東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第14話~桜と酒と~

 

 

 死にたくなるくらい綺麗な桜の木の下で、少女が倒れていた。

 

 周りは赤く染まり、少女の手には一本の小刀。

 

「黒……幽々子をお願い」

 

 紫が泣きそうな声で言った。

 

 落ち着け。

 こなることくらい十分予想していたはずだ。

 

「わかってる。紫、幽々子が成仏しないように頼む」

 

「もう、やっているわよ。急いで」

 

 ここからは時間との闘い。幽々子の体から魂が離れたら終わり。急げ。とにかく急ぐんだ。

 

 幽々子と西行妖結び付ける。

 そのために、大量の霊力が必要になるが……

 

「紫、今の俺の霊力じゃ全然足りん。ちょっと霊力を返してくれ」

 

「うん、わかった。つなげるわ」

 

 紫が境界を弄ったのだろう。

 体が熱くなる感覚。中に霊力が染み込んで来るのがわかった。

 ちょっと前まではこれが普通だったのに、なんとも変な感じだ。

 

 木の下に掘った穴へ、幽々子を丁寧に埋める。

 

 慌てるな、急げ、落ち着け。

 昔嫌になるくらい叩き込まれた封印術を必死に思いだす。

 

 そして、幽々子と西行妖を結ぼうとした時だった。

 猛烈な寒気と倦怠感が俺を襲った。

 

 むぅ、これは……キツイな。

 どうやら死に誘われているらしい。面倒臭い、少しぐらいおとなしくしていてくれ。

 

「紫、少しの間この桜を抑えられないか? 鬱陶しくてやってられん」

 

 ヤバい、頭が回らん。くっそ、集中なんてできやしないじゃないか。

 全く……不老不死だろうと関係なしですか。

 

「無理よ、自分と幽々子で精一杯だわ!」

 

 指先が震える。

 しっかりしろ、時間がねーんだ!

 

 このままじゃ続けられん……どうする? どうすればいい?

 

 どんどんと死が近づいて来る。

 

 

 ああ、そっか――死ねば良いのか。

 

 幽々子、ちょっとその小刀借りるぞ。

 

 

「え? く、黒? ……なにを、するのよ?」

 

 死が俺にたどり着くまでの時間も惜しい。だったら、こちらからも迎えに行くだけ。

 

 そして、小刀を自分の喉に突き立て掻っ切った。一瞬だけ視界が真っ白に、でもすぐに戻る。

 

 リザレクション。ホント便利な体質なことで。

 

 さてさて、作業再開だ。

 

 

 

 

 

 自決で五回、霊力切れで二回の計七回の死を乗り越えての封印。封印には、西行妖が莫迦みたいに溜め込んだ春度と、俺の霊力を使った。

 

 吸い込んだ春度は封印の維持に、吸い込みすぎた春度は弾幕に変わるように。ガチガチに固めるのではなく、ある程度ゆとりも持たせた。

 

 一時間にも満たない時間だったと思う。

 

 頭が痛い。

 体もフラフラする。むぅ、霊力の使いすぎか。

 

 そして、封印を終えた瞬間、西行妖の花が一斉に散った。

 

 ……この桜吹雪を忘れることは、一生ないだろう。それほどに綺麗で――何よりも悲しく見えた。

 

 さらに桜の花びらが一箇所に集まり、塊が出来始めた。

 その塊は人型となり、見覚えのある姿にまで。

 

 よかった……どうやら上手くいったみたいだ。

 

 そして俺は、生まれ変わった幽々子の声を聞くことなく、その場に倒れ込んだ。今回は本当に疲れたんです。

 

「ありがとう、黒。お疲れ様」

 

 意識の途切れる直前に紫の声がした。

 うん、おやすみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 目が覚める。

 えと、昨日は……ああ、西行妖を封印したところで倒れたのか。情けないなぁ。

 最初に封印した時は、昨日の何十倍もキツかったと思うけど……俺も歳かねぇ。

 

 んで、だ。

 

「ここは……どこだ?」

 

 周りを見る。障子を通して入り込む朝日。

 畳のよい香り。

 立派なお座敷。

 綺麗な布団。

 

 うん、少なくとも博麗神社ではないだろう。普通に考えたら、やっぱり白玉楼なのかな?

 

 そんなことを考えている時だった。

 

「あら、やっと起きたのね」

 

 幽々子が部屋に入ってきた。

 

「おっす、おはよう幽々子」

 

「おはようって貴方……もう日が沈むわよ」

 

 ありゃ、朝日じゃなくて夕日だったのか。いや、やたら赤いな~とは思ったんだよ?

 

「そっか、一日近く寝てたのか」

 

「二日よ」

 

「うん?」

 

 はい?

 

「だから一日じゃなくて二日近くよ」

 

 ……マジで? おいおい、いくら紫から霊力をもらっていなかったからって、流石に弱くなりすぎだろ。

 

「うわー、悪いな。迷惑かけた」

 

「私は何もしてないから別にいいわよ。あと博麗の巫女には、ちゃんとお礼をするのよ?」

 

 ん? 博麗の巫女って霊夢のことだよね。

 

「どうして?」

 

「もう帰っちゃったけど、あの娘、今日の昼までずっと貴方のことを看ていたのよ」

 

 ――優しいところもあるのね。

 

 なんて幽々子が言った。

 

 霊夢がねぇ……裏がありそうな気もするけど、そんなこと考えちゃ失礼だよな。

 

「わかった。今度会ったら、お礼を言っておくよ」

 

「ふふっ」

 

 幽々子がいきなり笑った。

 なんですか? まさか顔に落書きでもされてる?

 

「どしたのよ?」

 

「いえ、黒や紫と最初に会った日のことを思い出して。黒ってあの時も寝ていたでしょ?」

 

 よく覚えてるね……

 

「あの時も疲れてたんだよ。色々あってさ」

 

 

「そうだったの? なんか、あの日と似てるな~ってなんとなく思って、ね」

 

 

 こりゃあまた……随分と勘の良いことで。本当のことなんて言えるわけがない。

 

「そうか? 今日は紫もいないし、全然違うと思うけど」

 

 なんとか表情には出さなかったと思う。

 どうにか誤魔化せたんじゃないかなって思う。

 

「だからなんとなく、よ」

 

 そんな感じで幽々子と喋っていると、妖夢ちゃんが来た。

 

「あ、幽々子様。こちらにいましたか。って黒さんも起きたのですね」

 

「や、妖夢ちゃん。久しぶり」

 

「は、はい、お久しぶり? です」

 

 俺の言葉に首を傾げる妖夢ちゃん。

 可愛らしいです。

 

「それで、どうしたの? 妖夢」

 

「えと、お食事の準備が出来ましたので呼びに」

 

 おろ、ちょっと早い気もするけれど、そんな時間なのか。

 

「黒はどうするの?」

 

「帰ろうかな。流石に食事までもらうわけにはいかないし」

 

 てか、俺の分の食事なんて用意してないよね。俺の答えに幽々子は、少しだけ考えるような仕草をして言った。

 

「そうねぇ……妖夢、食事を持って博麗神社まで行くわよ」

 

 へ?

 なんで博麗神社?

 

「わかりました。でも一人で全部を運ぶのは流石に……」

 

「黒も一緒に運んでくれるわ。いいでしょ?」

 

 幽々子が聞いてきた。

 

「いや、まぁ手伝うのはいいけど、なんで博麗神社なのさ?」

 

「お花見よ。たまには、ここじゃない場所でやるのも良いと思ってね」

 

 ああ、そっか。もう春になったんだもんな。

 

「了解。んじゃあ行こっか」

 

 そして、大量の重箱と少量のお酒を持って神社へと向かった。

 

 お酒を取りに、一度自分の家に戻っていたこともあり、俺が博麗神社に着いた頃にはすでに夜となっていた。

 

 あれだけ積もっていた雪はどこかに消え、代わりに現れた満開の桜。博麗神社では、多くの妖怪妖精、そして少しの人間が飲めや歌えやの大騒ぎ。空では弾幕が飛び交い、地上では酒と料理が沢山。

 

 ちゃんと桜見てる? こいつら宴会なら、なんだって良いんじゃ……

 

 レミリア、咲夜さん、魔女さんの紅魔館組。どうやら美鈴とフランちゃんはお留守番らしい。

 魔理沙ちゃん、アリスの魔法使い組。

 

 よく見ると萃香もいた。

 

 皆楽しそうで何よりです。

 

 萃香と一緒にお酒を飲みながら、満開の桜を見ていると、さっきまでレミリアと弾幕ごっこをしていた霊夢が近づいてきた。

 

「なに一人で飲んでいるのよ?」

 

 一人じゃないけどね。やはり霊夢には萃香が見えてないらしい。

 

「いや~、桜が綺麗だなと思ってさ」

 

「やっぱりお花見はうちでやるのが一番ね。ちょっと騒がしいけど」

 

 満開になった桜を見ながら霊夢が言った。

 

「ありがとな、霊夢」

 

「なにが?」

 

 キョトンとした顔で、霊夢が聞いてきた。

 

「ずっと看ててくれたんだろ?」

 

「別に気にしなくてもいいわよ」

 

 そんな霊夢の答え。

 少しぐらい照れてくれたっていいんだぞ?

 

「まぁ、そう言うなって。霊夢のためにお酒も持ってきたし。飲もうぜ」

 

 ああ、コラ萃香。

 それは霊夢のためのお酒だからまだ飲むな。

 

「……妙に優しいわね。何か企んでる?」

 

 ジト目で霊夢が聞いてきた。企んでなんていません。

 ちょっと傷ついたじゃないか。

 

「たまにはな。ま、生きてる人間の中では、霊夢が一番大事だしな」

 

「……? どういう意味?」

 

「さあ? 自分で考えな」

 

「生きてる人間、ねぇ……まぁ、どうでもいいか。とりあえず飲みましょ」

 

 そんな感じで言葉を交わした後、霊夢と二人でお酒を飲んだ。

 萃香はいつの間にか消えていた。

 

 そんな大宴会の中での小さな宴会は、霊夢が『もうちょっと静かに騒げ!』と周りに怒るまで続いた。

 

 

 良い季節になりました。

 

 






あれ? お酒の話が出てこない……

はい、と言うことで第14話でした
主人公が喉を掻っ切る場面がありましたが、R‐15タグは必要でしょうか?
必要があれば修正します
血の表現などはカットして、それなりに抑えたつもりですが……

掻っ切る場面なだけにね(ドヤァ)



なんだこれ


次話は未定です


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