あちらを見ても、こちらを見ても花だらけ。綺麗だとは思うけれど、この無秩序感はあまり好きじゃないかな。これなら60年に一度くらいでちょうど良いのかもしれない。
「そう言えば、黒って映姫ちゃん、小町ちゃんの二人と一緒に年越しをしたんだよね」
二人でのんびりと飛んでいると、白が声をかけてきた。
「うん、そうだよ。前から約束していたしね」
年越しになったのは、たまたまだけど。
「いいな~、何で私も誘ってくれなかったのさ?」
いや、だってお前死んでるじゃん。
「どうやって誘うんだよ……流石に三途の川は渡れないぞ?」
小町に頼めば何とかなりそうだけど、俺みたいな不老不死が三途の川を渡るのはちょっと……
「大丈夫だよ。私が許す」
「お前に許されたって仕様がないでしょうが」
しかも、もし行ったとしたら絶対映姫に怒られる。
「むぅ……たまには黒の方から遊びに来てよ。私からだと黒の家とかわかんないから、せっかく転生しても会えないかもしれないじゃん」
だったら早く、ちゃんと転生できるようになりなさいな。それまで俺は、ゆっくりと待っているからさ。
「そう言っても、俺だってどこと繋がっているのかわかんないんだよね」
昔、鳥居を抜けた瞬間、崖から落ちたこととかあるし。
「商売する気ないじゃん……なんだかなぁ」
良いんだよ、俺だってお店の売り上げは諦めている。それに元々あの店は、悩みを抱え迷えた人々が訪れるだけの場所だしね。
最近は、悩みなんて欠片も無いような奴らばかりが訪れるけど……
そんな感じでお喋りをしながら飛び、漸く目的地までたどり着いた。
その場所は真っ赤な色をした満開の彼岸花で埋め尽くされている。幽霊溢れる地獄に咲いた、葉見ず花見ず、死人花。正に名前の通り。
「春なのに彼岸花も満開かぁ~綺麗だね」
白が言った。
膝の少し上くらいの高さまで伸びた彼岸花を見てみる。まぁ、確かに綺麗だ。
地中は毒で大変なことになってそうだけど……一応、彼岸花の鱗茎もしっかりと水洗いすれば、食べられるんだけどね。食べたことないけど。
さて、小町を探さないと……おろ?
「あれ? 映姫ちゃんがいる。やほー映姫ちゃん。こんな所で何やっているの?」
今日なんて幽霊が多くて仕事が大変そうだけど、映姫は休みなのかな。
「こんにちは白様、黒。白様も黒と会えたのですね。良かったです。私はいくら待っていても、幽霊が私の所へ来ないので小町の様子を見に来ました」
わかってはいたけれど、小町は今日もサボっていたのか……ため息が出る。
「はぁ……とりあえず、小町の所へ行こうか。このまま幽霊が溢れていても困るし」
そして、遠くの方で光が見えた。たぶん、誰かが弾幕ごっこでもしているのだろう。一人は小町なはず。
はてさて、もう一人は誰だろうね?
「それでは、行きましょうか」
映姫について光の見える方へ。
そしてそこには、小町と霊夢がいた。
「いたたっ。全く、巫女は乱暴なんだから。だいたい、あたいを倒したってこんな量の幽霊運びきれないよ。明らかに許容オーバーだ」
弾幕ごっこに負けたらしい小町が言った。許容オーバーもなにも、まだ何にも運んでないでしょうが。幽霊が多いのはわかるけどさ。
「何をやっているの、小町」
「げっ、映姫様」
小町がこちらに気づく。
「俺があれだけ言ったのに、小町は結局働かなかったのか……」
どうやら、忘れられていたらしい。彼岸花が咲き、紫の桜だって満開だ。なんで気づかなかったのさ……
「い、いや~すっかり忘れていtあ、ちょっ、映姫様待って、すみません。すみません!」
映姫が小町の所へ行き、小町をポコポコと叩いた。
「まぁ、小町ちゃんだし仕方がないよね。や、霊夢ちゃん久しぶり」
白が霊夢に言った。
おろ? 白は霊夢と会ったことあるの?
「あの時の変な妖精ね。で、あんたは誰?」
どことなく、むすっとした表情で霊夢が言った。機嫌悪いのかな?
「白、黒の妻です」
いや、違うからね。
「えっ……」
霊夢が固まった。
違います。そんな関係じゃありません。
「何を言ってるんだお前は……白とはただの友達だよ」
まぁ、友達というより、ほとんど家族みたいなものだけどさ。割と複雑な関係なんだ。
ほら、霊夢も固まってないで何か言ってよ。
「……よくわからないけれど、この異変の原因はそこの死神ってことで良いの?」
漸く霊夢が口を開いた。
「小町だけが原因じゃないけれど、まぁ、ここまで幽霊が増えたのも、小町がサボっていたからではあるよ」
この年は結界が緩むからね。どうしても、外界からの幽霊が増えちゃうんだ。元々の原因はそれかな。
「さっきから死神を叩いている奴は、あの死神のボス?」
「そうだね。幻想郷の閻魔をやっていて、名前は四季映姫」
「じゃあ、あれを倒せば良いのね」
え……なんでそうなるの。別に映姫は悪いことしてないんだけど。
でもどうせ、言っても聞かないよなぁ……
「はぁ、小町を最初に見た時は、もっと真面目だと思っていたのに……さて、小町の説教は後でやるとして博麗の巫女、貴方には言わなければならないことがあります」
映姫が霊夢を真っ直ぐと見ながら言った。
「あ~、映姫ちゃんの説教が始まっちゃったね。まぁ、私たちはゆっくりしてよっか」
そだね、ゆっくりと観戦でもしていよう。
こんなことになるなら、お酒でも持ってくれば良かった。
「私はさっさと、あんたを倒してこの異変を終わらせたいのだけど」
「貴方は大した理由もなく大勢の妖怪や、妖怪では無い者も退治してきた。さらに巫女なのに神と交流をしない。時には神にさえも牙をむく事もある」
――そう、貴方は少し業が深すぎる。
映姫が言った。
そんな映姫の言葉を霊夢は珍しく黙って聞いていた。
「このままでは、地獄にすら貴方は行けません」
「別に良いわよ。とりあえず、貴方を倒して花を戻してから考えるとするわ」
それは、霊夢らしい答え。
「紫の桜は、罪深い人間の霊が宿る花。その紫の桜が降りしきる下で、断罪しなさい。博麗の巫女よ!」
満開となった紫の桜を見てみる。
確かに綺麗ではあるけれど、やっぱり好きにはなれそうにない。桜はあの薄桃色が一番似合う。
そう思うんだ。
それにしても、暇ですね。
「さあ、始まりました。映姫ちゃんのお説教のお時間です。解説は私、白と特別コメンテイターの」
「私、黒でお送りさせていただきます」
「あの……少し黙っていてくれませんか?」
白とふざけていたら映姫に怒られた。だって、暇だったんだもん。
――罪符「彷徨える大罪」。霊符「夢想封印」。
映姫と霊夢の声が重なる。
そして、狂い咲いた花々に負けないほどの綺麗な弾幕が視界を埋めた。
「おおー、すげー。これが『弾幕ごっこ』ってやつなんだね。生で見るのは初めてだよ」
膝の上に白を乗せ、こちらに飛んで来た弾を花びらへと変えながら雑談。
「白は弾幕ごっこやらないの?」
「スペルカード考えてないもん。当分はやらないかな。それに私は何も考えず全力でぶっぱなす方が好きだし」
物騒だなぁ……
必ず逃げ道があるように作り、かつ美しく。難しいよね。俺もほとんど考えてないし。
弾幕ごっこは激しさを増し、そろそろ終盤と言ったところ。
――審判「ラストジャッジメント」。霊符「博麗幻影」。
二人のラストスペルが唱えられた。
再び、視界が埋まる。
そして霊夢の姿がブレ、気がついたら映姫に弾が直撃していた。
……今、瞬間移動しなかった? 相変わらず人間やめてるな……
「おっ、霊夢ちゃんが勝ったみたいだね。いや~流石、博麗の巫女は強いね」
コロコロと笑いながら白が言った。博麗の巫女の中でも、霊夢は飛び抜けているけどね。
「あ~、疲れた……それじゃあ、幽霊たちはあんたらで何とかしなさいよ」
「まさか、私が負けるとは……はぁ、わかりましたが貴方も私の言ったことは、しっかりと反省してくださいよ」
「はいはい、わかっているわよ。じゃあ、私は帰るわね。それで……黒はどうするの? 一緒に帰る?」
霊夢がこちらを向いて、どこか不安そうに言ってきた。
う~ん、帰っても良いけれど、白がいるしなぁ。もし白が、すぐに帰ってしまうのならもう少し一緒にいたい。
「今回、白はいつまでいられるの?」
「ん~、私はわかんないよ。映姫ちゃん、どうなの? また一日だけ?」
「申し訳ありませんが、そろそろ時間です。それにこの後、恐ろしい量の仕事が待っています。ですが、近いうちにまた、転生させてあげられますよ。ですので、今日は戻りましょう」
映姫がそう言うと白は喜んだ。
そして、映姫が軽く腕を振り、白の体が消え始めた。
「じゃあね、黒。また近いうちに遊びに行くから、目立つところにいてよ?」
目立つところってどこだよ……
「了解、まぁ、のんびりと待っているよ。じゃ、またな白」
「じゃ、またね黒」
白はそう言って俺に手を振りながら消えていった。
うん、次に会えるのが楽しみだ。
「では、私も小町にもう少しだけ説教をしたら帰ります。またいつか、一緒にお酒を飲みましょう」
そして、映姫とも別れた。
満開に狂い咲いた花が、一気に戻ることはないけれど、これからゆっくりと戻って行くだろう。
「っと、待たせたね、俺たちも帰ろっか霊夢」
「そうね……ねえ、黒」
霊夢がこちらを見ないまま言った。
どうしたんだろうか?
「どうしたの?」
「今日は久しぶりに博麗神社に泊まっていきなさいよ」
「うん? まぁ、良いけど、いきなりどうしたのさ?」
「なんとなく、かしら」
――私もよくわからないけれど。
なんて、霊夢は続けた。
ん~何なのだろうか? ま、たまには神社に泊まるのも悪くはない。
「了解、これだけ花も咲いているんだしお花見でもするか」
季節の違う花々も悪くはないけれど、やっぱり博麗神社の桜が一番好きだ。今日は、ちょっとだけ良いお酒を飲むこととしよう。
この作品の文章類似作品を探していたら、私の前作が見つかり少しだけ笑ってしまいました
まぁ、同じ作者が書いているのですから、当たり前なのかもしれませんね
と、言うことで第32話でした
相変わらず、この作品の主人公は動きませんね
今回なんて、彼女とずっと喋っていただけだし……
今度は戦わせてあげようかな
次話は特に決めていません
そろそろ閑話を書きたい気分です
では、次話でお会いしましょう
感想・質問何でもお待ちしております