東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第38話~巫女と蛙と御柱~

 

 

「えと……黒さんですよね?」

 

 早苗ちゃんが言ってきた。

 この状況はなんだろうか……つまり、新しく来た奴らってのは諏訪子や神奈子たちだったってことだよね。

 

 どうしよう、他人の振りしようかな。

 

「なるほど、黒さんは幻想郷の方だったのですね。それなら納得です」

 

 あの、早苗ちゃん? 少しだけ俺のことは放って置いてくれない? さっきから、隣の人の視線が怖いです。

 

「……やっぱり、知り合いじゃない」

 

「あ~いや、本当に今回は知らなかったんだよ」

 

 なるほど、紫が俺に行けと言った理由はこれか。そりゃあ、俺だって諏訪子たちと会えるのは嬉しいけどさ。

 

「そう」

 

 俺の言い訳に対し、霊夢はそれだけ言った。

 まずい、めっちゃ不機嫌になってる……さっきまで機嫌良かったのに。

 

「あの……私はどうすれば?」

 

 椛ちゃんが聞いてきた。

 ああ、ごめん。すっかり忘れていたよ。

 

「ここまで案内ありがとね。もう帰って良いよ」

 

「あ、はい。わかりました。その……」

 

 おろ? どうしたのかな?まさか、復讐しようとかですか?

 ……土下座で許してくれるかな。

 

「ど、どうしたの?」

 

「えと……いえ、何でもありません。では、私も任務に戻ります」

 

 うん? なんだったんだろうか?

 まぁ、何もないのならそれで良いけど。また会えると良いね。

 

 

 

「えと、話を戻しますね。ここは守矢神社。忘れ去られた過去の神社です。貴方の方から来たということは、今すぐうちの神様n「見て見て、神奈子! 黒が来たよ!!」……話をさせてください」

 

 早苗ちゃんが話始めたと思ったら、神社の方から元気な声が聞こえてきた。

 

「ちょっ、ダメよ。諏訪子。あんたはまだ奥にいなさい」

 

「別に私は良いじゃん。今日は出番ないんだし」

 

 ……あの神々は何て言う会話をしてるんだよ。

 本当にやめてください。

 

「まぁ、それもそうか」

 

 お願いだから、神奈子も納得しないで!

 

「じゃあ、私も行こうかな」

 

 来んな! お前は湖で待ってなさい。

 

「随分と人気なのね」

 

 霊夢が言った。

 あの霊夢さん? 目つきが怖いんですけど……

 

「やほー、久しぶり黒」

 

 神社の中から諏訪子登場。

 

「あ、うん。久しぶりだね」

 

「うん? どうしたの? 反応が薄いけど」

 

 反応しづらいことを、お前らがしてくれたからかな。

 

「諏訪子様まで……はぁ。とにかく、貴方の神社を頂き、ここ幻想郷の信仰心は全て私達の物にします。幻想郷の為にも、失われた信仰心を取り戻します」

 

 別に博麗神社をもらったって、信仰心なんてほとんど増えないと思うけど。あの神社、神様が祭ってあるのかもわかんないし。

 

「信仰心くらい私の力で、何とか戻すわよ」

 

 霊夢にできるかなぁ……

 

「神を祭る人間が祀られる事もあります。つまり、巫女が神になるということ。 貴方にはその覚悟がありますか? 私たちは貴方の神社を救うためにも言っているのですよ」

 

 人間でありながら神。

 所謂、現人神。神様になる覚悟、ねぇ。

 

「神になろうが、なるまいが関係ないでしょ? 私は自分でやるから、別にあんたたちの力なんていらない」

 

 霊夢があの神社をどう思っているのかは、わからないけれど、これを機会に少しだけ考えてくれると嬉しいかな。

 

「そう言えば、どうして諏訪子たちは幻想郷に来たの?」

 

「……色々あってね。まぁ、お茶でも出すから、ちょっと母屋で話そうよ」

 

 俺が諏訪子と一緒に歩き始めると、早苗ちゃんと霊夢の弾幕ごっこが始まった。

 それじゃ任せたよ、博麗の巫女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ~、お茶どこだっけ? う~ん、いつも早苗が用意してくれたから、わかんないや」

 

 戸棚をゴソゴソとやりながら諏訪子が言った。

 部屋の中にある、多くの家電製品。……全部使えないけど、これからちゃんと生活していけるのかなぁ。

 

「まぁ、お茶は良いよ。そこまで喉が渇いているわけでもないし」

 

 本当は、もうくたくたでお茶が怖いです。

 

「そう? 今度早苗に聞いておくよ。ああ、幻想郷に来た理由だったね」

 

 そして、諏訪子がポツポツと話し始めてくれた。

 

 

 諏訪子の話をまとめると、外の世界では科学の進歩もあり、どんどんと神々への信仰が薄れているらしい。

 そして、そのままだと自分たちが神として存在することができなくなる。諏訪子はそれほど気にしなかったらしいけれど、神奈子はこれに焦り、未だ神々への信仰が忘れられていない幻想郷へ移ってきた。

 それで神奈子が幻想郷で山の神として、やっていくために妖怪の山に。山の妖怪たちからだけ信仰を集め、神徳を与えると幻想郷のパワーバランスが崩れる。だから麓の信仰を集めるためにも、博麗神社が欲しいそうだ。

 諏訪子は、そう説明してくれた。

 

 でも、これじゃあ諏訪子は……

 土着神なのに諏訪地方を離れ、信仰は減り、神力も昔と比べてかなり落ちただろう。そんなことくらい、わからないはずがない。

 いつも無邪気に笑っているが、その奥ではきっと……

 

「あら、どうやら早苗は負けちゃったっぽいね」

 

 早苗ちゃんの強さはわからないけれど、まぁ、弾幕ごっこで霊夢には勝てないでしょ。あの神奈子だって霊夢には勝てないと思う。

 

「あ、諏訪子様に黒さん。こちら居られたのですね」

 

 や、早苗ちゃん、お疲れ様。

 

「ちょうど良かった。早苗、お茶出して」

 

「はい、わかりました」

 

「これから毎日、黒のお酒を飲めると思うと幻想郷に来て正解だったね。暮らしはちょっと不便になっちゃったけど」

 

 ケロケロと笑いながら諏訪子が言った。

 

「いや、毎日は飲めんぞ?」

 

 それに今は日本酒ないし。

 お米は収穫できたから、発酵中です。あと、2,3日くらいでできるから、もう少し待っててね。

 

 

 

「お待たせしました、粗茶ですが一服どうぞ」

 

 あ、どうも、ありがとです。

 

「すごいね、あの巫女。神奈子と互角に戦ってる。いいな~、私も今度やってみようかな」

 

 まぁ、あの巫女、人間やめてるし。でも、弾幕ごっこは俺以外の奴とやってね。

 

「霊夢さん……でしたでしょうか。何者なのですか?」

 

 何者と聞かれても困る……俺だって、どうして霊夢があそこまで強いのか、わかんないんだ。

 

「楽園の素敵な巫女さん……かな? 弾幕ごっこなら、幻想郷で一番強いと思う」

 

 俺の答えに、早苗ちゃんは首を傾げた。

 霊夢も小さな頃から、今までの博麗の巫女と比べて変わっているとは思っていたけど、ホントどうしてだろうね? 修行だってろくにしてないのにさ。

 

「黒は弾幕ごっこやらないの?」

 

 諏訪子が聞いてきた。

 

「俺はさっきやったからいいや。もう霊力だって空だし」

 

 本当はさっさと帰って休みたいのです。

 

「相変わらず、霊力は少ないね~あっ、神奈子たちも終わったみたい」

 

 よくわかるね、流石は神様です。

 

「どちらが勝ったのでしょうか?」

 

 まぁ、霊夢だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 守矢神社の境内へ行くと、霊夢がふよふよと飛びながら戻ってきた。

 

「お疲れ様」

 

 弾幕ごっこを終えた霊夢へ労いの言葉を一つ。

 

「なんだか、今日はいつもより疲れたわ。早く帰ってお茶が飲みたい」

 

「神奈子たちには何も言わなくても良いの?」

 

 もう少しで博麗神社を取られるところだったのにさ。

 

「そういう細々とした話は遠慮するわ」

 

 いや、霊夢の神社でしょうが。もっとちゃんと、考えてあげなさいよ。

 

「ねぇ、黒」

 

 少しだけ真剣な表情をして霊夢が聞いてきた。

 

「うん? どしたの?」

 

「うちの神社って誰を祭ってあるの?」

 

「ん~……俺も知らないんだよね」

 

 いつの間にかあの場所にあって、いつの間にか大切な場所になってた。たぶん、紫もわからないんじゃないかな。

 

 それにしても、こういうことを霊夢から聞いてくるとは珍しい。今回の異変で、色々と思うところがあったのかな。そうだと嬉しいけど。

 

「そう……じゃあ私は帰るけれど、黒は?」

 

「俺はもうちょっとだけ残るよ。神奈子たちに、言わなきゃいけないこととかあるし」

 

 幻想郷で守ってもらいたいこと、山の妖怪との和解、あと異変を起こしたのだし、宴会も開いてもらわないと。ああ、ついでに俺の家とも繋げてもらおうかな。そうすれば天狗に見つかることもないし。

 

「……それなら私ももう少し残るわ」

 

 うん? そう? まぁ良いと思うけど、珍しいね。

 どうしたんだろうか?

 

 そして、なんとなく、霊夢の頭に手を乗せてみた。

 

「なによ?」

 

「いや、霊夢も大きくなったと思ってさ」

 

 ちゃんと成長してるんだな。そんなことを思った。

 

 それにしてもヤバイな、もしかして俺って霊夢より小さい? 八意さんなら、背が伸びる薬とかくれないかな。八意さんからもらうのは、ちょっと怖いけど。

 

「じゃ、行くか。お茶でももらおうぜ」

 

 こうやって、霊夢と話すことがなくなる日が来るのだろう。だから、もう少しだけ大切にしてみようと思った。

 

 な~んてね。

 

 






最初にこの38話を書いたときは、何故か霊夢さんがヤンデレになってしまったため、慌てて書き直しました
その残りが少しだけありますね


と、言うことで第38話でした
サブタイトルに意味はありません
ノリでつけました
次話は博麗神社で宴会っぽいです

では、次話でお会いしましょう


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