東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第13話~雲の上の桜の木の下~

 

 

 雪を降らせ続ける分厚い雲を抜け、空へ。

 

「あら、雲の上は随分と暖かいのね」

 

 霊夢が言った。

 多分だけれど、ここまでは春が来ているのだろう。

 

 仄かに香る桜の気配。白玉楼まで後少し、かな。

 

「うん? なんかこっちに来るな」

 

 弾幕をまき散らしながら近づいてくるのが一つ。

 

「何かしら? あれ」

 

「春告精じゃないかな?」

 

 どうやら、ここ雲の上はすでに春らしい。

 

「鬱陶しいわね。ちょっと倒してくる」

 

 あんまり苛めないでね。彼女は春だって伝えたいだけなんだから。

 まぁ、それが迷惑なんだけどさ……

 

「お、黒じゃん。お前も異変を解決しに来たのか?」

 

 霊夢が春告精と闘っているのを、ボーっと見ていたら後ろから声がした。魔理沙ちゃんだった。

 

「今晩は、魔理沙ちゃん。俺は霊夢の付き添いだけどね。魔理沙ちゃんはどうしたの?」

 

 異変を解決しに来たのかな?

 君も物好きだねぇ。

 

「冬なのに桜の花が舞っていて、それを追いかけて来たら此処に着いたんだ」

 

 そかそか、んじゃあまぁ、一緒に行こうか。

 

「雲の下は猛吹雪だっていうのに、その上は暖かいのね。素敵すぎて涙が出そう」

 

「今晩は、咲夜さん」

 

「はい、今晩は。黒様」

 

 咲夜さんも登場です。

 

「咲夜さんも異変を解決しに?」

 

「ええ、紅魔館の燃料が尽きそうでしたので。そんなことより、この異変の原因は……貴方ですか?」

 

 え?

 

「いや、違うけど……えと、なんで俺だと?」

 

 とりあえず、そのナイフを閉まって下さい。怖いでしょうが。

 

「桜」

 

「ん?」

 

「ここまで、桜の花びらを追いかけて来ました。桜と言ったら貴方の能力でしょ?」

 

 ああ、そういうことか。まぁ、そう思うのも仕方がないのかな?

 とは言っても、俺じゃあ春を止めることなんてできない。無罪です。

 

「なんだ、じゃあ黒を倒せばいいのか?」

 

 良いわけないでしょ。なんてことを言うんだ。

 

「ちょっ、待ちなさいって。とりあえず、ナイフと八卦炉を下ろして」

 

「私は黒の能力なんて知らなかったけれど、そう言われると黒って怪しいよな」

 

「何やってるのよ……」

 

 あ、霊夢。

 春告精は倒したのかな?

 

 ああ、なんか下の方になんか落ちていった……

 雲の下は滅茶苦茶寒いけど、春告精は大丈夫だろうか?

 

 それは良いとして……助けて、この二人が俺をいじめようとする。

 

「黒に異変を起こすだけの力があるわけないでしょ? その辺の妖精にだって負ける程度の力しかないんだし」

 

 フォロー……だよね?

 

「確かにそうだな。黒、弱いもんな」

 

 あれ、雨か?

 頬を伝うこの液体は一体……

 

「私はわかっていましたが」

 

 じゃあ、何で言ったんだよ!?

 

「んじゃあ、本当のラスボスは誰なんだ?」

 

 ん~そろそろ教えてあげてもいいのかな。

 

「今まで通り、桜を追いかけて行けば待ってるはずだよ。ラスボスが。ま、後少しだから頑張って」

 

 今頃は半人半霊のあの娘と一緒に、お花見の準備でもしているのだろう。

 

「ずいぶんと、あっさり教えるのね。なんか黒って魔理沙に優しくない?」

 

 いや、そんなつもりはないけど……

 ん~別に、霊夢に厳しくしてるってことはないと思うんだけどな。ま、この異変を解決したら、お酒でもあげようかな。

 

 

「そんなことないさ。じゃ、そろそろ行こうか」

 

 そろそろ物語が動いても良い時間だ。

 

 

 

「ちょっと姉さん待っててば」

 

「雲の上は暖かいね~」

 

 おろ? また増えた。

 

「ん? 誰だ?」

 

 あれは……騒霊三姉妹か? どうして此処にいるのかは知らないけど。何の用だろうか。

 

「あんたらは何者?」

 

 霊夢が聞いた。

 

「私達は騒霊演奏隊だよ~。お呼ばれで来たの」

 

「宴の時間~」

 

「あなたたちは?」

 

「風上を目指していたらここにたどり着いただけの者よ」

 

「4対3か……どうする? 一人ずつやるか?」

 

 ありゃ、戦う気満々ですね。

 

「んじゃあ、俺は先に行ってるわ。これでちょうどいいだろ?」

 

「あ、ずるい! また一人だけ」

 

「俺は一応お呼ばれしてるからね」

 

 『春に来なさいよ』だったっけかな? ああ、でもお酒持ってきてないわ。

 

 ん~また今度でいいか。

 

 んじゃあ、後は任せたわ。どうか頑張ってくださいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢達を置いて先へと進む。

 そして、白玉楼へと続く長い階段が見えてきた辺りで、見えない壁にぶつかった。痛い……

 

 結界か、こんなのあったね。この前に来た時は、妖夢ちゃんと一緒だったから普通に入れたけど……う~ん、どうすっかね。壊しても良いけど、壊したら紫の奴怒るよな。

 

 仕方がないから、ギリギリ通ることができるくらいの穴を開けた。

 これくらいなら、俺にだってできます。

 

 

 白玉楼へと続く長い長い階段。春度でも俺の能力でもない、普通の桜の花びらがハラハラと舞い散っていた。結界を抜け、白玉楼に向かう途中妖夢ちゃんと遭遇。

 

 何やってんの?

 

「あ、黒さん。いらっしゃいです」

 

「や、妖夢ちゃん。こんな場所でどうしたの?」

 

「プリズムリバー三姉妹を待っているところです」

 

 ああ、なるほど……でも、たぶん来ないと思うよ。

 

「そっか、幽々子は白玉楼にいる?」

 

「はい、満開ではありませんが、西行妖も花を付けこれからお花見です。どうぞ、ゆっくりして行ってください」

 

 はぁ、やっぱりあの化け桜咲きやがったか……

 満開ではないってことは、封印は機能しているみたいだね。とりあえずは一安心と言ったところ。

 

「おう、じゃあ先に行ってるよ」

 

 軽く言葉を交わして妖夢ちゃんと別れる。

 てか、俺は別に正式に呼ばれているわけじゃないんだけど……良いのかな?

 

 

 長い長い階段を登り終えると、満開となった桜達がまっていた。

 ホント、綺麗だな……

 

「いらっしゃい、黒。来てくれるとは思っていなかったわ」

 

「お邪魔するよ、幽々子」

 

 一際目立つ咲かないはずの桜の下に幽々子はいた。

 

「こんなに綺麗なのだから、もっと早く咲かせれば良かったわ。満開になったらもっと、すごいのでしょうね」

 

 今は八分咲きと言ったところ。

 

 残念だけどさ、幽々子。

 お前が満開の西行妖を見ることは……絶対にないんだ。

 

 

「あ~幽々子? 招待してもらっておいてあれだけど、お酒持ってくるの忘れたんだよね」

 

「あら、そうなの? それは残念ね。まぁ仕方がないわ。それじゃあ、今日は楽しんでいってちょうだい……って、下の方が騒がしいわね。招かれざるお客さんかしら?」

 

 霊夢達も着いたみたいだね。確かに妖夢ちゃんは強いけど、霊夢に勝つのは無理だろう。

 霊夢の強さはちょっとおかしいと思うんだ。

 

 

 

 騒がしい声が近づいてくるのがわかった。

 

「ちょっと待ちなさい! これ以上踏み込んで、お嬢様に殺されても知らないわよ!!」

 

 どうやら、到着らしたらしい。

 いや『殺される』って妖夢ちゃん、流石に幽々子でも能力使ったりはしないだろ……あ~妖夢ちゃんも派手にやられたみたいだね。

 ドンマイです。

 

「あら、本当にここだけ春のようね」

 

「おおー、すごいな。桜が綺麗だ」

 

「あ、黒と……誰?」

 

 三者三様の驚き方。

 まぁ、下の世界は未だに冬が続いているもんね。

 

「それはこちらの台詞よ。私は西行寺幽々子。ここ白玉楼の主で亡霊をやっているわ。それで、貴方達は? 招待した覚えはないけど?」

 

「私も招待された覚えはないな。春を返してもらいに来たぜ。桜が恋しくてね」

 

「それなら、ここの桜を見ていけばいいじゃない。綺麗でしょ? ここの桜は」

 

 さっき招待してないって言ってたのにね。

 あ、ごめんなさい。何でもないです。そんな睨まないでよ……

 

「私はうちの神社でお花見がしたいのよ。さっさと返してもらえる?」

 

「物騒ね。あと少し、あともう少しで西行妖が満開になる。そうすれば封印が解けるのよ」

 

「封印されているのだから、解かない方がいいんじゃない? で、その封印が解けるとどうなるのよ?」

 

「すごく満開になる」

 

 ……いや、うん。まぁ、そうだけど。えっ? 何、幽々子そのためだけに幻想郷の春を集めたの?

 

「と同時に何者かが復活するらしいわ」

 

 ありゃ、そこまで気づいていたのか……

 はぁ……どこで知ったんだか。

 

「封印されている奴なんて、禄な奴じゃないでしょ……どうでもいいから、さっさと春を返して」

 

「ふふっ、貴方達から春を奪えば、西行妖も満開になるかしら?」

 

 

 

「これ以上奪われるわけないでしょ? さっさと花の下に還るといいわ、春の亡霊!」

 

「ふふっ、花の下で眠るといいわ、紅白の蝶」

 

 

「亡郷 『亡我郷』」

 

 さてさて、弾幕ごっこの始まりです。

 

 

 

 

 

「魔理沙ちゃんと咲夜さんは闘わないの?」

 

 弾幕ごっこが終わるまで、二人と雑談。妖夢ちゃんは端っこで倒れてます。ゆ、ゆっくり休んでね……

 

「私はジャンケンで負けたからなぁ。最初は霊夢に譲るよ」

 

「私は春さえ取り戻せればいいので」

 

 異変の解決は、誰にやってもらっても構わないけれど、やっぱり霊夢には頑張ってもらいたいかな。

 そんじゃ、頼んだよ、博麗の巫女。

 

「そっか、まぁ霊夢なら幽々子にも勝てるだろうし、のんびり待つとしようか」

 

「黒はあの亡霊姫と知り合いなのか?」

 

「まぁね、昔からの友人かな」

 

 亡霊になる前だって友人だったと思うよ。まぁ、彼女がどう思っていたかは知らないけどさ。一応、1000年前からの付き合いだね。

 

 そんな感じでのんびりと雑談。

 我ながらのんきなものだ。

 

 

 

「桜符『完全なる墨染の桜‐開花‐』」

 

「霊符『夢想封印』」

 

 勝負も終盤。

 流石の霊夢もちょっと疲れ気味かな?

 

 飛び交う色とりどりの弾幕。

 

 

 そして――霊夢の霊弾が幽々子に直撃した。

 

 

 

 

 

 

 

「あいたた……貴方本当に人間なの? ちょっと強すぎない?」

 

「失礼ね。ちゃんとした人間よ」

 

 わりと怪しいけど、人間なんだよね。

 

「おお、流石霊夢だな。じゃあ、春を返してもらおうぜ。博麗神社でお花見しようお花見」

 

「私も帰ろうかしら? 紅魔館も心配だし」

 

「あ~疲れた。それで、春はどうやって返してもらえるの? ……あら? あの桜なんかおかしくない?」

 

 

 

『反魂蝶 -八分咲-』

 

 視界を埋め尽くすほどの弾幕……と言うよりは弾壁かな。蝶弾、大玉、レーザーと何でもありだ。

 西行妖がそんな弾幕を放ってきた。

 

「え……なに、これ」

 

 幽々子の驚いたような声が聞こえた。ああ、そう言えばこんな仕掛けだったね。

 

「……何よ、まだ続くの? 面倒ね」

 

 続いて聞こえた、いつも通り気だるそうな霊夢の声。頑張って、これでラストだから。

 

 と、言っても流石の霊夢でもこれは厳しいか。

 お疲れ様。ここからは俺がやるよ。

 

「ちょ、ちょっと黒! 危ないわよ!!」

 

 霊夢の声が聞こえた。

 大丈夫だよ。今日はこのために来たんだ。

 

 

 ――能力使用。

 

 近づいて来る弾幕全てを桜の花びらに変えた。

 

 えっ? ずるいですか?

 まぁ、許してよ。耐久スペルとかやってられんもん。

 

「これは……すごいな」

 

 魔理沙ちゃんの声も届く。

 

 弾幕の代わりに視界を埋め尽くした、舞い散る桜。

 散る散る桜は美しい。

 

 西行妖に近づき手をつけてみる。

 

 ありゃ……無理やり春度を入れたせいかな? 封印がボロボロだ。もしかして割とギリギリだった?

 

 封印するための結界を再構築。

 

 陽陰の八卦を組み合わせて六十四。

 そこへ、木火土金水の五行を重ねる。

 

 陽の八卦で結んで、五行で縛り、陰の八卦で閉じる。

 掛けて合わせて三百二十。

 

 仕掛け自体は前回と同じ。これで1000年くらいは大丈夫かな? 申し訳ないけれど、彼女にはまだ眠っていてもらおう。

 

 封印完了と共に、西行妖が付けていた花が一斉に散った。

 

 お休み。

 まぁ、ゆっくり休んでくださいな。

 

 

 

 

 

「っと……」

 

 ふぅ……終わったか。

 

 あ~駄目だ、滅茶苦茶疲れた。前回の封印よりは楽とは言え、霊力はすっからかんだ。

 

 目蓋が重い。今日は白玉楼に泊まって行こうかな。これから帰れる気がしない。

 

「―――?――――っ」

 

 霊夢たちが何か言ってる。

 ゴメン、全然聞こえないわ。ちょっと休ませて。

 

 意識が途切れる寸前に見えた桜は、やっぱり綺麗だった。

 これだけ見ても全く飽きない。

 

 ホントお前はずるいねぇ。

 

 

 

 






桜と聞くと『ソメイヨシノ』が有名ですよね
このソメイヨシノですが、自家不和合性であるため、自家受粉では実をつけません
じゃあ、どうやって繁殖しているかと言うと、挿し木や接木によってのみです
つまり無性繁殖ですね
そのためソメイヨシノは全てクローンだと言えます

雑学にもならなそうな話でしたね


と、いうわけで13話でした
八卦だの五行だの書きましたが、作者は理解していません
なんかカッコイイから書きました
これで幽々子さんが復活したら私のせいですね


次話は妖々夢エピローグっぽいです



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