東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第17話~それでも俺はやってない~

 

 

「……よわっ」

 

 目の前に広がる、雲一つない完璧な空。

 ああ、今日も良い天気だ。

 

「さっきの勝負、本気だった? 全く手応えがなかったけれど……この程度じゃ、あの氷精にだって勝てないわよ?」

 

 風も心地よい。自然だけはいつだって俺に優しくしてくれる。

 

「話には聞いていたけれど、まさかここまで弱いとは……」

 

 おや? 雨かな?

 おかしいな……さっきまで綺麗に見えていた空が、ぼやけて上手く見えない。

 

「ねぇ、ちょっと聞いてる?」

 

 あーもう!

 

「聞いてます! はいはい、あんたは強い強い!」

 

「いや、私が強いんじゃなくて、貴方が弱いだけじゃ……それもビックリするくらい」

 

「それ楽しい!? さっきから人の心抉って楽しい!?」

 

「事実を言っているだけじゃない」

 

 それが! 俺の! 心を! 抉るんだよ!!

 

 

 この会話でわかると思うけれど、俺と魔女さんの闘いは終始一方的だった。一言で言うと『下は大火事、上は洪水コレな~んだ?』

 そんな感じだった。

 

 接近戦なら勝てるだろうと思い、勝負が始まってすぐ一気に近づこうとした。足元が爆発した。もう笑うしかない。

 地面は炎で覆われ、仕方がないから飛ぶ。そしたら、飛んでくるありえん数の水弾。

下から来るせいで能力も使えない。

 必死で考えた俺のスペルカードによって放たれた霊弾は、全て魔女さんの水弾に打ち消され、水弾はそのまま俺に近づいてきた。

 あ、これ終わったわ。

 とか人ごとのように考えているうちに、地面へと叩き落され、さらに追撃を食らった(鬼か!?)。

 この間10秒くらいです。

 

 さらに魔女さんは、弾幕ごっこによる外側の破壊だけでなく、精神攻撃による内側の破壊まで試み始めた。俺が何をしたって言うんだよ……

 

「妖気が無くならない……じゃあ、この異変は貴方が原因じゃないのね?」

 

「だから最初から言ってたじゃん……」

 

 ――そう。じゃあ、次に怪しいのは……あの亡霊ね。

 

 なんて言って魔女さんは飛び立って行った。亡霊というのはたぶん幽々子のことだろう。忙しい人だ。

 

 ああ、空が綺麗だなぁ。

 

「黒も随分と弱くなったねぇ。本当にあれが全力かい?」

 

 いつの間にか萃香がいた。

 なんとか体を起こしてみる。うわっ、コイツまたお酒飲んでるよ。

 

「今の俺じゃ、あれが本気なんだよ」

 

 悲しいけど現実なんだよね、これ。

 

「紫に貸したままなんだろう? 返してもらえばいいじゃないか」

 

「ん~別に必要じゃないしなぁ。いいよ」

 

 それに、あの体が熱くなるような感覚嫌いなんだよね。

 

「まあ、あんたがそう言うなら私は何も言わないよ。さっきの奴に私のことを教えなくて良かったのかい?」

 

 魔女さんのことかな?

 

「いいよ。俺はこの異変を解決したいわけじゃないんだし」

 

 それに今回はどちらかと言うと、異変を起こした側の立場に近いしね。萃香を裏切ってしまうようでどうにも。

 

「黒は異変を解決する側じゃないの?」

 

「時と場合によるかな」

 

 幻想郷が危ないのなら、俺も動くけど今回の異変は……ねえ。

 

「そうか、そうかわかったよ。これから忙しくなると思うけど、まぁ頑張って」

 

 と言うと、萃香は消えてしまった。ん? 何を頑張るって言うんだ?

 

 ま、考えてもわからんか。せっかく来たのだから、とりあえず霊夢に会っていこう。

 

 そんなことを考えつつ、霊夢がいつもいる縁側へ。

 

 あら? いないな。そもそも、あれだけ境内で騒いでいたのに、霊夢が出て来ないっていうのもおかしい。

 ついに霊夢も動き出したのかな?

 

 ん~、霊夢がいないんじゃ仕様がない。疲れたし、今日はもう帰ろう。明日また来てその時にでも話を聞けばいいか。

 

 

 そして次の日から、頑張りだけではどうにもならない地獄が始まった。

 わざわざ博麗神社になんて行かずに家にいれば良かったのに。

 

 

 

 

 

 

 次の日。時刻はお昼を少し過ぎたくらい。

 今日も、博麗神社に来たわけだけど……霊夢がいない。境内にもいつもの縁側にも、母屋の中にも霊夢はいなかった。

 どうしたんだろうね? どうしよう、萃香も消えているみたいだし暇になっちゃったな。

 

「よう黒、昨日から探してたぜ」

 

 後ろから声がした。

 嫌な予感。

 

「や、魔理沙ちゃん。どしたの?」

 

 逃げることは……できないか。

 

「霊夢のやつは違うって言ってたけどさ。やっぱり黒って怪しいよな。うん、少なくとも私よりは絶対怪しい」

 

 なんだろう、少しだけ逆恨みっぽい匂いがする。

 

「いやいや、俺はこの異変を起こしてなんていないよ。だいたい魔理沙ちゃんだって、俺の実力くらいわかっているでしょ?」

 

「そうだな。あの妖怪桜を、簡単に封印できるくらいの実力だってことはわかっているぜ」

 

 簡単じゃなかったよ? その後倒れてたじゃん……

 

 

「……見逃してはくれないかな?」

 

「見逃してはやれないな」

 

 ――恋符。

 

 魔理沙ちゃんの声が届いた。

 

 さあ、今日の天気はどうだろうね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よわっ」

 

 目の前には広大な雲一つない空

 ああ、今日も良い天気だ。

 

「さっきの勝負、本気だったか?もう少しぐらい強いと思ってたんだけどなぁ」

 

 俺、何か悪いことしたかな? 日頃の行いだってそこまで悪くないと思うけど……畜生、涙で前がよく見えない。

 

「う~ん、妖霧が消えないな……黒じゃなかったか」

 

 だから、言ったのに俺はやってないって……

 

「じゃあ、やっぱり紅魔館のやつらが原因か?」

 

 残念、紅魔館は関係ないよ。

 

「なあなあ、黒は知っているんじゃないか? この異変を誰が起こしているのか」

 

「……知ってるけど教えない。あ、ちょっ、マスパはやめて!」

 

 やめてください、死んでしまいます。

 

「なんだよ~教えてくれても良いじゃないか」

 

 うるせー、人をボコボコにしたくせに。

 

「明日の宴会になればきっとわかるよ。それまでは自分で頑張って」

 

「そうかい、そうかい、それじゃ私は行くよ。また明日の宴会で会おうぜ」

 

 そう言うと魔理沙ちゃんは飛び立って行った。うん、じゃあね。

 ああ、本当に空が綺麗だ。

 

 魔理沙ちゃんとの一方的な闘い(いじめ)が終わった後、清々しい青空の下で眠りについた。もう、疲れたよ。

 

 そしてその日の夕方、博麗神社の様子を見に来た紅魔のメイドにボコボコにされ、『……よわっ』と言われた。

 なに? その言葉、流行っているの?

 

 身も心もボロボロにされ、博麗神社で不貞腐れていると新たな来客。『妖霧は妖霧でも、私は関係ありません!!』とか言っている妖夢ちゃんと闘うことに、いや知らねーよ、そんなこと……

 

 俺をボコボコにした後、流石に悪かったと思ったのか、妖夢ちゃんは謝ってくれた。隣にいた幽々子は笑っていた。

 博麗神社の屋根の上を見ると、いつの間にか帰ってきていた萃香の姿。その場所、気に入ったのかな?

 軽く手を振ると、こちらに気づいた萃香がブンブンと手を振替してくれた。のんきだね、お前のせいで俺はボコボコにされているんだぞ?

 まぁ、別に怒りはしないけどさ……

 

「新茶の香りってすぐに消えてしまうわよね」

 

 幽々子が話しかけてきた。妖夢ちゃんは、だいぶ荒れてしまった博麗神社の掃除中。ありがとね。

 

「まぁ、そりゃあそうだな」

 

 何の話だろうか?

 何かの比喩?

 

「でも、本当は消えてなんかない。ただ広がって薄くなって感じなくなっただけ」

 

 ああ、なるほど。そういう話ね。もう少しストレートに言ってよ。

 

「で、今はどうなの? その香りは感じる?」

 

「少しだけね。でも香りだって物質よ。広がりもすれば萃まりもする。ここはその香りがよくするわ」

 

 萃香も最初の頃と比べると、割と手を抜いているしね。無意識なんだろうけど、やっぱり妖気が濃くなっている。

 

「幽々子は見えていないの?」

 

「普通は見えないわよ……感じられる程度。私は黒ほど器用じゃないの。それに、見えている黒の方がおかしいのよ?」

 

 これ以上薄くなられたら、俺も見えなくなるけどね。

 

 妖夢ちゃんが掃除をし終わると、二人は帰って行った。

 

 二人が帰って暫くすると、フヨフヨと飛んでくる一つの紅白。漸く霊夢と会えた。

 

「あら、黒じゃない。どうしたの? こんな時間に」

 

「や、お帰り霊夢。異変解決の様子見かな。解決できそう?」

 

 どうやら、今回は霊夢の勘も冴えないらしい。

 

「う~ん、なんか今回は上手くいかないわ。とりあえず思いつくやつは全員倒したけれど、皆ハズレだったし。あと、残っているのは紫と……」

 

 

 ――貴方だけよ。

 

 

 霊夢がこちらを真っ直ぐ見て言った。

 

「俺は違うんじゃなかったのか?」

 

「わかっているわよ。そして、紫でもない。あと少しで分かりそうなのだけど、見えてはいるけど見えてないみたいで……モヤモヤしてるっていうか……う~ん、この霧のせいかしら?」

 

「ヒントいる?」

 

「いらない。たぶん明日になればわかると思うし」

 

 だってさ萃香、どうする? どうやら明日で終わりっぽいよ。

 屋根の上の萃香を見ると、お酒を呷りながら笑っていた。

 

「それよりお腹が空いたわ。おゆはんにしましょ。黒も食べて行くでしょ? 手伝って」

 

 そう言って霊夢は母屋の中へ。

 明日の宴会は楽しくなりそうだ。さてさて、萃香は本当にただ宴会をやりたかっただけなのかな?

 

 たぶん本当は……ま、考えても仕様が無いか。

 霊夢が俺を呼ぶ声がした、本日も晴天なり。明日も晴れるといいね。

 

 






お茶の香気成分は100種類を超えるらしいです
たぶんですが、テルペン類やアルコール類とかが主じゃないでしょうか?
知りませんが

と言うことで第17話でした
萃夢想終わりませんでしたね
書いている途中で、『あ、これダメだわ。終わらんわ』とか思いましたし……

次話では終わると思います
では、次話でお会いしましょう


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