二人いわくここから先の内容は玄関先では話せないらしく、俺は仕方なく二人を汚い家の中に招き入れ、ゴミや荷物をどけて何とか座る場所を作り、使うことがほとんどなかった座布団を床に敷いて話が出来るようにし、二人を座らせる。
「ところで、さっきの「VR部隊」っていうのは?」
「木葉さんは昨日昼に締結された「FDVR戦争条約」をご存知ですか?」
「ええ、あの戦争を仮想世界でゲーム形式で行うっていう。」
「その認識で合っています。「VR部隊」と言うのは、日本と他の国家との間でVR戦争を行う際に動く、いわば仮想世界の自衛隊です。ですが、自衛隊内ではどうしてもVRに触れる機会が少なくいざVR戦争となった際、新兵と同等のレベルになるものが大半になると予想されたため、VR内での教官役としてVRゲーム、特に
自衛隊員はすぐに動けないといけないから、なかなかVRは出来ないだろう。国の機関としてはなかなか面白い事を考えたと感心する。
「他には声をかけているプレイヤーはいるので?」
「はい、20名ほど電話等で声をかけていますが、不在であったり外出していたりと勧誘は難航しております。」
まあそうだろうな。それぞれ事情もあるだろうし、実際に承諾してくれるのは半数程度だろう。
「条件はどうなりますか?」
「こちらをご覧ください。」
そういわれて出された紙を受け取り眺める。
俺がすることは大きく分けてVR部隊の教官役と戦争時の戦闘、そして部隊編成の3つ。全て補助をしてくれる自衛隊員が付いて助けてくれるとなっている。条件は過去受けてきた企業に比べて良く、公務員と言うこともあって安定も取れる。住家に関してはVR部隊用の寮があり、部屋も書いている内容通りなら今住んでいるアパートよりも広い。高給取りでもなければ喜んで受けそうな話だ。
しかしよく見れば勤務先が書いていない。
「配属はどうなりますか?」
「それですが、現在は一番もよりのVR部隊基地となります。木葉さんであれば新練馬VR部隊基地となります。」
大体車で2時間ぐらいの距離か。新練馬基地は確か最近出来た基地だ。半年くらい前にニュースで移転のためだとか言っていたのを思い出す。
「引き受けてくださいますか?」
「少し待ってもらってもよろしいですか?」
「ええ。大丈夫ですよ。」
許可をもらい、席を立ってトイレに行く。
現実味の無い話に夢じゃないかと不安になるが頬を抓って痛みがあった。
「う、嘘だろ。本当にこんなことがあるのかよ。」
まさに青天の霹靂。
条件を見てもかなり良い。しかし、ある一つの業務が決断を阻んでいる。
「戦争時の戦闘」だ。
FDVR戦争条約は概要を読んだ限りだと戦争の場を仮想世界へと移しただけとも言える。すなわち、VR戦争に参加すると言うことは、部隊の人たちだけでなく国をも背負うという事。これが徴兵であればまだよかったが、今回はあくまで当人の意思ということになる。逃げ道があるのだ。
思えば俺はずっと責任から逃げつづけてきた。その結果が今のこの状況だ。今回の件は生活面ではうれしい話ではあるが、ある意味逃げつづけてきたツケとも言えるだろう。
責任を意識した途端、心臓の鼓動が早まり息苦しくなってくる。
「でも……」
この話まで逃げてしまえば、俺はこれからも逃げつづけるだろう。そしてこれはトッププレイヤーとしての責任でもある。その責任から逃げてゲームを続けるという筋の通らない事はできる訳が無い。「責任はいつかとらなければならない」という親の言葉の意味が今やっと理解できた。
心を決め、深呼吸で呼吸を整え、俺はトイレを出て二人の居る部屋へ戻る。
「戻りましたか。」
「はい。」
「ではもう一度聞きます。この話、引き受けてくださいますか?」
もう一度深呼吸をして、俺は口を開く。
「この話……」
VRS(バーチャルリアリティーシューティング)
VRMMOとは違い、オフラインのソロプレイモード、オンラインのマルチプレイモードの二つが存在する、シューティング系ゲームのカテゴリー。
基本はFPSのオンライン対戦モードがVRになったと思ってください。