東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第9話~死にたくなるくらい~

 

 

「本当に申し訳ございませんでした!!」

 

 目を覚ますと、妖夢ちゃんが謝ってきた。全力の謝罪、土下座である。

 土下座をしたことは何度もあるけど、やられるのは初めて。なんだろうか……普通に引くね。

 

「あ~、そんな謝らなくてもいいよ。断りきれなかった俺も悪かったし」

 

 だって、カッコイイとこ見せたかったんだもん。

 

「しかし……」

 

 俺の言葉に納得できないらしい妖夢ちゃん。うん、良い娘だ。

 

「黒もそう言ってるのだから、気にしなくてもいいわよ」

 

 いや、原因の6割以上は幽々子のせいだからね?

 残りは、妖夢ちゃんが1割、俺が3割と言ったところだろう。

 

「お前が言うな」

 

「何よ、身長だけじゃなくて心も小さい男ねえ」

 

 コラ身長のことは言うな。最近、霊夢にも抜かれそうで割と気にしているんだから。仕様が無いじゃん、伸びないんだもん。成長止まってるんだもん。

 

「まさか、黒さんがあんなに弱いとは思わなくて……本当にすみませんでした」

 

 あれ? 俺、馬鹿にされてね?

 謝る振りして、暴言吐かれてない?

 

「ん~、ホントそんな気にしなくていいんだけどなぁ。それでも気になるなら、そだね……今度、団子でも奢ってよ。それで手打ちにしよう」

 

 今度がいつになるか分からんけどさ。

 

「はい。じゃあ、これでこの話はお仕舞い。妖夢、御夕飯の準備をお願い。もう、お腹がペコペコだわ。あ、黒。今日は泊まっていきなさい。久しぶりにお酒でも一緒に飲みましょ」

 

「うん、じゃあお言葉に甘えて一晩お世話になるよ。と言うことで、よろしくね妖夢ちゃん」

 

 飛んで帰る体力も霊力もない。悲しいけれどこれが俺の実力なんです。

 

「は、はい。わかりました。腕に縒りをかけ作ります」

 

 妖夢ちゃんはまだ納得していなかったみたいだけど、それじゃあ話が進まない。ま、悩みながら生きてくださいな。

 

 

 その後、大量の料理が出てきた。

 こんなに食えんだろ……何人前ですか? え? これでいつも通り?

 

 エンゲル係数とかすごそうですね……

 

 

 

 

 

 

 

 

「時が経つのも早いものね」

 

 縁側に腰掛け、幽々子と酒を飲みながらお話中。辺りは暗く星明かりに照らされ、紅葉が微かに見える程度。

 

「アイツら止まるってことを知らないからな」

 

 夕飯をあれだけ食べたはずなのに、幽々子は休まずお酒を飲んでいる。どうなってんだよ……

 

「秋も秋で紅葉が綺麗だけれど、やっぱり春が一番ね。ここの桜は何度見ても飽きないわ。ねぇ……黒は西行妖が花を付けている姿を見たことがあるのよね?」

 

 葉すら付けることがなくなった木を見ながら、幽々子が聞いてきた。

 

「まぁ、ね」

 

 1000年以上も前のことだけど。

 

「どんな感じだったの?」

 

 どんな感じ……か。

 ちょいと昔のことになってしまったけれど、今でも鮮明に思い出せる。

 

「……綺麗だったよ。すごく、綺麗だった」

 

 ホント――死にたくなるくらい綺麗だった。

 

「そう……黒は知っているかしら? あの木の……いえ、なんでもないわ」

 

「ん? あの木が何なのさ?」

 

「やめておくわ……ほら器、空いているじゃない。どんどん飲みなさいよ」

 

 あ、ちょ、やめなさい。

 そんなにお酒強くないんだから。

 

 

 

 たぶんこの時、俺がもう少ししっかりと聞けていたら、あの――終わらない冬は訪れなかったのだろう。

 

 気づいた時にはもう遅い。

 この人生そんなことばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしゃ、そろそろ行くわ。じゃあね、幽々子。妖夢ちゃん」

 

 次の日の朝。

 幽々子と妖夢ちゃんに別れを告げる。お世話になりました。

 

「はい、いつでも来てください。お待ちしております」

 

「今度は春に来なさいよ。今でもお酒を作っているんでしょ?」

 

「うん、作っとるよ。そだね。今度は桜の咲く時期に」

 

「ふふっ、楽しみだわ。次の春は盛大にお花見しましょうか」

 

 あんまり、はしゃぎすぎるなよ……

 

 そんなこんなで冥界を後に。今度は紫も誘ってやるか。

 なんて珍しくそんなことを思った。

 

 

 冥界からの帰りは行きと違い、ほぼ落ちるだけ。物理法則万歳。

 

 その後は人里に寄り、すっかり忘れていた阿求ちゃんの所へ。ちゃんと団子も買っていきました。

 そして、あの時の迷子さんも加えて雑談とお茶会。

 

 阿求ちゃんが幻想郷縁起の英雄伝に、俺のことを載せたがっていたけれど、それは丁重にお断りした。なんか、ほら……照れるじゃん。

 

 

 随分とのんびりしていたせいか、稗田家を出る頃には太陽が沈み始めていた。遠くの方からヒグラシの声がする。夏も終わり、すかっり秋になったというのにね。時の流れについて行けてないのだろう。

 まるでどっかの誰かみたいだ。

 

 人里で新米や南瓜・茄子・椎茸なんかの野菜。そして兎肉を買って飛び立つ。向かう先は博麗神社。

 

 どうせ、いつものように腹を空かせているだろう。たまには保護者面をするのも悪くない。

 そんな気分なんだ。

 

 

 

 

 博麗神社に着くと、霊夢はいつものように縁側に腰掛けお茶を飲んでいた。

 むぅ、ちょっと買いすぎたな。結構疲れたわ。

 お日様だって既に半分以上隠れてしまっている。日も短くなってきたねぇ。

 

「あら、こんな時間に珍しいわね。素敵なお賽銭箱ならあっちよ……って、え? え? その手に持っている大量の食料は何?」

 

 俺に気づいて霊夢が声をかけてきた。

 そして、何かを期待するように俺の方をチラチラと見てくる。

 

 何これ、楽しい。

 

「ん? たまたま通りかかっただけだよ。ちょっと霊夢に自慢しようと思ってな。よし、んじゃあ帰るわ。また……おいこら。どっからその針とお札を出した。待て! 構えるな、落ち着きなさい! 嘘、嘘だって。ちゃんと霊夢のために買ってきたやつだよ」

 

 ちょっと、からかうとこれだよ。これが反抗期ってやつだろうか?

 

「初めからそう言いなさいよ。それで?この後、黒はどうするの? 帰ってもいいわよ」

 

 お礼くらい言いなさいよ。まぁ言われたら言われたで、どう反応していいのかわかんないけど。

 

「たまには外食も悪くないな」

 

 昨日も外食だったけど。

 

「そ。じゃあ手伝って。ほら行くわよ」

 

 霊夢はそう言って、母屋の中へ入って行った。

 しっかりと食料を持っていくあたりは流石である。

 

 人里で聞こえていたヒグラシの声はなくなっていた。これも時の流れってやつなのかねぇ?

 たまには逆らってみろってんだよ。

 

 今年も、あの姉妹神が頑張ってくれているおかげか豊作と、綺麗な紅葉が期待できる。紅葉狩りとかしたいけど、あの山は天狗が五月蝿いんだよなぁ……

 

「黒、早く。作り始めるわよ」

 

 霊夢の声がした。

 

「今行くよ」

 

 まぁ俺は、のんびりと行かせてもらおう。

 

 

 






⑨話にしたかったですが、ちょっと書いて諦めました
無理です


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