「はぁ、今度は悪魔か……ここには何も無い。さぁ帰ってくれ」
人里の入口の前に立って、よくわからないことを言っている女性。
何やってんの、慧音?
「あら? 人里が消えてる……」
咲夜さんが言った。え? どういうこと? 目の前にあるじゃん。
「どうせ、そこの半獣が何かしたんでしょ? せっかく燃料補給しようと思ったのに」
ん? ああ、そういうことなのね。慧音が歴史を食べたのか。
ってレミリア、ダメだよ? 人里で事件を起こしちゃ。
「フランちゃんは何か見える?」
「ん~、何もないよ?」
ふむ、フランちゃんにも見えていないのか。
「なあ、慧音。この異変を起こした奴って誰だかわかる?」
「なんだ、黒もいたのか。さっさと帰ってくれないか? 今回、人里は関係ない。異変の原因なら、竹林に行けばいい。たぶんあいつの仕業だろう」
慧音はそう言って、竹林を指差した。竹林か行ったことないんだよなぁ。
あ、そう言えば妹紅が住んでるんだっけ? じゃあ、この異変の犯人は妹紅なのか?
いや……それはないか。
「ねぇ、咲夜。こいつフランの家庭教師に良いんじゃない?」
「うちにはこれ以上、知識人は要りませんわ……」
「でも家の知識人って、あまり役に立たないじゃない。本を読んでばっかだし」
「知識だけならあるんですけどね」
酷い言われようだ……まぁ、確かに魔女さんもどっか抜けてるところあるよね。
さて目的地もわかったことだ、そろそろ行くとしよう。
「幽々子様! 人里が消えています!」
「何言ってるのよ妖夢、私には見えているわ~」
出発しようとした時、なんとも愉快な二人の声が届いた。
「あら? 黒と紅魔の主従コンビに……貴女は初めて見る顔ね」
フランちゃんを見ながら幽々子が言った。
「私? 私はフランドールよ」
フランちゃんが自己紹介をすると、一瞬だけ幽々子が固まった。あ、やっぱりまずかった?
幽々子がこちらを見てくる。
俺は目を反らした。し、仕方ないじゃん。
「ま、まぁ行き先もわかったんだし、進もうぜ?」
――紫に怒られるわよ?
幽々子が俺の耳元でポソリと言った。
ですよね……
幽々子たちも加え、計六人で異変解決へと向かうことに。見慣れない人が二人も来たせいか、フランちゃんは緊張してるみたい。
さっきから、俺の服をずっと掴んでるし。え? 手握りたい? まぁ俺は別にいいけど。
そんな俺とフランちゃんの様子を、妖夢ちゃんは何か言いたげに、幽々子はクスクスと笑いながら見ていた。
人里を抜け、竹林を進むこと数分。
「レミリア、まだ妖気は感じられてる?」
それにしても、すごいなこりゃ。同じ景色ばかりで、どっちに進んでいるのかわかりゃしない。
「ダメね。見失ったわ」
あら、そりゃあ困ったな。
「黒ならわかるんじゃないの?」
幽々子が聞いてきた。いや、今回はちょっと、ね。
「皆が夜を止めるために色々やってるせいでさ、混ざっちゃって全くわからないんだよね」
「へ~鼻が効きすぎるのも問題ね」
「なに? 貴方達も夜を止めているの?」
咲夜さんが聞いた。
「あの歪な月を沈めるわけにはいかないもの」
皆、考えることは同じっぽい。あとは、どうせ紫あたりもなんかしているんだろう。
「ま、とりあえず進もう……っと、なんか前の方が騒がしいね」
「恋符『マスタースパーク』!」
「っと、邪魔しないで魔理沙」
「それは無茶ってもんだぜ。今回は私が解決してやるから、霊夢こそ引っ込んでな」
眩しい弾幕、広がる爆音。魔理沙ちゃんと霊夢が弾幕ごっこをしていた。
あ、よく見ればアリスと紫もいるわ。
「あら、黒に幽々子じゃない。貴方達も来たのね……って、黒。貴方どういうつもり……?」
紫がフランちゃんを見つめる。
「仲間外れは可愛そうだろ?」
俺がそう言うと紫は『はぁ』とため息をして
「問題だけは起こさせないでね」
と言った。
うん、できるだけ頑張るよ。
「紫、俺と繋げておいてくれ」
「……いいけど、黒から言うなんて珍しいわね」
紫はそう言って、扇をフワリと振った。
体の芯が熱くなる。随分と久しい感覚。
「ん、霊夢ちょっと待て。新しいのが来たから一旦止めよう。……こりゃあ随分と大人数になったな」
弾幕ごっこを止めて、魔理沙ちゃんが言った。
「なんだ結局、黒も来たのね」
霊夢が俺を見ながら言う。
お前はなんで俺を置いて行ったのさ……
「それで、どうするの? 仲良く全員で行く? それとも……」
アリスが言った。
まぁ、そりゃあ……
「それともの方だな」
「手間が増えたわ」
臨戦態勢に移る、白黒魔法使いと紅白巫女。
この面子なんだ。そりゃあ、そうなるだろう。
「よしっ、フランちゃん俺たちは先に行くか」
俺の手を握っているフランちゃんに言った。
「あ、ずるい! またそうやって一人だけ。ちょっと待ちなさい! っと……何するのよ、レミリア?」
レミリアが霊夢に対して妖弾を放った。
「何って、可愛い妹の手助けをしたまでよ。ほら、黒はさっさとフランを連れて行きなさい。咲夜、やるわよ。せっかくなのだし全員倒してあげる」
「かしこまりました、お嬢様。では妹様、黒様はお気を付けて」
紅い槍を構える吸血鬼と、ナイフを取り出すメイド。
「ホント、面倒ね」
気怠げな巫女は御札を握り。
「アリス、私たちもやるぞ」
「ええ、わかっているわ」
白黒の魔法使いは八卦炉を、七色の魔法使いは人形を。
「妖夢、私たちも混ざりましょ?」
「わかりました」
亡霊姫は扇子を、幽人の庭師は刀を構える。
そうして、絶対に混ざりたくない戦いが始まった。
フランちゃんと仲良く手を繋ぎ、二人で進むこと数分。
「どうして、さっきから真っ直ぐ歩かないの?」
フランちゃんが聞いてきた。
「ここの地面ってなんでか知らないけど、罠だらけなんだよね」
壊して行ってもいいけど、それだと時間かかるし。
「そうだったの? 全然気づかなかった」
この感覚、懐かしいな。
「昔にね、随分といたずら好きな兎がいてさ」
「兎? 月の?」
「いや、あいつは地上の兎かな。それで、その兎に何度も罠にハメられたんだよね」
そのおかげで、こういう罠にはかなり敏感になった。あの腹黒兎は今も元気だろうか?
そんな会話もしながら、のんびりと進行中。たぶん場所は合っていると思う。まぁ、罠を辿っているだけなんだけどさ。
そして、漸く目の前に立派な建物が現れた。
ん~でもなんか変だな。歪んで見えるっていうか……
「う~……ぐにゃぐにゃする」
フランちゃんが言った。
あ、やっぱりおかしいよね。なんだろう? ここからじゃよくわからない。
そして、門を開け建物の中へ入ろうとした時だった。
「よっしゃ、一番乗りだぜー!!」
箒に乗った魔法使いが恐ろしい勢いで、通り過ぎていった。そして、後ろの方からも賑やかな声。
「……俺たちも行こっか」
「うん」
建物の中へ入ると違和感がさらに強くなった。むぅ、なんかの封印かな? うっすらと何かが見える。
「フランちゃん。目の前の扉見える?」
「扉? う~……あ、ホントだ、扉がある」
「ぶっ壊していいよ」
「きゅっとしてドカーン?」
「うん、やっちゃって」
多分、一つ壊せば全部壊れるはず。
「えいっ」
フランちゃんが右手で何かを握ると、パリンッと高い音が響いた。
「あ、ぐにゃぐにゃがなくなった」
屋敷のどこかから、騒がしい音が響く。魔理沙ちゃん以外も着いたのだろう。
「よし、フランちゃん俺たちも行こっか」
「うん」
さっきよりも鮮明になった扉へ進む。屋敷の中はお祭り騒ぎ、こうなったら楽しんだもん勝ちだ。
「待ちなさい。はぁ……貴方達ね、封印を破壊したのは。そこから先へは進ませないわ」
女性の声がした。
後ろを振り返る。
長い三つ編みにした銀髪。左右で分かれた赤と青のツートンカラーの服。
ドクンと心臓が跳ねる。
ああ、そっか。そうか……今回は月の異変なんだ。
予兆もあった、フラグは立っていた。
「ク、クロ? どうしたの?」
フランちゃんの声がした気がする。
女性をもう一度見る。その姿は、遥か昔に見たものと変わらない。
「ちょっと、聞いてるの?」
女性が言った。
上手く聞こえない。
待て、待てって俺。このまま、何もなかったように終わらせよう。
そして、その後はここの人達も加えて、宴会をして、お酒を呑んで、楽しく話して……
止まれよ、止まれって。この人は関係ないだろう?
やめろ、口を開くな。その言葉を出すな。あれは、仕様がなかったことなんだ。何度も何度も何度も、考えたじゃないか。俺達は不幸なんじゃなかったって、有り余る時間を使って、理解したじゃないか。
ああ、ああ……この大馬鹿野郎が。
「はじめまして、八意××さん」
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