『そうだ、名前をつけようよ!』
『名前? 今までのやつじゃいかんの?』
『あれじゃあただの数字だもん。つまんないよ。貴方の名前はそうだね……』
『あ、君がつけるんだ』
『くろ! 今日から貴方は黒って名前ね!』
『安直だな、おい……う~ん黒、か。いいかもね』
『じゃあ、次は私の名前を黒がつけてよ』
『ん? ん~……じゃあ、しろ。白だな』
『フフッ、安直だね』
『うるせぇ』
――――――――
前の日がどんなに辛かろうが楽しかろうが、生きてさえいれば次の日に朝は必ず来る。大昔に弟を恐れたどっかの神様が引きこもったせいで、日が登らなくなったけれどそんなことはもうないだろうさ。
愛して離してくれない布団と別れ、起床のお時間です。早起きして3文の得をする。たった100円ちょっとでも、俺には大切なのだ。
あの貧乏脇巫女がツケを払ってくれたらいいんだけどね。まぁ、無理だろう。
人生あきらめが肝心。きっときっとそういうこと。
顔を洗って、歯を磨く。
さて、今日も頑張って掃除でもすっかなと思って母屋から、店の方へ行くとすでにお客さんがいた。自称、閑古鳥の似合うお店No.1だというのに珍しい。因みに『閑古鳥』と言うのは、『カッコウ』のことらしい。本物のカッコウがどんな鳥なのかは知りません。
「あら、やっと起きてきたのね。おはよう黒」
紫だった。
紫って確か朝、弱かったよね。どうしたんだろうか?
「おはよう紫。昨日ぶり。まだ朝早いのに珍しいじゃん」
昨日、あれだけ騒いだというのに元気なことで、流石妖怪さんだ。俺みたいなおじちゃんには朝早いってのは辛いんです。
「藍に起こしてもらったわ。最近は特に朝が辛いのよ」
なんだよ、自分で起きたんじゃないのか。あと、最近じゃなくてずっとな気がする。
「朝辛いねぇ……更年期障害か? 今度から養命酒出してあげるよ」
「ぶっ飛ばすわよ?」
や、やだな~、冗談じゃないですか。
「紫、なんか飲むか?」
俺は、ホットコーヒーでも飲もうかな。アラビカ種のいい豆も手に入ったことですし。
「日本酒、冷で」
紫が答えた。
「……朝から日本酒かよ。緑茶でも飲んでなさい」
朝から日本酒とか藍に怒られるぞ。主に俺がだけど……
自分と紫の飲み物を用意して一息。
さて、そろそろ本題に入りましょうか。
「んで、紫は何しに来たのさ?」
早起きしてまで来たんだ。ただ、遊びに来たってわけじゃないだろう。
「きちゃった」
紫が言った。
「歳考えろよババア」
俺が答えた。
「おい、カメラ止めろ」
紫がキレた。
~テイク2~
「んで、何しに来たんですか?」
ユカリコワイ。
せっかくのホットコーヒーが冷めてしまった。
「貴方に頼みたいことがありますの」
そう言って紫は笑った。
……そんな笑い方してるから、霊夢達から胡散臭いって言われるんだろうなぁ。
「紅魔館」
「ん?」
「黒は紅魔館を知ってるわよね?」
「……まぁ色々あったし、今でも偶にだけど遊びに行くよ」
遊ばれてるってのが正しいかもしれない。
「で、その紅魔館がどうしたのさ?」
「貴方は知らないでしょうけれど、昨晩から紅魔館を中心に紅い霧が発生しだしたのよ。今はそこまで被害がないけれど、その内幻想郷中に広がるわね」
――つまり、異変よ。
そう、紫は言った。
冷めたコーヒーが口内の傷に沁みた。
「ん~、紅魔館の奴らが異変を起こしたってのはわかったけれど、それが俺に関係あるの?」
嫌な予感。
「そろそろ、霊夢が異変解決に動き出すわ。昨日の魔法使いも動くでしょうね」
警鐘、警報、警告の意が響き渡る。
「黒」
「何さ?」
「貴方が解決しろ、とは言わないわ。どうせ、貴方じゃ紅魔館組には勝てないでしょうしね。むしろボコボコにされるわ」
……いや、わかっちゃいるけど言い方ってものがですね。もしかしてまだ、怒ってるのかな?
「手伝って来なさい。この異変解決を」
「拒否権は?」
「あると思うの?」
ですよね。
わかってた。わかりきっていた。
「どうして俺が異変解決に行かんとならんのさ? 霊夢だってもう一人で大丈夫だろ?」
昨日会ったばかりの魔理沙ちゃんの方は知らんけど。
「霊夢の強さくらいわかっているわ。ただ、この異変がスペルカードルールを導入して初めての異変だからよ。どうしても失敗したくない。それに、紅魔館にはあの子がいるじゃない。流石に大丈夫だとは思うけれど、不安はあるわ」
そんなに心配なら紫が行けばいいとは思わなかった。紫の立場的に、この程度の異変じゃ動けないのだろう。
なんとも面倒なことだ。
「つまり、盾になれってこと?」
「そう、霊夢のため……いえ、もしもの時は幻想郷のために」
――死になさい。
「……了解」
コーヒーは血の味がした。
「あ、そうだ紫。今度、バーボンの入っていた樽を持ってきてくれないか?」
帰ろうとしていた紫を引き止める。
「樽? 何に使うの?」
「ウイスキーを熟成するのに使うんだよ。まぁ、飲めるようになるまで早くても3年はかかるけどさ」
あ~あと、新しい酵母も欲しいかも。
まぁ、そっちはいいか。
「わかった。用意しておくわ」
バーボンなんて幻想郷じゃ絶対に飲めないしさ。
ん~ケンタッキー州だけ幻想入りしないかな? いや、流石に無茶か。
「他にいるものはある?」
「いや、ないよ。あっ、そうだ。ちゃんと藍を労わってやれよ? アイツここに来るたんび紫様が~、紫様が~って愚痴言ってるし」
「フフッ、そうね。善処しますわ」
そう言って紫は消えてしまった。
異変、紅魔館ねぇ……
紅魔館って目が痛くなるから長居はしたくないな。ま、明日にでも行ってみようかね。
偶には外に出てみようじゃないか。
と、言うことで第1話投稿です
文字数が少なく見えるのもきっと気のせい
先日、世界一のウイスキーを作った方のお話を聞かせていただく機会がありましたが、とても勉強になりました
お酒作りは奥が深い!!
実はウイスキーが嫌いだなんて口が裂けても言えませんね
では、次話でお会いしましょう
感想・質問何でもお待ちしております