東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第34話~お酒は二十歳になってから~

 

 

「えっ、じゃあ黒さんは初めから神奈子様達が見えていたのですか?」

 

 いくら夏とは言え、日は沈み始め風も出てきた。まだまだ、暑いけれど過ごしやすい気温。

 縁側で神奈子と一緒にお茶を飲んでいると、早苗ちゃんが聞いてきた。

 

「うん、初めから見えていたよ」

 

「ど、どうして言ってくれなかったんですか?」

 

 いや、だって早苗ちゃんが隠したがっていたから、気を使って見えないフリを……

 それに、諏訪子を必死に止めている姿とか、見ていて面白かったし。口には出さんけど。怒られるのやだし。

 

「別に隠しておく理由はなかったけど……まぁ、なんとなくかな」

 

「はぁ、そうですか……じゃあ黒さんって、何者なんですか?」

 

 俺に聞かれても困るんだけど。

 神奈子の方を見てみる。

 

「ん~、何者なんだろうね。ただの友達ってことで良いんじゃないかい?」

 

 お茶を飲みながら、神奈子が言った。

 まぁ、そんなところだろうね。

 

「黒さんも神様なのですか?」

 

「いんや、違うよ。ちょっとだけ長生きな人間だよ」

 

 ――どこがちょっとなんだか……

 

 そんな神奈子の声が聞こえた。

 

 仕方がないでしょうが、なかなか死ねないんだし。

 

「う~ん、良くわかりません……」

 

 そう言って、早苗ちゃんが首を傾げた。

 

「おや? 二人とも帰ってきていたんだね。おかえり」

 

 ヘンテコな帽子を被った、小さな神様が走ってきた。

 ただいま。どうせ湖でまた蛙と遊んでいたんだろう。昔からそうだったもんね。

 

「うん? なんだ、見えないフリをして早苗をからかうのはやめちゃったの?」

 

 あ、コラ。

 余計なことは言っちゃダメでしょうが。

 

「か、からかっていたんですか!?」

 

 まぁ、ちょっとだけね。

 

「じゃあ、今日からは一緒にお酒が飲めるんだね!」

 

 昨日だって、寝ている俺を叩き起して飲んだじゃん。

 諏訪子を見ると、ウインクをしてきた。黙ってろってことですか。そのせいで、朝起きられなかったんですが……

 今日の昼だって、無理矢理遊びに付き合わされるし。まぁ、楽しかったけれどさ。

 

「あまり飲みすぎないでくださいね」

 

 ため息をしながら早苗ちゃんが言った。

 

「早苗ちゃんは飲まないの?」

 

「私はまだ未成年ですし……」

 

 別に良いと思うけどな~

 まぁ、飲みたくないのなら仕様が無いけれど。お酒は無理して飲むものなんかじゃないし。

 

 夜になり、お待ちかねの酒飲みのお時間。

 お酒を飲むことはないけれど、早苗ちゃんも参加してくれた。4人仲良く縁側に並ぶ。

 

「それじゃあ、乾杯しようか」

 

 神奈子が言った。

 

 ――乾杯。

 

 夏の夜に4人の声が揃った。

 

 おチョコを傾けながら空を見上げる。濁った空気の向こうに僅かに光る星明かり。

 

 う~ん、星空を見るなら幻想郷の方が良いかな。

 

「こっちの空も汚くなっちゃったね」

 

 この神社から見る夜空は好きだったのになぁ……

 

「向こうの空はまだ綺麗なのかい?」

 

 神奈子が聞いてきた。

 

「汚す奴もいないしな~」

 

 前に紅い霧を出した奴とかいたけど、別に汚したわけでもない。

 

「うんっ、お酒が美味しい! これは全部黒が作ったやつなの?」

 

 ああ、もの凄い勢いでお酒がなくなっていく。

 俺の純米大吟醸が……結構良いやつなのに。

 

「そうだよ、前に持ってくるって約束したしね」

 

 おかげで倉庫の中のストックが切れかかっている。こんな調子で秋まで持ってくれるのだろうか。

 

「そう言えば、黒はどうやって帰るんだい?」

 

「たぶん、迎えが来ると思う」

 

 いきなり外の世界へ連れて行かれたから、わかんないけど……何考えてるんだろうね?

 

「いっそ、こっちで暮らせば? 神社なら部屋も空いているよ。私も嬉しいし」

 

「いや~、遠慮しとくよ。向こうでやらないといけないこともあるし」

 

 昔みたいに、フラフラと出歩くことも少なくなったかな。

 

「そっかぁ、まぁいつでも遊びに来なよ。待ってるからさ」

 

 そう言って、諏訪子は笑った。

 

「黒さんは、今どちらに住んでいるのですか?」

 

 幻想郷って言ってもわかんないだろうしなぁ……

 

「う~ん……まぁ、かなり遠いところかな。電気も録に通っていないような田舎だよ」

 

「なるほど、それであんなに燥いでいたのですね」

 

 ありゃ、見られていたんだ。ちょっと恥ずかしい……まぁ、幻想郷じゃ見ない物ばかりだしなぁ。でも、スーパーとか凄いよね。テンション上がります。

 

 そんな感じでゆっくりと始まった飲み会は、ゆっくりと終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 中途半端にお酒を飲んでしまったせいで、なかなか寝られず、寝床を抜け出して外へ出る。

 微かに見えていた、星明りは消え分厚い雲が空を覆っていた。湿っぽい匂いが鼻の奥まで届く。明日の天気は悪そうだ。

 

 持っていた煙管と刻み煙草を取り出して一服することに。

 煙草も随分と久しぶりだ。

 刻み煙草を指で軽く掴み、固める。それを煙管の中へ。霊力で火を起こし、煙草に火をつける。

 そして、煙を口に含み味を楽しんだ。

 

 うん、久しぶりに吸うとやっぱり美味しいね。

 

「煙草は体に悪いよ?」

 

 諏訪子の声が聞こえた。

 それくらいわかってはいるよ。

 

「たまにだけど、吸いたくなるんだ。それに煙草くらいで壊れるような体じゃないし」

 

 燃え尽きた灰を落とし、花びらへと変える。

 

「黒はまだ寝ないの?」

 

「次はいつこっちに来られるのか、わからないからさ。もうちょっとだけ見ておこうと思って」

 

 空気は重いし、空も汚い。

 それでも最後となると、やっぱり寂しくなる。

 

「おや? なんだ二人とも起きていたのか。それならちょうど良い」

 

 お酒を片手に神奈子が出てきた。

 

 その後、結局朝まで飲み続け、三人まとめて早苗ちゃんに怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 休日なのに、どんよりとした曇空。

 今日の天気は悪そうです。

 

 いつもより遅く起きると、三人が縁側で仲良く寝ていた。本当に仲が良いんですね。

 その周りには酒瓶や樽が沢山。

 

 ……とりあえず、説教だ。

 

 

 

「いや~ちょっと飲みすぎたね」

 

 ご機嫌な様子で神奈子様が言った。

 

「……頭痛い。あれのどこが、ちょっとだよ。樽一気とか考えられん……おい、諏訪子も起きろって。ああ、もう、抱きつくな。暑苦しい」

 

 何をやっていたのですか……

 そして、黒さんに抱きつくようにして寝ている諏訪子様。いつもの帽子は何故か黒さんが被っていた。

 

「あーうー。あと、ちょっと……」

 

 黒さんが一生懸命諏訪子様を離そうとしていたが、あーうー言ってなかなか離れない。

 見ていて和む。

 

「それで、黒はいつ帰るんだい?」

 

 そう言えば、黒さんとも今日でお別れ。

 寂しくなります。

 

「昼くらいだと思うよ。あんまり自信ないけれど」

 

「朝食はどうされますか?」

 

「俺は遠慮しておくよ。あまり固形物を入れたくないし」

 

 だから、飲みすぎです。

 

「私も今日はいらないよ。諏訪子もいらないと思うから、悪いけれど朝食は早苗だけで済ませておくれ」

 

 わかりました。

 

 

 

 朝食を食べ終わり、3人のためにお茶を持っていくと、諏訪子様も起きていた。

 

「あうー、帽子を返してよー」

 

「はっはっはー。悪いがこの帽子は幻想行kぶぅっ……おまっ、今、腹はダメだって……」

 

 諏訪子様にお腹を殴られ、倒れこむ黒さん。

 あの……神社を汚すのはやめてくださいね。

 

「お茶をお持ちしました」

 

「雨か……」

 

 外を眺めていた神奈子様が言った。

 ああ、降ってきちゃったか。

 

「おお、ありがとね。早苗」

 

 倒れ込んだ黒さんの背中に乗りながら、諏訪子様が言った。

 お行儀が悪いですよ?

 

「なあなあ、諏訪子降りてくれないか?」

 

「だめっ。もう一泊していくのなら良いよ」

 

「そうだよ。黒だってもうちょっとゆっくりしていけば良いじゃないか」

 

 諏訪子様と神奈子様が言った。この二柱は、私以外の人間と関わることができない。それってきっともの凄く寂しい事なんだろうな。

 

「そう言ってもらえる嬉しいけれど、帰らないとだしなぁ。んで、そろそろ降りてくれ重いんだけど……」

 

 黒さんがそう言うと――

 

「重いとはなんだー!」

 

 と、楽しそうに諏訪子様が言った。

 本当に、黒さんとはどんな関係なんでしょうか?

 

 シトシトと降っていた雨がポツポツへと変わり、お昼ころには土砂降りの雨となった。

 黒さんたちはその間、ずっと縁側でお喋り。

 

「おお、これが夕立……じゃないから昼立ってやつなのかな?」

 

 雨が凄い、まるで滝みたいだ。

 最近はゲリラ豪雨ってよく言いますね。

 

「黒は朝立でしょ?」

 

 クスクスと笑いながら諏訪子様が言った。

 

「おい、やめろバカ」

 

 黒さんはその言葉に怒っていたけれど、どういう意味だろうか?

 

 

 

「さて、そろそろかな」

 

 傘を手に持ち、黒さんが言った。

 

「もう行っちゃうの? また会えるよね?」

 

「いつでも来な。待っているからさ」

 

 諏訪子様と神奈子様が言う。

 

「え……この雨の中、帰るのですか?」

 

 いくら傘があっても流石にこれじゃあ、意味がないと思う。

 

「ま、大丈夫だよ。んじゃ、またいつか会おう」

 

 そう言って黒さんが豪雨の中へ入って行く。

 雨音と一緒に、12時を知らせる鐘が微かに響いた。

 

 そして――また目の前が桜で埋まった。

 

「……すごい」

 

 ここまで見事な桜吹雪は初めて見た。傘を差し、桜吹雪の中を黒さんがゆっくりと歩く。

 

 その先には、金髪の女の人が僅かに見えた。

 

 気がつくと黒さんは消えていた。

 そして、黒さんが消えた瞬間、桜が雨に戻った。今のは……本当に現実だったんでしょうか?

 

「ねえ、神奈子。どういう意味だったと思う?」

 

 諏訪子様が、黒さんの消えた方を見ながら言った。

 

「来いってことだろうさ」

 

「やっぱりそうだよねぇ……まぁ、そのことは神奈子に任せるよ」

 

 何の会話でしょうか?

 

 黒さんと別れたことは寂しいけれど、不思議とまた会える気がした。

 小さな奇跡の続きは、きっとすぐ。

 

 






と、言うことで第34話でした
神奈子さん出番少なくてごめんねー

煙管は肺に入れると大変なことになりますよね
やはり紙煙草が一番な気がします

次話は未定です
まだ風神録には入らないと思いますが、どうなることやら……

では、次話でお会いしましょう


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