東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第11話~終わらない冬~

 

 もう4月となり、いつもなら雪なんてとっくに溶けているはずの時期。ここ幻想郷では、いまだに雪が降っていた。

 これじゃ秋の終わりから、春に向けて力を蓄えていた桜たちも救われない。

 

 異変……なのかな? ん~、決め付けるにはまだ早いか。春告精が訪れるのはもう少し先だろうけれど、ここまで冬が長いのは初めてだ。

 

 寒いのは嫌いなんだよね。

 

 冬の時期は人里の人間も篭ってしまうため、迷い人に来るお客さんも少ない。開店休業状態。

 つまり、いつも通り。

 

 ……暇だ。人が来ないから、すごく暇だ。

 う~ん、どうしようか。紅魔館はこの前行ったし、白玉楼もそのうち行くしなぁ。

 

 よしっ、決めた。

 霊夢の所にでも行くとしよう。

 

 いつもより厚着をし、数本のお酒を持って家を出る。

 これだけ持っていけば邪険に扱われることもない……はず。

 

 あ、おつまみも持っていけば良かったなか。まぁ、また戻って来ればいいか。

 

 

 

 

 

 

「んっと」

 

 博麗神社の鳥居に転移。空は晴れているはずなのに、ハラハラと雪が舞っている。冬って、曇っていた方が暖かいよね。

 晴れの日は寒いです。

 

 てか、此処雪かきしてないじゃん。まぁ、鳥居があるのは神社の裏側だし問題ないのかな。

 人、来ないもんね。博麗神社自体に人が来ないだけな気もするけど……

 

 膝くらいまである雪を押しのけ進む。

 むぅ、歩きづらい。

 

 飛べば良かったことには後で気づいた。

 

 

 そんな博麗神社の母屋の方からは楽しげな声が聞こえてきた。ありゃ、誰か来てるのかな?

 

「おしっ霊夢。かまくら作ろうぜ。かまくら」

 

「私は嫌よ。寒いもの。ほら戸を閉めなさい。風が入ってくるでしょ」

 

 どうやら魔理沙ちゃんが来ているらしい。

 元気そうで何よりだ。

 

「おっす。こんにちは、霊夢。魔理沙ちゃん」

 

「また喧しいのが増えたわね……」

 

 失礼な。仕様がないでしょ、暇だったんだもん。

 

「こんにちは、だぜ」

 

 おう、こんにちは。

 

「ちょうど良い所に来たな。かまくら作ろうぜ黒」

 

 かまくら、ねぇ……

 それはまさに雪遊び。

 

 

「任せろ、滅茶苦茶でかいの作るぞ」

 

 雪遊び大好きです。

 

「……勝手にやってちょうだい。私はお茶を飲んでいるわ」

 

 なんだよ、完成しても入れてあげないぞ?

 

 

 

 

 と、言うことで魔理沙ちゃんとかまくらを作ることに。まずは雪を集めて雪山にする。

 連日連夜降り続いてくれたおかげで、雪の量には困らない。

 

 俺がせっせと雪を集めている間、魔理沙ちゃんは違うものを作っていた。いや、手伝ってよ……

 

「えと……これは何なの魔理沙ちゃん?」

 

 かなり適当な雪の柱を真ん中に立て、その周りに歪な形の雪玉が二つ。

 

「浪曼砲だ」

 

 魔理沙ちゃんが言った。

 ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか、完成度低いなオイ。

 

「甘い……浪曼砲はこんなもんじゃない。作り直すぞ! 魔理沙ちゃん、水を持ってきてくれ。できれば塩水で」

 

「え? お、おう」

 

 かまくら作りは止め、浪曼砲の制作となった。

 ソイツを全身全霊で作る。男にはやらなきゃならん時があるんだ。

 

 

 2時間を超える制作時間のすえ、終に完成。直径1米の完璧な球を二つ。真ん中にあの独特な柱。横幅3米、縦1米、高さ4米の浪曼砲。

 

 それを目立つよう、博麗神社の参道の真ん中にぶっ立てた。

 

「で、できた……完璧だ」

 

 我ながら、かなりの完成度だと思う。

 

「これが……これが本当の浪曼砲か……」

 

 魔理沙ちゃんと二人で完成を喜び合う。ハイタッチとかしたりした。

 

 

 その後、霊夢に『そんな変な物作るな!』と言って、叩き壊された。

 俺は泣いた。魔理沙ちゃんは笑っていたけど。

 

 

 雪遊びを終え、家の中で談笑中。

 

「手、手の感覚が……」

 

 2時間以上も雪を触り続けていたせいで、手がとても冷たい。炬燵に手を入れ必死に温める。

 むぅ、一人用の炬燵じゃやっぱり狭いね。

 

「馬鹿なことやっているからよ」

 

 俺たちが遊んでいる中、霊夢はずっとお茶を飲んでいた。

 自由だなぁ。

 

「魔理沙ちゃんは手、大丈夫なの?」

 

 魔理沙ちゃんだってあれだけ雪を触ったのだし、ヤバそう。

 

「私は魔法で温めていたから大丈夫だよ」

 

 何それ、ずるい。いいなぁ、魔法。

 俺も一応、使えることは使えるけど、如何せん魔力がほとんどないからなぁ。

 

「それにしても、今年の冬はやたらと長いわね。そろそろ薪や炭がなくなりそうだわ」

 

 なんだ、霊夢も今年の冬が長いってことは気づいていたんだ。

 ん~、やっぱり異変なのかね? だとしたら、誰が起こしているのやら……

 

「それに、こんなに雪があったら参拝客だって来ないじゃない」

 

「つまり、いつも通りか」

 

「いつも通りだな」

 

 俺と魔理沙ちゃんのセリフが被った。

 雪がなくたって人来ないでしょ。

 

「でも、妖怪は来るんでしょ? レミリアとか」

 

 よく遊びに行くって言ってたし。

 

「アレが来ても仕様がないでしょ?」

 

 アレとか言うなよ……かわいそうでしょ。

 

「んじゃあ、逆に霊夢が紅魔館に行けば?」

 

 歓迎してくれるんじゃない? レミリアも喜ぶぞ。

 

「嫌よ。面倒臭い」

 

 そんな性格だから人が来ないんだろうね。

 

「紅魔館か……私はよく遊びに行くけどな」

 

「いや、魔理沙ちゃんは……遊びっていうのか?」

 

「ああ、ちょっと本を借りにな」

 

 本を狩りに行ってるの間違えだろう。

 

「図書館の魔女さん困ってたぞ? この前なんて、スカスカになった本棚を悲しそうに見つめて、むきゅむきゅ言ってたし」

 

「むきゅむきゅは言ってないだろ……ちょっと借りてるだけだって、そのうち返すよ」

 

 早めに返してあげてね。

 

「そう言えば、黒の能力でこの雪を消せないの?」

 

「降ってくる雪なら消せるけど、積もってるのは無理だよ。あと、俺が能力を使っても暖かくはならないよ」

 

 そこまで便利な能力じゃないのです。

 

「なによ、使えないわね」

 

そんなストレートに言わないでくれ……

 

 

 

 

 

 

 そんな感じでダラダラと喋っていたから、すっかり夜になってしまった。

 日が長くなったとは言え、いまだ冬。夜は冷え込む。

 

 と、言うことで。

 

「鍋やるべ」

 

 冬の定番。

 冬と言ったら、やっぱり鍋だよね。温めたお酒が美味しい季節です。

 

「なんで訛るの? あと家に食材はないわよ」

 

 うん、だろうとは思ってた。

 

「いいよ、俺が家から持ってくる。霊夢と魔理沙ちゃんは準備してて。お酒は持ってきてあるから燗もお願い」

 

 そんなこんなで、鍋を作ることに。具材は、白菜や葱などの野菜と兎肉。

 それと、魔理沙ちゃんがなぜか持っていた干し茸。……これ、毒茸じゃないよね?

 

 寒い冬の日に鍋と熱燗。最高です。

 霊夢と魔理沙ちゃんは気づいていなかったけれど、いつの間にか萃香も一緒に鍋を食べていた。萃香ってどこにでも現れるね……

 鍋の具材を持ってくるついでに、お酒も持ってきたけれどすでに空。いや、どんだけ飲むんだよ。

 

 俺が持ってきたお酒はなくなったから、萃香のお酒を飲むことに。それでも霊夢と魔理沙ちゃんは、萃香に気づかなかったみたいだった。

 もしかして、ただ酔ってるだけなんじゃ……

 

 その後、流石に鬼の酒は強かったのか、二人とも寝てしまった。

 俺はまだ飲めたので、簡単に酒瓶や鍋を片付け萃香と二人で飲むことに。

 

「博麗の巫女もだらしないねぇ。もう寝ちゃったのかい?」

 

 萃香が酒を飲みながら言った。

 人間基準ならこれでもおかしいけどね。十分飲み過ぎです。

 

「人間と鬼を比べるなよ……それと鬼の酒は人間には強すぎる」

 

「私にとっては人間の飲む酒が弱すぎると思うけどね。これも嫌いじゃあないけど。それに黒はまだ飲めるんでしょ?」

 

 歳の差ってやつかな。それにそもそも、普通の人間とは体の作りも違うんだろうね。

 

「俺は別。萃香、一杯くれ」

 

「はいよ、どんどん飲みな」

 

 伊吹瓢からお酒をもらい喉へ流し込んだ。

 高いアルコール度数が喉を焼きながら、体に染みていく。いやー、キッツい、滅茶苦茶キツいけど……

 

「やっぱり美味いな」

 

「私はいい加減飽きてきたけどねぇ。まぁ、美味いことには変わらない」

 

 伊吹瓢いいな~羨ましい。

 酒虫ってもう捕まえられないのかな?

 

 そう言えば、萃香はこの長すぎる冬をどう思っているんだろうか?

 

「なぁ、萃香はこの終わらない冬をどう思う?」

 

 萃香なら何か知っている気がする。

 

「私はさっさと春になって、お花見しながらお酒を飲みたいんだけどね。まぁ、もう暫くは雪見酒で我慢するよ」

 

 どこかズレた答え。

 でもそれは萃香らしい答え。酒ばっかだね。お前は。

 

「そうだねぇ……どうやら、亡霊の姫君が春を独り占めしようとしているみたいだけど、その辺りはあんたらに任せるよ。異変解決は人間のやることなんでしょ?」

 

 萃香が言った。

 ん? 亡霊の姫君って幽々子のことだよね? 春を独り占めって、春度でも溜め込んでるのか?

 何をしようってんだよ。

 

「はぁ、やっぱり異変か……」

 

 どうしようか、紫を起こした方がいいのかな。何を企んでいるのかわからないけれど、どうにも良い予感はしない。

 

「異変だね。咲かない桜を咲かせようとしている。ま、私は咲かない桜ってのも良いとは思うけど」

 

 咲かない桜……西行妖か。あれだけ念入りに封印したのだし、あの桜が咲くとは思えないけれど……

 う~ん、俺も異変解決の手伝いをするか。それなら紫も起こさなくて大丈夫だろ。冬の間、ずっと篭っていたのだし、たまには運動するのも悪くない。

 

「情報ありがと。今度お酒を持ってくよ」

 

「そりゃあ嬉しいね。今度は雪の上じゃなくて、桜の下で飲みたいかな」

 

 了解。

 また春になったら一緒に飲もう。

 

 その後も萃香と喋りながら飲み明かした。

 

 終わらない冬はもう少しだけ続きそうだ。

 

 






溶けていく雪だるまを見ると妙に悲しくなりますよね

と、いうことで春雪異変スタートです


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