閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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??「人は皆、運命の奴隷って言葉。意味が分かるかい?どれだけ努力しててもどれだけ正しくても、運命は、世界はそんなものを気にしない。容赦なく、人に過酷な末路を定めていく。



だからこそ、我々は運命に反逆する事にした。災禍を振るい、世界を壊す、それが我々の宿願」


七十一話 デューク

デューク、公鏡 紅樹(こうがみ こうき)はごく普通の学生だった。勉強も運動神経を人並み、学校でもガールズフレンドもいたりと、普通と言われる人物だったのだ。

 

ある、一つのことを除けば。

 

 

『紅樹ー!ごめーん!遅れちゃった!』

 

『はぁー、反省の色が無いよな』

 

 

彼女の名は対馬、紅樹の恋人の少女。滅多に見ない美少女の一人と数えられる容姿をしている少女。そんな彼女には紅樹しか知らないある秘密があった。

 

 

『学園はどうだったの、対馬。大変じゃなかった?』

 

『うーん!選抜の焔さんたちはやっぱり強かったよ!皆で挑んでも勝てないやー』

 

 

そう、彼女は忍だった。国の為に戦う善忍ではない、企業や個人を主とする悪忍と呼ばれる忍、彼女には主はいなかった。

 

ただ一人、紅樹と一緒にいる為に彼女は悪忍を続けていた。バイトをしていた彼は、別に忍を止めてもいいと思っているが、彼女の意思を踏みにじることはしたくないとも思っていたのだ。

 

 

 

 

何より、紅樹は幸せだった。困ったことや悲しいこともあったが、最愛の人と共に生きられる人生に充実としたモノを感じていたのだ。

 

 

 

そして、いつもと変わらない夏の夜。紅樹は帰ってくるのが遅い恋人の為に料理の買い出しに行っていた。普通と変わらない事、そう彼は思いながら道を歩いてた、その時。

 

近くの廃屋から気配を感じた。続いて、人の声のようなものが聞こえてくる。不安に思った彼は廃屋へと歩みを進め、奥の部屋に耳を当てた。

 

 

『忌々しい悪忍め。よくもまぁ、私の邪魔をしてくれたものだ』

 

『ふざけ………ないで!あの娘を、親を失った娘を殺そうとした癖に!どうして善忍がそんなことを!』

 

『少し必要だったのでね。彼女の両親は資産家だからね、それを手に入れる為に少々、仕組もうとしていたが…………貴様のせいで失敗したよ』

 

 

部屋の奥から男女の話し声が聞こえる。女性の声は知ってる、対馬のものだ。もう一人は分からない、知らない誰かのものだった。

 

話の内容から、対馬は何かを知ってしまい、それ故に襲われているのかもしれない、そう判断する。

 

手を出すべきではない、今の自分は普通の学生。忍になんて逆立ちしたって勝てる訳がない、黙ってるのが一番だ。そう思っている間に、状況は変化していく。

 

 

『仕方ない。貴様を殺して今は満足するしかない』

 

『くっ……………は、』

 

 

愛する人の呻き声に慌てて顔を出して、彼の顔が蒼白になる。男の手が対馬の首を掴んで、締め付けていた。彼女は苦しそうに呻き、脚をバタつかせている。

 

死んでしまう、大切な人が。そう判断した紅樹の行動は速かった。数秒も時間をかけない。

 

 

『対馬を、離せよテメェぇぇぇぇぇッ!!』

 

『なッ!きさ─────ごっ!?』

 

 

壁から飛び出して叫んだ紅樹はその男に突っ込んだ。突然の事に善忍は反応しきれず、紅樹に激突し─────血を吐いた。

 

 

突撃したデュークの握った近くに落ちてた包丁が、腹を突き刺していたから。包丁など何回も使ったことがあった、だが人を刺したのはやっぱり始めてだった。けど、必死だったから、どうでも良かった。

 

 

『この………ゴミクズがァああッ!!』

 

しかし、善忍の男が黙ってはいない。男は忍としての力で紅樹を引き剥がし、近くにあった棒を握る。

 

 

そして、体が宙を舞うことになる。

 

『え、が?』

 

何が起こったのか分からない、声が出たのは床に落ちた時だった。ドサッ! と音をたてたが、幸い目立つ傷は無い。立ち上がろうと床に手を付こうとして、

 

 

片腕が無くなっている事に気付いた、ようやく。

 

 

『ドイツもコイツも、人の邪魔をしやがって……正義を妨げやがってぇ………!』

 

血に濡れた巨大な棍棒 メイスを片手に、善忍の男は何度も呟いていた。あっさりと人を吹き飛ばしたというのに、その目には全く映っていない。紅樹は始めて恐怖を感じ、怯えていた。

 

視界の端で必死に叫ぶ対馬、共に生きようと誓った少女を泣かせてしまった事に後悔を抱きながら、紅樹は顔をあげる。

 

真っ赤なメイスが、振り下ろされ─────

 

 

 

 

 

 

 

『気が付いたかい?まさか本当に助かるとはね』

 

 

意識が覚醒した時には、真っ白な部屋にいた。ピーッ!という警報に近い音の後に部屋に入ってきた子供のような医者はそんな事を言ってきた。

 

あんな様だったのに、驚きだよ。そう、医者は話す。眠りから覚めたばかりだったから、頭が痛かった。苦痛が腕と脚に響いた直後、思い出したように彼は聞いた。

 

 

『………対馬は?対馬は何処です?』

 

 

『…………………』

 

 

医者は答えない。

沈黙が、彼をより一層に不安にさせる。しかし、医者はすぐに人差し指を向けてきた。

 

良かった、その安堵しかなかった。対馬は生きてる、早く彼女を起こさなければ。そう思った紅樹は周りを見て、疑問に思った。

 

 

何故、この部屋に自分以外誰もいないのだろうか?そう思い医者を見るが、彼は顔を伏せて此方を見ようとしなかった。

 

 

そこで紅樹は、医者が自分を指差していた事に気付く。不自然な動作に眉をひそめる彼はある部位を静かに見詰めた。

 

 

彼が目にしていたのは自分の腕だった。いや、自分の腕ではない、脚も同じだった。こんなに細くない、これでは女性の───────、

 

 

 

『………………………え、は、ぁ?』

 

 

それだけ思考して、彼の喉が干上がった。よく見てみると腕と脚の付け根の部分に頑丈に包帯が巻かれている。ガタガタと震える彼に、医者は静かに話を始めた。

 

 

『君の体はボロボロだった。腕と脚は再起不能、心臓を含む臓器がグチャグチャで死んでないのが可笑しい状態だったね』

 

 

『打つ手がなかった僕に、君を病院まで連れてきた女の子が泣きながら言ってきたんだ。私の血を使ってください、私の腕と脚を使ってください、私の心臓を使ってくださいって』

 

 

 

それだけ聞いた紅樹は、全ての意図を知ってしまった。この腕と脚は彼女のものだ、この身体に流れてるのは彼女の血だ、この生命は彼女の命だった。

 

 

───理解したく、ナカッタ。知リタクハナカッタ。

 

 

そして彼は、発狂して病院を抜け出した。呼び止める声が聞こえたが、なりふり構わず彼は必死に逃げた。受け止めるべき現実から。

 

 

包帯が剥がれ、ツギハギから血が流れる。痛いと思う一方、これが命だと実感させれた。

 

 

 

───死んで方がいいのでは?死んだ先で彼女に会えるのでは?

 

 

歓喜の笑みを浮かべながら、彼は周りへ手を伸ばす。そして、包帯が巻かれた手にある物を掴み、持ち上げた。

 

細く先端が鋭い木の枝。

人なんて殺せそうには見えないが、今この場にある物で一番凶器として使える物だった。彼はそれを、首元に押し付ける。

 

少し力を入れれば、プツンと枝が皮膚を破った。ツーと血が流れる、少し安堵した。救われる、これが俺の救いだ。もとより、こんな体で生きれる訳がないのだ。

 

だから、死んだ方が一番の─────

 

 

【………紅樹、お願い】

 

 

 

『…………………カハッ』

 

 

───出来なかった。聞こえること自体がおかしい少女の声に動きが止まる。首に突き刺そうとした枝がそれ以上は進まない。力を込めようとしても、首を引き裂くことができなかったのだ。

 

こうして、彼は自殺を諦めた。悔しそうに地面を殴りながら彼は嘲笑う────死ぬことも出来ない、臆病者の自分を。

 

 

『ハハ、ハハハ、ハッハッハッハッ……………ハハ』

 

 

渇れた笑いが、口から溢れていた。何と浅ましいのだろう、自分から死ぬことが出来ない。彼女は自分の命を与えることが出来たというのに。

 

笑うしかなかった、この世界のくだらなさに。嗤うしかなかった、その愚かさに。

 

自分で死ぬことが出来ないなら、衰弱死か餓死を選んでみるのも悪くない。そう思考する彼は気付いていなかった。

 

この場に、自分以外の誰かがいる事に。

 

 

『ほぉ、混じっているな?それも純粋に』

 

 

無防備な背中に、そう投げかれられる。慌てて振り替えると、誰かがいた。フードの隙間から黒髪を垂らした青年らしき人物が。

 

気付かなかった、いやそもそも最初からいなかったのかもしれない。

 

『ここまで他者の血と適合しているとは………俺も始めて見た、少しばかり驚いた』

 

 

怯えて後ろに下がろうとする紅樹を見ながら、彼は落ち着いた声で呟く。そもそも戦いなんてものと無縁だった紅樹にも理解できた。

 

この人は、強い人だ。対馬やあの善忍だろうと、この人を前にしたら敗北しかない、と。

 

 

その男は顎に手を当て考え込む。絶望の淵にいた紅樹に広げた片手を向ける。何かよく分からずにいる彼に、男はそのまま言葉を続けた。

 

 

『どうだ?その力と憎悪を活かさないか?少しは楽になるかもしれないぞ』

 

 

これが、分岐点だった。この男は手を差し伸べて、重要な選択を迫る。手を取らずに消極的に生き続けるか、手を取り彼女の願いとは相反の道を歩むか。

 

 

迷うことは、ない。彼の手を取り、紅樹は影でも闇でもない道へと歩み出そうとする。

 

自分から大切なモノ全てを奪った、善忍たちを殺すモノとなる為に────

 

 

 

 

 

 

 

『─────クソ、くだらねぇな』

 

あの日を連想させるような真っ黒な夜、紅樹は公園のベンチで自身の心情に対する答えを吐いた。あの人、王の組織に入って1ヶ月、正直なところ彼は迷っていた。

 

5本目の缶コーヒーを開け、口につけようとして。

 

 

『もぉ~、何で他のお店夜までやってないの~?これじゃあ、骨折れ損だし~』

 

あ? と眉をひそめ、公園の入口から誰かが来るのが見えた。暗闇に隠れた人影は走っているのか、少しずつだが輪郭が浮かび、その姿が明らかになる。

 

ギャルのような、ていうかギャルそのものの少女だった。

 

 

『何してるんだテメェ。今深夜だぞ』

 

『ん?そういうキミこそ何してるの~?たった一人で黄昏てさ~』

 

『………悩んでるだけだ、色々あってな』

 

何故声を掛けたのか、それは紅樹自身にも分からなかった。ただの気紛れだろうと思い、缶コーヒーを飲む。

少女はふーん、と怪しい笑みを浮かべながら、彼の隣に座り、少し考えた後こう言ってきた。

 

 

『………ていうかキミ、コーヒー飲んでるの?見た感じと違うじゃん………ちょっと分けてくれない?』

 

『ザケンナ、人をどう見てやがる────オイそれ苦いぞ、ってオイィィィィッ!!?人のもんだぞ!?何勝手に戴いてくれてンだテメェ!!』

 

分けてくれ、と言ったのに堂々と飲む少女に紅樹は真っ青になった後すぐに真っ赤になる。忙しいヤツと思うが、彼自身久しぶりに感情を吐露したのだ。

 

憤慨する彼に、少女はコーヒー缶の味を答えた。

 

『うぇー、ニッガーい!こんなの毎日飲んでるとか、絶対に健康に悪いっしょ!止めた方がいいって!』

 

『………キレていいよな?俺。他人にコーヒー飲まれて、ダメ出し食らうとか、マジでキレてもいいよな?』

 

怒りのあまりに笑顔になるという高度な行為を前にしても、少女は余裕そうに笑っている。分けてくれないと言ったのに全部飲まれてる事も知り、怒る気が失せたのか溜め息を漏らす。

 

 

 

『じゃあな、俺も用事があるからな。コーヒー代は払えよ、ギャル女』

 

『ちょっと~!アタシそんな名前じゃないし!ちゃんとした四──』

 

『あー、あー、今はもういいだろ。次会った時に聞いてやるよ。いつか会った時、コーヒー代のついでに』

 

文句の垂れるギャルにそう言い切り、公園から立ち去る。つけられないように角の多い道を通り、よく離れたのを確認すると静かに息を吹く。最も、と付け足し彼は言う。

 

 

 

『…………二度と会わないかもしれないがな』

 

この少女との出会いもあったのか、彼は密かに決意していた。その後、王という存在に頼み込み、『同調者(ユナイト)』へとなった。

 

 

【血】を冠する者に、彼が嫌悪していた善忍と似た存在に。

 

身体に埋め込まれる忍の因子と微量の【ケイオス・ブラッド】を取り込みながら、その矛盾は善忍への憎しみとなり、彼の純粋だった心を邪悪へと蝕んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、今の死闘に至る。

 

「──空っぽになってたこの俺に、『あの人』は力と生きる理由を与えてくれた」

 

 

怒濤の攻撃の中、デュークはポツリと呟く。二本の長剣『アマルガツ』で障害となるもの全てを切り裂き、吹き飛ばし、標的たる青年を殺そうとする。

 

復讐の邪魔をしたからではない。自分達の敵として、確実な形で殺そうとしているのだ。

 

 

「俺はこの世全ての善忍を殺す!それがあいつへの弔い、それこそが『あの人』の悲願に近付く道ィ!ふざけたこの世界をぶっ壊す!それが、テメェら如きに妨げられるものじゃあねぇンだよォッ!!」

 

 

「くだらないのは……お前らの方だろうが」

 

ガリリ!!と甲高い音が、左右から聞こえる。引き潰すように迫ってきた長剣を、跳躍して避けたユウヤは駆け出す。

 

近寄らせないようにされたデュークの剣戟の嵐を両手の鎧で防ぎながら突貫する。

 

 

「どんなに不条理な運命でも理不尽な世界でも、生きてる奴はいるんだ!それを、その程度の理由で、人の幸せを!易々と奪うんじゃねぇよ!!」

 

 

「俺たちを、『同調者(ユナイト)』を、世界をも覆す災禍を………………その程度と見下すんじゃねぇぞテメェぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

轟ッ!!

激突した二人を中心に衝撃波が吹き荒れ、木々を揺らしていく。飛び退いたユウヤは自分の腕に纏った装甲に入った大きな傷を見て、舌打ちと共に頭を回す。どうやって倒すか、あの剣(アマルガツ)を、あの男(デューク)を。

 

 

(………あの剣、俺の鎧の硬さを越えてる!このままじゃ勝てない─────やるしか、ないか)

 

 

「悪い、夕焼。少し借りるぞ」

 

謝罪の言葉を口にし彼女の刀を手にする。手の内に入った感覚に、ユウヤは深呼吸をする。

 

何時ぶりだろうか、刀を握ったのは。覚えているのは、飛鳥との共闘した時。あの時は無我夢中で戦って──新しい技を生み出したな。

 

そう薄く笑い、彼は迫り来る『アマルガツ』を見据える。

 

 

「─────異能武装、『雷切』」

 

 

雷電を纏った刀で『アマルガツ』の刀身を切り伏せた。刀の使い方に関しては、ユウヤも熟知してる。飛鳥と斑鳩、彼女たちとの特訓も行っているのだから。最も、実戦で使うのは始めてなのだが。

 

 

「ハッ!ナメんなよテメェ!そんなナマクラで俺の『アマルガツ』に勝てると───」

 

 

ピシリ、と。

鋼鉄の刀身にヒビが入る。デュークの強さでもあった変化自在の魔剣に。相手の血を流させ、それで無力化出来る力が、砕ける。

目の前の青年に、打ち破られていく。

 

 

「………………へ、いいぜ」

 

追い詰められていく事実にデュークは笑う。ヒビの割れた『アマルガツ』を一回見ると、そこら辺へと投げ捨てた。

 

 

「やっぱぁ、相手を殺すには一本で十分だな。俺の『アマルガツ』、凌ぎきれるか?手負いのテメェに」

 

「充分すぎるハンデだ、今のお前にはな」

「そうかよ」

 

言葉の応酬は、それで終わる。

ユウヤは左手を地面に伏せ右手の刀を構え、デュークは伸びた『アマルガツ』の刀身を普通の剣へと引き戻し、鋭い剣先を向けてくる。

 

 

二人の間に沈黙が支配していた。

距離は普通くらい、十歩進めばユウヤはデュークを殴り飛ばせる。だが、それはデュークが許さないだろう。凄まじい程の射程距離と切れ味の剣を振るうデュークが。

 

 

そして最初に動いたのは、

 

 

 

「──忍法ォ!呪血・斬鞭長剣(ブラド・アマルガツ)三十六式ィ!!」

 

デュークの咆哮に似た叫びにつられ、刀身の伸びる長剣『アマルガツ』が鋭利な刃を一人の青年に向ける。三十六式、そう言った通りに三十六枚の刃が生物のようにのたくり回りながら、牙を剥く。

 

円を描くように渦巻く魔剣の雨に、ユウヤは静かに息を吐き、前へと駆け出した。嵐と化した剣技が肌を切り裂こうとする中、ユウヤは右足を前に出し地面を踏み抜く。

 

 

ダンッ、と地面を踏むと共にユウヤはそこで右腕を振るっていた。掌の中からすり抜けた刀が一直線に投げ飛ばされ、デュークの顔へと突き刺さろうとする。

 

 

「万策、尽きたなぁオイ」

 

 

しかし、刀の投擲は無駄に終わった。振り下ろされてデュークの刃が、『雷切』を何回も切りつけて破壊したから。

 

飛び散る刀の破片を横目に、デュークは腕を引く。今度こそ確実に目の前の異能使いを殺すために。

 

しかし、ユウヤの顔色は変わらない。鉄片を見下ろした彼は静かに呟く。

 

「壊したか、でも良かった。避けられたらそれで終わってたからな」

 

「あ?何言ってやがるんだ、テメェの首は今から切り落と、す────」

 

バヂッ! と何かが空気を叩いた。

言葉を止め、周りを見たデュークは違和感に気付く。空気中で何かが青く輝いていたのだ。

 

 

それの正体が電気だと気付くには、数秒を浪費した。

 

 

「知ってるか?金属は電気を通しやすい、それは鉄も同じだって」

 

「ま、まさかテメェ!?」

 

「だから、さ。お前が破壊して散らばった刀の破片、電気を帯びてるのは当然だよな!!」

 

告げられる言葉に青ざめるデュークは急いでこの場から離れようとする。だが、伸ばしていた『アマルガツ』が帯電する破片に触れ、

 

 

 

「がッ、あがばあァァァぁぁぁああッ!!?」

 

感電したデュークの絶叫が響いた。帯電していた金属片の放電、ユウヤの誇る何万もの電気を直に受けたのだ、その意識が刈り取られるのも時間の問題だった。

 

そうさせるか、とデュークは感電しながら五本の指から力を抜く。するりと手元から落ちる『アマルガツ』。ようやく感電しなくなった、とデュークは安堵する。

 

 

 

 

「手を離したな、電気から逃れるために」

 

しかし、それは悪手だった。勝利に拘るなら、感電しようと剣を捨ててたいけなかったのだ。その事実に気付き、急いで地面へと手を伸ばすが─────もう遅い。

 

 

懐に飛び込んだユウヤの拳が振るわれる。再び顔に突き刺さり、彼の体は薙ぎ倒されて地面に転がった。

 

 

鋼鉄の手甲を解除したユウヤはグローブを強くはめ込む。そしてしゃがみこんで、足元の破片を拾い上げる。

 

それを手に、呆然と見ていた少女に頭を下げる。困ったように頬を掻き、申し訳なさそうに告げた。

 

 

「………悪い夕焼。刀、壊しちまったな」

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ同時刻、遠野の里では。

 

 

里の人々を排除すべく動いていた構成員たちが、一斉に動きを止めていたのだ。理由は一つ、深紅の結界が音を立てて崩れていたから。

 

 

 

彼らは理解した、司令官である『同調者(ユナイト)』二人が敗北した事に。思考し、思考し、思考し、思考し─────彼らは敵に背を向けて逃げ出した。

 

撤退、彼らが選んだ最良の手段。突然の行動に呆然とする人々を他所に、構成員たちは森の奥深くへと消えていく。

 

 

こうして『禍の王』の目的は、遠野の人々と裏切り者、そして傭兵によって木っ端微塵に打ち砕かれた。

 

 

 

 

 

「──────忍転身」




デューク

所属:禍の王
好きなもの:鉄分のあるもの、ブラックコーヒー
誕生日:4月19日
年齢:16歳
血液型:O型
身長:167.9cm

 
『血』の異能と忍法を操る『同調者(ユナイト)』。口癖は「はぁー」。基本的には気だるげでマイペースと取れられるが、善忍が絡むと残酷で気性が荒く狂暴性が増す。血を操る事から、【鮮血王(ローブラド)】という二つ名を持つ。

元々は悪忍の恋人がいること以外は普通の学生だったが、善忍に襲われた恋人を助けようとして瀕死になるが、ギリギリのところで助かる。しかし、恋人の臓器は血によって助かった事を知り発狂し、死にたがっていた所を『あの人』に拾われて『同調者(ユナイト)』となる。

蛇腹剣状(モデル:フエグチ壱【東京喰種(トーキョーグール)】)の長剣『アマルガツ』による変則的攻撃で血を流させ、その血を操り敵を無力化させるという戦闘スタイルを扱う。

禁術『血界突破』を使用できる数少ない人物であることもあり、僅か数週間で特別作戦指揮官へと抜擢された。
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