東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第35話~そりゃ焦げるわ~

 

 

 外の世界から帰ってきて数日ほど経った。

 日本酒のストックがほとんどありません……

 とは、言ってもお米はまだ収穫できないから、日本酒は当分お預けかな。薩摩芋も収穫できたし、芋焼酎でもまた作ってみよう。前回作ったやつは、あまり美味しくなかったし。

 今度は焼き芋で作ってみようかな。甘い香りとかしそうだし。

 

 あ~お腹が減ってきた。焼き芋でも作りたいけど、落ち葉とかないよね。まだ藁とかあったかなぁ……

 

 確認のために店の外へ出ると、緑色っぽい髪に、黄色のリボンをつけた帽子を被った少女がいた。

 どこかで見たことがある姿。ん~……誰だったかな?

 

 その少女は俺に気づくこともなく、どこかボーっとしてプチりプチりと草を抜いていた。

 ……この少女は何をやっているんだろうか。

 

 ああ、思い出したわ。

 古明地こいしちゃんだ。喋ったことはほとんどなかったしなぁ。そりゃあ忘れるはずだ。

 

「や、こいしちゃん。久しぶり」

 

 俺が声をかけると、こいしちゃんが漸くこちらを見てくれた。

 あれ? そう言えば、古明地姉妹は地底にいるって映姫から聞いていたけど……何かあったのかな?

 

「お兄さんは誰? どこかであった気もするけれど」

 

 ありゃ、やっぱり覚えてないか。まぁ、俺も忘れていたからお互い様だね。

 

 う~ん、覚の妖怪と話すのも久しぶりだ。こうやって考えていることも、向こうには全部伝わっているんだよね。まぁ、会話をしなくて良い分楽っちゃ楽だけど。

 それで、ここへは何をしに来たのかな? ただの迷子ってことも考えられるけどさ。

 

「……何か喋ってくれないとわかんないよ?」

 

 こいしちゃんが言った。

 あら? こいしちゃんは覚じゃなかったっけ? そんなことはないと思ったけど……

 

 よく見ると、こいしちゃんの第三の目が閉じられていた。ああ、それで俺の心を読めなかったのか。

 

「俺は黒って名前だよ。こいしちゃんとも会ったことがあるけれど、忘れちゃったっぽいね。んで、今日はどうしたの?」

 

「私は、なんとなく歩いていたら此処にいただけだよ」

 

 なんとなく、ねぇ。

 あまり、フラフラしているとお姉さんが心配するよ。

 

「そかそか、何か冷たい物でも飲んでいく?」

 

 こいしちゃんはお酒とか飲むのかな?

 あまり想像できないけれど。

 

「うん、じゃあいただきます」

 

 

 

 店の中へ入り、こいしちゃんにはアイスティーをあげた。こいしちゃんから話を聞くと、いつも何処かへフラフラと放浪しているらしい。

 話をしていて思ったことは、目の前にいるはずなのに、こいしちゃんの存在を忘れそうなるというか……う~ん、例え辛い。昔はこんなことなかったと思うんだけどなぁ……

 

「第三の目がずっと閉じているけれど、何かあったの?」

 

 俺の心を読めなかったのは、そのせいだと思う。

 

「心を読むのが嫌になったから、閉じちゃった」

 

 アイスティーをちょびちょびと飲みながら、こいしちゃんが言った。

 そっか……人の心を読むっていう感覚がわからないけれど、たぶん色々と大変だったんだろう。じゃあ、お姉さんの方もあの目は閉じちゃったのかな? 優しいし、気も利くし性格は良いけれど、種族のせいで嫌われていた。

 なんとも悲しいね。

 別に心を読まれるくらい、良いと思うんだけどなぁ……

 

 って、こいしちゃんがいないし……

 

 飲みかけのアイスティーだけが、カウンターに置いてあった。

 

 店の外へ出るとこいしちゃんがいた。

 いつの間に出て行ったんだか……

 

「まだ、飲み物が残っているよ?」

 

「あれ? そうだっけ?」

 

 う~ん何を考えているんだろう。この様子じゃ、お姉さんも苦労していそうだ。今度、地底にでも行ってみようかな。

 ちょっとどんな様子か気になるところ。

 

 こいしちゃんと店の中へ戻ると、そこには萃香がいた。

 君も君で、神出鬼没だねぇ。

 

「お邪魔しているよ。って、古明地のとこのこいしちゃんじゃないか。随分と珍しいね」

 

「あー、見たことある」

 

「そうだろう、そうだろう。私も有名だからね」

 

 無い胸を張って萃香が言った。

 ふむ……こいしちゃんにも負けてるね。まぁ、なんだ、頑張れ萃香。

 

「おい、カメラ止めろ」

 

 萃香がキレた。

 覚妖怪が嫌われる原因が、少しだけわかった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~テイク2~

 

 

「それにしても、黒はよくこいしちゃんを見つけられたね」

 

「まぁ、店の前にいたし誰だって気づくでしょ」

 

「いや、それが難しいのさ」

 

 ん? どういうこと?

 こいしちゃんの様子を確認すると、萃香の角をじーっと見ていた。なんだろう、触りたいのかな?

 

「第三の目と心を閉ざしてさ、『無意識を操る程度の能力』だったかな。その能力で相手の無意識を操るから、こいしちゃんの存在を認識できないんだ」

 

 ありゃ、そうだったんだ。ああ、さっき感じていた違和感の正体はそれか……

 あっ、萃香俺にもお酒をちょうだい。

 

「それにしても覚妖怪が『無意識』を、ねぇ……なんとも皮肉な能力だ」

 

 むしろ、覚妖怪だからなのかな?

 神様の考えることはわからんけれど。

 

 もう一度こいしちゃんを見ると、ついに萃香の角を触り始めていた。えっ? これは流石に萃香も気づいているよね?

 

 つまりこいしちゃんがフラフラと放浪をしているのも、無意識に行動しているからってことなのかな?

 ちょっと想像するのが難しい。

 

「ああ、そうだ」

 

 忘れていた、萃香もいるしちょうど良い。

 

「ん? どうしたのさ」

 

「焼き芋しようぜ。焼き芋。こいしちゃんもやる?」

 

「うん」

 

 萃香の両角を掴みながらこいしちゃんが言った。いや萃香、それは流石に気づきなよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迷いの里には落ち葉なんてないし、藁でやるのもつまらないから、博麗神社へ移動。

持ってきたのは薩摩芋と玉蜀黍。焼き玉蜀黍美味しいよね。

 こいしちゃんとは見失わないように手を繋ぎました。

 

「んじゃあ、萃香はちょっとそこら辺から落ち葉を集めて」

 

「はいよ~それにしても、よくこの時期に芋なんてあったね」

 

 まぁ、普通は秋に収穫する作物だもんね。

 俺もあの場所の気候は良くわからん。

 

 萃香が集めてくれた落ち葉に火をつける。こいしちゃんはその様子をじっと眺めていた。

 あんまり近づくと危ないよ?

 

 あ、新聞紙を持ってくるの忘れた。

 どうしよう。

 

「あんたたちは神社で何をやっているのよ……」

 

 霊夢が出てきた。どうせ、参拝客だって来ないんだし良いじゃん。

 

「焼き芋。霊夢、新聞紙持ってない?」

 

「まぁ、あるけれど」

 

「じゃあ、ちょっと持ってきて。霊夢にも焼き芋食べさせてあげるから」

 

 霊夢が持ってきた新聞紙で薩摩芋を包み、たっぷりと水に濡らして焚き火の中へ。ついでに、玉蜀黍も皮がついたまま入れるのだけど……

 

「これって、どれくらい入れておけば良いの?」

 

 実は、落ち葉で焼き芋を作るの初めてなんだよね。

 焼き玉蜀黍はやったことがあるんだけど。

 

「私は知らないわよ」

 

 霊夢が言った。

 

「こいしちゃんは?」

 

「知らなーい」

 

 萃香の方を見る。

 

「……秋姉妹でも連れてくるか」

 

 やめて差し上げろ。お前が妖怪の山へ行ったら混乱しちゃうでしょうが。それに秋姉妹絶対泣くぞ。

 

 とは言うものの、どうしようか……失敗する未来しか見えない。そうなると、焼き玉蜀黍だけになっちゃうんだよなぁ。

 

「じゃあ、私は猪でも捕まえてくるよ。それなら失敗しても大丈夫でしょ?」

 

 萃香はそう言って、姿を消した。了解、血抜きまでちゃんとやっておいてね。

 

「俺もお酒を持って来ようかな。こいしちゃんはどうする?」

 

 残しておいても仕方がないし、残っている日本酒を全部持ってくるか。余ったら博麗神社に置いておけば良いし。

 

「私はここにいるよー」

 

 焚き火を小枝でつつきながらこいしちゃんが答えた。探すの大変だから、どっか行っちゃったりしないでね。

 

「で、この娘は誰なの? 初めて見る顔だけど」

 

 霊夢が聞いてきた。

 

「私は貴方を見たことあるよ。ここにはよく来るし」

 

 こいしちゃんがそう言うと霊夢は

 

 ――そうだったかしら?

 

 と言って首を傾げた。

 

「じゃあ霊夢はこいしちゃんを見ていてくれ。目を放すとすぐに何処かに行っちゃうから気をつけてね」

 

 最初はただの焼き芋をするはずだったのに、なんだか随分と盛大になってきちゃったね。

 

 

 

 

 

 自宅からお酒を取り博麗神社に戻る頃には、空は暗く始めていた。暗い景色な中で焚き火はよく目立つ。

 

 そこには、霊夢とこいしちゃん、それと魔理沙ちゃんなんかも来ていた。そしてなぜか、こいしちゃんの額には御札が。

 どこのキョンシーだよ……

 霊夢に聞くと、こうでもしないとこいしちゃんを認識できないと言っていた。でも、別に額に貼らなくても……

 

 御札が気に入らないのか、こいしちゃんは少しだけ不機嫌そうに見えた。

 

 日が完全に沈む頃に、大きな猪を持って萃香が帰ってきた。最初に見た時は、絶対に食べきれないと思ったけれど、もしかしたらこれだけじゃ足りないかもしれない……

 最初は三人だけだったけれど、紅魔館組や白玉楼組なんかも来て大宴会となっている。今宵の博麗神社はお祭り騒ぎです。

 

 こいしちゃんを見ると、そわそわしていて、どこか落ち着かない様子。あ、御札は可哀想だから剥がしてあげました。

 

「どうかしたの?」

 

「こんなに大勢になるのは久しぶりだから、なんか……」

 

「楽しくない?」

 

「わからないけど……悪くないかも」

 

 そかそか、それなら良いんじゃないかな。

 こいしちゃんが心を閉ざした詳しい理由はわからないけれど、またいつの日か元に戻れる日が来ると良いね。

 なんて、そんな自分勝手なことを思った。

 

 こいしちゃんの手を掴む。

 

「?」

 

 こいしちゃんが不思議そうに見てきた。

 

「焼き芋食べようぜ」

 

 1つの焼き芋をこいしちゃんと半分こ。

 

 まぁ……食べた焼き芋の味は言わないでおこう。

 

 こいしちゃんが、むすっとした表情で俺を見てくる。ごめん、ちょっと焦げてたね。

 

 そして、いつの間にかこいしちゃんは消えていた。お家に帰ったのかな?

 また会える日が来ると良いんだけどねぇ。

 

 

 その日の宴会で、日本酒のストックは完全になくなった。

 う~ん、これからどうすっかね?

 

 






アルミホイルなしで焼き芋は難しいですよね
私がやった時は真っ黒になりました

どう見ても炭です。本当にありがとうございました

猪肉は昔食べたことがありますが、ほとんど豚肉と変わりませんでした
たぶん、しっかりと臭みを抜いてくれたからだと思いますが

と、言うことで第35話でした
次話は未定です

では、次話でお会いしましょう


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