東方酒迷録【完結】   作:puc119

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前話の続きとなります

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では、はじめます




小昔話~後編~

 

 

 朝、感じたことのない妖気に気付き目が覚めた。

 

 隣を見ると霊夢は既にいない。妖気は境内の方から感じる。嫌な予感が止まらない。

 

 お守り変わりのナイフと、気持ち程度の小刀を持って外へ飛び出る。

 

 そして境内には、霊夢と――ソイツがいた。

 ソイツから感じるちょっと勘弁して欲しいほどの妖気。牛の体、曲がった角と大きな虎の牙と爪。

 

 饕餮――魔すら喰らう落ちた竜の子供。

 

「×××ーーっ!!」

 

 饕餮は何かを叫び、霊夢に襲いかかった。容赦なしですか、何を考えているんでしょうね。

 霊力で身体強化と霊弾を一発放ち、饕餮にぶつける。

 

「おいおい、博麗神社で博麗の巫女を襲うってのは最大の禁忌だってのに何やってんのさ?」

 

 ルールを知らないってことは、最近になって幻想郷に入って来たんだろう。ホント、面倒なことで。

 

「ーーーっ! ××ー!」

 

 饕餮がまた何かを叫んだ。

 

「いや、人間の言語使ってくれないとわからないから……んで、お前さんは饕餮か? 落ちるところまで落ちたねぇ」

 

 博麗の巫女を喰らったところで、お前が竜になれるなんてことはない。おとなしく、魔物でも食べていて欲しい。

 

 そして、饕餮が俺に襲いかかってきた。

 勝てっかなぁ……まぁ、無理だろうな。やるだけやって、霊夢と一緒にさっさと逃げるとしよう。

 

 まず右に避けるフェイントをかけてから左へ飛ぶ。フェイントに誘われた饕餮の攻撃を避け、渾身の力を込めて小刀を饕餮の脇腹へ突き立てた。

 

 しかし、ガキン――と鈍い音がして、小刀が折れた。

 

 うわぁ……なにこれ、かったーい。

 

 マジかよ……

 

 

 そして、怯みすらもしなかった饕餮に薙ぎ払われ、吹き飛ばされた。とっさに左腕でガードはしたものの、左腕の感覚がない。

 勘弁して欲しい。わかっちゃいたけどレベルが違う。

 

「黒っ! 大丈夫!?」

 

 霊夢が駆け寄り声をかけてくれたが、返事ができない。胃からせり上がってきた血反吐を吐き出し、立ち上がる。

 大きく空気を吸い込み、力を入れる。

 

「……あっ、あ~、よしっ。逃げるぞ霊夢」

 

 右手で霊夢を抱え飛び上がった。

 昔よりは成長したのかな。しっかりと霊夢の重さを感じられた。

 

 流石に饕餮に勝つのは無理。とにかく今は逃げないと、霊夢が殺される。朝もまだ早いせいで紫も起きてないだろうし、なかなかに絶望的な状況だ。

 

「逃げるって何処へ?」

 

 霊夢が聞いてきた。

 特に決めてはないけれど、とにかく遠くの方へ逃げよう。

 

 流石に俺よりは速く飛べないだろうけれど、後ろを振り返っている余裕なんてない。とりあえず今は逃げないと。

 

 

 全力で飛べばきっと逃げきれると思った。

 思ってしまった。

 そんな少しの油断。弱者が最もしてはいけないことを俺はした。

 

 

 そして、ザクリと何かが俺の腹を貫いた。

 

 ヤバっ失敗したっぽい。逃げるのが遅れた。何をやっているんだか……

 

「霊夢……ちょっと先に逃げてろ」

 

 霊夢から手を離す。

 流石は竜の子だ……いくら落ちたといっても空くらいは飛べるか。

 

「黒っ!!」

 

 霊夢の声が聞こえ、俺は地面へと落ちていった。

 全身に響く衝撃。これは……ちょいとマズイな。血が止まらない。これじゃあきっと死ぬだろうな。

 紅魔館でフランちゃんと遊んだ時のことを思いだす。もうちょっとだけ俺が強ければ、こんなことにはならなかったのにね。

 

 饕餮の姿を確認すると、自分の爪に付いた血を舐めていた。どう? 俺の血は美味しい? 美味しいのなら、最初に狙うのは俺にしてくれんかね。

 

「ねえ! 黒!! 大丈夫!?」

 

 霊夢が降りてきて声をかけてくる。

 いや、もう大丈夫じゃないんでさっさと逃げてくれませんか? 起き上がることもできんよ。

 

「××××っ!!」

 

 饕餮がまた何かを叫んだ。

 これは、どうっすかな。どうすれば良いかな……

 

 まぁ、仕様が無いか。

 たまには頑張ってみることにしよう。

 

 開いた右手をゆっくりと挙げ、饕餮に向ける。

 ん~、フランちゃんは何て言ってたっけかな。

 

 ――ああ、思い出したわ。

 

 上空から饕餮が襲いかかってくるのが見えた。

 

 紫、ちょいとばかし大量の妖力を使うけど許してくれ。使いたくなんてなかったけれど、霊夢のため幻想郷のためだ。

 しゃあない。これで、当分は寝たきりの生活かな。

 

 

「……きゅっとして、ドカン」

 

 

 右手をゆっくり閉じた。

 

 そこで、俺の意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 視界を埋め尽くす薄桃色。黒がぽそりと何かを呟くと、襲いかかってきた饕餮が花びらへと変わった。

 

 何が……起きたの?

 

 そうして、黒の挙げていた右手が地面へと落ちた。

 黒から流れ出る血は止まらない。

 

 どうすれば良いの? だってこのままじゃ……このままじゃ黒が……

 

 ――死んじゃう?

 

 いやだ、そんなの絶対にいやだ。

 とにかく血を止めないと。医者に見てもらって、でも血が、血が止まらない……

 

「ちょっと黒! 莫迦みたいな量の妖力がいきなり消えたけど……って、あら?」

 

 たまに神社へ来る紫と呼ばれていた妖怪が現れた。誰でも良い、誰でも良いから黒を助けて。

 

「紫! 黒がっ!!」

 

「なるほど、そういうことね。だいたいわかったわ。ふふっ、霊夢に名前で呼んでもらったのはこれが初めてね」

 

 そんなことどうでも良いから黒を何とかして。

 だって、このままじゃ黒が……

 

「血が止まらないの! このままじゃ死んじゃう」

 

「落ち着きなさいな霊夢。黒ならもう死んでいるわよ?」

 

 

 ……えっ……う、うそ、でしょ? 黒が、死んだ?

 

「その慌て方を見ると、黒から何も聞いていないってことね。はぁ……黒はどうして伝えなかったのよ。大丈夫よ霊夢。黒なら大丈夫だから落ち着きなさい。とりあえず黒を母屋へ運びましょう。傷は私の方で消しておくわ」

 

 大丈夫って、どういうこと? だって、血がこんなに……よくわからない。頭がついていかない。

 

 

 

 

 

 それからのことは、よく覚えていない。確か、全く動かなくなった黒を母屋へ運び、布団に寝かせた。

 

 紫の話によると、黒は不老不死と言う存在で死ぬことはないらしい。いつもなら死んでもすぐに目を覚ますのだけど、今回は霊力と妖力? を使い果たしてしまったせいで、起きるのには時間がかかる。

 

 

 そして――日が完全に沈み、真夜中になったころ漸く黒が目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 目が覚めると見慣れた天井が見えた。どうやら、博麗神社の母屋の中らしい。霊夢が運んでくれたのかな?

 

 全身が怠く体が重い。こりゃあ、とうぶんは霊夢の世話になるかな。

 

 なんとか頑張って首を動かし、隣を見ると霊夢がいた。霊夢は無事らしい。いや~良かった。

 

「起きたの?」

 

 霊夢が言った。

 もしかしてずっと傍にいてくれたのかな? いや、あれから2,3日は経っているだろうし、それはないか。まぁ、それでも今ここにいてくれるってのは、なかなか嬉しいものがある。

 

「や、おはよう。霊夢」

 

 俺がそう声をかけると、霊夢が抱きついてきた。

 おろ? 珍しいな。どうやら、かなり心配させてしまったらしい。

 

 ごめんね。

 

 

 多分、霊夢もそうとう疲れていたんだろう。そのまま寝てしまった。

 

 頭くらい撫でてあげたいけど、上手く体が動かない。

 情けないなぁ……

 

「ごきげんよう。黒」

 

 せっかく良い場面だったんだから、出てこなくて良いのに。

 紫、登場です。

 

「……失礼なこと考えてるでしょ?」

 

 さあ? どうでしょうね。

 

「んで、どれくらい俺は寝ていたの?」

 

「まだ一日も経ってないわよ」

 

 はい? 本当ですか? 二日は目を覚まさないだろうと思っていたんだけど、ん~何でだ?

 

「私が貴方に妖力を送ったからよ。それにここまで運んだのも私なのよ?」

 

 おろ、そうだったんですか。そりゃあ、迷惑かけたね。

 

「そっか、ありがとう」

 

 純粋に感謝します。今度お酒でもおごるよ。

 

「どういたしまして、全く……いきなり妖力が消えたから、かなり驚いたわよ?」

 

 仕方ないでしょうが、ああでもしなければ二人まとめて食われていたのだから。それに、どうせ消えた妖力だって元々は俺のだろ? たまには俺にも使わせてください。

 

「久しぶりね。黒が生き物に対して能力を使うなんて」

 

「……まぁ、普段は使わないようにしてるしなぁ。それに、これからだってその考えは変わらないと思うよ」

 

 輪廻転生さえ許さず、問答無用に散りへと変える。やっぱり多用する気にはなれない。

 できれば二度と使いたくないかな。これも、エゴなのかねぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなできごとから数年後。霊夢もかなり大きくなり、一人でも十分やっていけるようになった。

 

 ちょっと十分すぎるくらい強くなってしまった気もする。きっと歴代の巫女の中でも一番の実力だろう。

 

 時刻は夕方。沈みかけの太陽が赤く染まっていた。どうやら、そろそろお別れの時間だ。

 

「よしゃ、そんじゃそろそろ俺は行くとするよ」

 

 見送りに来てくれた霊夢に言う。ちょくちょく帰ってはいたものの、長い間我が家を留守にしてしまった。

 とりあえず、掃除しないとかな。

 

「そう……この神社も少しだけ寂しくなるわね」

 

 そうかもしれないね。参拝客は相変わらず来ないし、ここも静かな場所になるだろう。

 

「俺がいなくなったからって掃除とかはサボるなよ?」

 

「わかっているわよ。黒も朝はちゃんと起きなさいよ?」

 

 あ~……善処します。

 

 そんな簡単な言葉を交わして、霊夢と別れる。それじゃ、博麗の巫女として頑張って。

 

「黒」

 

 歩き出したところで霊夢に呼び止められた。

 

「うん?」

 

「えと……いつでも遊びに来なさいよ!」

 

「ああ、了解」

 

 その時の霊夢の顔が、わずかに赤くなっているように見えた。

 たぶん夕日のせいなんだろう。そう思うことにしておいた。

 

 ゆっくりと鳥居の場所まで歩いて行き、我が家へと帰る。

 

 これからこの幻想郷がどうなっていくのかわからないけれど、きっと霊夢なら大丈夫。

 そんな気がした。

 

 






お酒の『お』の字も出てきやしねえ
そんなお話でしたね

と、言うことで小昔話~後編~でした
珍しく主人公が頑張ったっぽいです

小刀を持たせた意味あったんでしょうか?
私はなかったと思います
もしかしたら何かの伏線だったり……もなさそうですね

次話は未定です
霊夢さんとデートするお話も書かないとですが、霊夢さん続きとなってしまうので違う話かもしれません


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