(゚∀゚)o彡゜かんけつ! かんけつ!
まぁ、あと2話は続きますが……
夢の中で寝てはいけない。
何も見えない闇の中、どこまでも落ちていく感覚になるから。地に足はつかず、飛ぶこともできない。感覚なんてないだろうに、自分が落ちていると言うことだけはわかる。
これは夢だ。
そんなことわかっている。
しかし、落下は終わらない。
不安に押しつぶされそうになるこの感じが嫌いだ。さっさと目覚めてくれないもんかねぇ。
今だって体は寝ているはずなのに、眠気が収まらない。
けれども、寝てはいけない。
夢の中で夢を見て、その中でまた夢を見る。終わらない連鎖。
そろそろ目を覚まさないと。
そんなこともわかってる……
でも、すごく眠いんだ。
――そして俺は、また次の夢の中へと入っていった。
――――――――――
「霊夢、貴方がいきなさい」
えっ? 私が?
「萃香や紫でも勝てない相手なのに、私にいかせるのは何故?」
それならレミリアにいかせた方が、まだ良い気がする。
そりゃあ、私だって幻想郷が消えるのも、黒が消えるのも嫌だけど。
「たぶん、黒は寝ているだけだと思うの。この中で黒を一番起こし慣れているのは貴方でしょ?」
なによ、それ。そりゃあ、確かに黒を起こしたことは何度もある。一緒に暮らしていたのだし。
水でも持っていってかければ良いのだろうか? いや、そんな起こし方は……うん、まぁ、そんなにしなかったけれど。
「そう言う問題なの?」
「そう言う問題なのよ」
そう……なのかなぁ。正直、意味がわからない。
それでも、私なら黒を助けることができるかもしれない、って言うのは悪い気もしない。うん、ちょっとだけやる気が出た。
「はぁ、わかったわよ。私とそこの妖精とで行ってくれば良いんでしょ?」
この異変が終わったら、絶対黒には何かしてもらおう。そうでもしないと、割に合わない。
「任せたわよ。博麗の巫女」
うん、できるだけやってみる。
「それじゃ、私たちはお酒でも飲んで待っているよ」
神奈子が言った。
なにそれ、ずるい。
「ちょっと、お酒なんて飲んでないで待ってなさいよ。こんな時なのだし」
こっちはこれから、地獄のような場所に行くと言うのに。
「こんな時だからだよ。それに私たちに出来ることもないしねぇ。これで最後になるかもしれないんだ。最後くらい、お酒を飲みながら笑っていたいでしょ?」
むぅ、理解はできるけれど、納得できない。
「ちゃんと……」
「うん?」
「ちゃんと私の分のお酒も残しておきなさいよ!」
「……ああ、もちろん。それじゃあ、あとはお願いね。博麗の巫女」
さて、そろそろ行かないと。なんとも間の抜けた雰囲気になってしまったけれど……うん。
これでいい。
これがいい。
「それじゃ、紫。お願い」
「わかってるわ。白、霊夢のこと……よろしくお願いします」
そう言って、紫は白に頭を下げた。
「まぁ、任せなさいって」
その言葉に白は笑って答えた。
「それじゃあ、行ってきなさいな。貴方たちが無事帰ってこられることを、心から願っているわ」
そう言ってから紫は扇子を振り、できたスキマの中へ私たちは入っていった。
入ったスキマの中は黒く、しかし暗くない空間がどこまでも続いていた。そう言えば、スキマの中に入るのは初めてな気がする。
そして、その空間の中、私たちの30間ほど先にソイツがいた。黒く、どす黒く染まった妖気がはっきりと見えた。
アレが……黒?
「気をつけてね霊夢ちゃん。たぶん、霊夢ちゃんなら黒の攻撃を躱せると思うけれど、絶対に飛んじゃダメだよ。消されるから。もし飛んじゃっても、下に降りようともしないで。それで2,3秒でも黒の動きを止められれば術は解けると思う。ま、頑張っていこー」
『降りかかる物を桜の花びらに変える程度の能力』だったかしら。そんな厄介な力だったのね。
そして、そんなことより……
「貴方、誰?」
たぶん、白なんだろうけれど、先ほどまでの妖精の姿とは全く違っていた。
「うん? ああ、白だよ。最後だしね~少しだけ妖力を使ってあの時の姿に戻してみた。あっ、べ、別に少しだけ胸を大きくとか、背を伸ばしたりとかはしてないからね。あの頃と変わってないからね!」
そんなこと言っていないのに、何を慌てているんだか……
真っ白な着物と長い白髪。透き通るような白い肌と赤い瞳。同性の私から見ても文句なしの見た目。
胸の大きさは……言いたくない。うん、そんなに私と変わらないと思う。
「よっし、それじゃあの寝坊助を起こすとしようか」
白の元気な声が真っ黒な空間に響いた。向こうは、とっくにこちらに気づいているだろう。
黒がゆっくりと、こちらに歩いてくるのが見えた。近づいて来るに連れ、空気が重くなるのを感じられたけれど、立っていられないほどではない。
「や、黒。さっきぶり」
「よ、さっきの……おろ? なんか雰囲気変わったね」
禍々しい感じはあるけれど、いつもの黒と変わらない?
――気をつけてね。急に来るから。
そう白がぽそり私に伝えた。
「私も女の子だからね。ちょっと合わなきゃすぐ変わっちゃうんだよ」
「いや、俺の知っている女の子は、人の足を折ったり、頭を吹き飛ばしたりしないんだけど……」
黒が言いそうな、いつものようなセリフ。なんだか気が抜ける。スキだらけなんだけど……本当に強いのかしら?
「んで、そっちの女の子は誰?」
そんな抜けた空気の中、黒が聞いてきた。
そして目の前に黒色の妖弾が見えた。まずっ! これは間に合わない。
しかし、妖弾は私の顔に当たる直前で弾けた。どうやら、白が弾いてくれたらしい。
体中の血液が抜けたような感覚。
一瞬の油断。
「大丈夫?」
ありがとう、助かったわ。何を抜けたことをしているんだ、私は。
ただ、これで――
「大丈夫、スイッチ入ったから」
「やっぱり君、強すぎない? 俺は本気で撃ったんだけど……」
黒の動き一つ一つに集中。
「黒が弱すぎるだけでしょ?」
これ以上、足を引っ張りたくはない。
「結構、努力はしたと思うんだけどなぁ」
そんな言葉を言いながら、黒がまた妖弾を放ってきた。それも巫山戯ている量を。たださえ黒い空間がさらに黒く染まる。
私の作る結界程度じゃ、抑えきれない。霊弾を放ち、できるだけ相殺させてから躱す。
ただ、白の言っていた通り、躱せない攻撃ではないかな。
けれども、空を飛べないことがこんなにも辛いとは思わなかった。避けるので精一杯。攻撃をする余裕なんて全くない。
白はどうやってこの巫山戯た弾幕の中、黒に攻撃したって言うのよ。白の様子を確認すると、妖弾は一切交わさず、拳で妖弾を弾きながら黒へと突き進んでいた。
ここまで、すごいとは……本当にただの人間なのかしら? そのまま突き進んだ白が、黒の頭を吹き飛ばした。
一瞬、弾幕が消える。
しかし、直ぐに真っ黒な弾幕が襲いかかってきた。
「ホント、乱暴だね。俺だって痛みは感じるんだよ?」
そんな言葉を口にしながらも、弾幕が薄くなることはなかった。全くもって攻撃できない。
想像以上。せめて、空を飛ぶことができたら……
「いい加減、目を! 覚ませ!!」
そう言って白が叫びながら、蹴りを黒へと叩き込んだ。その瞬間、また弾幕が止まり――ガキン、と硬い何かを叩いたような音が響いた。
白の動きは止まっている。
「あ、あれー、黒ってこんな結界張れたっけ?」
「練習したんだよ」
そして、白が吹き飛ばされた。
「いっつー……聞いてないよ、あんなの」
力なく垂れる右腕。これは、ちょっとまずい。
「……どうしてかわからないけど、君たちには負けたくないんだ。ここまで積み上げてきたものが、無駄なんかじゃなかったって証明したいんだよ。もがいて、足掻いて、進み続ければ、種族や才能にだって勝てることを証明したい」
きっとこれが黒の本音なんだろう。弱いと言われ続け、自分でもそのことを理解して、それでも足掻き続けてきたこと。修行なんて嫌いだし、それでも弱いなんて言われたことがない私には、絶対に分からない感情。
まぁ、そんなの知ったこっちゃないけれど。
知らないものは知らないもの。
ああ、もう。
飛んじゃダメとか、降りちゃダメとか面倒くさい。
決めた。
私は私の好きにさせてもらう。
だから私は、真っ黒な空へ向かって
「ちょっ! 霊夢ちゃん? 何やってるのさ!?」
白の声が聞こえる。
「うるさい。私はこんな異変さっさと終わらせて、お酒が飲みたいの」
私の返事に訝しげな顔をする白。黒は、私たちの様子をクスクスと笑いながら見ていた。
「う、う~ん、まぁ、飛んじゃったものはしょうがないし……大丈夫かなぁ?」
大丈夫、なんとかなる。
自分の思うように、やりたいようにやる。
いつだって、そうやってきた。これからだってそうやっていく。
とりあえず、黒の頭上からできる限りの霊弾を放つ。が、何もなかったかのように、霊弾は桜の花びらへと変わった。
まぁ、そりゃあそうか。
真っ黒な空間に薄桃色はよく映える。まるで他人事のように、少しだけこの景色に見蕩れてしまった。
空を飛べるようになったおかげか、視界が広がり、黒の弾幕もさっきまでみたいに、圧倒されることもない。
やっぱり、こっちの方が性に合う。白もなんとか動けるようになったらしく、右腕は使えないようだが、黒へ反撃を始めていた。
それでも……戦況は一進一退ともいかなかった。私も反撃できるようになったけれど、上からだと何もできないし、片腕が使えない白もかなり厳しそう。
まずいなぁ、白はどうかわからないけれど、私はそろそろ霊力が危ない。このままじゃ。ジリ貧だ。
私は下に降りることはできず、このまま戦況が良くなるとは思えない。どんどん、高度も上がってきているし。
もう、いいかな……このまま続けたってどう仕様もない。それなら、サクッと終わる方が私らしい。
自分が桜の花びらへ変わるって言うのは、どんな感じなんだろう。
私は不器用だ。
他人に合わせることなんてできない。
大きく息を吸い、気持ちを入れ替える。
よしっ、行ける。
自暴自棄だろうが、なんだろうが決めたこと。どうせ最期になるのなら、自分の思うようにやりたい。
残り少なくなった霊力で身体強化。
そして私は、まっすぐ黒に向かって上空から飛び降りた。
一瞬だけ黒と目が合う。
白の声が聞こえた。
ごめんね、言うこと聞かなくて。
弾幕は続いたままだけど、何故か当たる気がしない。いつ自分が消えるのかわからない。
けれど、まっすぐ進む。
「あれ? 消せない……?」
黒の呟きが聞こえる。
でも、今は無視。
そして、私は全力で黒をぶん殴った。
「えっ? 何? なんで? どういうこと? ……って、おろ、動けない。あ~これは」
私の攻撃を受け吹き飛んだ黒が言った。
そして、黒を中心に結界が展開。
「何が起こったのかよくわからないけれど、やっと捕まえた。ふふっ、また私の勝ちだね。黒」
白がそう言うと、黒を結界から出た光が取り囲んだ。
「はぁ……人生どうにも上手くいかないもんだね。……悪いな。迷惑かけた」
「ん、いいよ。気にすんな親友でしょ? じゃ、またね。黒」
「ああ、またな……白」
そんな言葉が聞こえた後、黒を取り囲んでいた光が消え、そこには黒が倒れていた。
終わった……の?
「うーなー……いやぁ、流石にこれは疲れたね。お疲れ様、霊夢ちゃん。貴方のおかげでなんとかなったよ」
そう言えば、どうして私は黒の能力で消されなかったのかしら? 黒が能力を、使わなかったとも思えないし……
「って、白。足が……」
今まで、はっきりと見えていた白の体が薄くなり始めていた。
「まぁ、かなり無理したからね。しょうがないよ。たぶん私はもう、霊夢ちゃんが生きているうちに会うことはないと思う。でも死後の世界なら会えるから、待っているよ。これでも私かなり偉いんだよ?」
そう言って白は笑った。
てか、胸を張るな。嫌がらせか。
「……貴方って、黒とはどう言う関係なの?」
どうしても聞いておきたかった質問。最後の最後で漸く聞くことができた。
「ん~ん? 嫉妬?」
違う!
と、思う……
「ふふっ、安心して、私と黒はただの友達同士だよ。ずうーっと昔、一緒に生活していたけど、友達以上の関係なんかにはなってない。だから大丈夫だよ」
何を安心で、何が大丈夫なんだろうか。
「さてさて、そろそろ時間かな。黒が起きたらよろしく言っておいてね。あと、私の代わりに一発……は良いか、あれだけやったし」
これで、もう白と会うことはなくなる。それは、やっぱりちょっと寂しいかな。
「さようなら、白。そうね……あの世でまた会いましょ」
「うん、じゃあね霊夢ちゃん。あっ、そうだ」
突然思い出したかのように白が言った。
なんだろうか。
「どうしたのよ?」
「恋愛に、歳の差なんて関係ないんだぜ!」
そう言って白は笑い。
結局、そのまま消えていってしまった。
最後まで笑顔のまま。
「……余計なお世話だ」
白が消えたから、私と黒の二人だけに。そう言えばどうやって元の場所へ帰れば良いのかしら?
まぁ、とりあえず黒を起こすとしよう。寝ている黒の側までいき、様子を確認。
すぅすぅ聞こえる静かな寝息。さっきまでの戦いなんてなかったかのように、気持ちよさそうな顔で寝ていた。
そんな黒の様子に少しだけ腹が立った。こっちは大変だったと言うのに。
起こすために、とりあえず顔面を蹴ってみる。
「いったー! 何? 何事!?」
あら、思っていたより簡単に起きるのね。
「って、なんだ。霊夢か。ここは……紫のスキマの中か? ん~記憶が曖昧なんだけど何があったの?」
うん、どうやら無事元の黒に戻っているらしい。一安心。
「黒の記憶が消えて暴走したから、私と白の二人でその暴走を止めたのよ。覚えてない? 白はもう帰っちゃったけど」
ホント、大変だったんだから。
「あ~、ん~……いや、やっぱり記憶が曖昧だ。何かと戦っていた気はするけど」
のんきなことで。
はぁ、それにしても疲れた。黒も起きたことだし、さっさと帰りたい。今は、とにかくお酒を飲みたい気分。
「詳しいことは紫が教えてくれるわよ。ほら、いつまでも寝ていないで起きなさい。帰りましょ?」
「いやぁ、それがね……」
「なによ?」
なんだろうか? もしかしてまた何か問題が……
「全く体に力が入らないんだ。ちょっと起こすの手伝って」
……うん、いつも通りの黒だ。
情けないなぁ。
黒の腕を掴み、上半身だけ起こさせる。
「おお、ありがとう。何でこんなに疲れているのかわからないけれど、助かるよ。んで、どうやって帰れば良いの?」
私は知らないわよ。
紫だって気づいているとは思うけれど。黒から妖力も感じられないし……
そんなことを考えていると、何故か黒が私を凝視しているのに気づいた。
「なに?」
「ありがとな、霊夢」
そう言って黒は笑った。
「……どういたしまして」
そう返事をし、私は黒に背を向けた。
こんな顔見せられるわけがない。……不意打ちも良いところだ。
「それじゃ、帰ろっか。おーい、紫ー。聞こえてるー?」
黒がそう叫ぶと、足元にスキマができ私たちは落ちていった。さっさと帰らせてくれれば良かったのに。
でも、まぁ……うん、少しだけ待ってくれた紫には少しだけ感謝しようと思う。
今日のお酒は美味しく飲めそうだ。
……疲れた
ちょっと長かったですね
もう半分くらいで良かったかもしれません
この話の文字数も、この作品の話数も
な~んてね
と、言うことで最終話でした
最終話と言いつつ名前だけの最終話です
ほぼ、霊夢さん視点で主人公視点がほとんどないとか、流石にまずいですし
ですので、もう少しだけ続く予定です
次話はいよいよビールのお話!
何を書こうかな
楽しみです
では、次話でお会いしましょう
感想・質問なんでもお待ちしております