東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第1話~はじまり、はじまり~

 

 

『そうだ、名前をつけようよ!』

 

『名前? 今までのやつじゃいかんの?』

 

『あれじゃあただの数字だもん。つまんないよ。貴方の名前はそうだね……』

 

『あ、君がつけるんだ』

 

『くろ! 今日から貴方は黒って名前ね!』

 

『安直だな、おい……う~ん黒、か。いいかもね』

 

『じゃあ、次は私の名前を黒がつけてよ』

 

『ん? ん~……じゃあ、しろ。白だな』

 

『フフッ、安直だね』

 

『うるせぇ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 前の日がどんなに辛かろうが楽しかろうが、生きてさえいれば次の日に朝は必ず来る。大昔に弟を恐れたどっかの神様が引きこもったせいで、日が登らなくなったけれどそんなことはもうないだろうさ。

 愛して離してくれない布団と別れ、起床のお時間です。早起きして3文の得をする。たった100円ちょっとでも、俺には大切なのだ。

 あの貧乏脇巫女がツケを払ってくれたらいいんだけどね。まぁ、無理だろう。

 

 人生あきらめが肝心。きっときっとそういうこと。

 

 

 顔を洗って、歯を磨く。

 

 さて、今日も頑張って掃除でもすっかなと思って母屋から、店の方へ行くとすでにお客さんがいた。自称、閑古鳥の似合うお店No.1だというのに珍しい。因みに『閑古鳥』と言うのは、『カッコウ』のことらしい。本物のカッコウがどんな鳥なのかは知りません。

 

「あら、やっと起きてきたのね。おはよう黒」

 

 紫だった。

 紫って確か朝、弱かったよね。どうしたんだろうか?

 

「おはよう紫。昨日ぶり。まだ朝早いのに珍しいじゃん」

 

 昨日、あれだけ騒いだというのに元気なことで、流石妖怪さんだ。俺みたいなおじちゃんには朝早いってのは辛いんです。

 

「藍に起こしてもらったわ。最近は特に朝が辛いのよ」

 

 なんだよ、自分で起きたんじゃないのか。あと、最近じゃなくてずっとな気がする。

 

「朝辛いねぇ……更年期障害か? 今度から養命酒出してあげるよ」

「ぶっ飛ばすわよ?」

 

 や、やだな~、冗談じゃないですか。

 

 

「紫、なんか飲むか?」

 

 俺は、ホットコーヒーでも飲もうかな。アラビカ種のいい豆も手に入ったことですし。

 

「日本酒、冷で」

 

 紫が答えた。

 

「……朝から日本酒かよ。緑茶でも飲んでなさい」

 

 朝から日本酒とか藍に怒られるぞ。主に俺がだけど……

 

 

 

 

 自分と紫の飲み物を用意して一息。

 

 さて、そろそろ本題に入りましょうか。

 

「んで、紫は何しに来たのさ?」

 

 早起きしてまで来たんだ。ただ、遊びに来たってわけじゃないだろう。

 

「きちゃった」

 

 紫が言った。

 

「歳考えろよババア」

 

 俺が答えた。

 

「おい、カメラ止めろ」

 

 紫がキレた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~テイク2~

 

 

「んで、何しに来たんですか?」

 

 ユカリコワイ。

 せっかくのホットコーヒーが冷めてしまった。

 

「貴方に頼みたいことがありますの」

 

 そう言って紫は笑った。

 ……そんな笑い方してるから、霊夢達から胡散臭いって言われるんだろうなぁ。

 

「紅魔館」

「ん?」

「黒は紅魔館を知ってるわよね?」

「……まぁ色々あったし、今でも偶にだけど遊びに行くよ」

 

 遊ばれてるってのが正しいかもしれない。

 

「で、その紅魔館がどうしたのさ?」

「貴方は知らないでしょうけれど、昨晩から紅魔館を中心に紅い霧が発生しだしたのよ。今はそこまで被害がないけれど、その内幻想郷中に広がるわね」

 

 

 ――つまり、異変よ。

 

 

 そう、紫は言った。

 

 冷めたコーヒーが口内の傷に沁みた。

 

 

 

 

 

「ん~、紅魔館の奴らが異変を起こしたってのはわかったけれど、それが俺に関係あるの?」

 

 嫌な予感。

 

「そろそろ、霊夢が異変解決に動き出すわ。昨日の魔法使いも動くでしょうね」

 

 警鐘、警報、警告の意が響き渡る。

 

「黒」

「何さ?」

「貴方が解決しろ、とは言わないわ。どうせ、貴方じゃ紅魔館組には勝てないでしょうしね。むしろボコボコにされるわ」

 

 ……いや、わかっちゃいるけど言い方ってものがですね。もしかしてまだ、怒ってるのかな?

 

「手伝って来なさい。この異変解決を」

「拒否権は?」

「あると思うの?」

 

 ですよね。

 わかってた。わかりきっていた。

 

「どうして俺が異変解決に行かんとならんのさ? 霊夢だってもう一人で大丈夫だろ?」

 

 昨日会ったばかりの魔理沙ちゃんの方は知らんけど。

 

「霊夢の強さくらいわかっているわ。ただ、この異変がスペルカードルールを導入して初めての異変だからよ。どうしても失敗したくない。それに、紅魔館にはあの子がいるじゃない。流石に大丈夫だとは思うけれど、不安はあるわ」

 

 そんなに心配なら紫が行けばいいとは思わなかった。紫の立場的に、この程度の異変じゃ動けないのだろう。

 なんとも面倒なことだ。

 

「つまり、盾になれってこと?」

 

 

「そう、霊夢のため……いえ、もしもの時は幻想郷のために」

 

 

 ――死になさい。

 

 

「……了解」

 

 

 コーヒーは血の味がした。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ紫。今度、バーボンの入っていた樽を持ってきてくれないか?」

 

 帰ろうとしていた紫を引き止める。

 

「樽? 何に使うの?」

「ウイスキーを熟成するのに使うんだよ。まぁ、飲めるようになるまで早くても3年はかかるけどさ」

 

 あ~あと、新しい酵母も欲しいかも。

 まぁ、そっちはいいか。

 

「わかった。用意しておくわ」

 

 バーボンなんて幻想郷じゃ絶対に飲めないしさ。

 ん~ケンタッキー州だけ幻想入りしないかな? いや、流石に無茶か。

 

「他にいるものはある?」

「いや、ないよ。あっ、そうだ。ちゃんと藍を労わってやれよ? アイツここに来るたんび紫様が~、紫様が~って愚痴言ってるし」

「フフッ、そうね。善処しますわ」

 

 そう言って紫は消えてしまった。

 

 異変、紅魔館ねぇ……

 

 紅魔館って目が痛くなるから長居はしたくないな。ま、明日にでも行ってみようかね。

 

 偶には外に出てみようじゃないか。

 

 






と、言うことで第1話投稿です

文字数が少なく見えるのもきっと気のせい

先日、世界一のウイスキーを作った方のお話を聞かせていただく機会がありましたが、とても勉強になりました
お酒作りは奥が深い!!

実はウイスキーが嫌いだなんて口が裂けても言えませんね

では、次話でお会いしましょう

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