二日酔いになった時は、もう二度とこんなに飲まないようにしようと思いますが
何故かまた馬鹿みたいに飲んでしまいますよね
頭が痛い……
流石に飲み過ぎた。飲まされたって言う方が正しい気もするけれど。
二日酔いになると何もする気が起きない。今日は一日ボーっと過ごそうかな。どうせお客さんだって来ないだろうしさ。
今日も今日とて、店の閑古鳥は元気です。
何とか店の方まで行き、そこで力尽きカウンターに伏せ眠くなり始めていた時だった。店の入口のドアに付けられた鈴が騒がしく鳴り響いた。
「お邪魔するぜー!」
本当にお邪魔だった。元気な声が店の中に響く。あの、あんまり大きな声を出されると頭が痛いのですが。
「……いらっしゃい魔理沙ちゃん」
顔を伏せたまま声をかける。
「なんだよー、せっかく来てやったんだから、もっと歓迎してくれよな」
来てくれたことは嬉しいけれど、タイミングがなぁ。明日にしてくれませんか?
「二日酔いで頭が痛いんだよ……絶不調です。一歩も動きたくない」
「情けないな~。永琳から薬でももらえばいいだろ?」
お前らが無理矢理お酒を飲ませたんでしょうが。
「いや、俺あの人苦手だし。んで、今日はどうしたの? 魔理沙ちゃんが一人で来るのって初めてだよね」
前に来た時は霊夢と紫がいたしね。
「暇になって、家の外に出てみたらちょうど鳥居があったから、遊びに来たんだぜ」
ああ、そうですか。
「そかそか、んで、何か飲む? お茶漬けでいい?」
俺は蜆の味噌汁が飲みたい。
「ん~、それよりも外へ行こう。お酒はその後、帰ってきたらもらうよ」
話聞いてた? 動きたくないんだけど……
その後、行きたくないから必死で抵抗したけれど、結局無理矢理外へ連れ出された。
ああ、太陽が眩しい。
魔理沙ちゃんに手を引かれ、田畑の間を抜けると景色が変わった。
日光が地面まで届かず、ジメジメとした空気が流れる。魔法の森、妖怪からも避けられる化茸の楽園。太陽が照らし続ける先ほどまでの場所と比べると、この森は俺にとっては心地良い。
「ん~お散歩も十分したし、俺は帰ろっかな。じゃあね、魔理沙ちゃんまたいつか」
「まぁ、待てって。もっと楽しんで逝こうや」
ニヤニヤと笑う魔理沙ちゃんに止められた。ダメか、まだ帰っちゃダメなのか。
「はぁ、わかったよ。んで、何処へ行くのさ?」
あまり、遠い場所は嫌だよ?
「この前の夏にな、面白い場所を見つけたんだ。そこへ行こう」
面白い場所、ねぇ。のんびりできる場所だと良いけれど……
「よし、じゃあ出発しようか……っと、黒はその調子じゃ飛べないよな。ん~、仕様が無い。私が箒に乗せてやるよ。ちょっと待ってて、箒を取ってくるから」
どうして、魔理沙ちゃんはそんなに楽しそうなんだろうね? 俺は嫌な予感しかしないんだけど……よしっ、じゃあ俺は帰ろうかな。
そんなことを思った時だった。魔理沙ちゃんが振り返って俺に言った。
「なんか、逃げそうだな……黒も一緒に来い」
ジト目だった。帰らせてもらえなかった。
また、魔理沙ちゃんに手を引かれ霧雨邸へ。鳥居から魔理沙ちゃんの家まではかなり近く、すぐに到着した。洋風の洒落た家だった。
玄関に立てかけてあった箒を取り、魔理沙ちゃんが言った。
「よしっ、それじゃあ出発だぜ。しっかり掴まってくれ」
箒に跨り、魔理沙ちゃんに抱きついた。
「きゃああああ!」
可愛い悲鳴が聞こえたと思ったら、お腹に衝撃が響いた。
……痛い。
「な、な、ななにをする!?」
「何って……魔理沙ちゃんがしっかり掴まれって言ったんじゃんか……」
二日酔いにこの腹のダメージはキツい……
「箒に掴まれって意味に決まってるだろ! それくらい分かれバカ!!」
真っ赤な顔をした魔理沙ちゃんに怒られた。じゃあ、最初からそう言ってください。
その後も、黒はデリカシーがとか、女心がわかってないとかグチグチと言われながら、出発した。安全運転でお願いします。
魔理沙ちゃんの箒に乗せてもらって、魔法の森を飛び立った。妖怪の山とは反対方向へ。ん~、何処へ行くんかね? 博麗神社ではなさそうだけど……
人里を越え、幻想郷の奥へ。少しずつ嫌な予感が大きくなる。
そして、ついにすり鉢状の草原にたどり着いた。たどり着いてしまった。
……マジかよ。
え? え? 面白い場所って此処?
「ん~、漸く着いたぜ。ありゃ、流石に枯れちゃったか」
「えと……魔理沙ちゃんが言ってた面白い場所って此処のこと?」
「ああ、そうだよ。この前来た時は向日葵でいっぱいだったんだけどなぁ。もう枯れちゃったみたいだ」
冷や汗が止まらない。落ち着け、この時期ならアイツはいないはずだ。大丈夫、きっと大丈夫だ。
「ん? どうしたんだよ黒。顔色が悪いぜ?」
コロコロと笑いながら魔理沙ちゃんが聞いてきた。
「ああ、二日酔いだしね……何も無いみたいだし違う場所に行かない?」
「もうちょっとゆっくりして行こう。何かあるかもしれないし」
何かあったら困るから早く行きたいんですけどね……
大丈夫……だよね? 今は夏じゃないし、此処に花は咲いていない。アイツが来る理由なんてないんだし。
「あら? 随分と懐かしい顔と、少しだけ懐かしい顔ね」
後ろから声が届いた。
懐かしい声が。
マジかよ……笑えねぇ。なんで此処にいるんですか?
声をかけてきた人物は片手に傘、緑髪、昔と全く変わらぬ姿だった。
「ん? 誰だお前?」
魔理沙ちゃんが聞いた。逃げてー、すっごく逃げたい。
「フフッ、貴方は忘れてしまったのね。まぁ、良いけれど。黒、貴方は覚えているかしら?」
今度はこちらに聞いてきた。
「……久しぶり、幽香」
あまり会いたくなかったかな。
「なんだ? なんだ? お前らは知り合いなのか?」
「まぁ、そんなところね」
笑いながら幽香が言った。
「今日は、あの胡散臭い妖怪がいないのね……そう言えば、私と黒の勝負はまだ決着が着いていなかったわよね?」
幽香がこちらを真っ直ぐ見て言ってきた。ちょっ、勘弁して下さい……
「弱いやつには興味がなかったんじゃなかったっけ?」
「貴方は別。今日は逃げないでね」
瞬間、幽香の霊力が膨れ上がった。そして、持っていた傘の先端をこちらに向ける幽香。無意識に舌打ちが出た。
「魔理沙ちゃん!」
「わかってる! 随分と好戦的な奴だな」
――恋符『マスタースパーク』!
魔理沙ちゃんのミニ八卦炉から極太のレーザーが放たれ、幽香の放ったレーザーと衝突した。視界が煙で埋め尽くされる。
視界が晴れる前に、箒と魔理沙ちゃん手を掴んで飛び上がった。
「ちょっ、黒。どうしたんだよ?」
少ない霊力を振り絞る。全力で飛んだ。
幽香が見えなくなり、少し飛んだところで俺の霊力は切れた。落下が始まると、魔理沙ちゃんに拾い上げられた。
おお、ありがとう。
「別に逃げなくても良かったんじゃないか?」
「いや~、どうにも幽香は苦手でさ。悪いね、無理矢理連れてきちゃって」
箒に跨り直し、魔理沙ちゃんに言った。
「まぁ、良いけどさ……んで、アイツは何者なんだ?」
「ちょっとだけお茶目な花の妖怪……かな」
「なんだそれ?」
コロコロと笑いながら魔理沙ちゃんが聞いてきた。
来年は60周期の年。きっと春になれば幽香には嫌でも会えるよ。
「それにしても、黒ってあんなに速く飛べたんだな。私よりも速いじゃないか」
ブスーっとした顔で魔理沙ちゃんが言った。
「持って1分だけどね」
すごく燃費が悪いんです。今だってフラフラなんだよ?
その後、人里によってお茶屋さんで一服。
そこには何故か霊夢がいて、魔理沙ちゃんと霊夢の分のまで支払いをすることになった。
霊夢曰く――
「ただでお茶を飲めるような気がしたから来た」
ということらしい。……お前の勘おかしくないか?
そのままお開きになるかと思ったが、そうはならず俺の店で飲むことに。昨日あれだけ飲んだにも関わらず、二人はちょっとやめてほしいほどのお酒を飲んだ。
代金はツケらしい。俺は泣いた。
二人が帰った後、一人きりとなった店内でボーっと考え事。そっかまた、あの花々が狂い咲く季節が来るのか……小町のやつちゃんと働いてくれるかなぁ。
……まぁ、無理か。
あ、そう言えば、映姫にお酒を持っていく約束してたっけかな。う~ん、行かないと怒られるよな。
ま、どうせ行っても怒られるんだろうけどさ。
二日酔いの日はしょっぱいものが恋しくなります
あと、お酒を飲んだあとはしっかりと水分を補給すると良いですよ
と、言うことで第26話でした
今回は魔理沙さん回でしたね
幽香さんもちょこっと登場
たぶんまた、出てきます
次話は未定ですが、異変はまだ起きなそうです
では、次話でお会いしましょう
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