東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第31話~白と黒~

 

 

 外界から幽霊が溢れ、花々が狂い咲く60周期の年。

 この年にしか咲くことがない、竹の花を見るために迷いの竹林へ。

 

 そして、今――

 

「あははっ、何やっているのさ。黒」

 

 竹の花に見とれていたせいで、地面なんか全く気にしなかった。そして、落とし穴に落ちた。

 

 穴の中からこんにちは。

 どうも、主人公の黒です。

 

「ねえ、ねえ、今どんな気持ち? どんな気持ち?」

 

 肩の少し下くらいまでは完全に埋まってしまい、身動きが全くできません。そして、俺の目の前でひたすら煽ってくるイタズラ兎が一匹。

 

「あの……てゐさん?」

 

「あ~、笑いすぎてお腹が痛い。どうしたのさ?」

 

「ここから出してはくれませんか?」

 

「え~、どうしよっかなぁ」

 

 ニヤニヤと笑いながらそうてゐが言った。

 

 あ、ダメだわこれ。絶対に出してくれないやつだ。お前も昔と変わらんねぇ。

 

「いや~、懐かしいね。何年ぶり?」

 

 ん~、数万年ぶりくらいじゃない?

 

「懐かしむのも良いけれど、とりあえず出してくれませんか?」

 

 俺が出ないと話が進まないでしょうが。

 今度、人参あげるから出してはもらえないだろうか?

 

「せっかくの再会なんだし、もっと楽しもうよ」

 

 コロコロと笑いながらてゐが言った。この状況でどう楽しめば良いのだろうか……

 

 

 

 

「おや? いつかの兎と……黒は何をやってるんだ?」

 

 穴に埋まったままてゐと雑談をしていると、魔理沙ちゃんの声が聞こえた。

 

「黒がね。埋まってみたいって言うから、埋めてあげたんだよ」

 

 てゐが言った。

 言ってないし、思ってすらいない。

 

「黒……お前……」

 

 魔理沙ちゃんの顔は見えないけれど、どんな顔をしているのかは想像がつく。

 

「いや、俺はそんなこと言ってないからね。このイタズラ兎に落とされたんだよ。魔理沙ちゃん、助けてくれませんか?」

 

「ああ、なんだ。そうだったのか。ん~……あ、そうだ。助ける代わりに今までのツケは帳消しにしてくれ」

 

 え……マジで? 魔理沙ちゃんって、霊夢の次にツケが溜まっているんだけど……

 

「どうする? 早く決めないと私は何処かへ行っちゃうぜ」

 

 てゐは出してくれないだろうし……どうすっかね。

 なんだか、てゐと魔理沙ちゃんがグルに思えてきた。

 

「はぁ、わかったよ。帳消しにするから、とりあえず出してもらえる?」

 

 俺がそう言うと、魔理沙ちゃんが『やたっ』と小さくガッツポーズをして穴から出してくれた。

 その間ずっと、てゐは笑っていた。

 

 俺を引き上げると、魔理沙ちゃんは――

 

「じゃあ、またな」

 

 なんて言ってすぐに飛んで行ってしまった。忙しい人だ。

 

「てゐは昔と変わらんね」

 

 服についた土を叩き落としながら、てゐに言った。

 あーあ、汚れちゃったじゃんか。

 

「そう言う黒は昔と変わったね」

 

 ん~、そうなのかな?

 

「そう?」

 

「うん、昔よりも明るくなったかな」

 

 へ~、自分じゃわからんけど、てゐがそう言うのなら、そうなのかな。小町にもそんなことを言われた気もするし。

 

「あー、やっと見つけた!」

 

 声のした方を見る。ウサ耳をつけた少女が飛んで来た。

 

「げげっ、もう見つかっちゃった。ちょっと黒と遊びすぎたかな」

 

「ん? 前に見た顔ね。まぁ、どうでも良いけれど。さあ、てゐ帰るわよ。まだまだ仕事が沢山残っているんだから」

 

 ウサ耳少女は俺を一瞥だけして、てゐに言った。

 そして地面に降りた瞬間、落とし穴に落ちた。

 

「えっ? ちょっ、なにこれ? ちょっとてゐここから出して!」

 

「「…………」」

 

 さて、竹の花も見られたし、俺も違う場所へ行こうかな。

 

「んじゃあね、てゐ。また会える日まで」

 

「あら、もう帰るの? うん、いつでも遊びに来な待っているよ」

 

 てゐと軽く挨拶をして別れる。ん~、次は何処へ行こうかな。

 

「あ、黒。ちょっと待って」

 

 飛び立とうとした時、てゐに呼び止められた。

 

「おろ? どったの?」

 

「ちょっと手を出して」

 

 手? 何かくれるのかな?

 そして、俺が手を出すと、その手にてゐが手を重ねてきた。

 

「何やってんの?」

 

「再会を記念に少しだけ幸運をあげるよ」

 

 はい? 幸運ですか?

 

「ん~良くわかんないけど、ありがとう。んじゃあ俺は行くよ。またね」

 

「うん、また」

 

 ウサ耳少女がキャーキャー騒ぐ中、懐かしい友人と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 特に行き先も決めず、ふよふよと花々を見ながら飛ぶ。これだけ盛大に花が咲いているのを見ると、どうやら小町はちゃんと働いていないらしい。

 はぁ、ちゃんとやれって言ったのに……

 

 そんなことを考えながら飛んでいると、俺のすぐ横を極太のレーザーが通っていった。

 うお、危なっ! な、なんなのだろうか?

 

 

 んで、ここは……ああ、太陽の畑か。春にも関わらず満開になった向日葵が見えた。じゃあ、今のはきっと幽香のレーザーなんだろう。

 

 よく見ると、幽香と誰かが闘っていた。

 うん……近寄らないようにしよう。

 

 とは、思ったものの幽香と闘っている奴が気になって観察してみる。

 

 

 幽香と闘っていたのは、一匹の小さな妖精だった。

 

 そしてどうやら、妖精がかなり優勢っぽい。すごいな……あんな妖精もいたんだ。

 

 って、あら? あの妖精……ああ、そう言えば映姫が言ってたね。近いうちに転生させるとか、なんとか。そりゃあ、あの妖精が強いわけだ。

 

 まさか、こんなところで会えるとは運が良かったのかね。

 

 

「……たぶん私では貴方に勝てない。それでも、最後までやらせてもらうわ!」

 

 妖精の近くまで飛んでいくと、幽香はそう言って視界を埋め尽くすほどの弾幕を放ってきた。ちょっ……おまっ……

 

 この場所と自分の安全を守るためにも、弾幕を全て桜の花びらへ変えた。

 

「はい、そこまで~」

 

 視界が薄桃色で埋まる。その先には俺を睨む幽香の姿。

 

「……邪魔しないで、黒」

 

 幽香が言った。そんなに睨まないでよ、怖いじゃん。

 

「いや、だってこのまま続けたらここの場所が更地になるだろ」

 

 そして何より俺が死ぬ。強いもの同士が戦う時は場所を選んで下さい。

 んじゃあ、さっさと逃げさせてもらおうかな。

 

「よしっ、逃げるぞ。白」

 

 俺がそう言うと、白が後ろから抱きついてきた。移動は任せたよ、親友。

 

「逃がすと思う?」

 

 未だ桜の花びらが舞い散る中、幽香が言った。

 

「白のスピードは俺の本気より速い。幽香の速度じゃ追いつけないよ。まぁ、こんなに花も咲いているんだし、色んな場所に行って幽香も楽しんで来なよ。じゃ、またいつか」

 

 幻想郷で白より速い奴っていないんじゃないかな。

 コイツは才能の塊みたいな奴だもん。羨ましい……

 

 じゃあね、幽香。

 

 そして、白に抱きつかれたまま太陽の畑から飛び立った。

 

 

 あの、白さん? ちょっと速いです。いや、待て。かなり速いです。ああ、駄目だわこれ……意識が……

 

 気絶しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、黒~。いい加減起きなよ」

 

 目が覚める。

 声が聞こえ、顔をペシペシと叩かれた。

 

 ん……視界の先には一匹の妖精。

 

「よっ、久しぶり白」

 

「やっ、久しぶり黒」

 

 笑いながら白が言った。

 ここは……博麗神社か。霊夢はいないのかな?

 

 神社の境内も花が咲き誇り、そして幽霊が溢れていた。

 

「やっと黒に会えた。探したんだよ? まさか黒から来てくれるとは思っていなかったけれど……私が転生してるって知ってたの?」

 

「いや、知らなかったよ。フラフラと飛んでいた先に、たまたま白がいたんだ」

 

「ふふっ、それは運が良かったね」

 

 運か……ああ、なるほどこれが幸運ってやつなのかな。少しだけ、あのイタズラ兎に感謝。

 少しだけだけどね。

 

 さて、この幽霊たちも何とかしないとだ。

 

「よしゃ、じゃあ行くか」

 

「うん? 何処へ行くの?」

 

 彼岸花と紫の桜がある場所かな。名物として、働かない死神もいるらしいよ。

 

「ちょいと向こうまで」

 

「デート?」

 

「そ、デート」

 

「わかった。んじゃあ道案内はよろしく~」

 

 白の手を掴み二人で飛び上がる。白と話したいことは沢山あるけれど、とりあえず目の前の課題から何とかしていこう。

 

 






漸く物語が動き始めそうです
と、言うか花映塚も終わりが見えてきましたね

と、言うことで第31話でした
久しぶりの主人公視点
異変が起きているのに、この主人公は全く戦いませんね
まぁ戦っても負けますが……

次回は未定です
もしかしたら花映塚も終わるかもしれません

では、次話でお会いしましょう


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