外の世界から帰ってきて数日ほど経った。
日本酒のストックがほとんどありません……
とは、言ってもお米はまだ収穫できないから、日本酒は当分お預けかな。薩摩芋も収穫できたし、芋焼酎でもまた作ってみよう。前回作ったやつは、あまり美味しくなかったし。
今度は焼き芋で作ってみようかな。甘い香りとかしそうだし。
あ~お腹が減ってきた。焼き芋でも作りたいけど、落ち葉とかないよね。まだ藁とかあったかなぁ……
確認のために店の外へ出ると、緑色っぽい髪に、黄色のリボンをつけた帽子を被った少女がいた。
どこかで見たことがある姿。ん~……誰だったかな?
その少女は俺に気づくこともなく、どこかボーっとしてプチりプチりと草を抜いていた。
……この少女は何をやっているんだろうか。
ああ、思い出したわ。
古明地こいしちゃんだ。喋ったことはほとんどなかったしなぁ。そりゃあ忘れるはずだ。
「や、こいしちゃん。久しぶり」
俺が声をかけると、こいしちゃんが漸くこちらを見てくれた。
あれ? そう言えば、古明地姉妹は地底にいるって映姫から聞いていたけど……何かあったのかな?
「お兄さんは誰? どこかであった気もするけれど」
ありゃ、やっぱり覚えてないか。まぁ、俺も忘れていたからお互い様だね。
う~ん、覚の妖怪と話すのも久しぶりだ。こうやって考えていることも、向こうには全部伝わっているんだよね。まぁ、会話をしなくて良い分楽っちゃ楽だけど。
それで、ここへは何をしに来たのかな? ただの迷子ってことも考えられるけどさ。
「……何か喋ってくれないとわかんないよ?」
こいしちゃんが言った。
あら? こいしちゃんは覚じゃなかったっけ? そんなことはないと思ったけど……
よく見ると、こいしちゃんの第三の目が閉じられていた。ああ、それで俺の心を読めなかったのか。
「俺は黒って名前だよ。こいしちゃんとも会ったことがあるけれど、忘れちゃったっぽいね。んで、今日はどうしたの?」
「私は、なんとなく歩いていたら此処にいただけだよ」
なんとなく、ねぇ。
あまり、フラフラしているとお姉さんが心配するよ。
「そかそか、何か冷たい物でも飲んでいく?」
こいしちゃんはお酒とか飲むのかな?
あまり想像できないけれど。
「うん、じゃあいただきます」
店の中へ入り、こいしちゃんにはアイスティーをあげた。こいしちゃんから話を聞くと、いつも何処かへフラフラと放浪しているらしい。
話をしていて思ったことは、目の前にいるはずなのに、こいしちゃんの存在を忘れそうなるというか……う~ん、例え辛い。昔はこんなことなかったと思うんだけどなぁ……
「第三の目がずっと閉じているけれど、何かあったの?」
俺の心を読めなかったのは、そのせいだと思う。
「心を読むのが嫌になったから、閉じちゃった」
アイスティーをちょびちょびと飲みながら、こいしちゃんが言った。
そっか……人の心を読むっていう感覚がわからないけれど、たぶん色々と大変だったんだろう。じゃあ、お姉さんの方もあの目は閉じちゃったのかな? 優しいし、気も利くし性格は良いけれど、種族のせいで嫌われていた。
なんとも悲しいね。
別に心を読まれるくらい、良いと思うんだけどなぁ……
って、こいしちゃんがいないし……
飲みかけのアイスティーだけが、カウンターに置いてあった。
店の外へ出るとこいしちゃんがいた。
いつの間に出て行ったんだか……
「まだ、飲み物が残っているよ?」
「あれ? そうだっけ?」
う~ん何を考えているんだろう。この様子じゃ、お姉さんも苦労していそうだ。今度、地底にでも行ってみようかな。
ちょっとどんな様子か気になるところ。
こいしちゃんと店の中へ戻ると、そこには萃香がいた。
君も君で、神出鬼没だねぇ。
「お邪魔しているよ。って、古明地のとこのこいしちゃんじゃないか。随分と珍しいね」
「あー、見たことある」
「そうだろう、そうだろう。私も有名だからね」
無い胸を張って萃香が言った。
ふむ……こいしちゃんにも負けてるね。まぁ、なんだ、頑張れ萃香。
「おい、カメラ止めろ」
萃香がキレた。
覚妖怪が嫌われる原因が、少しだけわかった気がする。
~テイク2~
「それにしても、黒はよくこいしちゃんを見つけられたね」
「まぁ、店の前にいたし誰だって気づくでしょ」
「いや、それが難しいのさ」
ん? どういうこと?
こいしちゃんの様子を確認すると、萃香の角をじーっと見ていた。なんだろう、触りたいのかな?
「第三の目と心を閉ざしてさ、『無意識を操る程度の能力』だったかな。その能力で相手の無意識を操るから、こいしちゃんの存在を認識できないんだ」
ありゃ、そうだったんだ。ああ、さっき感じていた違和感の正体はそれか……
あっ、萃香俺にもお酒をちょうだい。
「それにしても覚妖怪が『無意識』を、ねぇ……なんとも皮肉な能力だ」
むしろ、覚妖怪だからなのかな?
神様の考えることはわからんけれど。
もう一度こいしちゃんを見ると、ついに萃香の角を触り始めていた。えっ? これは流石に萃香も気づいているよね?
つまりこいしちゃんがフラフラと放浪をしているのも、無意識に行動しているからってことなのかな?
ちょっと想像するのが難しい。
「ああ、そうだ」
忘れていた、萃香もいるしちょうど良い。
「ん? どうしたのさ」
「焼き芋しようぜ。焼き芋。こいしちゃんもやる?」
「うん」
萃香の両角を掴みながらこいしちゃんが言った。いや萃香、それは流石に気づきなよ……
迷いの里には落ち葉なんてないし、藁でやるのもつまらないから、博麗神社へ移動。
持ってきたのは薩摩芋と玉蜀黍。焼き玉蜀黍美味しいよね。
こいしちゃんとは見失わないように手を繋ぎました。
「んじゃあ、萃香はちょっとそこら辺から落ち葉を集めて」
「はいよ~それにしても、よくこの時期に芋なんてあったね」
まぁ、普通は秋に収穫する作物だもんね。
俺もあの場所の気候は良くわからん。
萃香が集めてくれた落ち葉に火をつける。こいしちゃんはその様子をじっと眺めていた。
あんまり近づくと危ないよ?
あ、新聞紙を持ってくるの忘れた。
どうしよう。
「あんたたちは神社で何をやっているのよ……」
霊夢が出てきた。どうせ、参拝客だって来ないんだし良いじゃん。
「焼き芋。霊夢、新聞紙持ってない?」
「まぁ、あるけれど」
「じゃあ、ちょっと持ってきて。霊夢にも焼き芋食べさせてあげるから」
霊夢が持ってきた新聞紙で薩摩芋を包み、たっぷりと水に濡らして焚き火の中へ。ついでに、玉蜀黍も皮がついたまま入れるのだけど……
「これって、どれくらい入れておけば良いの?」
実は、落ち葉で焼き芋を作るの初めてなんだよね。
焼き玉蜀黍はやったことがあるんだけど。
「私は知らないわよ」
霊夢が言った。
「こいしちゃんは?」
「知らなーい」
萃香の方を見る。
「……秋姉妹でも連れてくるか」
やめて差し上げろ。お前が妖怪の山へ行ったら混乱しちゃうでしょうが。それに秋姉妹絶対泣くぞ。
とは言うものの、どうしようか……失敗する未来しか見えない。そうなると、焼き玉蜀黍だけになっちゃうんだよなぁ。
「じゃあ、私は猪でも捕まえてくるよ。それなら失敗しても大丈夫でしょ?」
萃香はそう言って、姿を消した。了解、血抜きまでちゃんとやっておいてね。
「俺もお酒を持って来ようかな。こいしちゃんはどうする?」
残しておいても仕方がないし、残っている日本酒を全部持ってくるか。余ったら博麗神社に置いておけば良いし。
「私はここにいるよー」
焚き火を小枝でつつきながらこいしちゃんが答えた。探すの大変だから、どっか行っちゃったりしないでね。
「で、この娘は誰なの? 初めて見る顔だけど」
霊夢が聞いてきた。
「私は貴方を見たことあるよ。ここにはよく来るし」
こいしちゃんがそう言うと霊夢は
――そうだったかしら?
と言って首を傾げた。
「じゃあ霊夢はこいしちゃんを見ていてくれ。目を放すとすぐに何処かに行っちゃうから気をつけてね」
最初はただの焼き芋をするはずだったのに、なんだか随分と盛大になってきちゃったね。
自宅からお酒を取り博麗神社に戻る頃には、空は暗く始めていた。暗い景色な中で焚き火はよく目立つ。
そこには、霊夢とこいしちゃん、それと魔理沙ちゃんなんかも来ていた。そしてなぜか、こいしちゃんの額には御札が。
どこのキョンシーだよ……
霊夢に聞くと、こうでもしないとこいしちゃんを認識できないと言っていた。でも、別に額に貼らなくても……
御札が気に入らないのか、こいしちゃんは少しだけ不機嫌そうに見えた。
日が完全に沈む頃に、大きな猪を持って萃香が帰ってきた。最初に見た時は、絶対に食べきれないと思ったけれど、もしかしたらこれだけじゃ足りないかもしれない……
最初は三人だけだったけれど、紅魔館組や白玉楼組なんかも来て大宴会となっている。今宵の博麗神社はお祭り騒ぎです。
こいしちゃんを見ると、そわそわしていて、どこか落ち着かない様子。あ、御札は可哀想だから剥がしてあげました。
「どうかしたの?」
「こんなに大勢になるのは久しぶりだから、なんか……」
「楽しくない?」
「わからないけど……悪くないかも」
そかそか、それなら良いんじゃないかな。
こいしちゃんが心を閉ざした詳しい理由はわからないけれど、またいつの日か元に戻れる日が来ると良いね。
なんて、そんな自分勝手なことを思った。
こいしちゃんの手を掴む。
「?」
こいしちゃんが不思議そうに見てきた。
「焼き芋食べようぜ」
1つの焼き芋をこいしちゃんと半分こ。
まぁ……食べた焼き芋の味は言わないでおこう。
こいしちゃんが、むすっとした表情で俺を見てくる。ごめん、ちょっと焦げてたね。
そして、いつの間にかこいしちゃんは消えていた。お家に帰ったのかな?
また会える日が来ると良いんだけどねぇ。
その日の宴会で、日本酒のストックは完全になくなった。
う~ん、これからどうすっかね?
アルミホイルなしで焼き芋は難しいですよね
私がやった時は真っ黒になりました
どう見ても炭です。本当にありがとうございました
猪肉は昔食べたことがありますが、ほとんど豚肉と変わりませんでした
たぶん、しっかりと臭みを抜いてくれたからだと思いますが
と、言うことで第35話でした
次話は未定です
では、次話でお会いしましょう
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