閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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六十五話 遠野の里

「なぁ、夕焼。遠野ってこっちで大丈夫なんだよな?」

 

「………は、はい………もうすぐで……入り口の、所へ……」

 

山奥の森を歩いていたユウヤは隣を歩く夕焼に確認を取る。戸惑いながらもそう言う夕焼の視線の先に目を向けると、何かの建築物のような物があった。

 

 

あれが、入り口? 思考するユウヤは眉をひそめていると、その門の方から何人か此方に向かってきていた。

 

 

背丈の大きな大人たち。彼らは顔を引き締め、それぞれの武器を持っている。その様子に夕焼は驚愕していたが、一々ユウヤも反応できる訳ではなかった。

 

 

まずは、喉元に感じるヒンヤリとした感じを対処するべきだと認識したから。

 

 

「随分と物騒なものだな。それはお前らなりの挨拶か?」

 

 

「黙れ侵入者。我々の遠野に入り込もうとしている事に気が付かぬとでも思ったか」

 

 

厳格な顔つきの男が低い声でそう言う。蛇の如くの鋭い眼光を向け、喉に鞘から抜いた刀を突き付けていた。

 

歓迎されてるとはお世辞にも言えない空気に、呆れたような態度のユウヤはその刀を片手で掴み取る。

 

 

「………ッ!」

 

周りの大人たちが戸惑い始める中、その男は違和感にすぐ気付いた。刃を掴んでいるであろう手は、明らかに肌が露出している。

 

なのに、何故血が出ないのか(・・・・・・・・・)

 

 

トリックは、意外と簡単なものだった。手の平に電気で集めた鉄を固め、そこだけを鎧のように守らせていた。だからこそ、ユウヤの手が斬れなかったのだ。

 

 

しかし、その事に黙ってない人物がいた。

 

 

「待って……ください…!」

 

 

慌てた様子で二人の間に入る夕焼はそう言う。突然の行為に男は顔を歪め、無言で彼女を睨み付ける。夕焼も少し戸惑いながらも、自分に何があったのかを彼等に説明した。

 

話を聞いた男以外の大人たちは安堵したかのように武器を下ろす。それを目の前の男も感じたのか、自身も刀と共に身を引く。だが、ユウヤに対して鋭い眼を向けていた。

 

「………我々は貴様を信じてはいない。怪しい真似をすれば即刻斬り捨てるつもりだ」

 

 

「好きにしろ………黙って斬られるつもりもないけどな」

 

 

ユウヤの言葉にフンッと男は顔を背け、他の武装した大人たちを連れて立ち去っていった。手首をブンブンと振りながらその背中を見ていたユウヤに、夕焼は

 

 

「……すみません、あの人たちは……この里の大人たちです。いつもは……あんな風に冷たくないんですが」

 

 

「分かってるさ。例の侵入者とかいう奴等だろ?」

 

 

夕焼はコクリと頷く。脳裏に思い浮かべたのは、先程の男たち。深紅のローブを着た仮面の男、そしてボウガンの青年。

 

だがそもそも、外界と距離を置いてるここの住人たちかたら、外の人間ほど信用できないものは無いのだろう。

 

 

 

「………にしても、ここが遠野の里か」

 

 

里の中に入り、その様子にユウヤは感嘆の声を漏らす。隠れ里というだけあって、中々の実力者たちが集まっている場所だった。

 

 

周りと比べると明らかに違う、大きな建物がある。何かの訓練の施設だろうか、そう思っていたユウヤは見た。

 

 

その小屋の入り口の方から歩いてくる人影が見えたのだ。その人物はユウヤの隣にいる夕焼を見ると、納得したように頷きスタスタと歩いてきた。

 

 

 

「うふふ、始めまして、天星ユウヤさん。半蔵様からの連絡を聞いてからお待ちしてました」

 

 

笑顔を見せるその少女に、ユウヤは何処となく何かを感じていた。そう、例えるならば………お金持ちのお嬢様みたいな感じを。

 

 

「遠野天狗ノ衆、そして隠れ里の領主、那智です」

 

 

優しく笑う少女 那智はそう言う。フーッと深呼吸をしたユウヤは、自分の目的を果たすために彼女たちに歩み寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山奥の中で、男は歩いていた。

ゆっくりと体を揺らしながら、男は歩いていた。携帯端末を耳元に押し当て、含むような声を出す。

 

 

「─────はぁー、なるほどよく分かりましたよ?」

 

 

『………分かってないな。もう一度言うぞ、本来の目的はレイナにやらせる。お前は咲人と共に遠野の連中を押さえておけ』

 

 

「…………………はぁー」

 

 

男は沈黙の後に嘆息する。携帯から聞こえる声に呆れている───という訳ではない。男は気だるげそうに周りを見回し、すらりと呟いた。

 

 

「それなら別に、里の連中は殺しても(・・・・)構わないのですかねぇ?」

 

 

『構わん。元より、我々の障害になるものを生かしておくつもりはない』

 

 

「はぁーー、ですが咲人からの報告では………『雷電』が来てるらしいですけど、どうします?」

 

 

『…………何?』

 

 

電話の奥の声が驚いたように聞き返す。予想外だったのか呆然とした声にデュークは顔に笑みを浮かべるが、すぐに反応が返ってきた。

 

 

『………………構わんさ。この障害を乗り越えられないなら、奴に資格はないのだからな』

 

 

「はぁー、開き直っても焦ってるのが分かりますよ?計画修正といきますのですかね?」

 

 

『抜かせ。この程度の些事で計画を立て直す理由にはならん。さっさと任務をしろ、貴様にやる事があるだろう』

 

 

ほーい、と適当に答える男は片腕を振るう。ひゅッ!と擦れる音と同時に何かが地面に倒れ込む。

 

 

人の姿をした異形、妖魔。ビクンッビクンッと痙攣する妖魔の頭部を踏みつけ、男は片手に持った少し汚れた剣を使い、何度もその妖魔を斬り続けた。

 

 

正気とは思えない行為に、ククッと笑う声がする。男が耳と肩に挟んだ携帯からした声だった。今彼が何をしているのか理解したようか声音で、囁くように告げる。

 

 

『期待しているぞ、デューク。我々の災禍を存分に振るい、世界を恐慌と絶望に陥れろ』

 

 

「りょーかい」

 

 

ガシャッ!!と、男は声の聞こえなくなった携帯を近くに木に投げつける。木の表面に当たった時点で壊れ、鉄製の部品が地面に転がるが、気にした様子もない。

 

そしてデュークは肩を揺らし、動かなくなった妖魔を容赦なく蹴り飛ばす。どちゃっ! と生々しい肉塊を横目に口を横に裂き、満面の笑みを作る。

 

 

「ククク……………さぁーてと」

 

 

ニタリと男 デュークは再び笑う。頬に飛び散った血を自分の舌で舐めとり、歯を見せて笑う。その姿には謙遜な対応は見えない。血を拭き取り、先程よりも表面が綺麗になった(・・・・・・・・・)剣を肩に乗せ───告げる。

 

 

 

「行くぞテメェら、狩りの時間だァ」

 

 

─────満を持したように牙を鳴らす災禍の獣が、今迫り来ようとする。




久しぶりに短くなったと思うこの頃、感想が欲しいなぁと素で思う作者であった…………。
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