「────なるほど、そういうことだったのですか」
ユウヤから、最近起きている異常の話を聞いた那智は深く考え始める。
「夕焼さんが襲撃されたところから、彼等はここで何かをしようとしてる可能性もあります。
…………それより、どうかしました?」
何処かをチラチラと見る挙動不審のユウヤは、んーあーいや、と話を切りある場所に親指を向ける。疲れたと目尻を指腹で押さえながら、聞くことにした。
「俺の近くで騒いでるアイツら、一体どうする気なんだよ……」
「へ、へぇ、あそこの人が話に聞く傭兵ね…………意外に格好いいじゃない(ボソッ)」
「────なるほどなぁ、ああいうのが好みなのかお前は」
「はっ、はぁぁぁぁっ!?何言ってるの!別にそんな訳にないじゃない!馬鹿じゃないの!?」
「どうかな~?じゃあ、どう思うのか言ってみろよ?」
「ッ!──しつこいわよ!バカ九魅!そんなんだからあそこの人に変な目向けられてんのよ!」
「んだと!?バカとはなんだ!このアホ深里!」
「……………うわぁ」
漏れだした声は当然感嘆などではない。何だコイツら、というような呆れ一色のものだった。
壁から此方を覗いてる二人の動きからして忍だと思われるけど、何かそう思いたくなくなってきた。前半はよく聞こえなかったのだが、バカと付けられた九魅というのがおちょくり、アホ呼ばわりされていた深里というのが憤慨してるように見える。
関わるつもりなど、彼には毛頭ない。何故自分から火種を増やしに行くのか、と結論下しユウヤは無視を決め込むことにしたが、
「あのぉ~」
おっとりとしたような少女がそんなユウヤに声をかけてきた。
「ユーちゃんを助けてくれてありがとうございますぅ~」
「あ、あぁ…………………ん?ユーちゃん?申し訳ないんだが、誰なんだそのユーちゃんってのは」
「えぇ~?ユーちゃんはユーちゃんだよぉ~?」
駄目だ、話が通じない。たった数秒の会話でそう断じたユウヤは頭を抱える。今まで自分が会ってきた忍たちも
悪意がある悪党の野郎と悪意なんて全くない問題児、どっちが面倒かと言われればユウヤは即に後者を選ぶ。
ついでだが、夕焼曰く、ユーちゃんというのは自分の愛称らしい。夕焼とあの少女、牛丸は幼なじみらしく、夕焼も牛丸のことをウーちゃんと呼んでるんだとか。
そして更についでだが、喧嘩してたあの二人。九魅と呼ばれた少女は昔にいる妖怪 九尾のように狐の尻尾が何本を生えてるらしい。
そしてもう一人の深里は、葉の扇で天候を操れるらしいこだが、その姿はもう狸に見えなくもない。
───もしかして喧嘩してるのって狐と狸だからなのか?だったら古典的すぎじゃね?
とかくだらない事を考えないようにしたユウヤはふと、あることを脳裏に浮かべた。疑問、純粋な疑問。それを解くために、夕焼に声をかけた。
「………夕焼、ちょっといいか?」
「は、はい」
「お前があいつらに襲われたのって一人の時だったんだよな?」
「はい………丁度、近くにあった薬草を取りにいこうとして……」
「そのことを誰に伝えた?詳しく教えてくれ」
ユウヤの詰問にこの場の全員が怪訝そうな顔をする。どういう意味なのだろうと思ってのことなのだが、今にとってはどうでもいい。
「那智さんとウーちゃん、そして厳戒さんです」
「厳戒?……そいつは誰だ?」
「さっき入り口前で大人たちを引き連れてた人です」
「あぁ、さっきの強面のおっさんか…………噂をすれば、来やがったな」
舌打ちに続いて吐かれた悪態に夕焼たちが入り口を見たと同時に、次の動きは起きた。
扉からスッと入ってくる男、厳戒は刀の刃をちらつかせながら此方に歩いてきていた。三人の大人たちを連れた厳戒に、那智は険しい声を投げ掛ける。
「厳戒さん!どういう事です!?」
「申し訳ありません、那智殿。やはり私は、そいつを信用できません」
ギロリと効果音が付きそうな目でユウヤを睨む。
「この男が半蔵という者の遣いだとしても、危険であるかは分かりません!この里に居させる訳にはいかんのです!」
「………………ハ、そうかよ」
ボソリと、失笑が漏れた。と言わんばかりの態度に、厳戒は強面を更に深くし、刀の先を首に向ける。
何度刀を突きつけられれば気が済むのだろうか、とユウヤは素直に思う。
「確かにアンタの言う通りだ。危険な連中をここに置いとくのは駄目だよな」
「ユウヤさん!?」
「フンッ、ようやく理解したか……………?」
突然の言葉に驚愕する少女たち、僅かな笑みを作った厳戒は自然と不思議な感じを抱いた。厳戒はユウヤだけを追い出そうとしているのだが、ユウヤは先程こう言った。
危険な連中────まるで、追い出すべき者が自分以外に、そして複数いるような言い方ではないか。
「──だから、まとめて追い払わせてもらおうか」
そして、躊躇なく、正面から。
人並み外れた身体能力を活かした脚力で、呆ける厳戒────その横にいる男の一人の顎を蹴り飛ばす。
何を、と咎めようとする直後、ピキ! と男の顔にヒビが入る。徐々に亀裂が大きくなっていくとその顔が一瞬で崩れ、白黒のマスクへと変化した。
その様子を確認することなく、ユウヤは目を向ける。白い光と共にその姿を現した赤いローブの二人。
夕焼を襲った彼等を見据え、ユウヤは笑みを浮かべ拳を握った。
「よぉ、さっきぶりだなテメェら。まさか自分から侵入してきるとは思わなかったぜ」
「チ、ィッ!」
歯を砕きかねない程の音を鳴らし、一人が何処からかハンマーを取り出す。間違いなく、夕焼を襲った一人だった。
何時でも戦える準備を整えた男は、仲間であるもう一人が武器を構えようとすらしないことに気付く。更に歯を噛み締め、正面を見ながら吠えるように怒鳴り散らした。
「おい、何してやがる!こいつらを片付────」
ドゴッ!! と。
大きなハンマーを握った赤いローブの男の背中からそんな打撃音がした。
意識外からの攻撃、何より相手を気絶させることに専念された攻撃。男に不思議そうな感情が籠ると同時に、その意識が完全に絶たれた。
「…………さて、これでゆっくり話が出来るな」
深い溜め息と共に言葉を吐いたのは、ノコギリ刀の赤いローブだった。
「なっ!?どういうことだ!貴様、こいつらと与していたのか!?」
「うるせぇ少し黙れ。話が進まない」
口煩く取り乱す厳戒をユウヤは一睨みして、その口を閉じさせる。他の皆も何もせずに、静かに話を聞く様子だった。
「お前たちに伝えたいことがある。だからこの状況を作り出した」
「だから敵のお前を信用しろと?そもそも、何を伝えにここに来たって言うつもりだ?」
「この里の窮地、では不満かな?」
あっさりとそう言い切る姿勢にユウヤは考え込む。嘘を言ってる訳ではないと判断し、続けろと促す。
「我らの司令官 デューク様はこの里の人間たちを虐殺するつもりだ。勿論、1人残らず」
沈黙が、部屋に浸透した。この場の全員が言葉を失っていたのだ。何の理由も無しに里の人間を皆殺しにするという事実、理解できないのは無理もないだろう。
「──ふッ、ざけんなよ!?ここには元忍がいるとはいえ、戦えない奴だっているんだぞ!」
「それがどうした。そんな事にあの人は躊躇しない。ここが善忍に関係する場所である以上、標的になったら何も出来ない」
九魅の怒りに対しても落ち着いた声は変わらない。斬鉄は嘆息と共に白黒のマスクに手を置き、
「───だからこそ、協力するべきだろう?」
顔から剥がしたそれを地面へと投げ捨てる。カランッと軽い音と共に仮面は灰となり消失する。
裏切る、とも取りかねないその発言に反応を示したのはユウヤ。指を鳴らす仕草をする彼の目は、信用してる者に向けるものではなかった。
「疑問だな、何でお前は仲間やその司令官に逆らう真似までしてこの里の人間の味方になろうとする?」
「後味が悪いだけだ。顔も知らん奴等が縁のある場所で殺されるなど──」
『─────はぁぁぁぁぁぁ』
突然、その場に深い溜め息が響いた。
その声はこの場にいる誰の者でもない。だが、戦い慣れている彼等はすぐに気付く。
その声が、地面に倒れ伏した男から聞こえている事に。少し正確にするとマスクから、なのだが。
『良くない、良くないよ
「…………デューク様」
声を聞き、苦々しそうに顔を歪める斬鉄。
『まぁー、どっちでもいいや。どうせテメーら構成員どもは死んでもらうつもりだからなぁ?裏切って死ぬなら俺の為に死んで欲しかったがなぁ』
「ひどい………何でそんなことが!」
『抜かせよ、善忍の餓鬼が』
部下や仲間すらをも何とも思わない事への非難の言葉に、人の肉体を借りた声が嘲るように告げる。その声音は今までとは違う、ナニかがあった。
しかし、それは一瞬だけ。またおちゃらけた態度に戻った声の主は、きっと笑っているだろう。声音が弾んでいたから、楽しみが待ちきれないと言わんばかりに。
『さてとさてと、さぁーてぇーとぉー?つまらない戯れ言はこれっきりにして、さっさと始めるとしようかぁー。
世紀に残るであろう、お祭りを!ここにいるテメェらの血肉でなぁ!!!』
引き裂くような笑いと共に声は途絶えた。その場を沈黙が支配し、誰かが声をあげようとした───直後、
「───敵襲だぁぁぁぁぁァァァァァァッ!!!」
戦いの火蓋は、既に切り落とされていた。
そして、数秒前に遡る。
里の入り口に並ぶ、武器を持つ見張りたちは談笑をしていた。侵入者と騒いでいたがそんな早く来る訳がない、そう楽観視していたのだ。
だからこそ、木々に隠れていた沢山の人影に気付くのが遅れた。赤いローブがユラリと木陰から姿を露にし、ようやく唖然としていた見張りたちは行動を起こした。
「な、何だコイツら────ばっ」
見張りの男が声をあげようとする途端、駆け出した赤ローブの一人が武器を使い、辻斬りのように切りつける。
血を吹き出し叫ぶ暇もなく、地面に倒れ込んだ男に仲間たちは声を失う。容赦なく一撃で殺した赤ローブは武器の血をピッと周りに払い、顔をあげた。
白と黒が渦巻くようなマスク。その中心に埋め込まれた深紅の石が、血を欲するかのように怪しく光る。
「ッ、敵襲だぁぁぁぁぁァァァァァァッ!!!」
死ぬかもしれないという危険な状況で、危険を知らせようとするその意気は素晴らしいものだと称賛出来る。しかし、それも意味がないだろう。
突然だが、『禍の王』、その組織の方針は決まりきっている。
───制御できない災厄、
故に、彼等は厭わない。沢山の人間を手に掛けることも、世界全てを滅ぼし尽くすことも。
だからこそ、彼等は何も感傷を抱かずに戦うだろう。例え、それで自分が死のうと。
まとめ
敵の一人が裏切って司令官が部下連れて攻めてきた。
────みたいなもんですよね。
ついでのオマケ
キラ「さぁ始まりを迎えたケイオスブラッド色々と解説するもしくは質問などを受け応えたりする番組!略して『作者の暇潰し』!」
シルバー「何処も訳せてないんだが、それ」
キラ「ほぉ……、なら俺様命名にしていいか?」
シルバー「いや、いい。っていうか、お前の命名センスはもう厨二のそれだから」
キラ「厨二病で何が悪い!というのを信条にするこの俺様は闇の王 キラ!秘立蛇女に所属する闇の異能使いだ」
シルバー「開き直んな─────はぁ、自分はシルバー。水の異能を使えるが、他の奴よりは明らかに弱い。だから自分は重火器を使っている。今現在は月閃に仲間になる、というのを建前として所属している………よろしく」
キラ「さて、今回解説するのは本編にも出てきてる『禍の王』だ」
シルバー「あの時に会った奴等だったよな?昔は表だった行動をしてなかった筈なんだが」
キラ「昔まではな。ユウヤたちが解決した『聖杯事変』から動き出してきやがった。その動き方はあまりにも異常、多くの忍ですらその全貌を掴めない謎の組織だと聞くぜ」
シルバー「自分たちが接触したのはたった一人………黄泉という奴もその一人とは分かった。なら、本編に出てきた咲人、そして名前と声しか分からないデュークって奴もそうなのか?」
キラ「いーや、作者いわく構成員と咲人たちは明確な違いがあるらしいぜ?」
シルバー「それは………どういう意味なんだ?」
キラ「生憎だが、今回はこれ以上は無理だろうぜ。次の話でそこんとは分かるから、多分そこで出来ると思うからな。
───それじゃあ!今回はこれで終わりだ!」
シルバー「作者は感想と評価を欲しがる強欲な奴だからな。まぁ、皆は好きにしてくれた方がいい。あと質問などがあったら感想で頼む。答えられる部分なら何度でも答えられる────か」
キラ「…………おい、シルバー。カンペ、もうちょっとバレないように読めよ。丸分かりだぞ?」
シルバー「……………次回もよろしくお願いします。
口に出てんだよキラ、そんなのバレるに決まってるだろうが(ボソボソ)…………………は?これあげるから許してぴょん?気持ち悪いぞお前──────は、いや待て?何でこの封筒に雪泉たちの写真入ってるんだ!?しかも、水着姿とか!何処で撮った!?『別にいいじゃんか、仲間の写真ぐらい喜べよ』っていやいや!納得出来るかそんな理由!おいコラカメラマンども!なーにが『そこんとこどうなんです?もしかして誰かとデキてるんですか?どうなんですか!?』だ!ネタ狙いならマジで帰れお前ら────────《ブツン!》」