友人がよく傘を盗まれるそうで、アニメキャラがでかでかとプリントされた傘を使い始めました
傘は失わなくなったそうですが、大切な何かを失ったように思えます
あれから、色々と考えた。どうすれば……どうすれば宴会に参加しなくて済むのかを。
……いや、だって仕様が無いじゃん。会いたくないものは、会いたくないのだ。だいたい、どんな顔して会えば良いってのさ?
異変の邪魔をして、暴言吐いて帰ってきたんだよ。向こうにとっては俺ってただの迷惑な人じゃん。
絶対、八意さんだって俺には会いたくないよ。
そして今晩にその宴会がある。
だから決めたのだ。全力で逃げようって。
このまま家に引き篭っていても紫に拉致される。だから、何処かへ隠れたいわけだけど……
とりあえず宴会会場の博麗神社はありえない。紅魔館じゃ紫に見つかる。白玉楼は……まぁ、無理だろう。幽々子を説得できれば良いけれど、まず無理だ。
そうなると、いよいよ候補が減ってくる。外の世界は行き方がわからないし、妹紅の家も場所を知らない。
だいたい、紫の能力がチートすぎるんだよ。幻想郷の中にいたら何処だろうと見つかる。
と、なるとだ。俺が思いつく場所は一つしかない。たぶん、そこなら紫も来ないはず。
そしてその場所へ向かって歩いているわけだが、どうにも気が乗らない。いや、背に腹は代えられんけどさ……
彼岸花に埋め尽くされ、真っ赤に染まった道を歩く。
再思の道。そう呼ばれている場所だ。其処は死にたくなった者が生きる気力を取り戻せる場所。
な~んて言えば聞こえは良いけど、外来人にとっては地獄へと続く一本道。そう考えると、これだけ美しく咲いている彼岸花も怖く見える。
この先にある無縁塚には、春になると紫色の花をつける桜がある。 俺はあまり好きじゃないんだよね、あの桜。見ていると何故か無性に悲しくなるから。
さらに無縁塚を越え暫く進むと、何とも重苦しい雰囲気な川が見えてきた。その川は三途の河なんて呼ばれている。
俺には縁のない場所なんだけどねぇ。
さてさて、あの三途の水先案内人はちゃんと仕事をしているのかな?
彼女が仕事をしているところとかほとんど見ないけど。
フラフラと暫く歩くと、川を渡るための船の近くに彼女はいた。
てか、寝ていた。仕事しなさいよ……これじゃあ幽霊たちも成仏できないじゃん。
「おい、小町~。起きろって」
お昼寝中の死神に声をかける。
「ん、むぅ? あ~……あ? なんだい黒じゃないか。ついにお前さんも死んじまったのかい?」
大きな欠伸をしながら小町が聞いてきた。
「いや俺、死ねないんだけど……」
君も知ってるでしょうに。
「そういやぁ、そうだったね」
なんて言って小町はからからと笑った。
「それで、今日は何の用だい? あたいは仕事中で忙しいからあまり構ってはあげられないよ」
どの口が言いやがりますか。
「仕事しないで、寝てたじゃん……」
「ん? していたよ。ほら、あたいの仕事は船を漕ぐことだし」
何ドヤ顔で言ってんだ。ぶっ飛ばすぞ。漕ぐどころか、完全に沈没してたじゃねーかよ。
「ちょっと川の向こう側に行きたいんだけど、乗せてくれない?」
「おや、映姫様に用事かい? 黒にしては随分と珍しいじゃないか」
俺だけじゃなく、誰だって映姫に会おうとは思わないだろうね。
「あ~、映姫に用事があるわけじゃないんだ。ちょっと匿って欲しいていうか……」
宴会に出たくないから逃げてきた。だなんて恥ずかしくて言えない……
「そうかいそうかい詳しくは聞かないが、ま、色々あるんだろうね。ん~でもなぁ。まだ生きている奴を渡すってのはな~」
やや、棒読みでこちらをチラチラと見ながら小町が言った。はぁ……わかった、わかりましたよ。こちらも只で渡ろうとは思っていなかったし。
「……今度、良いお酒を持ってくるよ。それで、どう?」
「3本」
「2本で」
「じゃあ、間を取って2.5本でいこう。ん? 切りが悪いな。じゃあ死者五入で3本かな。いや~、悪いね気を使わせちゃって。まぁ、その分しっかりと働いてあげるよ」
……恐ろしい速さで交渉が打ち切られた。鬼か。いや、死神か。
「さぁ、タイタニック号に乗っておくれ」
はい?
「タイタニック号? このボロ船が?」
「そうだよ良い名前だろ? あとボロ船なのは仕様が無い。お金無いんだもん」
もう少しマシな名前にしなさいよ……
「ほいじゃあ、一名様ご案な~い」
そして、タイタニック号(笑)に乗り、小町がそう言った時だった。
「案内する必要はありません」
閻魔が現れた。
「「げっ」」
小町と俺の台詞が被る。
「くそっ見つかったか。よし小町、お前は良いから先に行かせろ」
「すまない! 後で必ず行くから此処は私に……ってあれ? さっきの台詞おかしくないかい? 普通ならあたいが逃げる側なんじゃ……」
ダメか、誤魔化し切れなかったか。
「何をやっているのですか……二人ともこちらへ来て正座しなさい」
あ、ツンだわ。
「「はい……」」
どうやら俺と小町の相性は割と良いらしい。
「小町は後で良いとして、黒貴方はどのような用事でここへ?」
さぁ、始まりました。皆大好き映姫ちゃんの説教の時間だよ。料金は無料。心に突き刺さる閻魔の言葉プライスレス。
「ちょっと観光に……」
「私の前でそのような嘘が通るとでも?」
ですよねー。この閻魔は、答えの分かっていることを何で聞くんでしょうね……
「もう一度聞きます。何故貴方はここへ?」
小町の方を見ると、諦めろとでも言うように首を振っていた。
「その……宴会に参加するのが嫌で、に、逃げて来ました」
俺の答えを聞き、映姫は何も言わなかった。小町は笑っていた。
あの……なんか言ってもらえませんか?
「……私が貴方を裁くことはないでしょう」
そりゃあそうだろ、俺不老不死だし。
「しかし、貴方は多くの罪を犯している」
んなことは、知ってるよ。
「取り返しのつかないほどの多くの罪を。何度も言いましたが、生きるというものは、それだけで罪な事です。それだのに貴方は何年生きていますか?」
さぁねぇ? 一億年とかじゃない?
「いや、仕様が無いじゃん死ねないんだし」
「そして、その生き方も悪い」
なにこの人、俺の話を聞いてくれない……
「何より……」
――自殺だなんて以ての外。
ちょいと心が痛いねぇ……
「生きることも死ぬことも駄目と?」
「その生き方、死に方に問題があるのです。嫌なことからすぐ逃げるくせに、自ら進んで罪を被る。背負いきれないのなら初めから止めなさい。そう、貴方は少し不器用すぎる」
映姫の説教は続く。
「貴方は不老不死。その事実から逃げることはできません。昔よりは良くなってきていますが、まだまだです。しっかり自分と向き合い、他人を思いやり、今を大切に生きなさい」
もう何度目かもわからない、いつもと同じ説教だった。成長してないってことなんかねぇ。
その後は小町も加え二人とも説教された。映姫の説教は途中から話がずれていき、最後の方なんてただの愚痴だった気がする。俺のせいで大量の始末書を書かされた。とか言っていたけど、何のことだよ……
「全く、あの方のせいで毎日振り回されっぱなしです! どうにかしてください」
「いや、だから誰のことだよ」
「それもこれも、貴方が悪いのです。貴方がもっとしっかりとしていれば……」
そんな感じでとばっちりを喰らい続けた。ぽっぽこ怒る映姫。大変だってことはわかったけど、やっぱり俺、関係ないよね……
映姫の説教を受け続けること数時間。すでに辺りは暗い。正座し続けたせいで足の感覚はなくなった。これ、足が痺れて絶対立てないよね……
「さて、そろそろ良い時間ですね」
映姫が言った。
「え? 何のこと?」
「あ、小町にお酒を渡さなくとも良いですよ。その代わり私がもらいます。ふふっ、まずは目の前の課題から解決しましょうか。では、頑張ってきてください。私はいつでも貴方を応援していますよ」
なんて映姫は笑いながら俺に言って、小さく手を振った。
いや、だから何のことさ。と言おうとした時だった。足元が消え、下に落ちた。結局、逃げ切ることはできなかったらしい。
こりゃじゃあただの怒られ損だけど、人生なんてそんなもんだ。
「またお会いしましょう。お酒楽しみにしていますよ」
最後に映姫の声が聞こえた。
うん、また来るよ。
スキマから吐き出されると、目の前に驚いた顔の八意さんがいた。
逃げることはできないっぽい。
何も進まなかった話のような気もします
今度はお説教をしない映姫さんが書けたら良いな~とか思っています
と、言うことで第24話でした
これでちょうど30話目となります
あと何話続くんでしょうね?
次話は永琳さんと主人公の話でしょうか?
なにも考えてませんが
感想・質問何でもお待ちしております