東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第16話~香りを萃めて百鬼夜行~

 

 

「ホント、嫌になっちゃうよね。なんだって今年はあんなに宴会が少ないのさ?」

 

 季節はすでに初夏、時間の流れは早いねぇ。

 そして俺の店で、プリプリ怒る萃香ちゃん。とても良い迷惑です。

 

「まぁ、今年は桜の咲いている時間が短かったし、仕様がないんじゃない?」

 

「私は、もっとやりたかった!」

 

 いや、そんなこと俺に言われても……

 文句は幽々子に言いなさいよ。

 

「また来年になったらお花見するだろうし、それまで我慢しなよ」

 

「来年か……遠いなぁ~」

 

 萃香はそう言ってまたお酒をグビりと呷った。

 

 

「そんなに宴会がしたいのなら、自分で企画すればいいじゃん」

 

 口が滑ったとしか言い様がない。ホント迂闊だったと思う。

 

「んん? あっそか、そうだね。萃めちゃえばいいのか」

 

 気づいた時にはもう遅い。

 今回の異変の始まりは、こんな会話からだった。

 

 酒、弾乱れてお祭り騒ぎ。

 

 登場人物全員怪しい。誰も彼もが疑心暗鬼で暗中模索。

 異変の犯人が、この小さな鬼だと皆が気づくのは、もう少し先のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 終わらない冬が終わり、短い春が過ぎてから少し。幻想郷のお祭りムードも、漸く抜けようとしていた。

 そして、短い春のせいで宴会が少なかったと怒る子鬼が一匹。そいつが、毎日のように俺の店に来ては、暴れている日々です。

 来てくれるのは嬉しいけれど、萃香って来ても自分のお酒を飲むだけで、店のお酒はあまり飲まないんだよね。売上が上がらんよ……

 流石に毎日のように、来て同じ話をするばかりだったから、ついつい口が滑ってしまった。

 そして、始まる三日置きの百鬼夜行。幻想郷のお祭りムードは、まだまだ抜けそうにない。

 

 

 

 

 

 

「なあ、なあ、なんで私たちは宴会をやっているんだ?」

 

 隣でお酒を飲んでいた魔理沙ちゃんが俺に聞いてきた。

 あ、コラ。そのお酒、結構良い奴なんだからちゃんと味わって飲んでよ。

 

「魔理沙ちゃんが、幹事をやって集めているからじゃないの?」

 

「いや、まぁそうなんだけどさ。だってそろそろ夏だぜ? だのに、どうして私たちはお花見なんてやっているんだよ? 桜なんてとっくに散ったっていうのにさ」

 

 しかも、三日置きの超ハイペースでの宴会。いくら飲みたがりで、お祭り大好きな連中が集まっていると言っても流石におかしいよね。

 

「じゃあ、宴会を開かなきゃいいんじゃない?」

 

 俺がそう言うと、萃香が俺の背中をバシバシ叩いてきた。痛い、痛いって。

 んもう、冗談だよ。

 

 因みに魔理沙ちゃんは、やっぱり萃香に気づいてないみたい。

 

「ん~そうなんだけどさ……上手く言えんけど、なんか宴会をしなきゃいけないっていうか……やっぱり良くわからんな」

 

 つまり、どっかの子鬼の我が儘があって、俺達はそのしわ寄せでこんな宴会を……強いられているんだッ!

 

 ……いや、一度言ってみたくてさ。なんかゴメンね

 

 う~ん、これだけ宴会が続いちゃうと、流石に怪しいよね。まぁ、今回は君たちだけで頑張ってよ。

 

「ま、皆楽しそうだし良いんじゃない?」

 

「う~ん、いいのかなぁ」

 

 何処か腑に落ちない様子の魔理沙ちゃん。さてさてこの異変は、あとどれくらいバレずに済むのかな?

 ねぇ萃香、君はどう思う?

 

 

 そして、そんな会話をした宴会の日からまた三日が経った。今晩も博麗神社でお花見です。

 あれ? お花見って何だっけ?

 

 ななしのお花見。

 まとめて、お葉見。

 ……くだらねぇ。

 

 神社の境内には薄らと怪しい霧。前回の宴会よりもその濃度は、濃い。

 さてさて、何人が気づいているのかな?

 

 周りを見ると、今日も今日とて皆楽しそう。

 

 あ、コラ妖夢ちゃん。酔ったまま刀を振り回したら危ないよ? 幽々子も笑ってないで止めなさいよ……

 魔理沙ちゃんはレミリアと弾幕ごっこ。さっきから、弾だの星だの飛んできて危ない。紅魔館の魔女さんは、端っこで本を読んでいた。何しに来たんだよ、あんた……あら、レミリアの流れ弾が直撃した。

 咲夜さんとアリスは談笑中。珍しい組み合わせだね。咲夜さん、咲夜さん魔女さんが倒れてるけどいいの?

 

 えと、萃香は……ああ、神社の屋根の上にいるわ。

 んで、霊夢は……おろ?

 

「…………」

 

 何かを考えてる様子の霊夢。珍しく、お酒にもあまり手をつけていないみたい。

 

「どうしたのさ霊夢。お酒飲まないの?」

 

「なんかね……こう、モヤモヤしてるっていうか……これだけ妖怪が集まっているのだから、妖気を感じるのもおかしくはないけど。霧が、ね。まるで、誰かに操られているみたいで気持ち悪いのよ」

 

 ――よくわからないけど。

 

 と霊夢は首をかしげた。

 

「ん~、宴会は嫌いか?」

 

 少しだけ恍けてみせる。頑張って、ここまで来ればゴールは近いから。

 

「嫌いじゃないわよ。でも……」

 

 と、霊夢は何かを言おうとしたが、その言葉が続くことはなかった。屋根の上を見る。

 萃香と目が合った。宴も闌……というには少し遅いかな? まぁ、そろそろ潮時かもね。

 

 

 

 そして次の日、萃香にそろそろバレちゃうかもね。ってことを伝えようと、博麗神社まで来た。

 時刻は昼。多分、ここにいるはず。まぁ、アイツはどこにでもいるんだけどさ。

 

「あら、貴方の方から来てくれるとは、思わなかったわ」

 

 そんな声をかけられた。

 

「や、魔女さん。君がこんな昼間から外に出るなんて、随分珍しいね。どうしたの? 俺に用があるみたいだけど」

 

 ま、どうせこの異変に関してなんだろうね。まさか、魔女さんが動くとは思わなかった。てか、動かない大図書館なんじゃなかったっけ?

 

「ゆっくり本は読めないし、流れ弾は当たるし、いいかげんこの宴会にもうんざりよ。さっさと終わらせてちょうだい」

 

 ……とんだとばっちりだった。

 全く、この魔女さんも鋭いのか鈍いのかわからんね。

 

「それなら、いつものように引き篭ってればいいのに……てか、俺は知らんぞ?」

 

「お酒と言ったら貴方でしょ? この鬱陶しい妖気を何とかして」

 

 萃香に言ってよ……俺はちょっとしか関係ないよ?

 

「いや俺、人間だよ? 妖気とか出せないし」

 

「ダウト。レミィと咲夜から聞いたわよ。貴方のことを。それに随分と猫を被っているらしいわね?とにかく、貴方が怪しいのは確かよ」

 

 むぅ……やっぱり、前回バレちゃったのは失敗だったね。まぁ、どうしようもなかったのだけどさ。

 

「はぁ……研究者ってのは、どうにも頭でっかちになっていけないねぇ。もっと広い視野を持とうぜ? 理論だけじゃあ、この幻想郷で生きていけんよ?」

 

「もう少し、気の利いた挑発はできないの?」

 

「急激な運動は体に悪いよ?」

 

「たまには体を動かすのも悪くないわ」

 

 はぁ、逃がしては……くれんよね? 弾幕ごっこか……アレ苦手なんだなぁ。

 

 ま、これも萃香のためだと思って、できるだけ頑張ってみようじゃないか。

 

 ふぅ……

 

「Bring it on!」

 

「……Go-ahead. Make my day」

 

 それじゃ、精一杯踊ってみせようか。

 

「日符『ロイヤルフレア』」

 

「酒符『迎え酒』!」

 

 弾幕ごっこの始まりだ。

 

 物語は一気に動き出した。きっかけなんて些細なのもだ。

 

 動かない図書館は、迷える店主の元へ。

 紅白の巫女は、白黒の魔法使いの所へ。

 人形遣いは紅魔の館へ。

 紅魔のメイドは冥界へ。

 半人半霊は切り歩き、妖怪賢者は酒を盗み渡る。

 

 それらを見て笑う一匹の鬼。

 

 一見バラバラの11人分の物語。やがて萃まり、繋がる物語。

 

 今年、最後のお花見まで後二日。

 

 






最近、一本5000円の日本酒を飲ませていただきました
純米大吟醸です
米と水しか使っていないはずなのに、フルーツのような香りがしました
そして何より、飲みやすい!
とても美味しかったです


と言うことで第16話でした
第16話と言っても、早いものでこれが20話目となります

では、次話でお会いしましょう
次話は、萃夢想解決……までいけるかな?



感想・質問など何でもお待ちしておりますが、最近書いて頂いたので私は満足です
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