東方酒迷録【完結】   作:puc119

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先日、友人がトラクターに轢かれました





第12話~雪猫迷える七色魔法使い~

 

 

『反魂蝶 -八分咲-』

 

 視界を埋め尽くすほどの弾幕――と言うよりは弾壁かな。蝶弾、大玉、レーザーと何でもありだ。

 

「え……なに、これ」

 

 幽々子の驚いたような声が聞こえた。

 ああ、そっか。そう言えばこんな仕掛けだったね。

 

「何よ、まだ続くの? 面倒ね」

 

 続いて聞こえたいつも通り気だるそうな霊夢の声。頑張って、これでラストだから。

 

 咲き誇る桜は、散るからこそに美しい。

 じゃあ、散ることのない桜と咲くことのない桜、美しいのはどっちだろうね?

 

 満開になりかけの妖怪桜を見ながら、他人事のようにふと思った。

 

 春の訪れまで、あと少し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 例年ならば春が訪れ、桜が咲きお花見でも楽しんでいる頃。

 そうだと言うのに未だ春は訪れない。

 

 雪がやまず、気温は上がらず、そんなんだからお客さんも来ない。

 終わらない冬、訪れない春。

 

 さて、そろそろ動かないといけない頃なんだろう。

 

 決して、あの子鬼が毎日俺の店に来ては暴れているからではない。『お花見したい。てかお酒飲みたい』とか言って暴れまわって、手がつけられないからではない。

 違うったら違うのだ。

 

 

 こんな中でも頭の中春満開の、あの巫女は動かないだろうし。

 ん~、面倒だけど今回は俺も手伝おうかな。

 

 紫を叩き起こすってのもありだけど、あの桜を封印したの俺だしなぁ……ま、頑張るとしよう。

 

 そろそろ逢魔が時、異変解決にはちょうどいい時間だ。

 

 出かける準備をして店を出る。マフラー暖かいです。行き先は博麗神社。

 どうせ霊夢はまだ動いてないだろうけれど、急ぐとしよう。

 

 

 

 

 

 

「っと」

 

 降り積もった雪のせいで、バランスを崩しながらも着地成功です。

 博麗神社の裏。あいも変わらず雪かきはしていなかった。

 

 天気は雪。

 此処まで続くと流石に飽きちゃうね。

 

 雪を押しのけ進むのは面倒だから飛んで移動。

 それにしてももうちょっと雪かき頑張ろうよ……雪下ろしとかちゃんとやってるのかな?

 思っているより、雪って重いんだよね。

 

 母屋の方へ行くと、ちょうど霊夢が出かけるところだった。

 良いタイミング。どこかへ出かけるのかな?

 

「や、霊夢。どっかに行くの?」

 

「あら、ちょうど良いわね。これからこの異変を解決しに行くから手伝って」

 

 おろ?

 霊夢が自分から動くとは……ちょっとだけ感動した。

 

「霊夢が自分から動くなんてどうしたのさ?」

 

「薪と炭が切れそうなのよ。こんなに雪があったら、拾いにも行けないし。それに、そろそろ雪も見飽きたわ」

 

 うん、まぁ、そんなもんか。

 人里の方も薪や炭はそろそろ厳しいだろうし。

 

 桜が恋しいね。

 花びらだけじゃなくて、俺は咲いている桜が見たいよ。

 

「よしゃ、そんじゃ行こっか」

 

「それで……今回は何処へ行けばいいの?」

 

 ん~……どうしようか。

 今回は教えてもいい気がするけれど……ま、霊夢なら一人でも辿り着くか。信頼しているよ、博麗の巫女。

 

「あ~申し訳ないけど、今回も自力で目的地を見つけてくれ」

 

「はぁ、まあいいわ。行きましょ」

 

 簡単な会話。

 単純な掛け合い。

 通常運転。

 

 さぁ、春を取り返しに向かおうか。

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば霊夢。屋根の雪下ろしは、ちゃんとやってる?」

 

 霊夢と一緒に飛びながら聞いた。

 因みに、異変で興奮した妖精は、霊夢が全部蹴散らしてくれる。霊夢さんマジパネェっす。

 

「親切な妖怪がやってくれたわよ」

 

 ……ああ、そうですか、無理やりやらせたのか。てか、いつも通りの巫女服だけど、寒くないのかね? マフラーとか手袋くらいつければ良いのに。

 

 暫く進むと、あれは……雪女か? そんな一人の少女が居た。

 

「げっ、あの時の巫女」

 

 その妖怪がこちらに気づき言葉を落とした。うん? あの時?

 

「な、なにさ。また私に雪かきをさせに来たの?」

 

 ……ああ、なるほど、被害者さんでしたか。

 

「霊夢……お前」

 

「何よ? 雪の妖怪だし、自分で黒幕とか言ってるから倒しただけよ。雪下ろしは善意でやってくれたわ」

 

「いや、無理やりやr……ちょい、待って! 戦う気はないから。そりゃあ、私だって冬が長いのは嬉しいけれど、季節の移り変わりくらい受け入れるているわ。それに春を奪うほどの力はないし」

 

「だってさ霊夢、進もうぜ」

 

「う~ん、やる気のない相手と戦っても体は暖まらないしね。行きましょ」

 

 ――じゃあね、妖怪さん。

 

 と言ったけれど見事に無視された。

 ま、こんなもんか。それじゃ、来年の冬にまた会いましょ。

 

 

 

 雪の妖怪さんと別れてから暫く。フワフワ飛びながら妖精を蹴散らす霊夢に、必死でついて行く。

 今回はちょっとばかし、霊力を増やしてきたから、紅い霧の異変の時よりはマシだけど、やっぱりキツい。

 いや、霊夢がおかしいんだよ? ホントに人間かよ、この巫女……

 

 

 そして、開けた場所へたどり着いた。

 

 

「あら? こんな所に家なんかあったっけ?」

 

 ありゃ……ここに来ちゃったか。

 あの娘はいるのかな?

 

「よく来たわね、人間!」

 

 あ、いたわ。

 今日も元気だったわ。

 

「誰?」

 

 名前は橙。紫の式神の式神です。幻想郷では数少ない、俺の癒し要素です。

 

「迷い家にようこそ。ここに迷い込んだら最後!二度と帰れないよ!!」

 

 そんなことないけどね。

 普通に帰れるけどね。

 

「迷い家? 迷い家って、あの物を持ち帰れば幸運になれる迷い家?」

 

 それは、やめてあげて……

 

「うん。そうだよ」

 

 橙も素直に答えなくていいんだよ?

 

「さてと、軽い日常品でも探そうかしら」

 

「あ、待って! ダメ!! 帰れ!!!」

 

「二度と帰れないんじゃなかったの……」

 

「もう! 仙符『鳳凰卵』!」

 

「はぁ、随分と元気な奴ね。でもこれで少しは暖かくなるかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃー……」

 

 弾幕ごっこはかなり一方的な試合になった。

 うん、まぁ、流石に橙と霊夢じゃ、ね……

 

「お疲れ、橙」

 

 うつ伏せに倒れ込んでいる橙に声をかけてみる。

 

「にゃ、黒様! お久しぶりです!」

 

 パッと起き上がりこちらを見る橙。

 可愛いなコノヤロー。

 

「うん、久しぶり。元気にしてた?」

 

「はい、元気です! 冬の間は藍様も忙しく、なかなか来てくれませんが……」

 

 あ、耳がたれた。

 寂しかったんだね。まぁ、冬の間の藍は忙しいから仕方ないよな。

 

「あら、ずいぶんと親し気なのね」

 

「よく、遊びに来てたからね。ごめんな橙。今日はマタタビを持ってきてないんだ。今度来る時は持ってくるよ」

 

「いつでも来てください! 楽しみにしています!」

 

 あ、耳が戻った。

 

「それで、お椀とかはどこ?」

 

「あんたはさっさと帰れ!!」

 

「だから、二度と戻れないんじゃ……」

 

 何も持ち帰らせなかったから、ブーブー文句を言う霊夢を連れて、迷い家を出る。

 

 お茶でも飲んでいってくれと、橙が言ったけれどそれも断った。ごめんな、また来るからそんなに落ち込まないで。

 じゃ、また。

 

 

 

 

 

 

 

 

 迷い家を出て、元の森へと戻る。

 雪は降り続いたままだ。

 

「ねぇ、黒。あなたの能力でこの雪を止めてよ」

 

「ん~やってもいいけど、もう雪を見ることがなくなるからなぁ。そう思うとちょっと、もったいなくなるんだよ」

 

 どれだけ憎らしい奴でも、最期は愛しくなるそんな感じ。

 

 そんな会話をしている時だった。

 彼女と再開したのは。

 

 

「あら?」「ん?」「おろ?」

 

「暫くぶりね霊夢に黒」

 

「や、久しぶりアリス」

 

「ん~……うん?」

 

「どうしたのよ霊夢。私のことを忘れた? まぁ、どうでもいいけれど」

 

「覚えているけれど、前にあった時はもっと小さかったような」

 

「……成長期なのよ」

 

 俺からはノーコメントで……

 てか、魔法使いに成長期とかないだろ。

 

「んで、あんたは何やっているの? もしかしてこの終わらない冬の異変を起こしたのってあんた?」

 

 いや、アリスは関係ないぞ。

 まぁ、どうせ言っても遅いんだろうけどさ。

 

「ああ、やっぱりまだ冬だったのね。そして、私じゃないわよ。どこかの誰かが春度を集めているんじゃない?」

 

「春度?」

 

「そ、春度」

 

「何よ、それ。じゃあ、あんたは関係ないの?」

 

「はぁ、あるわけないでしょ」

 

「じゃ」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい! せっかく旧友と会ったのだから、もっと何かないの?」

 

「いや、あんたみたいな七色魔法莫迦とは『友』ではないでしょ」

 

「フフッ、所詮は二色。そんな力じゃ私の二割八分六厘にも満たない」

 

 じゃあ、俺は一割四分三厘にも満たないな。

 意味わからんが。

 

「操符『乙女文楽 -Lunatic-』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、春度ってのはなんなのよ?」

 

「いたた、相変わらず莫迦みたいに強いわね……雪に混じって桜の花びらが降ってきているでしょ?」

 

 霊夢がこっちを見てきた。

 

「いや、俺は能力使ってないぞ?」

 

 無罪です。

 

「黒も教えてあげればいいじゃない」

 

「いや~その内気づくかなと。はいよ、霊夢これあげるよ」

 

 道中でこっそりと集めていた花びらを霊夢に渡してあげた。

 

「なにこれ、暖かい……って、ずるい! 黒は一人だけ温まってたのね!」

 

 プリプリ怒る霊夢ちゃん。

 ごめん、ごめん。

 

「あとは、わかるでしょ? この異変を起こしている奴の場所が」

 

「……上ね」

 

 雲で覆われ、風花舞い散る空を見上げる。

 

 冬はまだ、終わらない。

 

 

 







因みにサブタイトルに意味はありません

次の話で妖々夢も終わりそうですね
さて、作者は騒霊三姉妹を書き分けることができるのでしょうか

多分、無理ですね


次話では少しだけ主人公が頑張る予感
まぁ、私の予感はなかなか当たりませんが



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轢かれた友人は無傷でした
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