東方酒迷録【完結】   作:puc119

47 / 69
第41話~宇宙にも空気はあるそうです~

 

 

 地上を飛び立ってから一週間ほど。底の段が切り離され、現在は二段目です。

 

 

 紅魔館のワインや、俺の持ってきた日本酒で毎晩宴会が開かれているが、それまでは非常に暇だ。

 

「ねえ、黒。なにか面白いことでもやりなさいよ」

 

 レミリアが俺に言った。

 無茶振りも良いところである。

 

「じゃあ、フランちゃんと鬼ごっこをしていた時のレミリアのモノマネ。ぎゃおーたーべちゃうzゴバァ」

 

 レミリアに殴られた。

 なんだろう、似てなかったのかな?

 

「や、やめなさい!」

 

 レミリアが、面白いことをやれって言ったんでしょうが。

 

「もういい、咲夜今日の紅茶を」

 

 自由だなぁ、流石はお嬢様。咲夜さんも、毎日こんな我が儘を聞いているのかな?

 

「それが、底段のロケットに油のストックを置いてきてしまったので、お湯が沸かせません……」

 

「相変わらず抜けてるな~」

 

 なんてカラカラと笑いながら魔理沙ちゃんが言った。

 あら、それって結構ヤバくないですか? 火ぐらいなら俺も出せるけど、疲れるからやりたくない。

 ん~、ああ、魔理沙ちゃんのミニ八卦炉を使えば良いのか。

 

 煙草の火種から、マスパまで幅広く使える火炉。便利だよね。俺も魔力の勉強もしてみようかな……

 

 

 

 

「なんか、日に日に紅茶の味が変わっていくわね。これはこれで良いけれど」

 

 咲夜さんの作った紅茶をいただく。紅茶も良いけど、緑茶が飲みたくなってきた。

 

「どうもお湯の沸点が下がっているらしくて……」

 

 まぁ、気圧も落ちてるしね。圧力鍋でもあれば良いんだろうけれど。

 

「おいおい、それってロケットの空気が漏れているんじゃないか?」

 

 流石にそれは、大丈夫だと思う。もし、漏れていたらそれくらいじゃ済まなそうだし。

 

「あら、窓の外にも空気は普通にあると思うわよ」

 

 いや、空気は無いでしょ。

 

 そして、咲夜さんが窓に手をかけた。あっ、ちょっ、あけちゃダメだよ!

 

 窓が開いた瞬間、突風が吹き抜けた。部屋の中が大変なことに。

 

 ……あら? でもなんともない。えっ? 外にも空気があるの?

 

「宇宙に空気がないってのは、都市伝説だったのか。そう言えば重力だって変わってないな」

 

 魔理沙ちゃんも冷静に考えてないで、窓閉めるの手伝ってよ。

 

「もうっ、集中させろ!」

 

 霊夢に怒られた。

 いや、ごめん。

 

「もうすぐこの段も切り離すから、上に上がる準備をして」

 

「おろ? もうそんなに来たの?」

 

 窓の外の景色はあまり変わってないけど。ちょっと色が薄くなったかなってぐらい。

 

「上筒男命が退屈だから、そろそろ変われって言ってるのよ」

 

 ……せっかちな神様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 地上を飛び立って早12日。八意さんの羽衣のおかげか、今のところは順調。

 

 そろそろ、着いてくれませんかねぇ。レミリアとのチェスも、魔理沙ちゃんとの将棋も飽きてきた。だって、勝てないんだもん。レミリアにチェスで負けた時は、かなりショックだった。

 飽きてきているのは、他の奴らも同じらしく、レミリアなんてずっとそわそわしている。お願いだから、ここで暴れないでね。

 

 運動不足になるとか言って、レミリアと魔理沙ちゃんがじゃれ始めた時だった。いきなり、窓の外の景色が変わった。

 

「お嬢様! 外を……」

 

 咲夜さんが言った。

 あ、コラ、レミリアそんな窓にべったりくっついたら、俺が見えないでしょうが、もうちょっと端へ寄ってくれ。

 

 レミリアを少し退かし、外の景色を確認すると、青い海が広がっていた。あれ? これって本当に月なの? 月に海なんてあったかな?

 実は月じゃなくて地上へ戻ってきただけでした。とかだったらどうしようか。まぁ、それならそれでも良いんだけどさ。

 

「さあ、仕上げよ!」

 

 霊夢が言った。

 そう言えば、このロケットって着地はどうするんだ? 魔女さんからは何も聞いていないぞ。

 

 霊夢を確認。

 柱にしがみついていた。

 

 ああ、なるほど。このまま突っ込むのね……

 そりゃあ、魔女さんが来ないはずだわ。

 

 そして、ロケットは頭から海へ突っ込んだ。

 

 帰り、どうすんだろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「海だ」

 

「これが海ねぇ」

 

「……海だな」

 

 黒、霊夢と一緒に砂浜に座って海を眺める。

 

 ロケット? 大破したよ。今頃は海の底だろう。食料も無いし、これからどうするか。

 

「ロケットは砕け散ったけど、帰りはどうする?」

 

 黒が言った。

 ホント、どうすれば良いのやら。

 

「私は知らないわよ」

 

「私も知らないぜ」

 

 なんだろうか、やっとの思いで月へ着いたと言うのに、あまり喜べない。生まれて初めて見る海も、これじゃなぁ……

 

「黒も海を見るのは初めてなのか?」

 

「いや、地上の海なら見たことあるよ。月の海は初めてだけど。月にも海があったんだね」

 

 そうなのか。

 ん~、そう言えば黒って何歳なんだ? 話を聞いていると、かなりの年齢だと思うけれど。

 てか、黒の奴がちゃっかりお酒を持ってやがる。そんなに飲みたかったのか?

 

 そうだ、レミリアや咲夜たちは無事だろうか? 特にレミリアは水に弱いのだし、溺れていそうだけど。

 まぁ、咲夜もいるし大丈夫か。

 

 

 

「考えていてもしょうがない。釣りでも始めようかしら」

 

 霊夢が言った。

 そうだな、それに海には大きな魚がいると聞くし。月の海はどうだか知らんが。

 

「おろ? 釣竿とかあるの? それに、魚なんているのかな」

 

「手づかみで良いだろ。他にやることもないしな」

 

 うん? 手づかみで魚を取ったら釣りじゃないな。

 まぁ、良いや。

 

「残念だけど、豊かの海に生き物は棲んでいません」

 

 知らない声がした。

 どうやら、この海は豊かの海と言うらしい。生き物のいない海のどこが豊かなんだか。

 

「あ、やっぱりそうなんだ。んで、君は誰?」

 

 黒が聞いた。

 

「私は綿月依姫。月と地上を繋ぐ者たちのリーダーです。住吉三神を呼び出したのは貴方?」

 

 依姫はそう言って、霊夢に長物を突きつけた。

 おいおい、随分と物騒な奴だな。

 

「ええ、そうよ」

 

 霊夢がそう答えると、依姫が長物を地面に突き刺した。その瞬間、地面から刀が生えてきて私達を囲んだ。

 

「女神を閉じ込める、祇園様の力」

 

 こりゃあ、困ったな。何もできない。

 

「よ、依姫様!」

 

 ウサ耳を付けた少女が依姫に駆け寄り、何かを伝えた。ウサ耳やら、服装は永遠亭のあの兎とそっくりだ。

 

「三人とも情けないわね。そんな奴に捕まるなんて」

 

 日傘を差したレミリアが、咲夜と妖精メイドを連れて現れた。なんだ、無事だったのか。海で溺れているのも期待したんだが。

 

「咲夜。三人を助けてあげなさい」

 

「かしこまりました」

 

 レミリアと咲夜がそう言うと、いつの間にか依姫が突き刺した長物が抜かれ、私達を閉じ込めていた刀が消えていた。

 そして、さらに咲夜は依姫にナイフを突きつけていた。おお、助かったぜ。

 

「その能力……」

 

 依姫の驚いた顔が見えた。

 まぁ、最初は驚くよな。私も最初に咲夜の能力を見たときは驚いたものだ。

 

 けれども、急に依姫の腕が燃え始めた。

 慌てて後ろに下がる咲夜。なんだ? 何が起きたんだ?

 

「何やっているのよ咲夜! そんなちんけな炎なんて、どうってことないでしょ?」

 

 いや、無茶言うなって。あの炎かなり凄そうだぞ?

 

「小さく見えても、これは全てを焼き尽くす愛宕様の炎。地上にこれほど熱い炎はないでしょうね」

 

「愛宕様? それに祇園様の剣って……」

 

 霊夢の呟きが聞こえた。

 私にはさっぱりわからんが、どうやらよろしくない状況らしい。

 

「私も貴方のように、神々を身に降ろしてその力を使うことができる。そして、貴方がいろいろな神様を呼ぶせいで、私が謀反の疑いを……まぁ、その疑いも今日晴れる」

 

 そう言って、依姫がまた剣を地面に突き刺した。今度はレミリアたちも拘束。

 

 まずいな、これはちょっと勝てそうにないぞ。明らかに霊夢よりも強いだろうし、何より隙が全くない。

 

 霊夢はやる気がなさそうで、レミリアは余裕そうだが絶対にただの虚勢だ。咲夜も隙を伺っているっぽいが、それも厳しい。

 んで、黒は……あれ? 黒の奴どこいった? さっきまで、いたよな? いつの間に逃げ出したのか……

 

「もう一度聞きます。貴方たちの目的は……あれ? もう一人いなかったかしら? えっ、どこへ!?」

 

 あっ、バレた。

 さて、まともに戦っても勝ち目はない。逃げるにしてもロケットは壊れている。

 

 どうしたものか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 なんか、あっさり逃げられた。

 これには自分でも驚いている。

 

 いや~、びっくりしたね。いきなり祇園様とか、冗談じゃない。

 たぶん霊夢と同じ神降ろしの力なんだろうけど、レベルが違う。霊夢でもあの人相手に勝つのは難しいだろう。世界は広いんだね。

 

 そして、目の前には一面に広がる桃畑。

 月人ってのは桃しか食べないのかね? 昔はこんなことなかったと思うけど。まぁ、ほとんどを施設の中で過ごしたから、詳しくは知らないけどさ。

 

 その桃畑を抜けると、漸く建物が見えてきた。見た目は、中華と日本のお城を足して二で割ったような感じ。

 もっと、高層ビルだらけだと思っていたけれど、そうではないっぽいです。これが、月の都なのかねぇ。

 

 道行く人々のほとんどは、何故か頭にウサ耳を付けていた。

 何それ? 流行ってるの?

 

 のんびりと、月の都を観光しながら目的の場所を目指す。八意さんの話なら、見ればすぐにわかるはずなのだけど……

 

 そして、人影少ない都の外れにそいつはあった。

 

 姿はあの頃と、ほとんど変わっていない。

 よくもまぁ、見事に再現してくれたものだ。ん~でも、ちょっとだけ綺麗になってるかな。

 

 入口まで行き、扉に手をかける。

 ああ、懐かしいな。ホント、何年振りだろうか。

 

「その建物は特別な場所。この月の都で唯一穢れがあり、最も神聖な場所。貴方じゃ入れないわよ。侵入者さん」

 

 後ろから声をかけられた。

 やはり、上手くはいかないっぽい。

 

 

 






儚月抄は紫さん、永琳さん、綿月姉妹の考えが交差し合ってこそのお話ですので、この作品のように、主人公視点を主としてしまいますと、ただの月旅行ですね
きっと今頃、紫さんが土下座をし終わり、捕まっている場面じゃないでしょうか


では、次話でお会いしましょう


感想・質問何でもお待ちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。