東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第43話~お酒が飲めれば何だって良い~

 

 

 お墓参りも無事に終了。結局、自分のお墓を持ってくることはしなかった。

 そんなことができる空気じゃなかったんです。俺だって空気くらい読めます。

 

 これで月には何の用事もないわけだけど、さてさて、どうやって月から帰れば良いのだろうか。

 

 宙を見上げると、青い星がぽっかりと浮かんでいた。遠いなぁ……それに、霊夢たちがどうしているのかも気になる。

 レミリアとかが暴れてなきゃ良いけど。

 

「ねぇ、豊姫さん」

 

「何かしら?」

 

「俺以外の侵入者が、今どうしているかわかる?」

 

 たぶん、俺が勝手に逃げ出したことに怒っているよなぁ。会いたくないなぁ。

 

「一人以外は全員地上へ返したわ」

 

 おろ、一人以外? それに、そんな簡単に帰らせられるものなの? 流石は月ですね。

 

「漸く見つけた。こんな所にいたのですね」

 

 声のした方を向くと、莫迦みたいに強い人と霊夢がいた。

 うん? でも、なんで霊夢が一緒に?

 

「や、先ほどぶり」

 

 んで、霊夢はやっぱりこの人に勝てなかったっぽいね。霊夢も人間なんだな。少しだけ安心。

 

 豊姫さんが依姫さんの所へ駆け寄って、何かを話し始めた。

 

 

「勝てなかった?」

 

 霊夢に聞いた。

 

「…………」

 

 霊夢は何も答えない。

 ありゃ、珍しく落ち込んでいるのかな?

 

 ふふっ、いくら霊夢でもそう言うこともあるってことだね。

 

 そっと霊夢の頭に手を乗せてみる。

 

「ん……なに?」

 

「ま、お前はまだまだ小さいんだ。これからだって充分成長する。だから、そんなに気にしなくても大丈夫だよ」

 

「……うん」

 

 ん~、なんだかやけに素直だな。いつもこれくらいなら可愛げもあって良いのに。

 

「って、そう言えば黒。あんた、また一人で逃げ出したでしょ!」

 

 むぅ、ちゃんと覚えていたのか。良い感じの話をして、何とか誤魔化せないかと思ったがダメか。

 仕様がないでしょうが、お前らと一緒にいたら、お墓参りができそうになかったのだから。

 

 

「あの……本当に貴方は、あの施設の?」

 

 霊夢にポコポコと叩かれていると、依姫さんが聞いてきた。豊姫さんが依姫さんに伝えたのだろう。

 

「うん、まぁ」

 

 なんとなく恥ずかしくなったから曖昧に答えた。

 

「貴方たちは、私たち月の民にとって英雄で、玉兎たちにとっては憧れの存在なのよ。だって貴方たちのおかげ多くの命が救われたんだもの」

 

 豊姫さんが言った。英雄? 憧れの存在? なんじゃそりゃ。それに俺たちは……あ~うん、まぁいっか。

 

「そうだったの?」

 

 霊夢が聞いてきた。

 いんや、英雄だのなんだのは初耳です。

 

 しかし、英雄で憧れの存在か……実物を見たら、さぞがっかりするだろうね。白のような莫迦みたいに強い奴だったら別なんだろうけれどさ。

 俺にはなんとも居心地の悪い場所だ。

 

「それで、どうして霊夢だけ残ってるの?」

 

「月に残って神降ろしを見せろって言われたのよ」

 

 おろ? どうしてそんなことをするんだ?

 

「彼女が神々を降ろしていたせいで、私が謀反の疑いをかけられているからです。それで、黒さんはこれからどうしますか?できれば月で暮らしていただきたいのですが……」

 

 それは全力でお断りします。それに、俺は穢れで溢れているし月の人たちも迷惑だと思うよ。

 

 んで、謀反の疑いってのはなんでしょうね? まぁ、詳しくは聞かないけれど。

 

「できれば地上に帰りたいかな。あいつらのお墓だって見ることができたし。あと、霊夢はどのくらいで帰らせてもらえるの?」

 

 代変わりしたわけでもないのに、あんまり長い間幻想郷に博麗の巫女がいないと困る。問題とか起きてないと良いけれど。

 

「そうですか……それは残念です。彼女は数日ほどで返すことができますよ」

 

 数日か……面倒だな。

 

「ねぇ、霊夢。俺は先に帰ってm「だめ」……そうですか」

 

 やっぱりダメか。

 まぁ、数日くらいなら良いけれど。

 

 しかし月にいる間、俺はどこで暮らせば良いんだ? 野宿はやだな~。文化的な生活を送りたい。

 

「霊夢がいる間、俺も月にいようと思うけれど、何処か住んでも良い場所ってある?」

 

 ああ、あの施設で暮らすってのはダメかな? 寝られる場所くらいなら流石にあるだろうし。

 

「それなら私達の家にいれば良いわ。貴方とお話したいこともあるもの」

 

 豊姫さんが言った。

 

 ありゃ、良いの? それじゃ――

 

「数日間よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから綿月家での生活が始まったわけだけど、事件が起きたわけでもなく、平和な日々が続いた。

 豊姫さんとお話をしたり、おっさんと一緒に飲みに行ったり、玉兎の訓練を見に行ったり、サインをくれと玉兎に追いかけられたり、とそんな平和な日々だった。

 

 サイン考えておけば良かったかな。

 な~んてね。

 

 それは良いとして……まぁ、あれだ。泣き上戸って面倒くさいね。何が楽しくて泣いたおっさんと酒を飲まなきゃいけないんだか。

 

 あと、やたら幽々子と妖夢ちゃんに似ている二人組と出会ったけれど、きっと別人だったんだろう。そう思うことにした。

 

 何やってんだよアイツら……

 

 

 

 

 

 霊夢も、最初のうちは月の技術に興味を持っていたけれど、すぐに飽きたっぽい。うん、霊夢らしいね。

 

 飲ませてもらった月のお酒は、雑味が一切なくすっきりとしていて美味しかったけれど、なんだろう……俺は地上のお酒の方が好きかな。少しだけ、地上のお酒を恋しく思った。

 

 きっと、俺の中のどこかで月を認めていないんだろう。

 そんな気がする。

 

 

 

 そして漸く地上に帰る日が来た。

 

 うん、月での生活も楽しかったよ。お土産にお酒も沢山いただいた。それだけでも俺は幸せです。

 

「いつでも来てください。待っていますので」

 

 依姫さんが言った。

 

「いや俺はそんな簡単に、月とか行けないからね。それだったら今度はそっちが来なよ」

 

 いやでも、俺も紫に頼めば行けるのかな?

 

「はい、では今度行かせていただきます」

 

 えっ……マジで? もしかしていらんこと言った? も、もし来てもあんまり暴れないでね。

 

「それじゃ、そろそろ送るわね」

 

 豊姫さんが言った。帰りは豊姫さんの能力を使い、一瞬で帰ることができるらしい。

 

 便利ですね。羨ましいなぁ……

 

 綿月姉妹以外にも、見送りに何匹かの玉兎が来てくれ、俺たちに手を振っていた。それに手を振り返す。

 あんまり訓練をサボりすぎるなよー。

 

 うん、こういうのもいいね。

 

「何ニヤついてるのよ」

 

 霊夢に蹴られた。

 そりゃ、可愛い娘に手を振ってもらえるってのは、やっぱり嬉しい。嬉しいものは嬉しいのだから仕方がない。

 

 

「では、また」

 

 豊姫さんの声が聞こえ、視界が歪み、その歪みが直ると見慣れた景色だった。

 

 冷たい風が体に当たる。

 季節は冬、そこは博麗神社境内。うん、綺麗すぎる月の空気よりも、こちらの少し穢れた空気の方が心地良い。

 これも、俺が穢れている証拠なのかねぇ。

 

 あ、外の世界の空気は流石に嫌だよ? あれはやりすぎ。

 

 

 

 

 

 

 う~ん、これからどうすっかね。このまま帰るのもアレだし……

 

「この後、霊夢は何かする?」

 

 あまりに適当すぎる質問だけど、せっかく帰ってきたのだし何かやりたい。

 

「そうね……お酒が怖いわ」

 

 了解。

 ま、それくらいしかやることないしね。

 

 空を見上げると、うっすら月が見えていた。あそこまで行って帰ってきたのか。あまりに遠すぎて実感が湧かない。

 

 そして白く小さな物が降ってきた。

 

「雪、か」

 

 これからまた、あの寒い季節がやってくる。

 

 

「こんにちは、黒、霊夢」

 

 母屋へ行こうとしたら、幽々子と妖夢ちゃんが現れた。

 

「や、こんにちは。んで、どしたの?」

 

「ちょっと良いお酒が手に入ったから、一緒にどう?」

 

 酒瓶をフラフラと揺らしながら幽々子が聞いてきた。そのお酒って……いや、まぁ気にしないでおこう。

 

「私も混ぜてもらおうかしら」

 

 紫が現れた。なんか久しぶりだね。そろそろ冬眠する時期だろうし、春まで会わないと思ってた。

 会わなくても良いと思ってた。

 

「……相変わらず貴方は失礼ね」

 

 紫に睨まれた。だからその勝手に人の心を見るのやめてもらえませんか?

 

「フフッ、最近は良いことがなかったけれど、久しぶりの大勝利。今日はパーっと飲みましょ!」

 

 年甲斐もなく、紫が燥ぎながら言った。よくわかんないけれど、何か良いことがあったらしい。

 大勝利ねぇ……きっと幽々子と、幽々子の持っているお酒が関係あるんだろう。まぁ、せっかくの飲み会なんだ、細かいことは良しとしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 その後も、どこから嗅ぎつけたのか知らないけれど、紅魔館や永遠亭、守矢神社勢なんかも来て一緒に飲むことになった。

 最初は霊夢と二人で飲む予定が、結局いつもの宴会へ。

 

 雪も降って寒いってのに皆元気だね。

 

 のんびりと雪見酒。月では見ることのできない、地上を生きる者達の特権。あれだけあった、月のお酒はすぐになくなり、いつも通り俺の作ったお酒を飲むことに。

 今年はなくなるのが早そうだ……しかし、お酒が美味いのだから仕様が無い。相変わらず憎いことで。

 

「それで、月はどうだったの?黒の故郷みたいなものなんでしょ?」

 

 紫が聞いてきた。

 

 ……故郷、ねぇ。今の俺にとっては、幻想郷の方がよっぽど故郷っぽいかな。

 

「別に、なんもなかったよ」

 

 色々とあったけれど、少しだけ惚けてみせる。

 

「ふふっ、ひねくれもの」

 

 まあね。

 

 






と、言うことで第43話でした
ただ月から帰ってきただけのお話でしたね

さて、これからどうしましょうか?

緋想天どうしよう……
そう言えば霊夢さんとデートの約束もありましたね
ホント、どうしましょうか


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