閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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今回は前よりも短めですね、いやエイプリルフールの話を出してしまったので、話を書くのに体力の消耗が激しいですし…………それはそうと今回の話で合計100話の投稿が出来ました。

…………いやぁ、ここまで書けるとは思えなかったというか。どうせ気力が無くなるのでは?と思った時期もありましたが、ここまでいきたのは皆様の応援もあってのことです!本当にありがとうございます!

これからもこの作品を続けていくつもりなので是非ともよろしくお願いします!


九十三話『飛翔する星帯(グラン・メサイア)

敵であった修羅の死は、焔に決意を抱かせた。

 

彼を利用し、あのような最後を迎えさせた『混沌の王』を倒す、と。

 

 

「……………その前に、あいつらと合流しないと」

 

気絶してた総司を生徒たちに預け、焔は先へと進んでいた。生徒たちは「少し前までは意識が無かった」らしく、抜け忍の焔を目の前にして混乱していたが、素直に聞いてくれたのは助かったと思う。

 

 

「…………?」

 

歩いてる最中、焔は空を見上げた。空気を震わせるような激しい音が聞こえたのだ。

 

 

直後、重なった黒い翼を持つ何かが真上を横切った。あまりの爆音と風圧に耳を押さえながらも持ちこたえたが、

 

「なッ!?」

 

目を凝らすと、それは戦闘機だった。

何か白いアルファベットが刻まれているが、高速の勢いで移動してるので、確認するのが難しい。

 

そして、戦闘機から大きな4つの塊と小さな影が飛び出した。それらは降り注ぐ雨のようにバラバラに散らばって、落下した。

 

ドォォォン!! といった轟音が離れているのに響いてくる。4つの塊がここに墜落してきたものだろう。その中で、金属的なフォルムに記されたマークを、焔はやっとの思いで確認できた。

 

 

一つ一つを線で繋がった七つの星───『七つの凶彗星(グランシャリオ)』のイニシャルだった。

 

 

「何が………起きてるんだっ!?」

 

状況を理解できない焔の叫び、更に響いた轟音にかき消される。

 

 

 

 

 

一方、

 

「……………静かね」

「そうですわ、さっきまで戦いの音が聞こえてましたのに」

 

合流することができた春花と詠は直線に続く廊下を歩きながら、そのような会話をしていた。

 

彼女たちは廊下の奥、暗闇の向こう側で戦闘が起きていたのを感じていた。しかし何か甲高い叫び声が響き、瞬時に全ての音が消えたのだ。

 

そして、二人は構えを取った。僅かにだが、空気が動いたのを感じたのだ。暗闇の奥から。

 

 

「─────来る」

 

そう言った直後、暗闇から『それ』が姿を現した。

 

金属特有のフォルムなのか、窓からの光に反射している────虫だ。半透明な羽を残像のように揺れる形で羽ばたかせていた。体長は小さく、空き缶並みのものだ。

 

たった一匹ではない、数十匹が群れを為している。あまりの規模に、視界全てが覆われてしまいそうだった。

 

『ジジジジジジジ!!』

 

高速で羽を動かした時の音なのか、口から発したものかは分からない。

 

だがそれが詠たちに向けられたものであり、生やさしいものではないのは確実だ。むしろ機械だというのに濃厚な敵意が感じられる。

 

けれど、戦闘になることはなかった。

 

羽虫たちの群れの、横手の壁が吹き飛ばされたのだ。凄まじい爆発を受けたかのように散らばる破片の風に羽虫たちが巻き込まれる。

 

6割が爆風により破壊され、三割が運が良く破損で済み、1割は奇跡的に後方だった為、爆発を回避できたらしい。慌てて距離を取ろうとするが、更に発生した爆発に今度こそ壊滅する。

 

飛ぶことも出来なくなった機械の羽虫を踏み潰した何者かの視線が詠たちに向いた。

 

 

「─────よぉ、久しぶりだな。焔紅蓮隊………二人だけみたいだがな」

 

 

「常闇………綺羅!?」

 

漆黒のフォルムをした重々しいハルバードを担ぎ上げた青年、キラに詠が驚愕しながら彼のフルネームを口にした。

 

それに対してキラは忌々しいように、飛来してきた鋼の羽虫をハルバードで打ち砕く。足元でまだ存命してる羽虫を靴底で踏み潰し、詠たちを睨みつける。

 

 

「一応聞くが、コレは貴様らがやった────訳じゃねぇよな。こんなハイテク、抜け忍には勿体ない代物だ」

「そうね、けど貴方たちの物でもなさそうだけど?」

「当たり前だ。現に目の前で叩き潰してやったろうが」

 

そう嘯くキラはん?と詠の方を見た。しかし彼女の視線は高級そうなコートに向けられている。「……高そうな服………」などと呟いてる詠を無視し、キラは踏み潰した虫を指して言った。

 

「この虫は『混沌派閥』のじゃない、他の連中の奴だ」

「他の………連中?」

「さぁな、俺様には興味はない。勿論、今の貴様にもな」

 

下らないと鼻を鳴らしたキラは詠たちの横を通りすぎた。しかし踏み込もうとした足が止まる。

 

通りすぎる直前に詠がキラの腕を掴んでいた。咄嗟に反応したのだ、彼から滲み出ている殺気に。

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!何処へ行くつもりですか!?」

「悪いが、俺様には殺さなきゃならない奴がいる。今すぐにだ」

 

物騒な物言いに詠は掴む力を強める。ギロッと人を萎縮させるような少量の殺意が眼光となって向けられるが、それでも詠は力を弱めずキッとした顔つきで向き直った。

 

腕を払い、詠の手を強制的に離させたキラは進もうとしなかった。

 

最早、殺意を隠そうとせずに吐き捨てる。

 

「────父親だ。俺様の未来を奪った挙げ句、この蛇女の襲撃に片棒を担ぎやがった──────クソッタレの父親だ」

 

 

 

 

 

 

 

両備と両奈、二人は騒動が始まっていた時、暴動していた生徒たちを鎮圧していた。そして、何とか校舎内を進んでいた最中に───彼女と出会ってしまった。

 

「凄いね、私の作ったモンスターたちを簡単に倒しちゃった」

 

(のぞみ)、『混沌派閥』所属のホムンクルスの少女。本人には大した戦闘能力はない、しかし彼女が持つ力は凄まじい効力を持つのだ。

 

 

「────『召喚(コール)』」

 

彼女がそう告げると同時に、転がった瓦礫の一つに淡い光が走った。

 

ボゴボゴボゴ!! と瓦礫は激しい音をたて、風船のように膨らんでいる。

 

 

浅黒い紫色のような肌の怪物。大きさは2メートルほど、筋肉質な腕を垂れ下げ、腰の部位には尻尾の付いている。

 

しかしそれ以上に────怪物には顔がなかった。いや表現に間違いがある、目や鼻に耳といった顔の部位が存在しないのだ。

 

代わりに、鋭い歯の並んだ口を開き、雄叫びをあげた。

 

 

『パキャアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

これが彼女の能力、『召喚(コール)』。

モンスターと呼ばれる怪物を生み出し、意のままに操るホムンクルスとしての力。

 

扱いようによれば、他者を糸で操る修羅よりも脅威的な存在だ。

 

「どうするの、両備ちゃん?」

「黙ってて……………ねぇ、アンタ」

「うん、なぁに?」

 

彼女は優しい笑みを浮かべて答える。おおよそ襲撃者の一味の者とは思えないものだった。

 

内面に警戒を隠しながら、彼女に面と向かった。

 

「怪物を生み出せる力ってのは分かったけど────それ、何かペナルティがあるでしょ」

「…………」

「お見通しだっての。命を生み出す条件として何かを利用してる。……………周りの学生たちの命を使ったりとか?」

「私の妖忍魔法はそんなものじゃないよ、大体は合ってるけどね」

 

不穏な返しを望は返し、両手を動かした。そっと僅かな膨らみのある胸元に添える。

 

控えめな胸を気にしてるのかと一瞬だけ、ほんの一瞬だけ両備は同情してしまったが、

 

「今回の襲撃では三年分は使ったかな?でも、まだまだ大丈夫だよね。どうせ戦いの中で死ぬかもしれないんだから」

 

 

 

「………………は、あ?」

 

口で言われて、実感が追いつかない。しかし徐々に理解ができてきた。

 

あの怪物らを召喚することの引き換えに自分の命を差し出す。何時まで生きられるか分からない自身の命を削ることで彼女は戦場に立っているのだ。それも、あんな笑顔を浮かべながら。

 

「ねぇ、知ってる?ホムンクルスってのは普通の忍よりも強いけど、欠点が一つだけあるんだよ」

 

 

 

「思い出が薄れるの、ゆっくりと日をかけて。消えるんじゃなくて、思い出せなくなる」

 

 

 

 

「前までは鮮明だった記憶が失くなっていって、次第に顔や名前………声までも忘れちゃうの。誰よりも大切だった人の思い出が、一瞬で消えてしまう恐怖────お姉さんたちに分かる?分からないでしょ!?」

 

やけくそ気味な望の叫びを、両備と両奈は黙って聞いていた。同情してしまった、自分の立場に重ねてしまったのだ。

 

自分たちにいた大切な人…………その記憶が失うと思うと、どんな風に感じてしまうのだろうか。

 

 

「私はいや、記憶を失いたくなんてない。『あの人』に会いたい、その為に私は戦場に立ったの。『王さま』に記憶を治して貰えるようにするために」

 

何故、ホムンクルスたちは『混沌の王』に従っているのか、それが多くの理由だった。

 

わざと記憶を欠けるように造り、彼等に精神的な苦しみを与える。そして記憶を戻してやると甘い誘惑をして、自分の駒として使う。

 

それだけで、自ら命をかける尖兵が出来上がる。まさに人の事など考えてない悪魔のシステムだ。

 

 

「だからお願い───死んで(・・・)

 

そう言い、彼女は小さく呟いた。命令を下したのか、紫色の怪物がゆらりと動く。咄嗟に構える両備と両奈だったが、対する望は何か怪訝そうな顔をした。

 

目の前の地面が暗くなった、まるでそこだけに光が当たらないかのように。

 

 

巨大な物体が落下して、地面に突き刺さる。ちょうど彼女たちの目の前へと。

 

隕石が墜落したかのように濃い砂塵が漂う。視界を遮る煙を払うとした所で動きを止めた。

 

 

影が、巨大な影が起き上がったのだ。

 

「─────な」

「なに、あれ!?」

 

驚愕を示す二人の前で『それ』は姿を露にする。

 

全体的に、四~五メートル程のサソリ。しかし頭部があるべき場所には人間の上半身のようなものが取り付けられ、その顔はモノアイらしい単眼が動いている。

 

六本の細い脚で巨大な図体を持ち上げ、間接部位は剥き出しになった金属骨格が機械音を鳴らす。そして前方には巨大な装甲のハサミが地面に引き摺られてはいるが、巨体を砕いた威力を想像することは難しくない。

 

生物的イメージの感じられない、機械の異形。そのフォルムにはこういった綴りがあった。

 

Grand Chariot(グランシャリオ)、と。

 

 

「…………両備ちゃん、グランシャリオって!」

「分かってるわよ!…………『七つの凶彗星(グランシャリオ)』、何でアイツらが関わってくるの!?」

 

信じられないといった両備の叫びには納得するものがある。忍たちの問題に、世界的に名のある平和維持組織が介入してくることが多いものではないから。

 

グランシャリオの綴りの下に続きがある───“ANTARES(アンタレス)”、それがあのサソリの呼称名なのだろう。

 

だが、兵器と思われるそれは一般的に見たことがない。表側では秘匿された、此方側の破壊兵器なのだろう。

 

 

 

『─────警告』

 

突然《アンタレス》から、そんな声が放たれる。男性と女性の組み合わせたような無機質な合成された音声。

 

一瞬、二人に向けられたものかと思われたが、その判断すら甘いことに気づかされる。

 

『危険度中の三名、確認。テロリストの可能性有り、排除を優先する。繰り返す────』

 

「………ワタシたちを助けに来たどころか、排除する気満々ね」

「うー、流石の両奈ちゃんもあのハサミの攻撃は食らいたくないなぁ」

 

再びライフルを装填する両備に軽くステップする両奈。二人とも、目の前の存在が有効な的ものではないのを即座に判断したのだろう。

 

そんな中、望が二人に向かって大声をあげた。

意外にも、簡単かつ簡素なものだった。

 

 

「手を貸して!」

「ハァ!?ワタシたちは敵なのよ!?」

「このままじゃ、あのロボットに勝てない。私や皆を殺しても、あれは止まらない。だから二人ともの手を貸して!!」

 

普通なら従うつもりはなかった。だがもう手遅れだった、《アンタレス》の攻撃対象に二人は入ってる。

 

『危険度から判断、武装レベル2まで解放。これより武力的制圧を開始します』

 

ガシャコン!と全身の駆動部が動く。凶悪な兵装の数々が展開される。間違いなく人を相手にするものではないものが多い。

 

 

そして引き金は、容赦なく引かれた。

 

 

 

 

 

 

 

学園長室、そこでは誰一人もいなかった。ここにいた学園長は教師や生徒たちによる避難を行われたのだ。学園長の命を狙った可能性も懸念してのこと。

 

だが、『混沌派閥』の目的も学園長ですらない。故にこの部屋は誰にも侵入されず、静かな沈黙を迎えていた。

 

しかし突然、扉が蹴り破られる。最早ひしゃげた木材となった物の上を歩き、誰かは部屋の中へと入ってきた。

 

黒いコートで全身を包んだ銀髪の青年。

蛇女学園を戦場とする第三陣営のリーダー格。

 

ラストーチカ。

正規メンバーの後釜である候補生のリーダー、純粋な実力なら正規メンバーと並ぶほどの人間。

 

「ここが学園長室ってヤツね。つまり、一番上の部屋って訳だ」

 

漆黒の外套を近くのスタンドにかけ、ラストーチカは真ん中に置かれた机と椅子の前に立つ。

 

本来、学園長が座る筈の椅子。

しかし今そう思われる人物の姿は見えない、巻き込まれる前に避難したのかもしれない。それは当然だ、【禍の王】は誰であろうと容赦なく殺す。何処かにいる学園長も例外ではないのだから。

 

 

「どっこいしょ、っと」

 

ドカッ! と乱雑にラストーチカは椅子に腰を下ろす。そのまま堂々と机に脚を乗せていた。

ここの悪忍たちが知れば、怒りを示すような行為。それを彼は軽々しくして見せた。

 

ラストーチカはあまり気に留める様子はない。どうせこの戦争の中での出来事だ、文句を言われようと叩き伏せるだけだ。

 

そう思い、ラストーチカはくるりと椅子を回転させながら窓から周りを見下ろす。

 

空は明るくない、巨大な忍結界のようなものが張られ外からの干渉を阻害している。火の手が上がっているのか、色々な所から灰の色をした煙が揺れていた。

 

火薬の匂いとついでに、生々しい鉄の匂いを感じた。

 

「ただいま『暁の戦線(ダウンフォール・バトルライン)』は順調、例のテロリスト………【禍の王】とかの排除は─────なるほどね、もう十人程度は片付けたか。流石は志藤さんの手掛けた兵器だ」

 

『アンタレスシリーズ』

ラストーチカがこの学園内に放った兵器。対人と対物、対忍などといった武装を搭載した代物。忍たちの強化版とも言えるホムンクルス相手には中々有効だった。

 

「これで良いと思うが、俺の目的の為にも忍には数を減らしてくれればありがたいし…………『飛翔する星帯(グラン・メサイア)』、それの使用も考慮しておくべきかな」

 

ラストーチカの口からまた難しい単語が漏れた。

 

飛翔する星帯(グラン・メサイア)

地球を軸として、円を描くように漂う数十基の衛星兵器。

 

No.7の肩書きを持つ正規メンバー兼科学者の志藤が造り上げた破壊兵器を量産したに過ぎないのだが、その破壊力は世界中の国々のリーダーたちを絶句させた。

 

 

衛星に詰め込まれているのは荷電粒子砲。高速の速度で荷電粒子を撃ち出す兵器。威力は自在に変えられ、一点だけを攻撃することも可能。話によれば、正規メンバーNo.3の天星 ユウヤも開発に携わったらしい。

 

 

世界を救うどころか滅ぼせるような兵器。しかもそれは本領ですらない、きっと『七つの凶彗星』が本腰をあげれば、全世界だって余裕に支配できるだろう。忍たちだって勝てる訳がない。

 

自分達の邪魔になるであろう忍を排除し、世界救済に本腰を上げることも可能なのだ。

 

 

(そうしない理由は、忍たちがこれからも必要だからか。もしくは、俺たちだけでは勝てない存在が現れるのかも…………)

 

心底不本意だが、正規メンバー(師匠たち)が望むならば候補生であるラストーチカもそれに従うしかない。

だが、

 

(俺の目的の為に繋がってる彼女等と共に暴れるってのも悪くない。時と場合で動くとしようか)

「…………こういう椅子座ってみたかったけど、意外と座りにくい。よくこんなの座ってられるね」

 

ラストーチカはそんな風に漏らした。呆れたという割には、酷く面倒そうに。




本編に出したアンタレスの絵を書きましたー


【挿絵表示】



………………下手ですかね
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