東方酒迷録【完結】   作:puc119

45 / 69
第39話~だから違うと言ってるでしょうが~

 

 

「それじゃ、新しい仲間と、これからの幻想郷に……」

 

 ――乾杯っ!

 

 博麗神社にそんな元気な声が響き渡った。

 日も沈み、妖怪たちが騒ぎ出す時間。博麗神社の周りも、漸く葉たちが色づいてきている。

 

 守矢神社、紅魔館、白玉楼に永遠亭の皆さんも交えての大宴会。それにしても……開く度にメンバーが増えてない? 俺の持ってきたお酒だけじゃ、絶対足りないよね。

 

 ただ、今年のお米は粒も大きく良いできだった。きっと日本酒も美味しくできたと思う。

 

「なんだか、ここは不思議な場所ね」

 

 神奈子が言ってきた。

 人間や妖怪、亡霊なんかもいる。きっとそれは外の世界じゃ考えられないこと。

 

「悪くない場所でしょ?」

 

「まぁね。外の酒だけど飲むかい?」

 

 む! 諏訪のお酒ってこと? それならいただきます。

 酒処諏訪。諏訪のお酒って美味しいんだよね。

 

 神奈子からもらった酒に口をつけてみる。

 芳醇な香りや深い味があるわけでもない。それでも……

 

「おいしい」

 

 軽く喉を焼きながら体に染み渡っていく。

 とにかく美味しい。香りや味がどうでもよくなるほどに美味しい。どうやったら、こういうお酒が作れるのかね?

 

「これ、高かったんじゃない?」

 

 きっと純米大吟醸だろう。

 

「最後だったしね。全部のお金を使ったのよ」

 

 いかんな、口当たりが軽いせいかどんどん飲んでしまいそうだ。外の世界にも、こんなお酒が残っていたのか……

 

 萃香のお酒でも飲んで、一回落ち着かないと。

 

「私は黒の作ってくれたお酒も好きだよ」

 

 そりゃあ、嬉しいね。そう言ってもらえれば、作ったかいもある。

 

 

 周りを見ると、早苗ちゃんが一人でポツンとしていたのを見つけた。

 

「早苗ちゃんは飲まないの?」

 

「その、私はまだ未成年ですし……」

 

 同じ未成年仲間の、霊夢や魔理沙ちゃんは飲みまくってるけどね。

 

「ここは幻想郷。外の世界とは違うから、未成年とか気にしなくても大丈夫だよ」

 

 とは、言うものの今の早苗ちゃんじゃ、美味しくお酒を飲めやしないだろう。お酒を飲んだこととか、なさそうだもん。

 

「でも、今までお酒なんてちゃんと飲んだことがないですし」

 

 あ、やっぱり。

 いきなり、鬼のお酒とか飲んだらどうなるのかな? ちょっと見てみたい気も……

 

 今ここにあるお酒は全部、アルコール度数が高い。初めて飲むには厳しいかもね。

 

 そんなことも考えて、ちゃんと用意してきたんだ。

 

「ちょっと待っててね」

 

 

 博麗神社の母屋まで行き、準備をする。そして、できた物を早苗ちゃんに。

 

「はい、どうぞ」

 

「えと、これは?」

 

 梅酒とレモンティーを1対1で割った物。お酒の香りもあまりしないから、飲みやすいと思う。

 

「あ、おいしい」

 

 恐る恐ると言った感じで飲み、早苗ちゃんが言った。そかそか、そりゃあ良かった。

 

「せっかくの宴会なんだしさ。色々な奴らと話をしてみれば? 宴会中のあいつらは結構楽しいよ」

 

 俺がそう言うと早苗ちゃんは――

 

「はい、そうしてみます。飲み物ありがとうございました」

 

 と、言って騒がしい方へ向かって行った。

 

 

 ああ、逝ってしまったか……たぶん、助からないだろうな。

 早苗ちゃんの最期を見届けていると、後ろから声が聞こえた。

 

 

「わー久しぶりー!」

 

 声のした方を向くと、フランちゃんがお腹へ突撃してきた。

 体に衝撃が走る。息が止まった。

 

「こ、こひゅ……あふ……や、やあ久しぶりフランちゃん」

 

 飛びそうになった意識を何とか捕まえて、フランちゃんに話しかけた。

 

「最近は全然来てくれないけど、どうしたの?」

 

 そう言えば、最近紅魔館へ行ってなかったね。単純に忘れていただけです。うん、じゃあ、今度遊びに行くよ。なんて、フランちゃんに伝えようとすると、また声が聞こえた。

 

「わー黒だー!」

 

 諏訪子が頭から、俺の横腹へ体当たりをしてきた。

 レバーへもろに入った。

 

「ちょっ……おまっ……」

 

 やばい、上手く声が出ない。

 

「わー! わー!」

 

 また声がした。

 萃香だった。

 

 ちょっと待って! 無理! 萃香は無理!!

 角刺さるから! 案外簡単に刺さるから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「わーっ、黒が倒れた!」

 

「えっ? これ生きてる?」

 

 宴会らしい賑やかな声が博麗神社に響く。

 

「……息してない」

 

 うん、いつも通りだ。

 

 そんないつも通りの宴会、いつも通りの博麗神社に見慣れないものが一つ。そいつは鳥の巣箱のような形をしていた。

 

「なあ、霊夢。神社の隅の方にある鳥の巣箱みたいなやつはなんだ?」

 

「巣箱じゃなくて神社よ」

 

 霊夢がお酒を飲みながら答えた。

 

 霊夢の視線は、倒れている黒の方。気になるのなら行けば良いのにな。

 

「神社? こんなに小さいのにか?」

 

 しかも、どうして新しい神社なんて作ったのか。

 

「詳しく言うと、神奈子の分社よ。試しに建ててみたの」

 

 こんな小さな神社で効果があるのか? と思ったが、どうやらこれだけで十分らしい。神社ってのは、随分と融通が利くな。

 きっとこの分社がこんなに小さいのは、霊夢のちょっとした意地なんだろうな。そう考えると、少しだけ笑える。

 

「……何笑っているのよ、魔理沙」

 

 おっと、表情に出ていたらしい。コイツはやたらと聡いし、気を付けないとな。

 

「いや、なんでもないよ」

 

 しかし、こんなもので神社になるとは……今度私も作ってみようかな。

 

 霊夢はこの分社を建てたことで、人間の参拝客(お賽銭)を期待していたが、たぶん無理だろう。分社云々の前に、此処へ蔓る妖怪を何とかしないと。

 

 

 周りを見る。

 沢山の妖精や妖怪。そしてその中に、新しく来た早苗とか言う巫女が、境内の真ん中で倒れていた。

 アレ、大丈夫なのか? どうやら巫女にも色々な種類があるらしい。

 

 

 

「全く、静かにお酒も飲ませちゃくれない」

 

 黒が片手にお酒、腰に萃香をつけてこちらに来た。

 と、言うか逃げてきただけだろうな。逃げきれてないけど。

 

「や、魔理沙ちゃん」

 

「よ、黒」

 

 とりあえず、黒からお酒をもらう。それは最近作ったばかりのお酒らしい。細かい味なんて私にはわからないけど、まぁ、美味しいことは確かだ。

 

 私はお酒に詳しくないけれど、美味しく飲むことができれば十分だと思う。

 

「なあ、黒。信仰ってなんだ?」

 

「ん~……何かを信じるってことじゃないかな。一般的には神様をなんだろうけど、魔理沙ちゃんの場合は魔法とかでも良いんじゃない?」

 

 ――詳しいことは神奈子にでも聞いてくれ。

 

 と、黒はそう答えた。

 へ~、そういうもんなのか。

 

 

 ああ、そうだ、黒に聞かなきゃいけないことがあった。

 

「黒ってロリコンなんだろ?」

 

 ロリコンの意味は知らないが。

 

「えっ」

 

 あら、固まった。

 

「え? え? 魔理沙ちゃん、それは誰から?」

 

「この前、紫から聞いた。んで、ロリコンってどういう意味?」

 

 ――あのババァ……

 

 そんな黒の独り言が聞こえた。

 

 んなこと言うと、また怒られるぞ。私は知ったこっちゃないが。

 

「ロリコンっていうのはねー。私みたいに小さな女の子が好きな人を言うんだよ。へ~、黒ってロリコンだったんだ」

 

 ニヤニヤと笑いながら、守矢神社のもう一柱の神様である、諏訪子が言った。つまり、さっきフランドールや萃香に絡まれていたのも、黒にとっては……

 

「へ、変態だ」

 

「いや違う! 違うからね!?」

 

「へ~そうだったの」

 

 霊夢の声が聞こえた。うわっ、めっちゃ不機嫌になってる。いったいどうしたのだろうか?

 

「れ、霊夢さん? なんでそんなに怖い顔を?」

 

「べつに、なんでもないわ」

 

 オロオロしている黒と、ツーンとしている霊夢。なんだか見ていて微笑ましいな。

 

 

 宴も闌。

 うんっ、お酒が美味しい季節だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 魔理沙ちゃんには引かれるし、霊夢は機嫌が悪いしと、なんだかなぁ……別に俺は悪いことしてないと思うんだけど。

 

 せっかくの宴会。

 色んな奴と話さなければもったいない。

 

 勇気を振り絞って、八意さんに背の伸びる薬はないか聞いてみた。すると、八意さんがとても良い笑顔で、今度永遠亭に来いと言ってくれたけれど、何をされるんでしょうね?

 その笑顔がひたすらに怖いよ……

 

 酔っ払って刀を振り回している妖夢ちゃんを宥め、倒れた早苗ちゃんを神社へ運び、姉妹仲良くお話中のスカーレット姉妹の所へ。

 

 少し昔と比べると、この姉妹もかなり仲良くなったと思う。この前、紅魔館へ遊びに行ったときは、レミリアが――

 

「たーべちゃうぞー!」

 

 とか言いながら、フランちゃんと鬼ごっこをしていた。流石に、それはどうかと思う。

 

 レミリアに最近の調子を聞くと、ロケットを作って月へ行くらしい。

 ……逝ってらっしゃい。

 えっ? 俺もついて来い? 勘弁して下さい。

 

 

 

 騒がしかった宴会も、日が昇り始める頃に終わった。後片付けも済ませ、お茶を飲んで一服。

 あ~眠い。

 隣でお茶を飲んでいる霊夢も、眠そうにしていた。お疲れ様。

 そして、霊夢の機嫌も元に戻ってくれたらしい。良かった、良かった。

 

 お茶も飲み終わり、帰る準備を始める。俺も流石に眠いです。

 

 ふむ……

 

「なあ、霊夢。今度どこかへ遊びにでも行くか」

 

 人里でもブラブラとさ。

 

「二人で?」

 

「二人で」

 

「……逢引?」

 

 んなわけないでしょうが。

 

「まぁ、別に良いけれど……」

 

 そかそか、それなら良かった。

 

 さてっと、帰ろっかな。

 

「じゃ、また」

 

 茹だるような暑さも終わり、過ごしやすい季節。食欲、実り、読書、紅葉、行楽と見境なしの秋。

 

 そんな季節、何からやってやろうかね?

 

 

 






諏訪のお酒と言えば真澄!
純米大吟醸、夢殿とか一度で良いから飲んでみたいです
諭吉を飛ばせば飲めますが……

と、言うことで第39話でした
目標の風神録もこれで終わりです
やっと失踪する準備ができましたね

とは言え、一応もう少し頑張る予定です

感想欄に書くのはNGだそうです


では、次話でお会いしましょう


感想・質問何でもお待ちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。