終わらない冬が終わってから、一月ほど。あれだけ見事に咲いていた桜も葉をつけ、お花見するには物足りなくなった。
一気に咲いたせいか、今年はチルノも早かった。
それだというのに、博麗神社での宴会は定期的に続いている。どうにもお祭りムードがなかなか抜けない。
楽しそうで何よりです。どっかの子鬼も俺の店で暴れなくなったし平和な毎日。
先日は、いつまで経っても起きてこない紫を叩き起し、萃香も一緒に白玉楼でお花見をした。お酒を飲み交わし、昔話に花が咲く。
そんな良い雰囲気の中だった、あの閻魔が現れのは。
紫と萃香は逃げた。
すぐ逃げやがった。
でも俺はダメでした。
捕まりました。
畜生め。何であいつは、休みの日まで説教し歩いてるんだよ……
そんなことがあってから、数日。今日は紅魔館へお出かけです。目的は咲夜さんに頼んでおいた、お酒の回収。
あ、久しぶりにフランちゃんとも会っていこうかな。フランちゃんはちょっと怖いけど、幻想郷の癒し要素。大切な存在です。
レミリアは……まぁ、別にいいか。
時刻は夕方。良い時間だ。
どうしようか……博麗神社から行ったほうが近いかな? 普通に出ると、何処に出るのかわかんないんだよね。
妖怪の山とかに出て、天狗に会うと面倒なんだよなぁ。ん~、まあいっか。今度、紅魔館とも繋げてもらおう。
少しのお酒と洋菓子を持ち、田畑の間を抜け真っ直ぐ進む。
一転、暗転。
視界が戻ると、目の前に人がいた。
「あら? この鳥居、黒のだったのね」
アリスだった。
ということは、ここは魔法の森かな? 良かった。それなら紅魔館とも近い。
「や、アリス。何やってるの? 迷子?」
お散歩ですか? こんな時間に。
「そんなわけ無いでしょ。暇つぶしに出歩いていたら、見かけない物があったから調べていたのよ」
「ああ、そうなのね。この鳥居を抜ければ俺の店に着くけど、行っても今は誰もいないよ」
ちょっともったいなかったね。貴重なお客さんだったかもしれないのに。
「別にいいわよ。行く気もないし。それで? 貴方は何処かへお出かけ?」
なんだ、そうなのか。
それは残念。
「ちょっと紅魔にね」
「ふ~ん。じゃあ、私も行こうかしら」
おろ? まぁ別に良いと思うけど。
「なんか用事でもあるの?」
「あの莫迦みたいに大きな図書館から、本でも借りようと思ってね」
莫迦みたいとか言うなよ……きっと一生懸命集めたのだろうから。
「ちゃんと返してあげなよ?」
「どっかの魔法使いと一緒にしないで。私はちゃんと返すわよ」
魔理沙ちゃん、まだ返してないんだろうな……
「んじゃ、一緒に行くか」
その後もアリスとお話しながら、のんびりと紅魔館へ向かっていたせいで、着く頃にはすっかり夜となっていた。
この夜も随分と暖かくなったねぇ。一月前の寒さが嘘のようだ。
「黒さんに……いつかの人形遣いさんですね。ようこそ紅魔館へ」
紅魔館の入口で美鈴と会話。今日はちゃんと仕事をしているみたいです。
「今晩は、美鈴」
「はい、今晩は。人形遣いさんは、今日もパチュリー様のところに用ですか?」
「ええ、そうよ」
――了解しました。ではお入りください。
と言ってから美鈴は門を開けてくれた。
それじゃ、お邪魔します。
アリスとは紅魔館のエントランスで別れた。
さて、咲夜さんを探さないとだけど……ここで待ってれいば来る気がする。
「いらっしゃいませ、黒様」
ほら来た。
「や、今晩は。この前渡したお酒だけど、できてる?」
ちょっとずるいけれど、ウイスキーの入った樽を咲夜さんに頼んで、熟成してもらった。
「はい、20年ほど進めておきました」
「おお、ありがと。これはお礼ね」
お礼として、咲夜さんにはロゼワインと洋菓子を渡した。ふふっ、これで20年物のシングルモルトウイスキーの完成だ。
飲むのが楽しみだぜ。
「ありがとうございます。妹様が貴方と会うのを、楽しみにしていたので是非会って行ってください。私はお茶の用意をしてきます」
咲夜さんはそう言って消えてしまった。お茶を飲んでいけってことかな? じゃあ、ゆっくりさせてもらおう。
「あ、ホントにクロがいる。久しぶり!」
奥の方から声がしたと思ったら、フランちゃんだった。
ててててっとこちらに走ってきて、そのまま俺に体当たり。
フランちゃんの頭が鳩尾に直撃した。息が止まる。
「カハッ……お、おう久しぶり」
なんとか笑顔を作る。
でも、この黒、少し泣いています。
「ねぇねぇ、今日はどうしたの?」
フランちゃんがこちらを見上げて聞いてきた。
「ちょっと用事があったのと、あとはフランちゃんに会いに来たんだよ」
「ホントに!? じゃあ、今日はゆっくりしていけるのね! お話しましょ、お話~」
う~ん、こうやってお話しているだけなら、可愛いんだけどな。たまにブッ飛ぶからな……こういう風に純粋な可愛さは貴重なんです。
霊夢だって昔は……いや、昔からあんなんだったな。
「お話ねぇ……どんな話が聞きたい?」
「うー……なんでもいい!」
そっか、なんでもいいか~。
「そうだね……じゃあこの前、家に来た不思議な迷子の二人組のお話でもしようかな」
そんな感じで、のんびりとフランちゃんとお話。
ああ、平和だ。
「妹様、黒様。お茶の準備が出来ました。お嬢様もお待ちです」
咲夜さん登場。
もう、なんか慣れたわ。
その後、仲良くフランちゃんと手を繋いで食堂まで行った。フランちゃんのお手々ちっちゃいね~
食堂に着くと、すでにレミリアが待っていた。でも、魔女さんとアリスはいなかった。実験が忙しいのかな?
用意されていたのは俺が渡したワインと洋菓子、それと一つだけ別の飲み物。たぶん、フランちゃん用だと思う。
「いらっしゃい、黒。歓迎するわ」
レミリアが言った。
頑張ってカリスマっぽく見せているけど、涎掛けにしか見えない前掛けが全てをぶち壊していた。うん、いつも通りだね。
「や、お邪魔してるよ。今日はレミリアもワインを飲むの?」
「いいえ、私は……咲夜」
「はい、かしこまりました」
と言う声が聞こえ、いつの間にか咲夜さんが隣に来ていた。
「あの……その手に持った空のワイングラスとナイフは?」
「失礼します」
咲夜さんはそう言って、俺の腕をナイフで切った。
ですよねー。吸血鬼だもんね。まぁ、これくらいなら別に気にしないけど。
ちょっと別の問題が……
「貴方の血は飲んだことがなかったからね。ちょっといただくわよ」
切る前に言いなさいよ。
ある程度グラスにワインが溜まったと思ったら、腕に包帯が巻かれていた。このくらいならすぐに治るのに。
う~ん、俺の血はやめておいた方が良いと思うけど……
「フフっ、綺麗な色ね。それじゃあ、いただきましょうか」
「あ~、お姉様だけずるい! 私も飲みたい!!」
酷い会話だ……俺って客だよね? 食料じゃないよね?
「フランもあとでもらいなさい。香りは、普通ね……って、これ」
あ~……やっぱりダメか。
まぁ、そりゃあそうだよな。
「どうしたのお姉様? 飲まないなら私が飲むよ?」
「やめておきなさい、お腹を壊すわよ。咲夜、これは片付けておいて」
「……飲まないのか?」
「私は人間の血しか飲みたくないわ。詳しくは聞かないけれど黒、貴方って……」
「昔にね……色々あってさ」
もう、何年経っただろうか? 昔過ぎて、思い出せもしない。
「貴方は本当に人間なの?」
「血液以外はね」
DNAとかはちゃんと人間だと思うよ。
「そう、まぁ別にいいわ。咲夜、私にもワインを」
「え? え? なんだったの?」
フランちゃんがついていけてない。大丈夫、別に知らなくても問題ない話だよ。
お茶(お酒)を飲み終わった後は、レミリアも加え三人で朝まで談笑していた。姉妹の仲もかなり良さそうだった。
そんな二人の様子を見ることができて嬉しいよ。
レミリアから、紅魔館と俺の家を繋げる許可ももらい、日が昇ってすぐ帰ることに。
ん~こんな形でバレるとは……まぁ、別に隠していたわけでもないけどさ。
人間と妖怪。
どこまで人間で、どこからが妖怪なんだろうね?
血液以外は人間。半人半妖とは……違うと思う。
あ~よくわからん。徹夜のせいか頭も回らない。
いつかきっと、答えを出さなければいけない日が来るかもしれない。
嫌なことは後回し。まあ、その時に考えればいいでしょ。
明日は博麗神社で、また宴会。
もう、今日は寝よう。
ウイスキーを持って帰り忘れたことは、寝るとき直前に気づいた。
DNAとか出てきましたが、妖怪にはDNAなんてあるのでしょうか?
タンパク質の合成にDNAは不可欠ですが、そもそも妖怪の代謝系がわかりません
細胞があるのかすら怪しいです
と、いうことで第15話でした
本編3行目は誤字にあらず
な~んてね
春雪異変も終わり、そろそろ萃夢想っぽいです
でも、違うかもしれません
では、次話でお会いしましょう
感想・質問など何でもお待ちしておりますが、若干諦めています