東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第15話~流れているのは~

 

 

 終わらない冬が終わってから、一月ほど。あれだけ見事に咲いていた桜も葉をつけ、お花見するには物足りなくなった。

 一気に咲いたせいか、今年はチルノも早かった。

 

 それだというのに、博麗神社での宴会は定期的に続いている。どうにもお祭りムードがなかなか抜けない。

 

 楽しそうで何よりです。どっかの子鬼も俺の店で暴れなくなったし平和な毎日。

 

 先日は、いつまで経っても起きてこない紫を叩き起し、萃香も一緒に白玉楼でお花見をした。お酒を飲み交わし、昔話に花が咲く。

 

 そんな良い雰囲気の中だった、あの閻魔が現れのは。

 

 紫と萃香は逃げた。

 すぐ逃げやがった。

 でも俺はダメでした。

 捕まりました。

 畜生め。何であいつは、休みの日まで説教し歩いてるんだよ……

 

 そんなことがあってから、数日。今日は紅魔館へお出かけです。目的は咲夜さんに頼んでおいた、お酒の回収。

 あ、久しぶりにフランちゃんとも会っていこうかな。フランちゃんはちょっと怖いけど、幻想郷の癒し要素。大切な存在です。

 レミリアは……まぁ、別にいいか。

 

 時刻は夕方。良い時間だ。

 

 どうしようか……博麗神社から行ったほうが近いかな? 普通に出ると、何処に出るのかわかんないんだよね。

 妖怪の山とかに出て、天狗に会うと面倒なんだよなぁ。ん~、まあいっか。今度、紅魔館とも繋げてもらおう。

 

 少しのお酒と洋菓子を持ち、田畑の間を抜け真っ直ぐ進む。

 一転、暗転。

 

 

 

 

 

 視界が戻ると、目の前に人がいた。

 

「あら? この鳥居、黒のだったのね」

 

 アリスだった。

 ということは、ここは魔法の森かな? 良かった。それなら紅魔館とも近い。

 

「や、アリス。何やってるの? 迷子?」

 

 お散歩ですか? こんな時間に。

 

「そんなわけ無いでしょ。暇つぶしに出歩いていたら、見かけない物があったから調べていたのよ」

 

「ああ、そうなのね。この鳥居を抜ければ俺の店に着くけど、行っても今は誰もいないよ」

 

 ちょっともったいなかったね。貴重なお客さんだったかもしれないのに。

 

「別にいいわよ。行く気もないし。それで? 貴方は何処かへお出かけ?」

 

 なんだ、そうなのか。

 それは残念。

 

「ちょっと紅魔にね」

 

「ふ~ん。じゃあ、私も行こうかしら」

 

 おろ? まぁ別に良いと思うけど。

 

「なんか用事でもあるの?」

 

「あの莫迦みたいに大きな図書館から、本でも借りようと思ってね」

 

 莫迦みたいとか言うなよ……きっと一生懸命集めたのだろうから。

 

「ちゃんと返してあげなよ?」

 

「どっかの魔法使いと一緒にしないで。私はちゃんと返すわよ」

 

 魔理沙ちゃん、まだ返してないんだろうな……

 

「んじゃ、一緒に行くか」

 

 その後もアリスとお話しながら、のんびりと紅魔館へ向かっていたせいで、着く頃にはすっかり夜となっていた。

 この夜も随分と暖かくなったねぇ。一月前の寒さが嘘のようだ。

 

 

「黒さんに……いつかの人形遣いさんですね。ようこそ紅魔館へ」

 

 紅魔館の入口で美鈴と会話。今日はちゃんと仕事をしているみたいです。

 

「今晩は、美鈴」

 

「はい、今晩は。人形遣いさんは、今日もパチュリー様のところに用ですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

 ――了解しました。ではお入りください。

 

 と言ってから美鈴は門を開けてくれた。

 それじゃ、お邪魔します。

 

 アリスとは紅魔館のエントランスで別れた。

 さて、咲夜さんを探さないとだけど……ここで待ってれいば来る気がする。

 

「いらっしゃいませ、黒様」

 

 ほら来た。

 

「や、今晩は。この前渡したお酒だけど、できてる?」

 

 ちょっとずるいけれど、ウイスキーの入った樽を咲夜さんに頼んで、熟成してもらった。

 

「はい、20年ほど進めておきました」

 

「おお、ありがと。これはお礼ね」

 

 お礼として、咲夜さんにはロゼワインと洋菓子を渡した。ふふっ、これで20年物のシングルモルトウイスキーの完成だ。

 飲むのが楽しみだぜ。

 

「ありがとうございます。妹様が貴方と会うのを、楽しみにしていたので是非会って行ってください。私はお茶の用意をしてきます」

 

 咲夜さんはそう言って消えてしまった。お茶を飲んでいけってことかな? じゃあ、ゆっくりさせてもらおう。

 

「あ、ホントにクロがいる。久しぶり!」

 

 奥の方から声がしたと思ったら、フランちゃんだった。

 

 ててててっとこちらに走ってきて、そのまま俺に体当たり。

 フランちゃんの頭が鳩尾に直撃した。息が止まる。

 

「カハッ……お、おう久しぶり」

 

 なんとか笑顔を作る。

 でも、この黒、少し泣いています。

 

「ねぇねぇ、今日はどうしたの?」

 

 フランちゃんがこちらを見上げて聞いてきた。

 

「ちょっと用事があったのと、あとはフランちゃんに会いに来たんだよ」

 

「ホントに!? じゃあ、今日はゆっくりしていけるのね! お話しましょ、お話~」

 

 う~ん、こうやってお話しているだけなら、可愛いんだけどな。たまにブッ飛ぶからな……こういう風に純粋な可愛さは貴重なんです。

 霊夢だって昔は……いや、昔からあんなんだったな。

 

「お話ねぇ……どんな話が聞きたい?」

 

「うー……なんでもいい!」

 

 そっか、なんでもいいか~。

 

「そうだね……じゃあこの前、家に来た不思議な迷子の二人組のお話でもしようかな」

 

 そんな感じで、のんびりとフランちゃんとお話。

 ああ、平和だ。

 

「妹様、黒様。お茶の準備が出来ました。お嬢様もお待ちです」

 

 咲夜さん登場。

 もう、なんか慣れたわ。

 

 その後、仲良くフランちゃんと手を繋いで食堂まで行った。フランちゃんのお手々ちっちゃいね~

 

 食堂に着くと、すでにレミリアが待っていた。でも、魔女さんとアリスはいなかった。実験が忙しいのかな?

 用意されていたのは俺が渡したワインと洋菓子、それと一つだけ別の飲み物。たぶん、フランちゃん用だと思う。

 

「いらっしゃい、黒。歓迎するわ」

 

 レミリアが言った。

 頑張ってカリスマっぽく見せているけど、涎掛けにしか見えない前掛けが全てをぶち壊していた。うん、いつも通りだね。

 

「や、お邪魔してるよ。今日はレミリアもワインを飲むの?」

 

「いいえ、私は……咲夜」

 

「はい、かしこまりました」

 

 と言う声が聞こえ、いつの間にか咲夜さんが隣に来ていた。

 

「あの……その手に持った空のワイングラスとナイフは?」

 

「失礼します」

 

 咲夜さんはそう言って、俺の腕をナイフで切った。

 ですよねー。吸血鬼だもんね。まぁ、これくらいなら別に気にしないけど。

 ちょっと別の問題が……

 

「貴方の血は飲んだことがなかったからね。ちょっといただくわよ」

 

 切る前に言いなさいよ。

 ある程度グラスにワインが溜まったと思ったら、腕に包帯が巻かれていた。このくらいならすぐに治るのに。

 

 う~ん、俺の血はやめておいた方が良いと思うけど……

 

「フフっ、綺麗な色ね。それじゃあ、いただきましょうか」

 

「あ~、お姉様だけずるい! 私も飲みたい!!」

 

 酷い会話だ……俺って客だよね? 食料じゃないよね?

 

「フランもあとでもらいなさい。香りは、普通ね……って、これ」

 

 あ~……やっぱりダメか。

 まぁ、そりゃあそうだよな。

 

「どうしたのお姉様? 飲まないなら私が飲むよ?」

 

「やめておきなさい、お腹を壊すわよ。咲夜、これは片付けておいて」

 

「……飲まないのか?」

 

「私は人間の血しか飲みたくないわ。詳しくは聞かないけれど黒、貴方って……」

 

「昔にね……色々あってさ」

 

 もう、何年経っただろうか? 昔過ぎて、思い出せもしない。

 

「貴方は本当に人間なの?」

 

「血液以外はね」

 

 DNAとかはちゃんと人間だと思うよ。

 

「そう、まぁ別にいいわ。咲夜、私にもワインを」

 

「え? え? なんだったの?」

 

 フランちゃんがついていけてない。大丈夫、別に知らなくても問題ない話だよ。

 

 お茶(お酒)を飲み終わった後は、レミリアも加え三人で朝まで談笑していた。姉妹の仲もかなり良さそうだった。

 そんな二人の様子を見ることができて嬉しいよ。

 

 

 レミリアから、紅魔館と俺の家を繋げる許可ももらい、日が昇ってすぐ帰ることに。

 

 

 

 ん~こんな形でバレるとは……まぁ、別に隠していたわけでもないけどさ。

 

 人間と妖怪。

 どこまで人間で、どこからが妖怪なんだろうね?

 血液以外は人間。半人半妖とは……違うと思う。

 

 あ~よくわからん。徹夜のせいか頭も回らない。

 

 いつかきっと、答えを出さなければいけない日が来るかもしれない。

 嫌なことは後回し。まあ、その時に考えればいいでしょ。

 

 明日は博麗神社で、また宴会。

 もう、今日は寝よう。

 

 

 ウイスキーを持って帰り忘れたことは、寝るとき直前に気づいた。

 

 






DNAとか出てきましたが、妖怪にはDNAなんてあるのでしょうか?
タンパク質の合成にDNAは不可欠ですが、そもそも妖怪の代謝系がわかりません
細胞があるのかすら怪しいです


と、いうことで第15話でした
本編3行目は誤字にあらず

な~んてね


春雪異変も終わり、そろそろ萃夢想っぽいです
でも、違うかもしれません

では、次話でお会いしましょう



感想・質問など何でもお待ちしておりますが、若干諦めています
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