東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第20話~冷酒は後から来るから気をつけろ~

 

 

 冬が終わって、春が過ぎ、季節は夏。

 サンサンと降り注ぐ太陽光は、今日も俺の体を焼き続ける。

 

「あ~暑い……」

 

 外の世界ではクーラーと言う随分と便利な物があるけれど、当然俺の店にはない。窓を開け放ち、風を通す。それでも篭もり、篭った熱気は抜けてくれない。

 夏だもんね、仕様が無いね。

 

 こんなに暑くては、何もする気が起きない。何処か涼しい場所は、ないのかねぇ。

 ああ、一瞬だけ北極に行きたい……

 

 そんな莫迦みたいな事を考えている時だった。カランカランと鈴の音。店のドアが開き、久しぶりのお客さんが来た。

 

 そして中に入ってきたのは――

 

 

 

 

「おや? 黒じゃないか。随分と久しいね」

 

 長い白髪に真っ白なカッターシャツ、そして赤いもんぺ。

 おろ、随分と珍しいのが来たものだ。

 

「や、久しぶり。もこたん」

 

「もこたん言うな」

 

 う~ん、本当に久しぶりだ。少なくとも数百年は会ってなかったと思う。

 

「と言うか、もこたんも幻想郷にいたんだね。知らんかったよ」

 

「いや、だから、もこたんはやめろよ」

 

 人里では見かけたことなかったしなぁ。

 

「ねぇ聞いてる? 私の話ちゃんと聞いてる?」

 

 今はどこに住んでいるんだろうか?

 

 

「それで今日はどうしたの? もこた「おい、カメラ止めろ」あ、ちょっ、ごめっ……」

 

 

 もこたんがキレたん。

 

 

 

 

 

 

 

~テイク2~

 

 

「それで? 妹紅が来るなんて珍しい……ってか初めてだよね。どうしたの? 迷子にでもなった?」

 

「あの……とりあえず、その鼻血を止めないか? いや、私のせいだけどさ」

 

 グーだった。パーじゃなくてグーだったよ……容赦ないね。

 

 霊力を治癒力に回し、とりあえず止血。流れていた鼻血は手拭いで拭く。

 う~、鼻が痛い。全く、乱暴なんだから。

 

「改めて聞くけど今日はどうしたの?」

 

 本日、三回目のセリフです。

 

「適当に歩いていたら、変な鳥居があってそしたら此処に着いた」

 

 なんだ、迷子じゃなかったのか。

 ま、妹紅なら迷子になっても、心配はないと思うけどさ。

 

「そかそか、俺はここで茶飲み屋みたいなことをしているんだ。どう? 何か飲んで行く?」

 

「へ~、今はそんなことをしてるのか。酒を作っているだけじゃないんだな。あと、残念だけど遠慮するよ。お金なんて持ってないしさ」

 

「ん~、お金はいいよ。妹紅とは知り合いだし、初めてのお客さんにはサービスするようにしてるから」

 

 例外もいたけどね……そう言えば、あの二人組は元気だろうか?

 まぁ、元気じゃないところが想像できないけどさ。

 

「そうか? それなら悪いけどご馳走になるよ。それで、こういう店って普通は何を頼むものなんだ?」

 

「普通の店は抹茶とかなんじゃない? まぁ、うちは基本的に何でもありかな」

 

 抹茶なんて頼む人はほとんどいないけど……ま、まぁこの店は一応カフェだしね。

 

「んじゃあ、冷酒で」

 

「はいよ~冷酒ね」

 

「あ、冷酒もあるんだ……」

 

 うちのメインはお酒なんです。ホント、どうしてこうなったんだろうね?

 

 

 

 枝豆や漬物など適当におつまみも出し、俺も一緒にお酒を飲む。俺は麦焼酎のロックです。美味しいよね、麦焼酎。

 熱くなった体に冷たいお酒が染み込んでいく。夏も夏で良いものかもしれない。

 

 

「さっきは聞きそびれちゃったけれど、妹紅はいつ幻想郷に来たの?」

 

 あ、妹紅が嫌そうな顔をした。

 自分のことを喋べるのは、相変わらず苦手らしい。

 

「……よく覚えてないけど、300年位前だったかな。フラフラとなんとなく旅をしていたら、いつの間にか此処にいた。今は迷いの竹林に住んでいるよ」

 

 そう言ってから妹紅は冷酒を一気に呑んだ。

 ああ、あの人里近くの竹林か。そう言えば、竹林の中に入ったことはなかったな。人里に住めば良いとも思うけど、妹紅って人と接するのは苦手だし、何より不器用だもんね。

 仕方がないのかな。

 

「む、何だよその目は。別に私がどんな生活をしていようが勝手だろ?」

 

「まぁそりゃあ、そうだけどさ。知らない仲でもないし、どうせだったら良い生活していてもらいたいかな。ちゃんと飯は食べてる?」

 

「え? ……ああ、まあな」

 

 ああ、食べてないのか。

 はぁ……

 

「ダメだよ、ちゃんと食べなきゃ。いくら、食べなくとも平気って言ってもお腹はすくでしょ? 何でも良いから楽しみは見つけないと……俺達みたいな不老不死者の一番の敵は、暇なんだしさ」

 

 死なないからと言って、食事も何もしなくなる。暇に押しつぶされるよ? アイツら容赦ないし。

 

 ん~、なんか説教っぽくなっちゃったな。俺のキャラじゃない。

 

「ああ、それなら大丈夫だよ。だいぶ前から、ちょうど良い暇潰しがあるし」

 

 おろ? そうなの? それなら良かったよ。

 

 妹紅が自分のことは話したがらないせいで、その後は最近起きた俺の話をした。真っ赤な霧に覆われた話。終わらない冬と妖怪桜の話。不思議な二人組みの迷子さんの話。三日置きの百鬼夜行の話。

 

 そんな話を続けていると、夜になってしまった。二人だけでかなりの量のお酒を飲んだと思う。

 珍しくもなく、妹紅以外のお客さんは訪れなかった。

 

 

「それじゃあ、私は帰るとするよ」

 

 妹紅が言った。

 外は真っ暗、深夜と言える時間だろう。大丈夫? ちょっとフラフラしてるよ。ちょっと呑み過ぎたかな。

 

「ん、気をつけて帰りなよ?」

 

「大丈夫だよ。それに死にたくても、死ねないしな」

 

 はぁ……また、そんなことを言う。

 

「……ありがとな、黒」

 

 こっちを真っ直ぐ見て妹紅が言った。

 

「別に気にしなくていいよ。初回限定のサービスだし」

 

 あ、でも、今度来る時はお金を払ってもらうよ?

 

「ああ、いや、そっちも感謝してるけど……そうじゃなくて、さ」

 

 頭を掻きながら、視線はどこか上の方。じゃあ、なんのことだろうか?

 

「黒にはさ。色々と教えてもらったじゃん。陰陽術とか生き方とか……だから、さ」

 

 ありゃ、こんな素直な妹紅は珍しいね。

 

「もしかして、酔ってる?」

 

「茶化すなよ。こっちは真剣なんだし。それに酔ってなきゃ、こんな恥ずかしいこと言えるか」

 

 顔を真っ赤に染めながら妹紅が言った。その赤いのはお酒のせい? それとも……

 

「ふふっ、どういたしまして。うん、妹紅とも会えたし今日は楽しかったよ。今度は、妹紅の家に寄らせてもらおうかな」

 

「そりゃあ、いいな。いつまでも待ってるよ。私も黒と会えて良かった。今日は久しぶりに楽しかったよ」

 

 最後に妹紅は笑ってくれた。

 良い笑顔だ。

 

「ん、じゃあね。もこたん」

 

「だから、もこたんはやめろって……」

 

 店の外へ出て妹紅を見送る。

 多少はフラフラしていたけれど、しっかりとした足取りで彼女は帰って行った。

 

 不老不死……か。これから、妹紅とは永い付き合いとなるのだろう。それこそ永遠と言っても良いくらい。

 

 霊夢や魔理沙ちゃんみたいな人間はもちろん、幽々子やレミリアのような人以外の奴らとだって別れは来る。あの紫とですら、いつか会えなくなる日が来る。

 

 出会いがあれば別れがあって、その時、俺は……いや、考えるのはやめておこう。

 

 嫌なことは後回し。

 長い時を生きるのには、大切な考え方だと思う。

 

 

 






なんと、登場人物が二人だけ
こんなんで良いのかな?

最後の方がなんとなく悲しい雰囲気となってしまいましたね
私は不老不死ではないので、主人公がどんな思いなのかはよくわかりません


と言うことで第20話でした
どうでも良いですが、本日5月14日は私の誕生日だったりします
ああ、ビールが飲みたい
次話は……どんな話になるんでしょうね?

では、次話でお会いしましょう


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