外界から幽霊が溢れ、花々が狂い咲く60周期の年。
この年にしか咲くことがない、竹の花を見るために迷いの竹林へ。
そして、今――
「あははっ、何やっているのさ。黒」
竹の花に見とれていたせいで、地面なんか全く気にしなかった。そして、落とし穴に落ちた。
穴の中からこんにちは。
どうも、主人公の黒です。
「ねえ、ねえ、今どんな気持ち? どんな気持ち?」
肩の少し下くらいまでは完全に埋まってしまい、身動きが全くできません。そして、俺の目の前でひたすら煽ってくるイタズラ兎が一匹。
「あの……てゐさん?」
「あ~、笑いすぎてお腹が痛い。どうしたのさ?」
「ここから出してはくれませんか?」
「え~、どうしよっかなぁ」
ニヤニヤと笑いながらそうてゐが言った。
あ、ダメだわこれ。絶対に出してくれないやつだ。お前も昔と変わらんねぇ。
「いや~、懐かしいね。何年ぶり?」
ん~、数万年ぶりくらいじゃない?
「懐かしむのも良いけれど、とりあえず出してくれませんか?」
俺が出ないと話が進まないでしょうが。
今度、人参あげるから出してはもらえないだろうか?
「せっかくの再会なんだし、もっと楽しもうよ」
コロコロと笑いながらてゐが言った。この状況でどう楽しめば良いのだろうか……
「おや? いつかの兎と……黒は何をやってるんだ?」
穴に埋まったままてゐと雑談をしていると、魔理沙ちゃんの声が聞こえた。
「黒がね。埋まってみたいって言うから、埋めてあげたんだよ」
てゐが言った。
言ってないし、思ってすらいない。
「黒……お前……」
魔理沙ちゃんの顔は見えないけれど、どんな顔をしているのかは想像がつく。
「いや、俺はそんなこと言ってないからね。このイタズラ兎に落とされたんだよ。魔理沙ちゃん、助けてくれませんか?」
「ああ、なんだ。そうだったのか。ん~……あ、そうだ。助ける代わりに今までのツケは帳消しにしてくれ」
え……マジで? 魔理沙ちゃんって、霊夢の次にツケが溜まっているんだけど……
「どうする? 早く決めないと私は何処かへ行っちゃうぜ」
てゐは出してくれないだろうし……どうすっかね。
なんだか、てゐと魔理沙ちゃんがグルに思えてきた。
「はぁ、わかったよ。帳消しにするから、とりあえず出してもらえる?」
俺がそう言うと、魔理沙ちゃんが『やたっ』と小さくガッツポーズをして穴から出してくれた。
その間ずっと、てゐは笑っていた。
俺を引き上げると、魔理沙ちゃんは――
「じゃあ、またな」
なんて言ってすぐに飛んで行ってしまった。忙しい人だ。
「てゐは昔と変わらんね」
服についた土を叩き落としながら、てゐに言った。
あーあ、汚れちゃったじゃんか。
「そう言う黒は昔と変わったね」
ん~、そうなのかな?
「そう?」
「うん、昔よりも明るくなったかな」
へ~、自分じゃわからんけど、てゐがそう言うのなら、そうなのかな。小町にもそんなことを言われた気もするし。
「あー、やっと見つけた!」
声のした方を見る。ウサ耳をつけた少女が飛んで来た。
「げげっ、もう見つかっちゃった。ちょっと黒と遊びすぎたかな」
「ん? 前に見た顔ね。まぁ、どうでも良いけれど。さあ、てゐ帰るわよ。まだまだ仕事が沢山残っているんだから」
ウサ耳少女は俺を一瞥だけして、てゐに言った。
そして地面に降りた瞬間、落とし穴に落ちた。
「えっ? ちょっ、なにこれ? ちょっとてゐここから出して!」
「「…………」」
さて、竹の花も見られたし、俺も違う場所へ行こうかな。
「んじゃあね、てゐ。また会える日まで」
「あら、もう帰るの? うん、いつでも遊びに来な待っているよ」
てゐと軽く挨拶をして別れる。ん~、次は何処へ行こうかな。
「あ、黒。ちょっと待って」
飛び立とうとした時、てゐに呼び止められた。
「おろ? どったの?」
「ちょっと手を出して」
手? 何かくれるのかな?
そして、俺が手を出すと、その手にてゐが手を重ねてきた。
「何やってんの?」
「再会を記念に少しだけ幸運をあげるよ」
はい? 幸運ですか?
「ん~良くわかんないけど、ありがとう。んじゃあ俺は行くよ。またね」
「うん、また」
ウサ耳少女がキャーキャー騒ぐ中、懐かしい友人と別れた。
特に行き先も決めず、ふよふよと花々を見ながら飛ぶ。これだけ盛大に花が咲いているのを見ると、どうやら小町はちゃんと働いていないらしい。
はぁ、ちゃんとやれって言ったのに……
そんなことを考えながら飛んでいると、俺のすぐ横を極太のレーザーが通っていった。
うお、危なっ! な、なんなのだろうか?
んで、ここは……ああ、太陽の畑か。春にも関わらず満開になった向日葵が見えた。じゃあ、今のはきっと幽香のレーザーなんだろう。
よく見ると、幽香と誰かが闘っていた。
うん……近寄らないようにしよう。
とは、思ったものの幽香と闘っている奴が気になって観察してみる。
幽香と闘っていたのは、一匹の小さな妖精だった。
そしてどうやら、妖精がかなり優勢っぽい。すごいな……あんな妖精もいたんだ。
って、あら? あの妖精……ああ、そう言えば映姫が言ってたね。近いうちに転生させるとか、なんとか。そりゃあ、あの妖精が強いわけだ。
まさか、こんなところで会えるとは運が良かったのかね。
「……たぶん私では貴方に勝てない。それでも、最後までやらせてもらうわ!」
妖精の近くまで飛んでいくと、幽香はそう言って視界を埋め尽くすほどの弾幕を放ってきた。ちょっ……おまっ……
この場所と自分の安全を守るためにも、弾幕を全て桜の花びらへ変えた。
「はい、そこまで~」
視界が薄桃色で埋まる。その先には俺を睨む幽香の姿。
「……邪魔しないで、黒」
幽香が言った。そんなに睨まないでよ、怖いじゃん。
「いや、だってこのまま続けたらここの場所が更地になるだろ」
そして何より俺が死ぬ。強いもの同士が戦う時は場所を選んで下さい。
んじゃあ、さっさと逃げさせてもらおうかな。
「よしっ、逃げるぞ。白」
俺がそう言うと、白が後ろから抱きついてきた。移動は任せたよ、親友。
「逃がすと思う?」
未だ桜の花びらが舞い散る中、幽香が言った。
「白のスピードは俺の本気より速い。幽香の速度じゃ追いつけないよ。まぁ、こんなに花も咲いているんだし、色んな場所に行って幽香も楽しんで来なよ。じゃ、またいつか」
幻想郷で白より速い奴っていないんじゃないかな。
コイツは才能の塊みたいな奴だもん。羨ましい……
じゃあね、幽香。
そして、白に抱きつかれたまま太陽の畑から飛び立った。
あの、白さん? ちょっと速いです。いや、待て。かなり速いです。ああ、駄目だわこれ……意識が……
気絶しました。
「ねぇねぇ、黒~。いい加減起きなよ」
目が覚める。
声が聞こえ、顔をペシペシと叩かれた。
ん……視界の先には一匹の妖精。
「よっ、久しぶり白」
「やっ、久しぶり黒」
笑いながら白が言った。
ここは……博麗神社か。霊夢はいないのかな?
神社の境内も花が咲き誇り、そして幽霊が溢れていた。
「やっと黒に会えた。探したんだよ? まさか黒から来てくれるとは思っていなかったけれど……私が転生してるって知ってたの?」
「いや、知らなかったよ。フラフラと飛んでいた先に、たまたま白がいたんだ」
「ふふっ、それは運が良かったね」
運か……ああ、なるほどこれが幸運ってやつなのかな。少しだけ、あのイタズラ兎に感謝。
少しだけだけどね。
さて、この幽霊たちも何とかしないとだ。
「よしゃ、じゃあ行くか」
「うん? 何処へ行くの?」
彼岸花と紫の桜がある場所かな。名物として、働かない死神もいるらしいよ。
「ちょいと向こうまで」
「デート?」
「そ、デート」
「わかった。んじゃあ道案内はよろしく~」
白の手を掴み二人で飛び上がる。白と話したいことは沢山あるけれど、とりあえず目の前の課題から何とかしていこう。
漸く物語が動き始めそうです
と、言うか花映塚も終わりが見えてきましたね
と、言うことで第31話でした
久しぶりの主人公視点
異変が起きているのに、この主人公は全く戦いませんね
まぁ戦っても負けますが……
次回は未定です
もしかしたら花映塚も終わるかもしれません
では、次話でお会いしましょう
感想・質問何でもお待ちしております