東方酒迷録【完結】   作:puc119

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ほとんどがオリキャラ視点です

読まなくても問題は……けっこうあるかもしれません
でも読まなくても、なんとかなるかもしれません

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では、始めます





第30話~小さき者と大冒険~

 

 

「……ずるい」

 

 むすっとした表情で目の前にいる女性が言った。

 

「あ、いえ、そう言われましても……」

 

 失敗だった。

 最初はただの雑談だったけれど、いつの間にか年越しの話となり、つい口が滑ってしまった。

 

「どうして私も誘ってくれなかったのさ。いいな~、私も黒と一緒に年越ししたかったよ……」

 

 そんなことを言われても、年越しのためだけに貴女を転生させるわけにもいきませんし……それにもし、私が黒と一緒に年越しをすると言ったら、この方は絶対についてくる。その後のことを考えると……

 白様だって、簡単に転生できないことは知っているはずなのだけど、どうしてここまで食いついてくるのやら。はぁ、できればバレずに終わらせたかった。流石に後ろめたさは感じているけれど。

 

「ん~じゃあさ、今度また転生させてよ」

 

 ああ、なるほど。

 本命はこれか。

 

 もしここで断れば……いや、考えないようにしよう。

 

「……わかりました」

 

 今度はお願いですから、冥界の結界を壊したりしないでくださいよ……まぁ、始末書のほとんどは白様がやってくれたけれど。

 

「やた。転生、楽しみだな~」

 

 クルクルと笑う白様。ふふっ、今度の転生はちゃんと黒と会えると良いですね。

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「大ちゃん、大ちゃんってば、どうしたの? いきなり倒れて」

 

 声が聞こえる。

 目を開くと私の顔を見つめる可愛い顔。おおー、チルノちゃんじゃんか、久しぶりだね~

 

「や、チルノちゃん久しぶり」

 

「え? うん……久しぶり?」

 

 キョトンとした顔でチルノちゃんが言った。

 周りの様子を確認。たぶん、霧の湖なんだろうけれど、湖畔は花々で溢れかえっていた。

 おおー、綺麗だね。菖蒲、向日葵、時計草、などなど何でも有りだ。

 

 湖の上は……流石に何も無いか。

 

 手を動かし、足踏みをする。うん、しっかりと動く。空を見上げて少しだけ飛んでみる。

 湖の上まで移動して、水に映った自分の姿を確認。やはり前回と同じ姿だった。この娘には大きな借りができちゃったな、少しの間、また体借りるね。

 

 体が軽い。

 今なら、何だってできそうだ。

 

「ちょっ、ちょっと大ちゃん待ってってば」

 

 チルノちゃんの声がする。珍しく霧も出ていないみたいだし、うん、今日も良い天気だ。

 湖の向こう側には紅魔館が見えた。

 

「さぁ、行くよチルノちゃん。う~ん、どうしようか。手始めに紅魔館に殴り込んで、レミリアちゃんでも連れて来る?」

 

「いや……それはやめておこうよ」

 

 そうだね、昼間にレミリアちゃん連れ出したら蒸発しそうだもんね。

 

「やっぱり生身の体は最高ね。フハハハハ!我が世の春が来たぁ!! よしっ、今日は遊びまくるよ!!」

 

「うわーん。大ちゃんが壊れたぁ」

 

 失礼な、別に壊れてないよ。さて、まずは何処へ行こうかな?

 

「チルノちゃん。今日は何処へ行く?」

 

「え? う~ん……いろんな場所に行こう!」

 

 色々な場所か~どこだろうね。幻想郷の地理はそこまで理解していないから、とりあえずはチルノちゃんについて行けばいいのかな?

 

 

 

 楽しげに花々を凍らせては進んでいくチルノちゃんについて行く。

 あんまりやりすぎちゃダメだよ。幽香ちゃんとかに見つかったら、怒られそうだし。

 

 ここまで花が狂い咲いているのは、幽霊たちが花に憑依しているせい。小町ちゃん、しっかり働いているのかなぁ。ダメなんだろうなぁ……

 

 チルノちゃんと一緒に遊びながら進むと、竹林に着いた。確か、迷いの竹林って呼ばれているんだっけ?

 鬱蒼としている竹林を見つめる。

 

 ありゃ、珍しいね竹の花が咲いてるじゃん。確か竹って、種類によっては花が咲くと枯れちゃうんだよね。この竹達は大丈夫かなぁ。

 

「どうにも冷えると思ったら、いつかの氷精か。妖精がこんな所へ何の用だ?」

 

 竹林の奥から出てきた少女が言った。

 おお、魔理沙ちゃんじゃん。

 

「初めましてだね、魔理沙ちゃん。私たちは遊んでいただけだよ」

 

「おう、はじめましてだぜ。う~ん、なんだかお前は妖精っぽくないな」

 

 魔理沙ちゃんが言った。まぁ、中身は人間だもん。ああ、いや、もう人間ではないのかな?

 

「魔理沙ちゃんは何をやっていたの?」

 

「幻想郷中で異変が起きているからな。片っ端から回っているんだ」

 

 幻想郷中で異変かぁ。

 う~ん、やっぱり小町ちゃんが少しサボっているっぽいね。映姫ちゃんにまた怒られるよ?

 私と魔理沙ちゃんがお話をしている間、チルノちゃんは竹の花でドライフラワーを作っていた。冷凍乾燥法ってやつなのかな。そして、できたドライフラワーは私にくれた。

 うん、ありがとう。でも、竹の花ってあんまり綺麗じゃないんだよね……

 

「チルノちゃん、そろそろ違う場所に行こうよ」

 

 どうせだったら、色々な場所に行ってみたい。今回の転生も制限時間はあると思うし。

 そしてこの竹林には彼女がいる。私は別に恨んではいないけれども、やっぱりあまり会いたくはないかな。

 

「うん、わかった。それじゃあ行こっか」

 

 じゃーねー、魔理沙ちゃん。

 また会えるといいね。

 

 魔理沙ちゃんと別れて、チルノちゃんと二人で飛び立った。今度はどこに行くのかな? そんなワクワクが止まらない。

 

 

 

 竹林を抜け、フラフラと飛んでいると向日葵畑にたどり着いた。

 

「すごい! すごーい! 見て見て大ちゃん。まだ、春なのにひまわりが満開だよ」

 

 嬉しそうにチルノちゃんが燥ぐ。おおー、本当に満開だ。

 

「ひまわり、ひまわり、お日様逃げる~」

 

 楽しそうにチルノちゃんは歌った。なるほど、ここが太陽の畑って呼ばれている場所なんだね。

 じゃあ、きっとあの娘もいるんだろう。

 

「あら、可愛い妖精たちね」

 

 ほら、やっぱりいた。

 

「えへへ~、まあね」

 

 照れくさそうにチルノちゃんが笑った。周りを見ると向日葵が皆こちらを向いている。う~ん、流石にこれはちょっと怖いかな。

 

「さて、いたずら好きな妖精がここへ何の用?」

 

「ん~。あたいたちは、花を凍らせて遊んでいるだけだよ」

 

 あ、幽香ちゃんにそのセリフはダメだよ。

 

「……へ~、この向日葵たちも凍らせるのかしら?」

 

「うんっ!」

 

 元気いっぱいのチルノちゃんが言った。

 ああ、もう……私だけ逃げようかな。

 

「フフッ、妖精とは自然そのもの、向日葵たちの下で自然に還るといいわ!」

 

 あらぁ、めっちゃ怒ってるよ。幽香ちゃんがこちらに傘の先端を向けて来た。

 

 そして、私のすぐ横をレーザーが通り抜けていった。うわぁ、きれいだなぁ……

 レーザーはそのままチルノちゃんに直撃。

 

 ……うん、一瞬だったね。一発でピチュッたね。次にチルノちゃんと会うのはいつになるのかなぁ。

 

 

 

 

「さて、次は貴方の番ね」

 

「私は別に向日葵を傷つけようとは思っていないよ?」

 

 ただ狂い咲いたこの花々を楽しんでいただけ。幽香ちゃんだってそうでしょ?

 

「私は静かにしていたいの。そこに騒がしい妖精がいたら邪魔でしょう?」

 

 逃がしては……くれないよね。

 全く、喧嘩っぱやいんだから。

 

 けれども、そう言うのも――嫌いじゃない。

 

「手加減はできないからね……」

 

「ふふっ、元気な妖精ね。貴方もさっきの妖精と同じ場所に逝かせてあげる」

 

 向日葵たちが傷つかないように空へ。幽香ちゃんが傘を構えて、さっきと同じ攻撃をしてきた。

 

 結界を張り、レーザーを受け止める。

 

「えっ?」

 

 幽香ちゃんの驚いた顔が見えた。

 さぁ、次は私の番だ。

 

 ここには水も火もないし、土を使ったら向日葵畑を荒らしてしまう。

 だから風を使う。風はあんまり得意じゃないんだけどさ。

 自分の体を結界で保護。体に風を纏って幽香ちゃんに突撃。

 

 そして、頭からお腹に突っ込んで、幽香ちゃんを吹っ飛ばした。

 

「なっ……」

 

 うわーちょっとだけフラフラする。頭から突撃するのはやめた方がいいかも。

 

 

「……そのでたらめな強さ。貴方、何者?」

 

 幽香ちゃんが起き上がり、私に言ってきた。

 

 ん~……私たちって何者なんだろうね? 私が聞きたいよ。

 

「黒の友達だよ」

 

「そう……あの黒のね」

 

 どうするのかな、まだ続けるの?

 

「……たぶん私では貴方に勝てない。それでも、最後までやらせてもらうわ!」

 

 幽香ちゃんが飛び上がってきて、花の形の弾幕をぶつけてきた。密度がかなり濃い、さっきのレーザーよりも厄介そうだ。

 

 

 

「はい、そこまで~」

 

 そして、その弾幕全てが桜の花びらへと変わった。

 

「……邪魔しないで、黒」

 

「いや、だってこのまま続けたらここの場所が更地になるだろ」

 

 いつの間にか隣に黒がいた。

 おお、おおー、久しぶり!!

 

「よしっ、逃げるぞ。白」

 

 がってんだー。

 黒に背中から抱きつく。

 

「逃がすと思う?」

 

 幽香ちゃんが言った。

 

「白のスピードは俺の本気より速い。幽香の速度じゃ追いつけないよ。まぁ、こんなに花も咲いているんだし、色んな場所に行って幽香も楽しんで来なよ。じゃ、またいつか」

 

 そのまま太陽の畑から飛び立った。幽香ちゃんが追って来ることはなかった。

 

 

 とりあえず博麗神社まで飛んで、そこで降りる。

 私から会いに行く予定だったけれど、黒から来てくれるとはありがたい。ふふっ、久しぶりに黒と二人きりだ。前回の転生の時は、ほとんど話せなかったから、今回はいっぱいお話してやる。

 そして、これからどうしようか聞こうと思って黒を見ると――

 

 

 黒が気絶していた。

 

 いや、頑張ってよ主人公……

 

 

 






時計草は3つに分裂した雄しべが、それぞれ「長針」「短針」「秒針」のように見えるから、そう呼ばれているそうです
しかし、名付けられたのは江戸時代らしく、その時代の時計には秒針がなかったそうです
現代では時計が3つの針を持っているのは普通ですが、当時は違ったのですね
それでも「時計草」という名前をつけたのは、時代を越えた最適のネーミングですね


と、言うことで第30話でした

次話は久しぶりに主人公視点となります

では、次話でお会いしましょう


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