先日、友人がトラクターに轢かれました
『反魂蝶 -八分咲-』
視界を埋め尽くすほどの弾幕――と言うよりは弾壁かな。蝶弾、大玉、レーザーと何でもありだ。
「え……なに、これ」
幽々子の驚いたような声が聞こえた。
ああ、そっか。そう言えばこんな仕掛けだったね。
「何よ、まだ続くの? 面倒ね」
続いて聞こえたいつも通り気だるそうな霊夢の声。頑張って、これでラストだから。
咲き誇る桜は、散るからこそに美しい。
じゃあ、散ることのない桜と咲くことのない桜、美しいのはどっちだろうね?
満開になりかけの妖怪桜を見ながら、他人事のようにふと思った。
春の訪れまで、あと少し。
――――――――
例年ならば春が訪れ、桜が咲きお花見でも楽しんでいる頃。
そうだと言うのに未だ春は訪れない。
雪がやまず、気温は上がらず、そんなんだからお客さんも来ない。
終わらない冬、訪れない春。
さて、そろそろ動かないといけない頃なんだろう。
決して、あの子鬼が毎日俺の店に来ては暴れているからではない。『お花見したい。てかお酒飲みたい』とか言って暴れまわって、手がつけられないからではない。
違うったら違うのだ。
こんな中でも頭の中春満開の、あの巫女は動かないだろうし。
ん~、面倒だけど今回は俺も手伝おうかな。
紫を叩き起こすってのもありだけど、あの桜を封印したの俺だしなぁ……ま、頑張るとしよう。
そろそろ逢魔が時、異変解決にはちょうどいい時間だ。
出かける準備をして店を出る。マフラー暖かいです。行き先は博麗神社。
どうせ霊夢はまだ動いてないだろうけれど、急ぐとしよう。
「っと」
降り積もった雪のせいで、バランスを崩しながらも着地成功です。
博麗神社の裏。あいも変わらず雪かきはしていなかった。
天気は雪。
此処まで続くと流石に飽きちゃうね。
雪を押しのけ進むのは面倒だから飛んで移動。
それにしてももうちょっと雪かき頑張ろうよ……雪下ろしとかちゃんとやってるのかな?
思っているより、雪って重いんだよね。
母屋の方へ行くと、ちょうど霊夢が出かけるところだった。
良いタイミング。どこかへ出かけるのかな?
「や、霊夢。どっかに行くの?」
「あら、ちょうど良いわね。これからこの異変を解決しに行くから手伝って」
おろ?
霊夢が自分から動くとは……ちょっとだけ感動した。
「霊夢が自分から動くなんてどうしたのさ?」
「薪と炭が切れそうなのよ。こんなに雪があったら、拾いにも行けないし。それに、そろそろ雪も見飽きたわ」
うん、まぁ、そんなもんか。
人里の方も薪や炭はそろそろ厳しいだろうし。
桜が恋しいね。
花びらだけじゃなくて、俺は咲いている桜が見たいよ。
「よしゃ、そんじゃ行こっか」
「それで……今回は何処へ行けばいいの?」
ん~……どうしようか。
今回は教えてもいい気がするけれど……ま、霊夢なら一人でも辿り着くか。信頼しているよ、博麗の巫女。
「あ~申し訳ないけど、今回も自力で目的地を見つけてくれ」
「はぁ、まあいいわ。行きましょ」
簡単な会話。
単純な掛け合い。
通常運転。
さぁ、春を取り返しに向かおうか。
「そう言えば霊夢。屋根の雪下ろしは、ちゃんとやってる?」
霊夢と一緒に飛びながら聞いた。
因みに、異変で興奮した妖精は、霊夢が全部蹴散らしてくれる。霊夢さんマジパネェっす。
「親切な妖怪がやってくれたわよ」
……ああ、そうですか、無理やりやらせたのか。てか、いつも通りの巫女服だけど、寒くないのかね? マフラーとか手袋くらいつければ良いのに。
暫く進むと、あれは……雪女か? そんな一人の少女が居た。
「げっ、あの時の巫女」
その妖怪がこちらに気づき言葉を落とした。うん? あの時?
「な、なにさ。また私に雪かきをさせに来たの?」
……ああ、なるほど、被害者さんでしたか。
「霊夢……お前」
「何よ? 雪の妖怪だし、自分で黒幕とか言ってるから倒しただけよ。雪下ろしは善意でやってくれたわ」
「いや、無理やりやr……ちょい、待って! 戦う気はないから。そりゃあ、私だって冬が長いのは嬉しいけれど、季節の移り変わりくらい受け入れるているわ。それに春を奪うほどの力はないし」
「だってさ霊夢、進もうぜ」
「う~ん、やる気のない相手と戦っても体は暖まらないしね。行きましょ」
――じゃあね、妖怪さん。
と言ったけれど見事に無視された。
ま、こんなもんか。それじゃ、来年の冬にまた会いましょ。
雪の妖怪さんと別れてから暫く。フワフワ飛びながら妖精を蹴散らす霊夢に、必死でついて行く。
今回はちょっとばかし、霊力を増やしてきたから、紅い霧の異変の時よりはマシだけど、やっぱりキツい。
いや、霊夢がおかしいんだよ? ホントに人間かよ、この巫女……
そして、開けた場所へたどり着いた。
「あら? こんな所に家なんかあったっけ?」
ありゃ……ここに来ちゃったか。
あの娘はいるのかな?
「よく来たわね、人間!」
あ、いたわ。
今日も元気だったわ。
「誰?」
名前は橙。紫の式神の式神です。幻想郷では数少ない、俺の癒し要素です。
「迷い家にようこそ。ここに迷い込んだら最後!二度と帰れないよ!!」
そんなことないけどね。
普通に帰れるけどね。
「迷い家? 迷い家って、あの物を持ち帰れば幸運になれる迷い家?」
それは、やめてあげて……
「うん。そうだよ」
橙も素直に答えなくていいんだよ?
「さてと、軽い日常品でも探そうかしら」
「あ、待って! ダメ!! 帰れ!!!」
「二度と帰れないんじゃなかったの……」
「もう! 仙符『鳳凰卵』!」
「はぁ、随分と元気な奴ね。でもこれで少しは暖かくなるかしら?」
「にゃー……」
弾幕ごっこはかなり一方的な試合になった。
うん、まぁ、流石に橙と霊夢じゃ、ね……
「お疲れ、橙」
うつ伏せに倒れ込んでいる橙に声をかけてみる。
「にゃ、黒様! お久しぶりです!」
パッと起き上がりこちらを見る橙。
可愛いなコノヤロー。
「うん、久しぶり。元気にしてた?」
「はい、元気です! 冬の間は藍様も忙しく、なかなか来てくれませんが……」
あ、耳がたれた。
寂しかったんだね。まぁ、冬の間の藍は忙しいから仕方ないよな。
「あら、ずいぶんと親し気なのね」
「よく、遊びに来てたからね。ごめんな橙。今日はマタタビを持ってきてないんだ。今度来る時は持ってくるよ」
「いつでも来てください! 楽しみにしています!」
あ、耳が戻った。
「それで、お椀とかはどこ?」
「あんたはさっさと帰れ!!」
「だから、二度と戻れないんじゃ……」
何も持ち帰らせなかったから、ブーブー文句を言う霊夢を連れて、迷い家を出る。
お茶でも飲んでいってくれと、橙が言ったけれどそれも断った。ごめんな、また来るからそんなに落ち込まないで。
じゃ、また。
迷い家を出て、元の森へと戻る。
雪は降り続いたままだ。
「ねぇ、黒。あなたの能力でこの雪を止めてよ」
「ん~やってもいいけど、もう雪を見ることがなくなるからなぁ。そう思うとちょっと、もったいなくなるんだよ」
どれだけ憎らしい奴でも、最期は愛しくなるそんな感じ。
そんな会話をしている時だった。
彼女と再開したのは。
「あら?」「ん?」「おろ?」
「暫くぶりね霊夢に黒」
「や、久しぶりアリス」
「ん~……うん?」
「どうしたのよ霊夢。私のことを忘れた? まぁ、どうでもいいけれど」
「覚えているけれど、前にあった時はもっと小さかったような」
「……成長期なのよ」
俺からはノーコメントで……
てか、魔法使いに成長期とかないだろ。
「んで、あんたは何やっているの? もしかしてこの終わらない冬の異変を起こしたのってあんた?」
いや、アリスは関係ないぞ。
まぁ、どうせ言っても遅いんだろうけどさ。
「ああ、やっぱりまだ冬だったのね。そして、私じゃないわよ。どこかの誰かが春度を集めているんじゃない?」
「春度?」
「そ、春度」
「何よ、それ。じゃあ、あんたは関係ないの?」
「はぁ、あるわけないでしょ」
「じゃ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! せっかく旧友と会ったのだから、もっと何かないの?」
「いや、あんたみたいな七色魔法莫迦とは『友』ではないでしょ」
「フフッ、所詮は二色。そんな力じゃ私の二割八分六厘にも満たない」
じゃあ、俺は一割四分三厘にも満たないな。
意味わからんが。
「操符『乙女文楽 -Lunatic-』」
「で、春度ってのはなんなのよ?」
「いたた、相変わらず莫迦みたいに強いわね……雪に混じって桜の花びらが降ってきているでしょ?」
霊夢がこっちを見てきた。
「いや、俺は能力使ってないぞ?」
無罪です。
「黒も教えてあげればいいじゃない」
「いや~その内気づくかなと。はいよ、霊夢これあげるよ」
道中でこっそりと集めていた花びらを霊夢に渡してあげた。
「なにこれ、暖かい……って、ずるい! 黒は一人だけ温まってたのね!」
プリプリ怒る霊夢ちゃん。
ごめん、ごめん。
「あとは、わかるでしょ? この異変を起こしている奴の場所が」
「……上ね」
雲で覆われ、風花舞い散る空を見上げる。
冬はまだ、終わらない。
因みにサブタイトルに意味はありません
次の話で妖々夢も終わりそうですね
さて、作者は騒霊三姉妹を書き分けることができるのでしょうか
多分、無理ですね
次話では少しだけ主人公が頑張る予感
まぁ、私の予感はなかなか当たりませんが
感想・質問など何でもお待ちしております
轢かれた友人は無傷でした