「本当に申し訳ございませんでした!!」
目を覚ますと、妖夢ちゃんが謝ってきた。全力の謝罪、土下座である。
土下座をしたことは何度もあるけど、やられるのは初めて。なんだろうか……普通に引くね。
「あ~、そんな謝らなくてもいいよ。断りきれなかった俺も悪かったし」
だって、カッコイイとこ見せたかったんだもん。
「しかし……」
俺の言葉に納得できないらしい妖夢ちゃん。うん、良い娘だ。
「黒もそう言ってるのだから、気にしなくてもいいわよ」
いや、原因の6割以上は幽々子のせいだからね?
残りは、妖夢ちゃんが1割、俺が3割と言ったところだろう。
「お前が言うな」
「何よ、身長だけじゃなくて心も小さい男ねえ」
コラ身長のことは言うな。最近、霊夢にも抜かれそうで割と気にしているんだから。仕様が無いじゃん、伸びないんだもん。成長止まってるんだもん。
「まさか、黒さんがあんなに弱いとは思わなくて……本当にすみませんでした」
あれ? 俺、馬鹿にされてね?
謝る振りして、暴言吐かれてない?
「ん~、ホントそんな気にしなくていいんだけどなぁ。それでも気になるなら、そだね……今度、団子でも奢ってよ。それで手打ちにしよう」
今度がいつになるか分からんけどさ。
「はい。じゃあ、これでこの話はお仕舞い。妖夢、御夕飯の準備をお願い。もう、お腹がペコペコだわ。あ、黒。今日は泊まっていきなさい。久しぶりにお酒でも一緒に飲みましょ」
「うん、じゃあお言葉に甘えて一晩お世話になるよ。と言うことで、よろしくね妖夢ちゃん」
飛んで帰る体力も霊力もない。悲しいけれどこれが俺の実力なんです。
「は、はい。わかりました。腕に縒りをかけ作ります」
妖夢ちゃんはまだ納得していなかったみたいだけど、それじゃあ話が進まない。ま、悩みながら生きてくださいな。
その後、大量の料理が出てきた。
こんなに食えんだろ……何人前ですか? え? これでいつも通り?
エンゲル係数とかすごそうですね……
「時が経つのも早いものね」
縁側に腰掛け、幽々子と酒を飲みながらお話中。辺りは暗く星明かりに照らされ、紅葉が微かに見える程度。
「アイツら止まるってことを知らないからな」
夕飯をあれだけ食べたはずなのに、幽々子は休まずお酒を飲んでいる。どうなってんだよ……
「秋も秋で紅葉が綺麗だけれど、やっぱり春が一番ね。ここの桜は何度見ても飽きないわ。ねぇ……黒は西行妖が花を付けている姿を見たことがあるのよね?」
葉すら付けることがなくなった木を見ながら、幽々子が聞いてきた。
「まぁ、ね」
1000年以上も前のことだけど。
「どんな感じだったの?」
どんな感じ……か。
ちょいと昔のことになってしまったけれど、今でも鮮明に思い出せる。
「……綺麗だったよ。すごく、綺麗だった」
ホント――死にたくなるくらい綺麗だった。
「そう……黒は知っているかしら? あの木の……いえ、なんでもないわ」
「ん? あの木が何なのさ?」
「やめておくわ……ほら器、空いているじゃない。どんどん飲みなさいよ」
あ、ちょ、やめなさい。
そんなにお酒強くないんだから。
たぶんこの時、俺がもう少ししっかりと聞けていたら、あの――終わらない冬は訪れなかったのだろう。
気づいた時にはもう遅い。
この人生そんなことばかりだ。
「よしゃ、そろそろ行くわ。じゃあね、幽々子。妖夢ちゃん」
次の日の朝。
幽々子と妖夢ちゃんに別れを告げる。お世話になりました。
「はい、いつでも来てください。お待ちしております」
「今度は春に来なさいよ。今でもお酒を作っているんでしょ?」
「うん、作っとるよ。そだね。今度は桜の咲く時期に」
「ふふっ、楽しみだわ。次の春は盛大にお花見しましょうか」
あんまり、はしゃぎすぎるなよ……
そんなこんなで冥界を後に。今度は紫も誘ってやるか。
なんて珍しくそんなことを思った。
冥界からの帰りは行きと違い、ほぼ落ちるだけ。物理法則万歳。
その後は人里に寄り、すっかり忘れていた阿求ちゃんの所へ。ちゃんと団子も買っていきました。
そして、あの時の迷子さんも加えて雑談とお茶会。
阿求ちゃんが幻想郷縁起の英雄伝に、俺のことを載せたがっていたけれど、それは丁重にお断りした。なんか、ほら……照れるじゃん。
随分とのんびりしていたせいか、稗田家を出る頃には太陽が沈み始めていた。遠くの方からヒグラシの声がする。夏も終わり、すかっり秋になったというのにね。時の流れについて行けてないのだろう。
まるでどっかの誰かみたいだ。
人里で新米や南瓜・茄子・椎茸なんかの野菜。そして兎肉を買って飛び立つ。向かう先は博麗神社。
どうせ、いつものように腹を空かせているだろう。たまには保護者面をするのも悪くない。
そんな気分なんだ。
博麗神社に着くと、霊夢はいつものように縁側に腰掛けお茶を飲んでいた。
むぅ、ちょっと買いすぎたな。結構疲れたわ。
お日様だって既に半分以上隠れてしまっている。日も短くなってきたねぇ。
「あら、こんな時間に珍しいわね。素敵なお賽銭箱ならあっちよ……って、え? え? その手に持っている大量の食料は何?」
俺に気づいて霊夢が声をかけてきた。
そして、何かを期待するように俺の方をチラチラと見てくる。
何これ、楽しい。
「ん? たまたま通りかかっただけだよ。ちょっと霊夢に自慢しようと思ってな。よし、んじゃあ帰るわ。また……おいこら。どっからその針とお札を出した。待て! 構えるな、落ち着きなさい! 嘘、嘘だって。ちゃんと霊夢のために買ってきたやつだよ」
ちょっと、からかうとこれだよ。これが反抗期ってやつだろうか?
「初めからそう言いなさいよ。それで?この後、黒はどうするの? 帰ってもいいわよ」
お礼くらい言いなさいよ。まぁ言われたら言われたで、どう反応していいのかわかんないけど。
「たまには外食も悪くないな」
昨日も外食だったけど。
「そ。じゃあ手伝って。ほら行くわよ」
霊夢はそう言って、母屋の中へ入って行った。
しっかりと食料を持っていくあたりは流石である。
人里で聞こえていたヒグラシの声はなくなっていた。これも時の流れってやつなのかねぇ?
たまには逆らってみろってんだよ。
今年も、あの姉妹神が頑張ってくれているおかげか豊作と、綺麗な紅葉が期待できる。紅葉狩りとかしたいけど、あの山は天狗が五月蝿いんだよなぁ……
「黒、早く。作り始めるわよ」
霊夢の声がした。
「今行くよ」
まぁ俺は、のんびりと行かせてもらおう。
⑨話にしたかったですが、ちょっと書いて諦めました
無理です
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