東方酒迷録【完結】   作:puc119

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ここって何を書けば良いんでしょうね?




第49話~最後の挨拶~

 

 

 時刻はお昼を少し過ぎたくらいと言ったところ。永遠亭の前でうだうだ悩んでいたこともあり、かなりの時間が流れてしまった。けれども、紫が白玉楼へ行ってくれたのだし、予定よりは早く進んでいる。

 

 さて、次はいよいよ最後の目的地である守矢神社なわけだけど、やっぱり妖怪の山を通っていくのは気が進まない。まぁ、守矢神社とは繋いでもらってあるわけなのだし、人里から行かせてもらうとしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 守矢神社に到着すると、早苗ちゃんが掃除をしていた。偉いね、どっかの巫女さんの掃除をしている姿とか見たことないのに。

 あの巫女も境内は綺麗なのだから、掃除はしているはずだけど。

 

「こんにちは、早苗ちゃん」

 

 そろそろ幻想郷での生活にも慣れてきた? あの神様達の世話は大変だろうけど、まぁ、頑張ってください。

 

「あ、黒さん。はい、こんにちは。今日はどうされました?」

 

 俺が声をかけると、こちらに気付いた早苗ちゃんが言った。

 

「ちょっと、ここの神様達に用事があってね。今あの二柱っている?」

 

「え~と、神奈子様なら母屋にいると思いますが、諏訪子様は……どうでしょうか」

 

 ああ、また湖で遊んでいるのかな? あいつの好きな蛙も冬眠から目覚めた頃だろうし。良い歳して遊ぶ相手が蛙って言うのもあれだが……いっそ人里に言って子ども達と遊んでくれば良いのに。

 いや、そっちの方がダメか。諏訪子が子どもと遊んでいても、違和感はなさそうだけど。

 

「了解。それじゃあちょっとお邪魔させてもらうよ」

 

「はい、ごゆっくりどうぞ。後でお茶もお出ししますね」

 

 ありがとう。結局、永遠亭ではお茶を飲むことはできなかったし、純粋に嬉しいです。

 

 

 拝殿の傍を通り、母屋へと向かい中へ。勝手知ったる他人の家。

 

 お邪魔して、居間へと進むと。

 

 二柱がだらしなく寝ていた。……思っていた以上に早苗ちゃんも大変そうだ。

 

「おや? 黒じゃないか。どうしたのさ?」

 

 仰向けに寝たまま神奈子が言ってきた。

 

 威厳なんて微塵も感じられない。きっとこの姿を写真に写して、妖怪の山にでもバラ撒けば信仰はガタ落ちするだろう。

 まぁ、でも自分の家くらいのんびりしていても良いのかな?

 

 ちょっとのんびりし過ぎな気もするが。

 

 因みに諏訪子は俺に気づくこともなく、気持ちよさそうに寝ていた。

 

「や、神奈子。ちょいとお願いがあって来たんだけど……」

 

 諏訪子寝ちゃっているしなぁ。

 起こすのは少し可愛そうだ。

 

「へぇ、黒からなんて珍しいわね。真面目な話?」

 

「まぁ、真面目な話かな」

 

 100%俺の私用だけど。

 

「了解。ほら、諏訪子起きな。黒が来ているよ」

 

 そう言って神奈子は諏訪子の顔をぺしぺしと叩いた。

 

「あーうー。何さ? もう少し寝かせてよぉ」

 

 いつもこんな感じなの? 昔はもう少し神様っぽかったと思うのは気のせいだろうか……

 

「……むぅ、わたったよ。起きるって。ん~黒じゃん。今日はどうしたの?」

 

 寝ぼけ眼の諏訪子が聞いてきた。

 

「私たちにお願いがあるんだってさ」

 

 まぁ、君たちだけじゃないけどね。

 

「お願い? どんな? まぁ、黒の頼みならだいたい引き受けるけど」

 

 紅魔館や永遠亭もそうだったけれど、なぜか皆ちゃんと聞いてくれるよね。なんだろうか、もしかしたら意外と俺って皆からの好感度高いのかな?

 別に媚や恩を売ってきたわけでもないんだけどなぁ。

 

 まぁ、信頼されているってことなのかねぇ。それなら嬉しいかな。

 

「ちょっと異変を起こそうと思う。それで、俺の力だけだとほとんど何もできないから、それの手伝いをお願いしたいんだ」

 

 異変って言っても、そこまで真剣に考えているわけじゃないから、小さなお祭り程度にしかならないと思うけど。

 

「まぁ、今の黒って弱いんもんね。手伝うのは良いけれど、どんな異変を起こすの?」

 

 自分で言うのもアレだけど、今も昔も弱いです。

 

「皆から俺の記憶を消すってことしか決まってない。まぁ、後は好きに暴れて良いよ。たぶん、紅魔館はまた紅い霧を出すんじゃないかな? 俺は適当に桜の花びらをばらまくけど」

 

 お酒を飲みながら俺と紫でなんとなく決めた異変だし。

 

「適当だなぁ。そんなんで良いの?」

 

 諏訪子が言った。そこはノリと勢いでなんとかなるって信じてる。

 

「それ、黒への記憶を消す意味はあるのかい? 別に消す必要を感じないけど」

 

 うん、俺も最初はそう思ってた。

 でも――

 

 

「ほら、謎の悪役とか憧れるじゃん」

 

 

「……」

 

「……」

 

 二柱が黙った。

 黙ってしまった。

 

 ご、ごめん。

 

「ま、まぁ、そういう理由もあるけど、記憶を消さないと異変を起こした瞬間霊夢にぶっ飛ばされると思うんだ。霊夢の記憶だけ消しても良さそうだけど、紫がいっそ全員の記憶を消した方が面白いって言ってそうなった」

 

 紫さんノリノリでした。

 

 霊夢の勘はすごいからなぁ。記憶を消した程度でどうにかなるのでしょうか?

 

「なるほどねぇ。それで、黒はラスボスってこと?」

 

 何かを言いた気な神奈子。

 

 うん、言いたいことはわかります。どう考えても、ラスボスより道中の敵の方が強いもんね。満月のスカーレット姉妹とかヤバいもんね。

 

 なんとも締まらない異変になるだろうけれど、たまにはこんな異変も良いんじゃない? 楽しければそれで良いと思うんだ。

 

「ま、異変が終わった後は宴会しようぜ」

 

「なるほど、そっちが本番か」

 

 違います。

 

「宴会楽しみだね~」

 

 異変も楽しんであげてください。

 

 

 

 

 

 

 無事、協力してもらえることもわかって一安心。

 

 その後は早苗ちゃんが出してくれたお茶を飲みながら、どんな異変を起こすのか夜まで雑談。神奈子が空から御柱を降らせまくろう。とか言っていたけれど、全力で止めておいた。もう少し優しめにしてください。

 

 

 完全に日が沈んだ頃、守矢神社をあとに。なんとも適当な感じの異変になりそうだけど、まぁ異変を起こす本人が俺なら仕方無い。

 

 きっと異変が終わったら霊夢に怒られるんだろうな。映姫にも怒られるだろうし、終わった後も大変だ。

 

 けれども、まぁ、やるだけやってみようじゃないか。

 

 自分の実力くらいわかっている。

 

 プライドだって残ってはいないけれど、張りたい意地くらいは残っている。

 

 

 異変まであと数日。

 ん~、最後に霊夢のところにでも寄っていこうかな。宣戦布告とまではいかないだろうけれど、何も言わないってのも寂しいもんね。

 

 そんじゃま、最後の挨拶と行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「こんばんは、霊夢」

 

 半分の月に照られた、今年最後の桜たちを見ながらお茶を飲んでいると、黒の声がした。

 

 これで今年の桜も見納めなのかな。それは少しだけ寂しい。

 

「あら、どうしたの? こんな時間に」

 

 一緒にお酒を飲みに来たという感じには見えない。なんだろうか。

 

「ん~、これで今年最後になるだろうし、ここの桜が見たくなってさ」

 

 詳しくは知らないけれど、ここの桜は黒が植えたものだと思った。

 

 黒にとってこの季節はきっと……

 

「これで、また一年後ね。桜は綺麗で良いのだけど、散らない桜ってのはないのかしら? 掃除が面倒で仕方ないわ」

 

 掃いても掃いても落ちてくる。いっそのこと、全てが桜で埋まってしまえば良いのに。

 

「霊夢の掃除をしている姿ってあまりみないけどな」

 

 む、失礼な。

 

「ちゃんとしているわよ。黒が来るときしていないだけ」

 

 私がそう言うと黒は何も言わずに笑った。

 

 

 

 それから、会話も特になく私は座ってお茶を飲みながら、黒は立ったまま桜を見ていた。

 

「さて、それじゃそろそろ帰ろうかな」

 

 どれくらいの時間が経っただろうか。久しぶりに春夜空の下、音が響いた。

 

 そっか、本当に桜を見に来ただけだったんだ。それは少しだけ、寂しい……のかな?

 

「そう、私はもう少し見ているわ」

 

 たぶん、私は不器用なんだろう。

 

 思っていることを素直に伝えることができないくらい。これじゃ、友人であるあの魔法使いだって莫迦にできない。

 

 

 ――もう少しだけ一緒にいて

 

 

 たったその一言が口から出ない。

 

 もし、私がその言葉を口にしたら黒はどうするだろうか。たぶん、黒なら言葉通り一緒にいてくれる。

 

 けれども、やっぱり私の口から言葉は出ない。

 

 黒の後ろ姿が小さくなってきた。

 

「あっ、待って黒」

 

「うん? どしたの?」

 

 その時、何故かこのまま――桜と一緒に黒が消えてしまいそうだったから。

 

 このまま行かせてはいけない気がしたから、出ないと思っていた声が出た。

 

「えと……」

 

 引き止めたのは良いけれど、なんて声を出せば良い? 引き止めたのだから理由がないと。

 何かを言わないと。

 

「また来なさいよ」

 

 結局、私の口から出たのはそんな言葉だった。

 

「ふふ、うん。また来るよ」

 

 そう言って黒は闇の中へと消えていった。たぶん、自分の家に帰ったんだろう。

 

 

 そして、あの巫山戯た異変が起きるまで黒と会うことはなかった。

 

 もしかしたらここで、私が何かを言えていれば、あの異変は違うものになっていたのかもしれない。私たちは遅すぎるんだ。

 いつだって。

 

 

 いつか私も素直になれる日が来るのかな。

 

 






『最後の挨拶』と聞くと、100年前に書かれたあの物語を思い出しますよね
私はあの物語は好きです

そして、なかなかお酒の話が出てきませんね
どうなってんでしょうか

と、言うことで第49話でした
次話でちょうど50話らしいです

区切りがよいので最終回に……はならないと思います
次話は異変が始まる前のお話になりそうです

なんともグダグダな異変が計画されていますが、どうなることやら

では、次話でお会いしましょう


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