試し読みみたいな小説。
いつか投稿する『東方混沌姉』という小説の、ある一日の事。

本当に短編です。お暇な時にでもどうぞ。

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混沌娘と愛すべき妹達の日常譚

 私の名前はナイア・スカーレット。親に教えを叩き込まれ、生まれながらして誰もが知る■■■■■■■■様に仕える狂信者⋯⋯だった者だ。過去形なのは今は狂信者では無いから。と言っても、未だに神を信仰する気持ちは忘れてない。だが、狂信していたのは今よりずっと前、それこそ前世での話だ。

 

 ここまで言えば分かるだろうか。どうやら、私は転生者と呼ばれる者らしい。前世では予期せぬ者との出会いに失敗の数々。信仰を好まぬ者達による儀式の妨害に幹部の裏切り。最終的には自分が呼び出したモノに殺され、今世へと至る。最早前世の事を反省も後悔もするつもりは無い。私は私の信じる正しい道を進んだわけだから、その過程で犠牲になった者達を哀れんだり、弔ったりはしない。もちろん私自身が死んだ原因についても今となってはどうでも良い。過ぎた事を一々気にする程暇じゃないからだ。

 

 私は最初転生した時、異なる神を信仰した私への罰なのだと考えた。記憶を持ってるという事は、何か懺悔したり、後悔して生きろという、神からの暗黙のメッセージなのかとも考えた。

 

 だが、それは違った。神はどういうわけか、私に褒美を与えたのだ。異なる神を信仰したはずなのに。生きてる間に何百、何千という犠牲を払ったはずなのに。それなのに、私に次の狂信する対象を与え、再び生きる事を許したのだ。

 

 私は⋯⋯今世で特別な贈り物を受け取った。

 

「レミリアー、フランー。もっと遊ぼぉよぉ!」

 

 妹という名の、狂愛し、溺愛する対象を。世界の誰よりも可愛くて美しい完璧で最高な2人の妹を、神は私へ贈ったのだ。

 

「ちょ、お姉様! 引っ付き過ぎよ! 少しくらい離してほしいわ!」

「あ、お姉様良いなー。ナイア姉様、私のとこにも来てー」

「どうしたのぉ? 今日は仕事で疲れたし⋯⋯い、っぱい甘えていいからねぇ」

 

 紅い目と白い肌、そして、青い髪を持つレミリア・スカーレット。同じく紅い目と白い肌を持ち、黄色い髪をしたフランドール・スカーレット。この2人が私の大切な妹。いつか結婚する事を約束した親愛なる妹だ。ちなみに、姉妹だけど母親が違う。所謂異母姉妹だ。だから、きっと結婚は大丈夫だと思ってる。ぶっちゃけルールとかどうでも良いから、この娘達と結婚したい。幸せな家庭を築きたい。今のままでも良いとは思うけど、2人には離れてほしくないから、形だけでも結婚したい。そして、離れられないようにしたい。要はまぁ、2人を束縛して私だけの彼女にしたい。私も女性だけど、そういう考えはありだと思うし。そもそも、可愛過ぎる2人がいけない。だから、結婚という考えに至るのも、至極真っ当だろう。

 

「あぁ、フランの肌もスベスベして気持ちぃぃ⋯⋯」

 

 一番下の妹、フランのほっぺに自分のほっぺを当てて楽しんでいる時、視界の隅に羨ましそうにするレミリアの顔が映った。レミリアは恥ずかしいのか、周りの目を気にしてか、なかなか甘える事が無い。フランは大衆の前でもめちゃくちゃ甘えてくるのに。ただ、レミリアに嫌われてるわけでは無い。2人だけの時は素直に甘えてくるし、寝てる時にも寝言で私の名前を呼んでくれる。だから、本当に恥ずかしいだけなんだと思う。

 

「レミリアー、貴女もこっちにおいで、ねぇ?」

「わ、私は別に⋯⋯」

 

 だからこそ呼んだのだが、顔を赤くするだけで全く来ない。今は姉妹3人だけなのに。

 

「えー! ナイア姉様は私が独り占めしたーい!」

「こらこら。そんな意地悪言わないの。さぁ、レミリアー、早くぅ」

「い、いい歳して、そんな真似⋯⋯!」

「良いの良いのぉ。今は3人だけ。邪魔する奴らなんて居ないからさぁ。まぁ、来ないなら良いよ。私から行くだけだしねぇ」

 

 膝の上に乗せていたフランを一度降ろして、レミリアへと近付く。が、レミリアは徐々に後退していく。流石の私も妹を愛でたい気持ちが我慢できず、抵抗する鋤を与えずに近付いて抱き付いた。

 

「ああもぅ、レミリアちゃん可愛すぎぃ! 抵抗せずに私に好きなようにされてよぉ!」

「うー⋯⋯こうなるから嫌だったのに⋯⋯。お姉様、引っ付き過ぎだって⋯⋯」

「あー! お姉様ズルい! ナイア姉様、私も私もー」

「もちろん良いよ。さぁ、早くおいでー」

 

 レミリアとフランを引き寄せ、2人を抱擁する。吸血鬼の温もりは人間のそれと大差なく、私が今を生きている事を実感させる。前のように触れもしない偶像崇拝等では無く、触れる事ができる温かさのある対象を授けてくれた事を、神に感謝しよう。そして、それ以上に妹に感謝しよう。私という姉の妹で居てくれて、本当にありがとう。お礼にいっぱい愛でよう。そして、いつか結婚しよう。

 

「はぁー⋯⋯幸せだわぁ」

「お姉様? 急にどうしたの?」

「ううん。何でも無いよぉ」

 

 とっても幸せな毎日。常に探索者達の恐怖と隣り合わせだった前世とは比べ物にならない程の幸福。こんな日が、一生続けば良いのに。

 

 この時の私は、これから先に起こる事も知らず⋯⋯ただ呑気にそう思っていた。




一応、現在執筆中の罪妹録が終了した後に出す予定です。
なのでまだまだかかりますが、書いちゃったので⋯⋯()

では、また東方混沌姉を出した時にでも会いましょう。それと、クトゥルフ神話の生物が意外と出てくるかもしれない⋯⋯()


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