東方酒迷録【完結】   作:puc119

26 / 69
第21話~きゅっとしてドカーン~

 

 

 とある夏の夜。空には丸い月が浮かび、真っ暗な世界を仄かに照らす。

 いつもなら、月見酒といきたいところ。

 いつもなら……だ。

 一見すると綺麗な満月。よく見ても綺麗な満月。しかし、何かがおかしい。何かが足りない。

 

 人間の俺が感じるんだ、夜の世界を生きる妖怪にとっては死活問題だろう。

 たぶん……異変なんだと思う。しかし今回は困ったことに、俺もこの異変の犯人がわからない。満月になると、困ることがあるって事なのだろうけど、誰が困ると言うのだろうか?

 

 考えてもわからない。まぁとりあえず霊夢の所へ行こうかと思い、博麗神社へ。

 

 しかし、そこに霊夢はいなかった。すでに異変解決へ出た後らしい。置いていかれた……

 

 一人で行ってもやられるだけだから、一緒に行ってくれる人を探すために紅魔館へ。魔理沙ちゃんでもいいけれど、魔理沙ちゃんの家は知らないからやめた。咲夜さんとか、一緒に行ってくれないかな?

 

 そんなことを思いながら、紅魔館へ来たわけだけど……

 

「ねぇ、ねぇ。これ、この本読んで」

 

 フランちゃんに捕まっちゃいました。

 

 紅魔館の中へ入り、咲夜さんを探していると、ててててっとフランちゃんが右から走ってきて俺に体当たり。

 今日は、鳩尾じゃなくてレバーだった。朦朧とする意識の中、フランちゃんに連れられて図書館へ。

 そして、現在にいたります。

 

 日に日に体当たりが強くなってきている気がする……

 

「いらっしゃいませ、黒様。妹様の分のお飲み物もこちらに置いてきます」

 

 フランちゃんを膝の上に乗せ、本を読んでいると咲夜さんが現れた。フランちゃん、そんなにくっついて暑くない?

 

「おお、ありがとね。ああそうだ咲夜さんはこの後、暇?」

 

 フランちゃんには悪いけれど、この異変もどうにかしないと。

 

「デートのお誘いですか?」

 

 クスクスと笑いながら、咲夜さんが聞いてきた。

 

「そうだって言ったら、乗ってくれる?」

 

「フフッ、素敵なお誘いですが、遠慮させていただきます。この後、お嬢様と出かけなければならないので」

 

 レミリアと、ねぇ。

 

「異変の解決にでも行くの?」

 

「はい。お嬢様は一人で行くと言っていますが、心配ですし」

 

 ああ、つまり子守りってわけね。

 

「咲夜ー。そろそろ行くわよ。って、あら黒が来ていたのね」

 

 レミリアも登場。

 珍しく図書館が賑やかだ。

 

「こんな大きな異変が起きているのに、黒が動かないなんて珍しいわね。今日は霊夢と一緒じゃないの?」

 

 ……霊夢には置いて行かれました。

 

「まぁ、色々あってね。それでなんだけど、俺もついて行っていい?」

 

「ん? 別にいいわよ? ああ、邪魔だけはしないでね」

 

 おお、ありがと。助かるよ。

 

「と、言うことで、ゴメンなフランちゃん。ちょっと用事があるから行かないとなんだ」

 

 フランちゃんの頭を撫でながら言った。綺麗な髪してるな~この娘。

 

「え~! 皆でお出かけするの? ずるい!!」

 

 まぁ、お出かけと言えば、お出かけだけど。

 

「また、来るからさ。今日は魔女さんにでも本は読んでもらいな」

 

 ――私は読まないわよ。

 

 そんな魔女さんの声がした。

 あ、この会話聞いてたのね。

 

「うー……じゃあ……私も行く!」

 

 え?

 

 ……え?

 

「だ、ダメよ! フラン!! ほら、お外は危険がいっぱいなのよ!?」

 

 レミリアが慌てたように言った。

 

「でも、私この中で一番強いよ?」

 

 いや……まぁ、そうなんだけどさ。どっちかと、言えばフランちゃんの相手のが心配なんだよね。

 

 その後、俺とレミリアで必死に説得しようとしたが、フランちゃんが折れることはなかった。

 

 その結果、レミリアが折れ、フランちゃんもついて行くことに。

 

 

 

「いい? フラン。もし、きゅっとしてドカーンってやりたくなっても我慢するのよ?」

 

「うん、わかった」

 

 う~ん……大丈夫だよね? フランちゃんだって、そこまで子供なわけじゃないし。

 

「もし、きゅっとしてドカーンってどうしてもやりたくなったら、黒にやるのよ?」

 

 おい、コラ。

 

「うん、わかった」

 

 いや、それはわかっちゃダメだよ。

 

 そんなどうにも締まらない空気の中、ようやっと出発。この間、魔女さんはずっと一人で本を読んでいた。

 自由だね、君……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘘っぱちの満月が浮かぶ空の中を四人で飛ぶ。本物の月を取り返すために。いつものように、異変が起きたことに興奮した妖精が襲ってくるわけだけど……

 

 

「あはっ! すごい、すごい!! 倒しても倒しても出てくるのね!」

 

「このっ! 妖精がっ!! 妖精ごときがっ!!」

 

 ……吸血鬼無双です。

 何コレ? あ、あんまりやりすぎないでね? てか、フランちゃんは良いとして、レミリアは妖精に嫌な思い出でもあるの?

 この姉妹のおかげで、俺と咲夜さんはすることがほとんどない。いや、楽だから良いんだけどさ。

 

 

「蛍って食べられるのかしら?」

 

 咲夜さんの声がした。いきなり、何を言ってるんだ、この人は……

 

「いや、普通は食べないと……って咲夜さん、その手に持っているのは何?」

 

「蛍です」

 

 ず、ずいぶんと大きな蛍だね……静かだとは思っていたけど、何やってんだか。

 

「ちょ、ちょっと放してよ。もう、攫ったりなんてしないからさ」

 

「咲夜ー、それなあに?」

 

 フランちゃんが聞いた。

 

「新しいおもちゃですよ」

 

 いやいやいや、それはやめてあげて。たぶん、耐久力とかそんなにないよ?

 

「ホント!? ねぇねぇ、お姉様。これはきゅっとしていいの?」

 

「え? ああ、いいんじゃないかしら?」

 

 いや、ダメだって、あんた出発前に自分で言ってたこと忘れたのかよ。

 

「ひぃっ。やめっ……む、虫なんて食べても美味しくないよ?」

 

「ん~? おもちゃを食べたりなんてしないわよ?」

 

 どこか、ズレた答えのフランちゃん。名も知らぬ妖怪さんが、こちらを見てくる。

 

「た、たすけて……」

 

 流石に可哀想に思えた。

 

「咲夜さん、放してあげなよ……それにフランちゃんも別におもちゃはいらないでしょ?」

 

「うん、クロがいるし」

 

 あれ? 俺ってもしかしておもちゃ扱いだったの?

 

 その後、妖怪が咲夜さんから放されると、すぐに飛んで逃げて行ってしまった。ホントにあれって、蛍だったのかな?

 外の世界には、黒くてツヤツヤしたもの凄い速さで動く虫がいるらしい。たぶんだけど、今の妖怪みたいな感じなんだろうな。

 なんとなく、そんなことを思った。

 

 そんなこともあったけれど、相変わらず吸血鬼姉妹の無双は続いた。流石の妖精たちも何かを感じ取ったのか、途中から襲ってくる要請はほとんどいなくなった。やっぱ怖いよね、この人達。

 そして、さっきからレミリアの妖精に対しての異常な執着心は何だろうか?

 

 

「ちょっと、待ちなさい。そこの人間と蝙蝠。特に人間の方」

 

 新たな、犠牲者さんの気配。今のこの人たちに関わるのは、やめておいた方がいいよ?

 

「誰よあんた。こっちは急いでいるんだ。さっさとどいてくれない?」

 

「お嬢様、こんな雑魚は無視して進みましょう。時間もありませんし」

 

「随分と失礼な奴らね。夜に飛ぶ鳥を恐れた事は無いのかしら?」

 

「ハッ、私がお前みたいな餓鬼を恐れる? 笑わせてくれるわね」

 

 なんだろう、今日のレミリアはかっこいいな。いつもこの調子ならカリスマ(笑)とか言われないのにね。

 

「ねぇ、ねぇ」

 

 レミリアが新たな妖怪と話をしていると、フランちゃんが俺の服を掴んで聞いてきた。

 

「ん? どうしたの?」

 

「これはドカーンした方がいい?」

 

「ん~、これもドカーンしちゃダメかな」

 

「うん、わかった」

 

 と言うか、ドカーンは禁止ね。

 

 

「雀は確か食べられたわよね」

 

 だから、咲夜さんは何を言ってるんだ。別に食料に困ってはないでしょ?

 

「いえ、たまには変わり種をと」

 

「雀は小骨が多いらしいよ」

 

「では、じっくりと煮込む必要がありますね」

 

 うん、でも食べる必要はないと思うよ?

 

 

「さ、次に進むわよ」

 

 そんな会話をしていると、レミリアが俺達に言った。おろ? さっきの夜雀は……ああ、地面で倒れてるわ。

 

「てか、レミリアは何処へ行けば良いのかわかってるの?」

 

 このまま進むと、人里なんだよね。流石に人里へ入るのは、まずいかな。

 

「妖気を辿って行けば良いだけでしょ? それくらいわかるわよ。ちょっと薄いから、気を付けないと見失いそうになるけれど」

 

 おろ? そうなの? 俺は全くわかんないけど。

 んじゃあ、ここはレミリアに任せようかな。

 

 嘘っぱちの月明かりの下、四人は進む。

 

 月……ねぇ。

 正直、月にはあまり良い思い出がない。

 

 どことなく、胸がざわつく。そう言えば昔から、嫌な予感だけはよく当たる。

 

 今夜は長い夜になりそうだ

 

 

 






蛍は食べたことがありませんが、昔、御当地グルメで「ほたる丼」と言うものなら食べたことがあります
なかなか美味しかったです
雀ですが、伏見稲荷神社の近くのお店で食べました
こちらも、なかなかに美味しかったです

と言うことで第21話でした
紅魔館組が勝手に動くせいで、話がなかなか進みません
終わらない夜の終わりは、まだまだ先っぽいです

では、次話でお会いしましょう
次話は未定です



感想・質問など何でもお待ちしております

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。