誰にも!気付かれなかった!誕生日!チクショウ!!(ヤケクソ)
「………ここは」
「見たところ、この先が牢獄かね。ならここに君の仲間もいるかも」
廊下の奥を通り、広間に出てきたシルバーと麗王の二人。三つに扉に先が別れているが、扉の前に名前がついている為、一応把握は出来る。
牢獄と簡素に掛かれた文字を確認し、二人はその扉に向かおうとする。だがしかし、
ガタッ、と物音がした。
「…………う、そ」
振り替えると物陰に少女が隠れながら覗いていた。普通の少女とは比べられないくらいのプロポーション、雪泉たちよりも魅力的とも言える。ガタガタと震え、麗王が一歩だけ歩みだそうとするビクッと肩を震わせて、怯えたように縮こまる。
少女
「………どうして人が…………ロウ、ロウはどうしたの?………何でいないの……?」
言葉が、出なかった。ロウ、という名前に疑問を覚えたが、すぐに察することが出来た。
先程のゴーグルの青年、シルバーと麗王は知らないがクロウラーという名前の青年。
そして、先程の戦闘の結果穴に落ちていってしまった青年のこと。
「………まさか、
ゾワッッッッ!!!! と。
あまりの寒気にシルバーは咄嗟の判断でアサルトライフルの銃口を向けていた。唯一、引き金を引かなかった事が奇跡とも言っていいのだが、果たしてそれが正しいのかは分からない。
「………殺した、殺した、コロした、コロシタ、
マタ、ワタシカラタイセツナヒトヲウバッタ」
ゆらっと彼女からオーラが溢れる。邪悪な気が渦のように巻き込み、広間の周りを破壊していく。
今現在、この場を支配する彼女は怪しく光る眼を開く。渦巻くエネルギーを収束させ、シルバーと麗王の二人に向ける。
「──ミンナ、許さない」
「あの………勝手に殺さないで欲しいんスけどねぇ」
現状に落胆したような声。するはずのない青年の声に三人の動きが止まる。圧倒的な強さを見せようとしていた聖すらも、動きを止めて声の方を見た。
「やっぱこうなるんスね。僕がいない間に危ないことになってましたね」
広間の扉の一つに背中を掛けていたゴーグルの青年、クロウラーが困ったような顔をしていた。
「……ロウ、なの?」
「はぁい、正真正銘クロウラー本人ッスよ。全く、同じ人がいる訳じゃないから、そんな疑問形じゃなくていいんスよ?」
手をヒラヒラとして応じるクロウラーに、聖は心から安堵したのか彼女を覆っていた気が消失していく。
だが、クロウラー自身無傷という訳ではない。ゴーグルのある方から血が流れ、所々に傷がある。
それに気付き、心配そうな目で見てくる聖。勘づいたクロウラーは頭をかいて彼女に腕の傷を見せるように向けた。
「あ~、聖。出来ればッスけど………医療用具持ってきてくれないスかね。少し治療したいから」
「………う、うん」
頷き、近くの扉を開けて出ていこうとする聖。隙間から顔半分だけ覗き、「……無茶しないでね」と言い残して。
彼女がいなくなり、この場を今度こそ静寂が支配する。シルバーと麗王の二人も声をあげることが出来ず、クロウラーの次の行動に警戒していたのだ。
そしたら、クロウラーは二人に語りかけてきた。
「────驚きましたよね。あの
返事はないが、クロウラー自身気にしてないように見える。独り言のようなものなのか、そう思っている二人に、クロウラーは二つの物を軽く放り投げる。
シルバーの手の中に入ったのは、四つの青の鍵束と何十もある白色の鍵束。その二つだった。
二つを指差し、彼は気楽そうに説明していく。
「はい、それは牢屋の鍵、そっちが腕輪の鍵ッス。腕輪ってのは忍の力を抑制する効果を持ってるから外すときは気を付けてくださいね。」
「ありがと………何でそこまでするのかね。自分らとお前は敵同士だろ?」
感謝をしつつ警戒を崩そうとしない。忍をよく知ってるシルバーは嘘などを見分けられるが、彼から騙そうとする気はないと見たのだろう。半信半疑の視線に、クロウラーは困ったように笑う。
壊れたゴーグルを片手で弄りながら、彼の顔から笑みが消える。感情が欠落した顔と声音で、
「………“この世の不平等は唾棄すべきもの”」
そう、口にした。怪訝そうな二人にクロウラーは振り返ろうとしない。彼はゴーグルを持ち上げ、額の傷を確認している。補足、というように彼は付け足す。
「兄貴の信条ッス。この世界は理不尽で形作られてるって。どんな不幸も、どんな悲劇も、仕方ないで済まされてしまうから。
だから、僕たちが変えなければならない。そんな冷たい道理を」
言葉を口にしていく彼に少しずつ熱が籠ってきていた。激しい怒りの感情が眼光と言葉に乗せられていく。何に対するものなのか、話を聞いていたから想像に易い。
「あんたらに忠告しとくッス。この先、進まない方が吉ッスよ。…………これは善意ッスからね」
「ご忠告ありがとさん。でも退くわけにはいかないよな。自分もコイツも用がここに用がある訳だし」
「ふぅん。ま、頑張ってくださいね。応援はするッス。
忠告したッスよ、精々絶望しないように」
それだけ言うと、クロウラーは傷だらけの身体を引き摺るように動かして部屋から出ていく。最後の最後まで、シルバーと麗王を見ながら。
シルバーと麗王から別れてすぐに、クロウラーは聖と合流する。やはり心配してくれる聖の善意を受け入れ、先に進むことにした。
避難しておいた方がいいかもしれないから。もうすぐここは激しい戦場になる、巻き込まれるかもしれなかった。
そのような状況でも、クロウラーは何も言わずにいた。思慮に暮れていたのではない、似たようなもの──懐かしい過去を思い出していたのだ。
『儂が育てる!儂が皆を育てるんじゃ!』
家族が別れそうになった時、一番上の姉はそう言ってくれた。バラバラとなることが嫌だったのかもしれない、だが姉は誰よりも覚悟があったと長男であり弟でもあったクロウラーは思う。
もし、一つだけでも願いが叶うとしたら─────、
「……会いたいなぁ、お姉ちゃんに」
「………?ロウ?」
何でもないよ、とクロウラーは笑い掛ける。有り得るわけがない、夢物語だ。
甘い夢など、冷たい理想など、生温い覚悟など、とうの昔に捨てた筈なのだから。
◇◆◇
「……………?」
ピクリ、と銀嶺は反応する。廊下の方から足音が聞こえたのだ。音からして二人、そして足音は銀嶺たちの牢の前で止まった。
(…………まさか)
そう思い、銀嶺は首をあげて牢の前を見る。彼女がその姿を目にしたと同時に、その人物は牢の中の銀嶺たちに聞こえる声で告げていた。
「──皆さん、戻ってきました!」
希望のような麗王の言葉に、他の皆も麗王を見る。戻ってきた自分達のリーダーに、彼女たちは嬉しそうに顔をほころばせた。
そしてすぐに、銀嶺はもう一人の存在に気付き、麗王に問いかけた。
「麗王さま…………その人は?」
「シルバーです。よろしくね、君たち」
軽い挨拶をしたシルバーは、鉄格子の鍵を開けようとする。その挨拶を聞いても他の皆は『?』と首を傾げたが、銀嶺だけはすぐに気付けた。
(────銀河さま?)
麗王の付き添い人でもあった彼女だからこそ、すぐに思い出した。麗王が、基立聖十字学園の皆が憧れた名のある悪忍。
そして、心配していた彼女たちの前から姿を消していた筈の人物。
「あ、あぁぁぁぁぁ!!これも違う!鍵多すぎだろ!別々に分けとけよチクショウッ!!」
「シルバーさま、任せてください。錠前ごと斬ります………この剣で」
「ナイスだけど鍵貰った意味ないじゃん!待ってて!開けるから待ってて!」
結局、錠前を破壊することにしました(滅茶苦茶多かったらしい)
◇◆◇
────ドシャァァ!!
激しい爆音と共に人影が吹き飛ばされる。ボールのように何度もバウンドし、結晶の床に転がった。その人影の名が叫ばれる。
「───叢さんッ!」
返事はない。般若の面が近くに落ち、静かに沈黙していた。意識を失っていると確認した覇黒は笑う。
「一人ダウン、か。どうした?早く来い」
手をクイクイと動かし、挑発をする。仲間が倒された事もあり、その挑発に乗ってしまう四季と美野里。夜桜が止める前に、二人は武器を構えながら叫んだ。
「秘伝忍法!【シキソクZEX】!」
「秘伝忍法!【パンパンケーキ】!」
「ほぉ────それで?【
コウモリの群れと巨大なパンケーキに、覇黒は口を引き裂き笑いながら前進した。
直後、覇黒は高速移動を取り始める。正確には義足の剣が結晶の床をスケーターのように滑っているのだが、そんなものはどうでもいい。
そのスピードでなら、簡単なものだった。二つの攻撃を回避することも。四季と美野里の後ろに一瞬で回り込むことも。
反応に遅れている二人に、覇黒は容赦なく牙を剥く。
まず、彼が仕留めようとしたのは四季だった。理由は特にない、単に彼女の方が優先度が高かっただけ。
だからこそ、反応が遅れている彼女を狙った。
「がら空きだな!【
「え───きゃあぁ!?」
色彩と評するのも頷ける虹色の爆発が四季の身体を軽く吹き飛ばす。何が起きたのか─────複数の宝石を投げ、それらを爆発させたのだ。
意識を絶ってしまう程の一撃、完全に四季もダウンする。だが、覇黒は攻撃の手を緩めない。それどころかダウンした四季に更なる追撃を放とうとしていた。
「皆に、手を出さないで!!」
背後から、覇黒に向かって美野里がバケツを振るう。叢や四季、仲間たちが傷つけられるのが許せないのか、美野里は泣きそうになりながらもの抵抗だった。
バゴン! と鈍い音が響き、静寂が起こる。この場の全員が声を発することも、音を出すこともなかった。効いたのかと思いきや、
ギロッ!と眼だけが美野里を捉える。大したダメージを受けていなかった覇黒だが、その標的を変えたのだ。自分に手を出してきた美野里を、鋭い眼光で見る。呪詛のように低い声で彼は問うた。
「────何だ?ガキ」
「…………う、ぁ」
「邪魔だ」
向けられた殺気に怖じ気づいた美野里を、覇黒はもう片方の手の甲で殴り飛ばす。咄嗟にバケツで守ろうとしたが、あまりの強さだったのかバケツがへこむ。
「………圧倒的な強さというのも考えものだな。これじゃあ悩みにもなる。
退屈しのぎにもならないぞ、お前ら。このままじゃ誰か一人は殺すかもな」
「──貴様ァァァァァッ!!」
その言葉に、キレた。叢たちと同じくらいにボロボロな夜桜が、立ち上がり大声で叫ぶ。手甲を装着した拳を思い切り、覇黒の顔目掛けて放った。
ドッ、シャァァァァァァァッ!!
爆音と風圧が起きる。感触はあった、怒り任せに拳を振るってしまった事に夜桜は真剣に悔いる。だが、覇黒に一撃を与えられた事に少しは安堵していた。
だからこそ、気付けなかったのだ。
「───単調だな、避けるまでもない」
そう、受け止めていた。顔に当たる直前のところで片手で受け止めていたのだ。回避するのでもなく、正面から打ち負かすのではなく、ただ受け止めた。
これが『禍の王』の頂点、その一端。世界の法則の名を冠する彼にとって、未熟な少女たちなど本気を出すには値しなかったのだ。
「まさか勝てるとでも?夢の見過ぎだな…………現実を見ろよ」
実力差に落胆した彼は別の手を夜桜の顔に伸ばす。そして、数秒も掛からずに彼女を床に叩きつける。あまりの強さに結晶の床が轟音をたてて砕ける。
飛び散る結晶の破片に、赤い液体が混じる。
「うっ………あっっ!」
「ハハッ!痛いか?痛いよな──────だが、俺たちはそれ以上の痛みと苦しみを与えられてきた」
悲痛の呻きに覇黒は止まらない、それどころか更に力を入れ始める。床に頭を押し付けながら、彼は壊れたような笑みを浮かべる。
うちひしがれる少女たちを見渡し、覇黒は語る。呪詛のようが満ちた自分達の過去を。
「──
「
「
「そして
世界全ての理不尽と不平等を、憎み尽くした」
果たして、何が悪いのだろうか。世界の全てが彼等を叩きのめした。否定、拒絶されてきた者たちは、次第に全てを恨んでいた。
「それが俺たち、『禍の王』だ。お前らみたいな生半可な苦しみを乗り越えてきたんじゃない、徹底的に絶望に堕とされてきた!」
手を離し、動けなくなった夜桜を見下ろす。何かを思い付いたように微笑み、彼は脚を上げる。
金属製の義足の先、鋭い剣先が夜桜の胸の方に向けられた。
「世界終焉シナリオ、その一つはこれから始まる。俺たちの計画が、世界を破滅に導くのだ。その為に、
お前たちの悲劇的な死で!
───狙いは、心臓。即死を望んだ一撃が彼女の胸に突き立てられ─────、なかった。
ガッッ、シャアアアァァァァァァァァァァァァン!!!
結晶のホール、その壁の一つが破壊された。凄まじい轟音が響き渡り、破片が辺りに飛来する。
「───────来たな」
声が、ホールに響いた。短い言葉だが、凄まじいくらいの重圧が押し込まれたような感覚がある。声の主、覇黒はただただ破壊された壁の方を睨んでいた。
直後、冷気が吹き荒れる。破壊によりできた粉塵が払われ、ようやくその姿が明らかになる。
「───皆さん、遅くなりました」
二つの扇子を振るい、雪泉はそう言う。氷と冷気を纏いながら、彼女は仲間たちを、そして倒すべき敵を静かに見た。
「………………」
彼女を目にした覇黒は、動きを止めた。が、ピタリと停止していた体に変化が起きる。
鋭い脚先を問答無用という勢いで夜桜に突き刺そうとする、策などを考えた行動ではない。ただ傷つけたいというような衝動的なもの。
しかし、それもやはり妨害される。
第三者、夜桜も知らない灰色のコートの男によるフルスイングの腕が覇黒の横面に打ち込まれる。反射神経からか片腕を顔の前に出して鉱物の壁を作るが、関係ないと言わんばかりに破壊して覇黒を殴り飛ばした。
鋼鉄と化した腕を元に戻し、灰コートの男は手を握る。感覚を試した後、夜桜を担いで歩いていく。
「……軽いな、一撃が浅かった。もう少し踏み込めば良かったか」
「何じゃ……お前は……」
「プラチナ。それ以外の事はあの女………雪泉から聞け。一々話すのも面倒だ」
仮面越しにそう言ったプラチナは疲労した彼女をゆっくりと床に下ろす。刺々しい態度とは裏腹に紳士的な対応を見せるプラチナは彼女に「他の仲間たちを連れていけ、その怪我では戦えないだろう」と言い捨てる。
これで、本来の目標を達成した。後は傷付いた夜桜たちを連れてここから逃げればいい。
「だが───そうは上手くいかないか」
「………そのようですね」
吹き飛ばされた筈の覇黒が平然と立っていたのだ。結晶の壁に叩きつけられた影響で、壁そのものにクレーターが出来、覇黒の口の端から血が滴っていた。
その血を片手で拭い、彼は笑う。
一撃を食らったのにそれに対する敵意は無かった。優しいからではない、それ以外の感情に塗り潰されていたのだ。
つまり、歓喜。
待ちに待っていたと言わんばかりの喜びを顔に浮かばせ、彼は反復するように呟いた。
「────来たな」
◇◆◇
「「「「え、この人あの銀河さんなの?」」」」
「え、って何?え、って何?そんなに意外?」
牢から出された四人、銀嶺、朱里、藍夢、黒母衣は驚いたようにシルバーを見ながらそう言った。言われた本人は文句を言うどころか逆に困惑している。
「えっと………何て言えば分からないですけど」
「話と違ーう!変なのー!」
「コハァッ!!?」
あまりにもな言葉の刃に縮こまるシルバー。精神的にきているのかその場にうずくまり微かに小刻みしていた。
「───麗王。シルバーさん、だった?あの人ああいう風になったのか知ってる?」
「え、えぇ。確か………真面目にしてた時のストレスの反動とか」
「……なるほど、そう言われると納得ですよね……」
◇◆◇
カン、カン、カン!
と硬い床を剣先が叩く音に、雪泉は扇子を掴む手を強める。
少しの間とはいえ、夜桜、叢、四季、美野里たちを傷付けた敵。許しがたい悪に、雪泉は相対している。
「会いたかった、会いたかったよ雪泉。あの男、“黒影”の意志を継いだお前を─────どれくらい待っていたことか」
平常を保とうとしている声音とは裏腹に、彼の顔は醜悪に歪む。
顔を押さえる指の隙間から覗く二つの眼に、狂気にも似た光が灯り、覇黒は片方の手を動かす。
バキバキボキッ!と指を鳴らし、彼は告げる。
「一年、五年、十年?………………言葉で表せないな、とにかく俺はお前に会いたかった。
お前が、『黒影』の遺した希望だから!それを壊したかった!その為だけに、俺は今を生きてきたんだからなぁ!!」
妄執と憎悪、その二つが具現したオーラのように揺らぐ。禍々しさを帯びる存在に、雪泉は一瞬怖じ気付き───覆すように前に歩み出た。
しかし、そんな彼女の肩に手がかかる。引き留めるように、強く押さえる手が。
「戦う、とは言うなよ。俺と貴様の目的は仲間を救出することだ」
現状をよく見ているプラチナは、言外に撤退を提案する。彼の指差す先には夜桜たちがいる、少しは戦えるだろうが勝利は難しい。
彼の提案に応じ、思考する雪泉たちに向けて、余裕綽々な覇黒は両腕を広げる。
「逃がすと思うか?ここは俺の絶対領域、世界だぞ?」
彼がカンッ!と床を金属の脚で叩くと、その音はホールの隅々に反響する。それと同時に、彼がポケットから取り出した宝石たちが変化していく。
太さ数ミリの鋭い槍となって、雪泉たちに放たれた。数は二本、小手調べらしい。
扇子を払い、氷塊を飛ばして打ち落とす雪泉。彼女の隣でプラチナは無駄の無い動きで槍の先端を手で止める。
ロケット砲の勢いを持っていたが、その勢いも失われる。静止する槍、そして覇黒の動作を思い出したプラチナは感心したように目を伏せる。
「────鉱物、触れる事で操るタイプか。質量も変えられるとは、厄介だな」
「眼がいいな。流石は凶彗星ですら危険視した『あのチーム』の参謀を務めるだけはある」
少しだけ、不動の灰色のコートが身じろぎした。変わらない仮面に感情の揺らぎがあるように見える。
「………貴様、何処まで知ってる?」
「さあな。…………………ところで、お前の親友はどうした?婚約者、いや君のお姉さんを救えたかな?あの『兵器』の力で」
メギィィッ!! と普通では有り得ない音が雪泉たちの鼓膜に響き渡った。
感情という感情が没落したプラチナが結晶の槍の先端を強引に引きちぎり、粉々に砕き割った音だったのだ。
一瞬。
何秒とか、そういう話ではない。振り向いたと同時に起きた出来事に、常識というものが理解できなくなっている。
「──────そうか」
果たして、何に対してなのか。プラチナは口の中に含むように呟いた。あまりにも冷静すぎた彼だったが、表現の仕方が少し違う。
怒りを通り越して、冷静になってしまったのだ。彼、プラチナの中では爆炎の如く昂った感情が唸りをあげている。食い込みかねない程握り締められた手袋が、それを物語っていた。
粉末状へと変化させた結晶を捨て、プラチナは拳を握り締めた。直後、両腕が金属へと変質していく。
「貴様から聞きたいことができた。両腕を砕いて、その義足もぶち壊してから、詳しく聞くことにする」
「───手伝います。皆さんの仇もあります。ですが、同じように聞きたいことがありますので」
二対一、これだけ見れば有利なのはプラチナと雪泉の方。だが相手は『禍の王』のトップクラスの一角、夜桜たちを余裕で叩きのめした人物だ。何時どうやって戦況が覆されるかなど知るよしもない。
「さぁ、第一ラウンドの再開だ────全力で挑め、そして玉砕しろ」
激しい戦闘が、幕を開けた。
◇◆◇
麗王の仲間、銀嶺たちの救出を終えたシルバーの仕事はまだ終わらない。麗王からの頼みを受け、この施設の先へと進んでいた。
そして終点にて、『あるもの』を見つけてしまう。
大量の巨大な鎖、それらに吊るされた────機械。
無数の武器で形作られた人型の異形。幸い、人と見えるのは腕と頭と胴体だけで、それ以外はケーブルや鎖が伸びていた。
まるで、死にかけのところを強制的に生かされているような。不気味な光景だった。
全員が何も言えずにいた。言葉を失っていたのだ。現実的ではない忍からしても、あまりにも異常な光景なのだろう。
「───『禍の王』だっけ?とんでもない代物を手に入れてんだなぁ。…………どうやら世界滅ぼすことに本気で取り組んでるらしい」
ただ一人、シルバーだけは例外だった。他の面々のように驚きはしても、それを上回る程の呆れと納得があったのだ。
詳しく聞こうとした麗王を片手で制止し、シルバーは酷く落ち着いた様子でその兵器を見つめる。
正確には、13と記された謎のマークを。
「───13番目の神の遺物、『
《聖杯》と同列とされる神の遺物。そして、別世界にて『あるチーム』が運用しようとした世界を滅ぼす兵器。
長すぎましたね、でも後悔はしてない(キッパリ)
突然ですが、