惨めに影で生きるしかねぇんだよ!俺様も貴様も、全員だ!だったら、俺様たちが生きれるように!世界を染め上げてやろうじゃねぇかッ!!」

 

 

比喩などの優しさは無い、暴れ狂うようにキラは吼えた。地面に倒れ込む紅蓮に、闇を纏った手で触れようとする。触れれば、終わり、簡単に死ぬ……………だからこそ遠慮なく牙を剥いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それが普通だった、今までは。

 

 

「は?」

 

 

おかしな出来事が起きた。限界だと思われていた紅蓮が立ち上がり、キラの腕を掴んでいる(・・・・・・・・・・)

 

 

「…………う、ぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

文字通り、血を吐きながらの絶叫と共に紅蓮は腕ごとキラの身体を引き寄せると、振り上げた拳をキラの顔面に叩き込んだ。

 

 

バキッ!と音と共にキラはヒビの入ったバイザーから苦悶と驚愕の表情を見せる。





【挿絵表示】


ここに貼っておきます!

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