東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第32話~やっぱり桜が一番だよね~

 

 

 あちらを見ても、こちらを見ても花だらけ。綺麗だとは思うけれど、この無秩序感はあまり好きじゃないかな。これなら60年に一度くらいでちょうど良いのかもしれない。

 

「そう言えば、黒って映姫ちゃん、小町ちゃんの二人と一緒に年越しをしたんだよね」

 

 二人でのんびりと飛んでいると、白が声をかけてきた。

 

「うん、そうだよ。前から約束していたしね」

 

 年越しになったのは、たまたまだけど。

 

「いいな~、何で私も誘ってくれなかったのさ?」

 

 いや、だってお前死んでるじゃん。

 

「どうやって誘うんだよ……流石に三途の川は渡れないぞ?」

 

 小町に頼めば何とかなりそうだけど、俺みたいな不老不死が三途の川を渡るのはちょっと……

 

「大丈夫だよ。私が許す」

 

「お前に許されたって仕様がないでしょうが」

 

 しかも、もし行ったとしたら絶対映姫に怒られる。

 

「むぅ……たまには黒の方から遊びに来てよ。私からだと黒の家とかわかんないから、せっかく転生しても会えないかもしれないじゃん」

 

 だったら早く、ちゃんと転生できるようになりなさいな。それまで俺は、ゆっくりと待っているからさ。

 

「そう言っても、俺だってどこと繋がっているのかわかんないんだよね」

 

 昔、鳥居を抜けた瞬間、崖から落ちたこととかあるし。

 

「商売する気ないじゃん……なんだかなぁ」

 

 良いんだよ、俺だってお店の売り上げは諦めている。それに元々あの店は、悩みを抱え迷えた人々が訪れるだけの場所だしね。

 

 最近は、悩みなんて欠片も無いような奴らばかりが訪れるけど……

 

 

 

 

 

 そんな感じでお喋りをしながら飛び、漸く目的地までたどり着いた。

 その場所は真っ赤な色をした満開の彼岸花で埋め尽くされている。幽霊溢れる地獄に咲いた、葉見ず花見ず、死人花。正に名前の通り。

 

「春なのに彼岸花も満開かぁ~綺麗だね」

 

 白が言った。

 膝の少し上くらいの高さまで伸びた彼岸花を見てみる。まぁ、確かに綺麗だ。

 地中は毒で大変なことになってそうだけど……一応、彼岸花の鱗茎もしっかりと水洗いすれば、食べられるんだけどね。食べたことないけど。

 

 さて、小町を探さないと……おろ?

 

「あれ? 映姫ちゃんがいる。やほー映姫ちゃん。こんな所で何やっているの?」

 

 今日なんて幽霊が多くて仕事が大変そうだけど、映姫は休みなのかな。

 

「こんにちは白様、黒。白様も黒と会えたのですね。良かったです。私はいくら待っていても、幽霊が私の所へ来ないので小町の様子を見に来ました」

 

 わかってはいたけれど、小町は今日もサボっていたのか……ため息が出る。

 

「はぁ……とりあえず、小町の所へ行こうか。このまま幽霊が溢れていても困るし」

 

 そして、遠くの方で光が見えた。たぶん、誰かが弾幕ごっこでもしているのだろう。一人は小町なはず。

 はてさて、もう一人は誰だろうね?

 

「それでは、行きましょうか」

 

 映姫について光の見える方へ。

 そしてそこには、小町と霊夢がいた。

 

「いたたっ。全く、巫女は乱暴なんだから。だいたい、あたいを倒したってこんな量の幽霊運びきれないよ。明らかに許容オーバーだ」

 

 弾幕ごっこに負けたらしい小町が言った。許容オーバーもなにも、まだ何にも運んでないでしょうが。幽霊が多いのはわかるけどさ。

 

「何をやっているの、小町」

 

「げっ、映姫様」

 

 小町がこちらに気づく。

 

「俺があれだけ言ったのに、小町は結局働かなかったのか……」

 

 どうやら、忘れられていたらしい。彼岸花が咲き、紫の桜だって満開だ。なんで気づかなかったのさ……

 

「い、いや~すっかり忘れていtあ、ちょっ、映姫様待って、すみません。すみません!」

 

 映姫が小町の所へ行き、小町をポコポコと叩いた。

 

「まぁ、小町ちゃんだし仕方がないよね。や、霊夢ちゃん久しぶり」

 

 白が霊夢に言った。

 おろ? 白は霊夢と会ったことあるの?

 

「あの時の変な妖精ね。で、あんたは誰?」

 

 どことなく、むすっとした表情で霊夢が言った。機嫌悪いのかな?

 

「白、黒の妻です」

 

 いや、違うからね。

 

「えっ……」

 

 霊夢が固まった。

 違います。そんな関係じゃありません。

 

「何を言ってるんだお前は……白とはただの友達だよ」

 

 まぁ、友達というより、ほとんど家族みたいなものだけどさ。割と複雑な関係なんだ。

 ほら、霊夢も固まってないで何か言ってよ。

 

「……よくわからないけれど、この異変の原因はそこの死神ってことで良いの?」

 

 漸く霊夢が口を開いた。

 

「小町だけが原因じゃないけれど、まぁ、ここまで幽霊が増えたのも、小町がサボっていたからではあるよ」

 

 この年は結界が緩むからね。どうしても、外界からの幽霊が増えちゃうんだ。元々の原因はそれかな。

 

「さっきから死神を叩いている奴は、あの死神のボス?」

 

「そうだね。幻想郷の閻魔をやっていて、名前は四季映姫」

 

「じゃあ、あれを倒せば良いのね」

 

 え……なんでそうなるの。別に映姫は悪いことしてないんだけど。

 でもどうせ、言っても聞かないよなぁ……

 

「はぁ、小町を最初に見た時は、もっと真面目だと思っていたのに……さて、小町の説教は後でやるとして博麗の巫女、貴方には言わなければならないことがあります」

 

 映姫が霊夢を真っ直ぐと見ながら言った。

 

「あ~、映姫ちゃんの説教が始まっちゃったね。まぁ、私たちはゆっくりしてよっか」

 

 そだね、ゆっくりと観戦でもしていよう。

 こんなことになるなら、お酒でも持ってくれば良かった。

 

「私はさっさと、あんたを倒してこの異変を終わらせたいのだけど」

 

「貴方は大した理由もなく大勢の妖怪や、妖怪では無い者も退治してきた。さらに巫女なのに神と交流をしない。時には神にさえも牙をむく事もある」

 

 ――そう、貴方は少し業が深すぎる。

 

 映姫が言った。

 そんな映姫の言葉を霊夢は珍しく黙って聞いていた。

 

「このままでは、地獄にすら貴方は行けません」

 

「別に良いわよ。とりあえず、貴方を倒して花を戻してから考えるとするわ」

 

 それは、霊夢らしい答え。

 

「紫の桜は、罪深い人間の霊が宿る花。その紫の桜が降りしきる下で、断罪しなさい。博麗の巫女よ!」

 

 満開となった紫の桜を見てみる。

 確かに綺麗ではあるけれど、やっぱり好きにはなれそうにない。桜はあの薄桃色が一番似合う。

 そう思うんだ。

 

 

 それにしても、暇ですね。

 

「さあ、始まりました。映姫ちゃんのお説教のお時間です。解説は私、白と特別コメンテイターの」

 

「私、黒でお送りさせていただきます」

 

「あの……少し黙っていてくれませんか?」

 

 白とふざけていたら映姫に怒られた。だって、暇だったんだもん。

 

 ――罪符「彷徨える大罪」。霊符「夢想封印」。

 

 映姫と霊夢の声が重なる。

 

 そして、狂い咲いた花々に負けないほどの綺麗な弾幕が視界を埋めた。

 

 

 

 

「おおー、すげー。これが『弾幕ごっこ』ってやつなんだね。生で見るのは初めてだよ」

 

 膝の上に白を乗せ、こちらに飛んで来た弾を花びらへと変えながら雑談。

 

「白は弾幕ごっこやらないの?」

 

「スペルカード考えてないもん。当分はやらないかな。それに私は何も考えず全力でぶっぱなす方が好きだし」

 

 物騒だなぁ……

 必ず逃げ道があるように作り、かつ美しく。難しいよね。俺もほとんど考えてないし。

 

 弾幕ごっこは激しさを増し、そろそろ終盤と言ったところ。

 

 

 ――審判「ラストジャッジメント」。霊符「博麗幻影」。

 

 

 二人のラストスペルが唱えられた。

 

 再び、視界が埋まる。

 

 そして霊夢の姿がブレ、気がついたら映姫に弾が直撃していた。

 ……今、瞬間移動しなかった? 相変わらず人間やめてるな……

 

「おっ、霊夢ちゃんが勝ったみたいだね。いや~流石、博麗の巫女は強いね」

 

 コロコロと笑いながら白が言った。博麗の巫女の中でも、霊夢は飛び抜けているけどね。

 

「あ~、疲れた……それじゃあ、幽霊たちはあんたらで何とかしなさいよ」

 

「まさか、私が負けるとは……はぁ、わかりましたが貴方も私の言ったことは、しっかりと反省してくださいよ」

 

「はいはい、わかっているわよ。じゃあ、私は帰るわね。それで……黒はどうするの? 一緒に帰る?」

 

 霊夢がこちらを向いて、どこか不安そうに言ってきた。

 う~ん、帰っても良いけれど、白がいるしなぁ。もし白が、すぐに帰ってしまうのならもう少し一緒にいたい。

 

「今回、白はいつまでいられるの?」

 

「ん~、私はわかんないよ。映姫ちゃん、どうなの? また一日だけ?」

 

「申し訳ありませんが、そろそろ時間です。それにこの後、恐ろしい量の仕事が待っています。ですが、近いうちにまた、転生させてあげられますよ。ですので、今日は戻りましょう」

 

 映姫がそう言うと白は喜んだ。

 そして、映姫が軽く腕を振り、白の体が消え始めた。

 

「じゃあね、黒。また近いうちに遊びに行くから、目立つところにいてよ?」

 

 目立つところってどこだよ……

 

「了解、まぁ、のんびりと待っているよ。じゃ、またな白」

 

「じゃ、またね黒」

 

 白はそう言って俺に手を振りながら消えていった。

 うん、次に会えるのが楽しみだ。

 

「では、私も小町にもう少しだけ説教をしたら帰ります。またいつか、一緒にお酒を飲みましょう」

 

 そして、映姫とも別れた。

 満開に狂い咲いた花が、一気に戻ることはないけれど、これからゆっくりと戻って行くだろう。

 

「っと、待たせたね、俺たちも帰ろっか霊夢」

 

「そうね……ねえ、黒」

 

 霊夢がこちらを見ないまま言った。

 どうしたんだろうか?

 

「どうしたの?」

 

「今日は久しぶりに博麗神社に泊まっていきなさいよ」

 

「うん? まぁ、良いけど、いきなりどうしたのさ?」

 

「なんとなく、かしら」

 

 ――私もよくわからないけれど。

 

 なんて、霊夢は続けた。

 

 ん~何なのだろうか? ま、たまには神社に泊まるのも悪くはない。

 

「了解、これだけ花も咲いているんだしお花見でもするか」

 

 季節の違う花々も悪くはないけれど、やっぱり博麗神社の桜が一番好きだ。今日は、ちょっとだけ良いお酒を飲むこととしよう。

 

 






この作品の文章類似作品を探していたら、私の前作が見つかり少しだけ笑ってしまいました
まぁ、同じ作者が書いているのですから、当たり前なのかもしれませんね

と、言うことで第32話でした
相変わらず、この作品の主人公は動きませんね
今回なんて、彼女とずっと喋っていただけだし……

今度は戦わせてあげようかな

次話は特に決めていません
そろそろ閑話を書きたい気分です

では、次話でお会いしましょう


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