「ハァ……ハァ……ハァ……」
「ゼー、ゼー……」
公園を走り抜けた兵藤と友野の二人は友野の家の前で息を切らしていた。公園から友野の家までを全力疾走で駆け抜けてきたのだ。距離にして約800メートル。それは息も切れるというものだ。
「つ、着いたぜ……俺んち」
「お。おぅ……は、早く入ろうぜ」
二人はゾンビさながらの歩幅で玄関に向かう。友野はたどり着くと鍵を取り出し差し込む。
「お帰り友野君。部長から聞いて先に来てたよ」
しかし差し込んだカギは押し込む間もなくすぐさま開けられる。駒王学園の王子様の木場優斗の手によって。
「……おい、なんで友野の家に木場が居んだよ?ひょっとしてお前ら……」
「そっからは冗談でも言うなよ?何処から尾鰭背鰭がつくか分かったもんじゃねぇからな」
冗談めかして口を開こうとした兵藤の言葉を友野は先んじて封じる。その眼光は鋭く、冗談が通じないのは明確だった。
「な、何も言わねぇって……」
「だったらいいけどよ。ほら入れって。いつ来るが分からねぇぞ」
「お、おう!」
友野の催促で兵藤は家に入る。友野の家に兵藤が入るのは実に2ヶ月ぶりであった。
「んじゃお邪魔すんぞ〜……お?」
「あらあらいらっしゃい。この子が友野くんの言ってた兵藤くん?」
「噂通りスケベそうな顔してますね。離れた方がいいですよ姫島先輩。何されるかわかりません」
目の前には男の楽園が広がっていた。
大和撫子で知られている二大お姉様の三年、姫島朱乃。そしてマスコットキャラのような愛くるしさを持つ一年の塔城子猫。
駒王学園で知らない人はいないと言うほどの有名女子生徒二人を間近で見た兵藤の反応は素直なものだった。
「テメェ友野!どう言うことだこいつ!なんで姫島先輩と子猫ちゃんがここに居んだよ!納得のいくよう説明しろ!」
嫉妬だ。まぁ無理もないかもしれない。絶世の美女とも言える顔と放漫な体つきをした乙女と愛玩動物のような愛らしさを持った将来性抜群のあどけなさを残す少女が一人の男の家にいるのだ。年頃の少年にとっては嫉妬するなという方が酷かもしれない。
「待て待て待て待て待て!姫島先輩は説明できるけど塔城さんに関しては何にもしらねぇんだけど!?オレも若干テンパってんの!分かる?!というか分かれ!」
「分かってたまるかってんだ!羨ましいんだよこのヤロー!」
「痛たたたたた!!首を締めるなお前!」
兵藤の怒りがなす業なのか、すごい勢いで友野の首が締まっていく。友野が必死に兵藤の手をタッチしてギブアップを申告しているが、兵藤には聞こえない。
「友野ぉ~!どういう意味だてめー!!姫島先輩はどうして分かるんだ?!なんか特別な関係か!!吐けー!お前が知ってる事洗いざらい全部吐けー!」
「ウググググ…………ひ、姫島先輩…………フォローを…………」
「兵藤君?友野君とはなにもありませんわ。ただ一つ屋根の下で食事を共にする関係ってだけですから」
「コノヤロー!」
「な、なんで業火に重油を…………」
「うふふ♪」
「姫島先輩!ちょっとおふざけが過ぎますよ!」
「…………」
姫島の言葉で兵藤の力が強まる。腕に血管が二、三本浮かび上がり目が段々と理性を失いつつあった。事の元凶である姫島は楽し気にくすくすと笑っているだけであり、塔城は一歩引いた位置で冷ややかな目を兵藤に向けていた。唯一止めに入った木場も兵藤の怒りのパワーを抑えられないのか、完全に止めることは出来ていない。
そこに一つの変化が訪れる。リビングの床が光りだし、謎の紋章が浮かび上がる。そこに一つの影が差す。
「今戻ったわ皆!有希君は無事!?」
その影はリアス・グレモリーであった。グレモリーは現れたと同時に周囲を見渡し、友野を探す。そして兵藤に首を絞められている彼を見つける。
「有希君!大丈夫!!?」
「おおおおおい!友野!てめぇ姫島先輩だけじゃなくグレモリー先輩とも関係持ってんのか!!」
「ちょっと放しなさい!有希くんになにかあったら許さないんだから!!」
「しかも名前呼びとかいい加減にしやがれってんだ!!」
「…………だから名前呼び辞めてって言ったのに…………」
事態はさらに悪化した。今日の友野の家の夜は長引きそうだ。
「ヴェッホ!エホ!ああ…………まだ胃酸が喉奥にある感じがすんな?」
「はい、お水。ゆっくり飲んでね」
「おお、サンキュー木場。んぐ…………っあー!やっと落ち着いた」
「一応言っとくがまだ納得したわけじゃねーからな?ちゃんと説明しろ」
「分かったからもうあの首締めはやめてくれよ?」
兵藤を
「それじゃあ落ち着いたところで、早速話をしていきましょうか?」
そしてそれをリアス・グレモリーは正面からのぞき込んでいた。
現在友野家のリビングには友野と兵藤、そして木場の男子組とグレモリー達女子組がテーブルを間に挟んで向かい合っていた。中央にはリアスと兵藤が陣取り、その両サイドは二人よりも一歩引いた状態で座っていた。話の主役は兵藤とグレモリーの様だ。
「は、はい!」
「いい返事ね。それじゃあ最初に、さっき出会った黒い羽根の男について話した方がいいかしら?」
「お、お願いします」
グレモリーの美顔を正面から見ている兵藤はその迫力に少しばかり尻すごみする。しかし好奇心の方が勝ったのか、話を聞こうと前のめりになる。
「あれは言ってしまえば…………堕天使よ」
「堕天使…………ですか?」
「そう。ゲームなんかに登場するあなたが想像する通りの堕天使」
そこからの彼女の話は友野が聞いた話と一緒であった。悪魔、天使、堕天使の三つ巴の大戦。『神器』という存在。そして、その神器が友野、そして兵藤にも宿っているという事実。
「へー、すげぇじゃん兵藤?お前そんな物騒なもん持ってたんだな?」
「そりゃお前も一緒だろうが!なんで俺だけ省こうとすんだよ!!」
「だって俺の場合はこの指輪だし、これ元から俺が持ってた訳でもねーしな。お前の場合は違うじゃん。ほら、早く出せ。銃刀法違反者」
「変なあだ名付けんな!!」
「じゃあ変態とっとと出すもん出せ」
「んのやろー!!」
「ぐえ!首はやめろっての!!」
兵藤と友野の取っ組み合いが始まる。それを見ていたグレモリーはその様子を唖然と眺めていた。
「あなた達……今の話聞いてた?こちらとしては結構重要な話だったのだけど?」
「んあ?ああ、聞いてましたよ。けど、俺としちゃ前も言ったようにスケールがでかすぎて良く分かんないっつうか、神話みたいで現実味が無いんですよねー、羽男に襲われてもですけど」
「オレはそれよりも友野がグレモリー先輩と親しい関係だったことの方が重要です!!友野ー!俺の神器が出てきたら覚悟しとけよー!!」
「上等だよ俺の神器舐めんなよ。良く分かんねぇがスゲェんだからな。ビーム出るぞビーム。多分な」
「だったらこっちはロケットパンチだ!お前のビームもろとも顔面粉々にしてやる!!」
「面白れぇじゃねぇか!こっちには指輪五個あんだからなビーム以外にもスゲー効果4つ持ってんだからな!クラピカを思い出せ!俺たちの『HUNTER×HUNTER』を思い出せ!」
「何の話してんのよあなた達!!」
紆余曲折して訳の分からない話に突飛していく二人にグレモリーの怒鳴り声は響いた。
「ソロモン王が見つかっただって!?」
とある西洋の王城のような場所にて、赤毛の美男子が驚愕の表情を浮かべていた。その向こうに銀髪のメイド服姿の女性が膝を着いて向かい合っていた。
「はい。どうやらリアスの通っている高校にその適応者が居たらしく、指輪が輝いたとの報告が」
「リーアの高校……駒王学園か!まさか本当に実在していたなんて……おとぎ話や都市伝説みたいなものだと思っていたのに……」
「どうしますか?下手に強硬手段に出ると、指輪の力が発動してしまう可能性もありますよ」
メイド服の女性の意見に赤髪の男は肘をテーブルについて額に拳を当てる。物悲し気に目が沈んでいた。
「…………今指輪はリーアの届く範囲の中にあるんだね?」
「はい。今はリアスが監視をしているらしいですが、指輪の力の影響次第では……」
「…………下手に手を打って気付かれない方がまだ安全策だ。此方からの接触は今は控えてくれ、グレイフィア」
「分かりました。眷属にもそう伝えておきます」
「頼むよ」
赤紙の男とメイドの女性、グレイフィアとの会話が終わると、男はゆっくりと座っていた椅子の背もたれに全体重を預ける。ギシリと軋む音が聞こえるが、彼にはどうでもいい事であった。
「『悪魔たちの本来の力を解放する』と言われているソロモンの指輪……世界で唯一の悪魔によって作られた 『神器』か……眉唾物だったが、もし本当だったら、とんでもない事だ。動き出すかもしれない……あの御方達が…………」
赤髪の男の呟きが誰にも聞かれることなく宙を漂った。
お久しぶりです。この数年でメギドも変わりましたね。
オリエンスの弱体化騒動から始まり、現在ではジズとミノソンが強いと話題です。
今後もメギド72の活躍を期待している身としてはハラハラします。
自分もミノソンを狙って回しましたがそれ以外の新参メギドが10体ほど引き当てるという結果に。嬉しいんやら悲しいんやら…………
この話も進めていけたら進めていく所存です。
いっそのこと作品一つを誰かに委託出来たら楽なんだろうな……