東方酒迷録【完結】   作:puc119

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(゚∀゚)o彡゜かんけつ! かんけつ!

まぁ、あと2話は続きますが……




最終話~そうやって生きてきた~

 

 

 夢の中で寝てはいけない。

 

 何も見えない闇の中、どこまでも落ちていく感覚になるから。地に足はつかず、飛ぶこともできない。感覚なんてないだろうに、自分が落ちていると言うことだけはわかる。

 

 これは夢だ。

 

 そんなことわかっている。

 しかし、落下は終わらない。

 

 不安に押しつぶされそうになるこの感じが嫌いだ。さっさと目覚めてくれないもんかねぇ。

 

 今だって体は寝ているはずなのに、眠気が収まらない。

 

 けれども、寝てはいけない。

 夢の中で夢を見て、その中でまた夢を見る。終わらない連鎖。

 

 そろそろ目を覚まさないと。

 

 そんなこともわかってる……

 

 でも、すごく眠いんだ。

 

 

 ――そして俺は、また次の夢の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

「霊夢、貴方がいきなさい」

 

 えっ? 私が?

 

「萃香や紫でも勝てない相手なのに、私にいかせるのは何故?」

 

 それならレミリアにいかせた方が、まだ良い気がする。

 

 そりゃあ、私だって幻想郷が消えるのも、黒が消えるのも嫌だけど。

 

「たぶん、黒は寝ているだけだと思うの。この中で黒を一番起こし慣れているのは貴方でしょ?」

 

 なによ、それ。そりゃあ、確かに黒を起こしたことは何度もある。一緒に暮らしていたのだし。

 

 水でも持っていってかければ良いのだろうか? いや、そんな起こし方は……うん、まぁ、そんなにしなかったけれど。

 

「そう言う問題なの?」

 

「そう言う問題なのよ」

 

 そう……なのかなぁ。正直、意味がわからない。

 

 それでも、私なら黒を助けることができるかもしれない、って言うのは悪い気もしない。うん、ちょっとだけやる気が出た。

 

「はぁ、わかったわよ。私とそこの妖精とで行ってくれば良いんでしょ?」

 

 この異変が終わったら、絶対黒には何かしてもらおう。そうでもしないと、割に合わない。

 

「任せたわよ。博麗の巫女」

 

 うん、できるだけやってみる。

 

 

 

 

 

「それじゃ、私たちはお酒でも飲んで待っているよ」

 

 神奈子が言った。

 なにそれ、ずるい。

 

「ちょっと、お酒なんて飲んでないで待ってなさいよ。こんな時なのだし」

 

 こっちはこれから、地獄のような場所に行くと言うのに。

 

「こんな時だからだよ。それに私たちに出来ることもないしねぇ。これで最後になるかもしれないんだ。最後くらい、お酒を飲みながら笑っていたいでしょ?」

 

 むぅ、理解はできるけれど、納得できない。

 

 

「ちゃんと……」

 

「うん?」

 

「ちゃんと私の分のお酒も残しておきなさいよ!」

 

「……ああ、もちろん。それじゃあ、あとはお願いね。博麗の巫女」

 

 さて、そろそろ行かないと。なんとも間の抜けた雰囲気になってしまったけれど……うん。

 

 これでいい。

 

 これがいい。

 

 

「それじゃ、紫。お願い」

 

「わかってるわ。白、霊夢のこと……よろしくお願いします」

 

 そう言って、紫は白に頭を下げた。

 

「まぁ、任せなさいって」

 

 その言葉に白は笑って答えた。

 

「それじゃあ、行ってきなさいな。貴方たちが無事帰ってこられることを、心から願っているわ」

 

 そう言ってから紫は扇子を振り、できたスキマの中へ私たちは入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入ったスキマの中は黒く、しかし暗くない空間がどこまでも続いていた。そう言えば、スキマの中に入るのは初めてな気がする。

 

 そして、その空間の中、私たちの30間ほど先にソイツがいた。黒く、どす黒く染まった妖気がはっきりと見えた。

 

 アレが……黒?

 

「気をつけてね霊夢ちゃん。たぶん、霊夢ちゃんなら黒の攻撃を躱せると思うけれど、絶対に飛んじゃダメだよ。消されるから。もし飛んじゃっても、下に降りようともしないで。それで2,3秒でも黒の動きを止められれば術は解けると思う。ま、頑張っていこー」

 

 『降りかかる物を桜の花びらに変える程度の能力』だったかしら。そんな厄介な力だったのね。

 

 そして、そんなことより……

 

「貴方、誰?」

 

 たぶん、白なんだろうけれど、先ほどまでの妖精の姿とは全く違っていた。

 

「うん? ああ、白だよ。最後だしね~少しだけ妖力を使ってあの時の姿に戻してみた。あっ、べ、別に少しだけ胸を大きくとか、背を伸ばしたりとかはしてないからね。あの頃と変わってないからね!」

 

 そんなこと言っていないのに、何を慌てているんだか……

 

 真っ白な着物と長い白髪。透き通るような白い肌と赤い瞳。同性の私から見ても文句なしの見た目。

 胸の大きさは……言いたくない。うん、そんなに私と変わらないと思う。

 

「よっし、それじゃあの寝坊助を起こすとしようか」

 

 白の元気な声が真っ黒な空間に響いた。向こうは、とっくにこちらに気づいているだろう。

 

 黒がゆっくりと、こちらに歩いてくるのが見えた。近づいて来るに連れ、空気が重くなるのを感じられたけれど、立っていられないほどではない。

 

「や、黒。さっきぶり」

 

「よ、さっきの……おろ? なんか雰囲気変わったね」

 

 禍々しい感じはあるけれど、いつもの黒と変わらない?

 

 ――気をつけてね。急に来るから。

 

 そう白がぽそり私に伝えた。

 

「私も女の子だからね。ちょっと合わなきゃすぐ変わっちゃうんだよ」

 

「いや、俺の知っている女の子は、人の足を折ったり、頭を吹き飛ばしたりしないんだけど……」

 

 黒が言いそうな、いつものようなセリフ。なんだか気が抜ける。スキだらけなんだけど……本当に強いのかしら?

 

「んで、そっちの女の子は誰?」

 

 そんな抜けた空気の中、黒が聞いてきた。

 

 そして目の前に黒色の妖弾が見えた。まずっ! これは間に合わない。

 

 しかし、妖弾は私の顔に当たる直前で弾けた。どうやら、白が弾いてくれたらしい。

 

 体中の血液が抜けたような感覚。

 一瞬の油断。

 

「大丈夫?」

 

 ありがとう、助かったわ。何を抜けたことをしているんだ、私は。

 ただ、これで――

 

「大丈夫、スイッチ入ったから」

 

「やっぱり君、強すぎない? 俺は本気で撃ったんだけど……」

 

 黒の動き一つ一つに集中。

 

「黒が弱すぎるだけでしょ?」

 

 これ以上、足を引っ張りたくはない。

 

「結構、努力はしたと思うんだけどなぁ」

 

 そんな言葉を言いながら、黒がまた妖弾を放ってきた。それも巫山戯ている量を。たださえ黒い空間がさらに黒く染まる。

 

 私の作る結界程度じゃ、抑えきれない。霊弾を放ち、できるだけ相殺させてから躱す。

 ただ、白の言っていた通り、躱せない攻撃ではないかな。

 

 けれども、空を飛べないことがこんなにも辛いとは思わなかった。避けるので精一杯。攻撃をする余裕なんて全くない。

 

 白はどうやってこの巫山戯た弾幕の中、黒に攻撃したって言うのよ。白の様子を確認すると、妖弾は一切交わさず、拳で妖弾を弾きながら黒へと突き進んでいた。

 

 ここまで、すごいとは……本当にただの人間なのかしら? そのまま突き進んだ白が、黒の頭を吹き飛ばした。

 一瞬、弾幕が消える。

 

 しかし、直ぐに真っ黒な弾幕が襲いかかってきた。

 

「ホント、乱暴だね。俺だって痛みは感じるんだよ?」

 

 そんな言葉を口にしながらも、弾幕が薄くなることはなかった。全くもって攻撃できない。

 想像以上。せめて、空を飛ぶことができたら……

 

「いい加減、目を! 覚ませ!!」

 

 そう言って白が叫びながら、蹴りを黒へと叩き込んだ。その瞬間、また弾幕が止まり――ガキン、と硬い何かを叩いたような音が響いた。

 白の動きは止まっている。

 

「あ、あれー、黒ってこんな結界張れたっけ?」

 

「練習したんだよ」

 

 そして、白が吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

「いっつー……聞いてないよ、あんなの」

 

 力なく垂れる右腕。これは、ちょっとまずい。

 

「……どうしてかわからないけど、君たちには負けたくないんだ。ここまで積み上げてきたものが、無駄なんかじゃなかったって証明したいんだよ。もがいて、足掻いて、進み続ければ、種族や才能にだって勝てることを証明したい」

 

 きっとこれが黒の本音なんだろう。弱いと言われ続け、自分でもそのことを理解して、それでも足掻き続けてきたこと。修行なんて嫌いだし、それでも弱いなんて言われたことがない私には、絶対に分からない感情。

 

 

 まぁ、そんなの知ったこっちゃないけれど。

 

 知らないものは知らないもの。

 

 

 ああ、もう。

 飛んじゃダメとか、降りちゃダメとか面倒くさい。

 

 決めた。

 

 私は私の好きにさせてもらう。

 

 

 だから私は、真っ黒な空へ向かって()()()

 

 

「ちょっ! 霊夢ちゃん? 何やってるのさ!?」

 

 白の声が聞こえる。

 

「うるさい。私はこんな異変さっさと終わらせて、お酒が飲みたいの」

 

 私の返事に訝しげな顔をする白。黒は、私たちの様子をクスクスと笑いながら見ていた。

 

「う、う~ん、まぁ、飛んじゃったものはしょうがないし……大丈夫かなぁ?」

 

 大丈夫、なんとかなる。

 自分の思うように、やりたいようにやる。

 

 いつだって、そうやってきた。これからだってそうやっていく。

 

 とりあえず、黒の頭上からできる限りの霊弾を放つ。が、何もなかったかのように、霊弾は桜の花びらへと変わった。

 まぁ、そりゃあそうか。

 

 真っ黒な空間に薄桃色はよく映える。まるで他人事のように、少しだけこの景色に見蕩れてしまった。

 

 空を飛べるようになったおかげか、視界が広がり、黒の弾幕もさっきまでみたいに、圧倒されることもない。

 

 やっぱり、こっちの方が性に合う。白もなんとか動けるようになったらしく、右腕は使えないようだが、黒へ反撃を始めていた。

 

 それでも……戦況は一進一退ともいかなかった。私も反撃できるようになったけれど、上からだと何もできないし、片腕が使えない白もかなり厳しそう。

 

 まずいなぁ、白はどうかわからないけれど、私はそろそろ霊力が危ない。このままじゃ。ジリ貧だ。

 

 私は下に降りることはできず、このまま戦況が良くなるとは思えない。どんどん、高度も上がってきているし。

 

 もう、いいかな……このまま続けたってどう仕様もない。それなら、サクッと終わる方が私らしい。

 

 自分が桜の花びらへ変わるって言うのは、どんな感じなんだろう。

 

 私は不器用だ。

 他人に合わせることなんてできない。

 

 大きく息を吸い、気持ちを入れ替える。

 

 よしっ、行ける。

 

 自暴自棄だろうが、なんだろうが決めたこと。どうせ最期になるのなら、自分の思うようにやりたい。

 

 残り少なくなった霊力で身体強化。

 

 

 そして私は、まっすぐ黒に向かって上空から飛び降りた。

 

 

 一瞬だけ黒と目が合う。

 白の声が聞こえた。

 

 ごめんね、言うこと聞かなくて。

 

 弾幕は続いたままだけど、何故か当たる気がしない。いつ自分が消えるのかわからない。

 けれど、まっすぐ進む。

 

「あれ? 消せない……?」

 

 黒の呟きが聞こえる。

 でも、今は無視。

 

 

 そして、私は全力で黒をぶん殴った。

 

 

「えっ? 何? なんで? どういうこと? ……って、おろ、動けない。あ~これは」

 

 私の攻撃を受け吹き飛んだ黒が言った。

 そして、黒を中心に結界が展開。

 

「何が起こったのかよくわからないけれど、やっと捕まえた。ふふっ、また私の勝ちだね。黒」

 

 白がそう言うと、黒を結界から出た光が取り囲んだ。

 

「はぁ……人生どうにも上手くいかないもんだね。……悪いな。迷惑かけた」

 

「ん、いいよ。気にすんな親友でしょ? じゃ、またね。黒」

 

「ああ、またな……白」

 

 そんな言葉が聞こえた後、黒を取り囲んでいた光が消え、そこには黒が倒れていた。

 

 終わった……の?

 

「うーなー……いやぁ、流石にこれは疲れたね。お疲れ様、霊夢ちゃん。貴方のおかげでなんとかなったよ」

 

 そう言えば、どうして私は黒の能力で消されなかったのかしら? 黒が能力を、使わなかったとも思えないし……

 

「って、白。足が……」

 

 今まで、はっきりと見えていた白の体が薄くなり始めていた。

 

「まぁ、かなり無理したからね。しょうがないよ。たぶん私はもう、霊夢ちゃんが生きているうちに会うことはないと思う。でも死後の世界なら会えるから、待っているよ。これでも私かなり偉いんだよ?」

 

 そう言って白は笑った。

 てか、胸を張るな。嫌がらせか。

 

 

「……貴方って、黒とはどう言う関係なの?」

 

 どうしても聞いておきたかった質問。最後の最後で漸く聞くことができた。

 

「ん~ん? 嫉妬?」

 

 違う!

 と、思う……

 

「ふふっ、安心して、私と黒はただの友達同士だよ。ずうーっと昔、一緒に生活していたけど、友達以上の関係なんかにはなってない。だから大丈夫だよ」

 

 何を安心で、何が大丈夫なんだろうか。

 

「さてさて、そろそろ時間かな。黒が起きたらよろしく言っておいてね。あと、私の代わりに一発……は良いか、あれだけやったし」

 

 これで、もう白と会うことはなくなる。それは、やっぱりちょっと寂しいかな。

 

「さようなら、白。そうね……あの世でまた会いましょ」

 

「うん、じゃあね霊夢ちゃん。あっ、そうだ」

 

 突然思い出したかのように白が言った。

 なんだろうか。

 

「どうしたのよ?」

 

 

 

 

「恋愛に、歳の差なんて関係ないんだぜ!」

 

 

 

 

 そう言って白は笑い。

 結局、そのまま消えていってしまった。

 

 最後まで笑顔のまま。

 

「……余計なお世話だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 白が消えたから、私と黒の二人だけに。そう言えばどうやって元の場所へ帰れば良いのかしら?

 

 まぁ、とりあえず黒を起こすとしよう。寝ている黒の側までいき、様子を確認。

 

 すぅすぅ聞こえる静かな寝息。さっきまでの戦いなんてなかったかのように、気持ちよさそうな顔で寝ていた。

 そんな黒の様子に少しだけ腹が立った。こっちは大変だったと言うのに。

 

 起こすために、とりあえず顔面を蹴ってみる。

 

「いったー! 何? 何事!?」

 

 あら、思っていたより簡単に起きるのね。

 

「って、なんだ。霊夢か。ここは……紫のスキマの中か? ん~記憶が曖昧なんだけど何があったの?」

 

 うん、どうやら無事元の黒に戻っているらしい。一安心。

 

「黒の記憶が消えて暴走したから、私と白の二人でその暴走を止めたのよ。覚えてない? 白はもう帰っちゃったけど」

 

 ホント、大変だったんだから。

 

「あ~、ん~……いや、やっぱり記憶が曖昧だ。何かと戦っていた気はするけど」

 

 のんきなことで。

 はぁ、それにしても疲れた。黒も起きたことだし、さっさと帰りたい。今は、とにかくお酒を飲みたい気分。

 

「詳しいことは紫が教えてくれるわよ。ほら、いつまでも寝ていないで起きなさい。帰りましょ?」

 

「いやぁ、それがね……」

 

「なによ?」

 

 なんだろうか? もしかしてまた何か問題が……

 

「全く体に力が入らないんだ。ちょっと起こすの手伝って」

 

 ……うん、いつも通りの黒だ。

 情けないなぁ。

 

 黒の腕を掴み、上半身だけ起こさせる。

 

「おお、ありがとう。何でこんなに疲れているのかわからないけれど、助かるよ。んで、どうやって帰れば良いの?」

 

 私は知らないわよ。

 

 紫だって気づいているとは思うけれど。黒から妖力も感じられないし……

 

 そんなことを考えていると、何故か黒が私を凝視しているのに気づいた。

 

「なに?」

 

 

 

「ありがとな、霊夢」

 

 

 

 そう言って黒は笑った。

 

「……どういたしまして」

 

 そう返事をし、私は黒に背を向けた。

 

 こんな顔見せられるわけがない。……不意打ちも良いところだ。

 

「それじゃ、帰ろっか。おーい、紫ー。聞こえてるー?」

 

 黒がそう叫ぶと、足元にスキマができ私たちは落ちていった。さっさと帰らせてくれれば良かったのに。

 

 でも、まぁ……うん、少しだけ待ってくれた紫には少しだけ感謝しようと思う。

 

 今日のお酒は美味しく飲めそうだ。

 

 

 






……疲れた

ちょっと長かったですね
もう半分くらいで良かったかもしれません
この話の文字数も、この作品の話数も

な~んてね


と、言うことで最終話でした
最終話と言いつつ名前だけの最終話です

ほぼ、霊夢さん視点で主人公視点がほとんどないとか、流石にまずいですし

ですので、もう少しだけ続く予定です


次話はいよいよビールのお話!
何を書こうかな
楽しみです

では、次話でお会いしましょう


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