東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第22話~はじめまして~

 

 

「はぁ、今度は悪魔か……ここには何も無い。さぁ帰ってくれ」

 

 人里の入口の前に立って、よくわからないことを言っている女性。

 何やってんの、慧音?

 

「あら? 人里が消えてる……」

 

 咲夜さんが言った。え? どういうこと? 目の前にあるじゃん。

 

「どうせ、そこの半獣が何かしたんでしょ? せっかく燃料補給しようと思ったのに」

 

 ん? ああ、そういうことなのね。慧音が歴史を食べたのか。

 ってレミリア、ダメだよ? 人里で事件を起こしちゃ。

 

「フランちゃんは何か見える?」

 

「ん~、何もないよ?」

 

 ふむ、フランちゃんにも見えていないのか。

 

「なあ、慧音。この異変を起こした奴って誰だかわかる?」

 

「なんだ、黒もいたのか。さっさと帰ってくれないか? 今回、人里は関係ない。異変の原因なら、竹林に行けばいい。たぶんあいつの仕業だろう」

 

 慧音はそう言って、竹林を指差した。竹林か行ったことないんだよなぁ。

 あ、そう言えば妹紅が住んでるんだっけ? じゃあ、この異変の犯人は妹紅なのか?

 いや……それはないか。

 

「ねぇ、咲夜。こいつフランの家庭教師に良いんじゃない?」

 

「うちにはこれ以上、知識人は要りませんわ……」

 

「でも家の知識人って、あまり役に立たないじゃない。本を読んでばっかだし」

 

「知識だけならあるんですけどね」

 

 酷い言われようだ……まぁ、確かに魔女さんもどっか抜けてるところあるよね。

 

 さて目的地もわかったことだ、そろそろ行くとしよう。

 

 

「幽々子様! 人里が消えています!」

 

「何言ってるのよ妖夢、私には見えているわ~」

 

 出発しようとした時、なんとも愉快な二人の声が届いた。

 

「あら? 黒と紅魔の主従コンビに……貴女は初めて見る顔ね」

 

 フランちゃんを見ながら幽々子が言った。

 

「私? 私はフランドールよ」

 

 フランちゃんが自己紹介をすると、一瞬だけ幽々子が固まった。あ、やっぱりまずかった?

 

 幽々子がこちらを見てくる。

 俺は目を反らした。し、仕方ないじゃん。

 

「ま、まぁ行き先もわかったんだし、進もうぜ?」

 

 ――紫に怒られるわよ?

 

 幽々子が俺の耳元でポソリと言った。

 ですよね……

 

 幽々子たちも加え、計六人で異変解決へと向かうことに。見慣れない人が二人も来たせいか、フランちゃんは緊張してるみたい。

 さっきから、俺の服をずっと掴んでるし。え? 手握りたい? まぁ俺は別にいいけど。

 

 そんな俺とフランちゃんの様子を、妖夢ちゃんは何か言いたげに、幽々子はクスクスと笑いながら見ていた。

 

 

 人里を抜け、竹林を進むこと数分。

 

「レミリア、まだ妖気は感じられてる?」

 

 それにしても、すごいなこりゃ。同じ景色ばかりで、どっちに進んでいるのかわかりゃしない。

 

「ダメね。見失ったわ」

 

 あら、そりゃあ困ったな。

 

「黒ならわかるんじゃないの?」

 

 幽々子が聞いてきた。いや、今回はちょっと、ね。

 

「皆が夜を止めるために色々やってるせいでさ、混ざっちゃって全くわからないんだよね」

 

「へ~鼻が効きすぎるのも問題ね」

 

「なに? 貴方達も夜を止めているの?」

 

 咲夜さんが聞いた。

 

「あの歪な月を沈めるわけにはいかないもの」

 

 皆、考えることは同じっぽい。あとは、どうせ紫あたりもなんかしているんだろう。

 

「ま、とりあえず進もう……っと、なんか前の方が騒がしいね」

 

 

 

 

 

「恋符『マスタースパーク』!」

 

「っと、邪魔しないで魔理沙」

 

「それは無茶ってもんだぜ。今回は私が解決してやるから、霊夢こそ引っ込んでな」

 

 眩しい弾幕、広がる爆音。魔理沙ちゃんと霊夢が弾幕ごっこをしていた。

 

 あ、よく見ればアリスと紫もいるわ。

 

「あら、黒に幽々子じゃない。貴方達も来たのね……って、黒。貴方どういうつもり……?」

 

 紫がフランちゃんを見つめる。

 

「仲間外れは可愛そうだろ?」

 

 俺がそう言うと紫は『はぁ』とため息をして

 

「問題だけは起こさせないでね」

 

 と言った。

 うん、できるだけ頑張るよ。

 

「紫、俺と繋げておいてくれ」

 

「……いいけど、黒から言うなんて珍しいわね」

 

 紫はそう言って、扇をフワリと振った。

 体の芯が熱くなる。随分と久しい感覚。

 

「ん、霊夢ちょっと待て。新しいのが来たから一旦止めよう。……こりゃあ随分と大人数になったな」

 

 弾幕ごっこを止めて、魔理沙ちゃんが言った。

 

「なんだ結局、黒も来たのね」

 

 霊夢が俺を見ながら言う。

 お前はなんで俺を置いて行ったのさ……

 

「それで、どうするの? 仲良く全員で行く? それとも……」

 

 アリスが言った。

 まぁ、そりゃあ……

 

「それともの方だな」

 

「手間が増えたわ」

 

 臨戦態勢に移る、白黒魔法使いと紅白巫女。

 この面子なんだ。そりゃあ、そうなるだろう。

 

「よしっ、フランちゃん俺たちは先に行くか」

 

 俺の手を握っているフランちゃんに言った。

 

 

「あ、ずるい! またそうやって一人だけ。ちょっと待ちなさい! っと……何するのよ、レミリア?」

 

 レミリアが霊夢に対して妖弾を放った。

 

「何って、可愛い妹の手助けをしたまでよ。ほら、黒はさっさとフランを連れて行きなさい。咲夜、やるわよ。せっかくなのだし全員倒してあげる」

 

「かしこまりました、お嬢様。では妹様、黒様はお気を付けて」

 

 紅い槍を構える吸血鬼と、ナイフを取り出すメイド。

 

「ホント、面倒ね」

 

 気怠げな巫女は御札を握り。

 

「アリス、私たちもやるぞ」

 

「ええ、わかっているわ」

 

 白黒の魔法使いは八卦炉を、七色の魔法使いは人形を。

 

「妖夢、私たちも混ざりましょ?」

 

「わかりました」

 

 亡霊姫は扇子を、幽人の庭師は刀を構える。

 そうして、絶対に混ざりたくない戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランちゃんと仲良く手を繋ぎ、二人で進むこと数分。

 

「どうして、さっきから真っ直ぐ歩かないの?」

 

 フランちゃんが聞いてきた。

 

「ここの地面ってなんでか知らないけど、罠だらけなんだよね」

 

 壊して行ってもいいけど、それだと時間かかるし。

 

「そうだったの? 全然気づかなかった」

 

 この感覚、懐かしいな。

 

「昔にね、随分といたずら好きな兎がいてさ」

 

「兎? 月の?」

 

「いや、あいつは地上の兎かな。それで、その兎に何度も罠にハメられたんだよね」

 

 そのおかげで、こういう罠にはかなり敏感になった。あの腹黒兎は今も元気だろうか?

 

 そんな会話もしながら、のんびりと進行中。たぶん場所は合っていると思う。まぁ、罠を辿っているだけなんだけどさ。

 

 そして、漸く目の前に立派な建物が現れた。

 

 ん~でもなんか変だな。歪んで見えるっていうか……

 

「う~……ぐにゃぐにゃする」

 

 フランちゃんが言った。

 あ、やっぱりおかしいよね。なんだろう? ここからじゃよくわからない。

 

 そして、門を開け建物の中へ入ろうとした時だった。

 

「よっしゃ、一番乗りだぜー!!」

 

 箒に乗った魔法使いが恐ろしい勢いで、通り過ぎていった。そして、後ろの方からも賑やかな声。

 

「……俺たちも行こっか」

 

「うん」

 

 建物の中へ入ると違和感がさらに強くなった。むぅ、なんかの封印かな? うっすらと何かが見える。

 

「フランちゃん。目の前の扉見える?」

 

「扉? う~……あ、ホントだ、扉がある」

 

「ぶっ壊していいよ」

 

「きゅっとしてドカーン?」

 

「うん、やっちゃって」

 

 多分、一つ壊せば全部壊れるはず。

 

「えいっ」

 

 フランちゃんが右手で何かを握ると、パリンッと高い音が響いた。

 

「あ、ぐにゃぐにゃがなくなった」

 

 屋敷のどこかから、騒がしい音が響く。魔理沙ちゃん以外も着いたのだろう。

 

「よし、フランちゃん俺たちも行こっか」

 

「うん」

 

 さっきよりも鮮明になった扉へ進む。屋敷の中はお祭り騒ぎ、こうなったら楽しんだもん勝ちだ。

 

 

 

「待ちなさい。はぁ……貴方達ね、封印を破壊したのは。そこから先へは進ませないわ」

 

 女性の声がした。

 後ろを振り返る。

 長い三つ編みにした銀髪。左右で分かれた赤と青のツートンカラーの服。

 

 ドクンと心臓が跳ねる。

 

 ああ、そっか。そうか……今回は月の異変なんだ。

 予兆もあった、フラグは立っていた。

 

「ク、クロ? どうしたの?」

 

 フランちゃんの声がした気がする。

 女性をもう一度見る。その姿は、遥か昔に見たものと変わらない。

 

「ちょっと、聞いてるの?」

 

 女性が言った。

 上手く聞こえない。

 

 待て、待てって俺。このまま、何もなかったように終わらせよう。

 そして、その後はここの人達も加えて、宴会をして、お酒を呑んで、楽しく話して……

 止まれよ、止まれって。この人は関係ないだろう?

 やめろ、口を開くな。その言葉を出すな。あれは、仕様がなかったことなんだ。何度も何度も何度も、考えたじゃないか。俺達は不幸なんじゃなかったって、有り余る時間を使って、理解したじゃないか。

 

 

 ああ、ああ……この大馬鹿野郎が。

 

 

「はじめまして、八意××さん」

 

 

 






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