時系列的には、エピローグの続きですが
本編とは関係ありません
ifのお話です
ですので
読 ま な く て も 大 丈 夫 で す
第恋話~霊夢ルート~前編
目の前には、悩みなんてないような顔をして黒が眠っている。
わずかに聞こえる寝息。
黒の起こした異変から三日。
あの宴会の日、一眠りしてから縁側へ向かうと、そこで寝ている黒を発見。きっと黒だって、相当疲れていただろうし、仕方無いと思いつつもとりあえず黒を起こしてみる。
しかし、声をかけても、身体を揺すっても黒が起きることはなかった。
とりあえず、眠ったままの黒は布団に寝かせた。それから三日。まだ黒は起きない。
きっと疲れて寝ているだけ、そうだとは思うけれど……いつまでも寝ている黒を見ると、少しだけ心がざわつく。
「良い加減起きなさいよね……」
また黒と一緒に生活ができるのは楽しみだった。
どうしてなのか、自分でもわからないけど。
寂しいのかな?
ん……何か違う気がする。良い答えが見つからない。
はぁ、とりあえずお茶でも飲もうかしら。
「こんにちは、博麗の巫女」
そんな声が聞こえ、声のした方を見ると、永琳がいた。む、せっかくお茶を飲もうとしたのに、邪魔が入った。
「あら、どうしたの? 黒ならまだ……と言うか、あれからずっと寝たままよ」
たぶん、黒に用事があるのだろう。昔に色々とあったらしいし。詳しいことはわからないけど。
「聞いているし、知っているわ。妖怪賢者から念の為、看ておいてと頼まれたから来たのよ」
ああ、そう言うことね。そう言えば紫の姿を見ないけれど、紫は大丈夫かしら? あの時はかなり辛そうに見たけど。
「そう、それじゃあよろしく」
ふむ、ここはお茶くらい用意した方が良いのだろう。私も飲みたかったわけなのだし、ちょうど良い。
お茶の用意をして、再び戻ってくると、何故か永琳は黒をじっと見つめていた。何をやっているのよ……診察は終わったのかしら?
「どう? 黒の様子は? ああ、あとお茶ここに置いておくわね」
お茶と急須を台の上に置き、お茶を啜りながら聞いた。うん、今日もお茶が美味しい。
「あら、ありがとう。思っていたより気が利くのね」
失礼な。そういうことは口に出さないものでしょうが。
それに、そこまで常識が欠けてはいないわよ。
「この子なら大丈夫よ。呼吸も脈も正常。たぶん、ただ疲れて眠っているだけだと思うわ」
それなら良かった。けれど、少し寝すぎじゃない? あれから三日も経ったというのに。
「……私たちみたいな不老不死者はね、怪我や病気には強いの。けれども、疲労なんかはどうしようもないわ。治せるようなものではないし。まぁ、安心しなさいな。そのうち目を覚ますわよ」
わずかに聞こえる、黒の寝息。
不老不死、か。
黒の見た目の歳は、私とほとんど変わらない。それでも、一億年以上もの年月を生きてきている。
ちょっと想像ができない。私にとっての一生は、黒にとって一瞬だなんて……
「ねえ、永琳。黒って昔からこんな感じだったの?」
私の淹れたお茶を飲んでいる永琳に聞いてみる。これで昔はやんちゃだったとかなら面白いかも。ちょっと想像ができないけれど。
「……いえ、私は知らないのよ。確かに私はこの子と同じ時代を生きていたけれど、この子の存在だって知らなかったのだし」
あら、そうなの? てっきり、昔からの知り合いだと思っていた。
ああ、そう言えば月に行った時、黒が英雄だとかなんとか言っていたような……その辺りのことと関係あるのかしら?
ふふっ、今さらだけど、黒が英雄って似合わないわね。
「へぇ、そうなのね。じゃあ、何で黒は永琳を避けているのよ? 昔、会ったことがないんでしょ?」
私がそう聞くと、永琳の顔が少しだけ厳しくなったように見えた。聞かない方が良いことだったかしら? まぁ、そんなこと知ったことじゃないけれど。
「はぁ……そんなこと私が聞きたいわよ。貴方からも言っておいてもらえる? 私はいつまでも待っているから、良い加減来なさいって」
いつまでも、ねぇ……
私にはできないことだ。どんなに頑張ろうと、絶対に。
「わかった。覚えていたら言っておくわ」
「そう、お願いね。それじゃあ私は帰るわ。お茶ありがとう、なかなか美味しかったわよ」
それは良かった。
でも私は黒が淹れたお茶の方が、好きよ。あの味には、なかなか勝てない。
永琳のスタスタと歩いて帰る姿をなんとなく、ぼーっと見ていると、急にこちらを振り返った。あら、どうしたのかしら?
「ああ、一言忘れていたわ」
突然思い出したかのように永琳が言った。
なんとなく、嫌な予感。
「なによ?」
「恋愛に、過ごした時間の長さなんて関係ないわよ」
微笑みながら永琳はそう言って、帰って行った。そういえば最近、誰かにも似たような言葉を言われたっけ。
「……だから、余計なお世話だって」
全く、どうして私がこんなことを言われなきゃ、いけないんだか……
きっと、それもこれも全部黒が悪い。
黒の側まで行き、頬をつついてみる。けれども、やっぱり黒は起きない。ホント、いつまで寝ているんだか。
「早く起きなさいよ」
黒の淹れたお茶も飲みたいし、お酒だって飲みたい。それに、このままじゃまた誰かに変なことを言われそうだ。
そんなことを考えていたせいで、せっかく淹れたお茶は冷めてしまっていた。はぁ、淹れ直しだ。
そんなことから、二日後。
漸く、黒が目を覚ました。
お昼を食べ終わり、食後のお茶を飲んでいる時だった。黒が上半身を起こしているのが見えた。
「おはよう、黒」
おはようと言う時間でもないけれど、とりあえず声をかけてみる。
「んっ……ん~。おはよう、霊夢」
そう言って黒は返事をしてくれた。身体の方はもう大丈夫なのかしら?
「んと、俺ってどのくらい寝ていたの?」
「五日よ。全く流石に寝すぎじゃない?」
無意識にため息が出る。ホント、のんきなことで。
「えっ? 五日も? うわぁ、そりゃあ迷惑かけたね。すまん」
寝ていただけだし迷惑はかかっていないけれどね。ただ、黒のせいで変なことを言われたのは確か。
でも、まぁ漸く起きてくれたのだし、これからその借りは返してもらおう。
「身体の方は大丈夫なの? もう一人で起き上がれる?」
「うん、だいぶマシにはなったよ。霊力は空だけど生活はできる……かも」
なんとも曖昧な答え。
情けないなぁ。
「だから、できればもう少し此処に居させて欲しいのだけど……ああ、別に帰った方が良いならそうするよ。あまり世話になるのも申し訳ないし」
そっか、そうだよね。
いつかまた、黒も帰っちゃうんだ。
……なんだろうか、心がざわつく。
「別に良いわよ。元の状態に戻るまで此処に居ても」
「おお、そりゃあ助かるよ。ありがとな」
そう言って、黒は笑った。これで、また暫くは黒と一緒の生活が続く。そんなことを考えると、自然に笑が出た。
どうしてなのかは、やっぱりわからない。
「どういたしまして。それじゃあ、私はお茶を淹れてくるけど黒も飲む?」
とりあえず、お茶でも飲んでゆっくりしよう。
「うん、お願いするよ」
お茶を用意して、黒のいた場所まで戻ると、何故か黒はいなかった。
何処へいったのよ……目を離すと直ぐに何処かへ行ってしまう。今度から縄とかで縛っておこうかしら?
そんな、自分でも何を言っているのかわからないことを考えながら、黒を探していると、縁側に座っている黒を見つけた。
そう言えば、いつも此処にいる気がする。その場所が好きなの?
「全く、お茶を淹れてくるって言ったのだから、ちゃんと待ってなさいよ。黒っていつもその縁側にいるけれど、その場所が好きなの?」
「うん、好きだよ」
その言葉に、何故か私の心はまたざわついた。
自分でもわかるくらい、脈が速くなる。ホント、最近の私はどうしたって言うのだろうか。
「此処は、俺のお気に入りの場所だしなぁ。昔からここで、ゆっくりお茶を飲むのが好きだったんだよ。最近は霊夢に取られっぱなしだけどさ」
そう言って黒は何が面白いのかわからないけれど、くすくすと笑った。取られるも何も、二人で座っても十分すぎるくらい、空きはあるでしょうに。何を言っているのだか。
「別に取ったわけじゃないわよ。はい、お茶」
黒にお茶を渡し、隣に座る。
いつもの黒と私。
安心できる距離間。ずっと、ずっとこのままだったら良いのに……
「ねぇ、黒はいつ帰るの?」
「えっ? え、えと……早く帰れってことかな? うん、じゃあ、あと2,3日くらいで帰ろうかな」
そんなこと言ってないでしょうが。なんだろう、不機嫌に見えていたりするのかしら?
そんなつもりはないのに。
別に、ずっと此処にいてくれても良いのに……
『恋愛に、歳の差なんて関係ないんだぜ!』
誰かの言葉。
『恋愛に、過ごした時間の長さなんて関係ないわよ』
いつかのセリフ。
そんな言葉たちが、私の頭の中でクルクル回る。クルクル、クルクルと回る。
最近、こんなことばかり考えてしまう。いまだ、心はざわついたまま。
――どうして?
ボーっと遠くを見て、お茶を飲みながら考えてみる。
そして浮かんだ一つの答え。
ああ、そっか
私は黒のことが
好きなんだ
好き、か……そっか。
そんな答えがわかると、今までざわついていた心が急に静かになった。心の底へ、すとんと何かが落ちた感覚。
うん、この感覚は悪くない。
いつからそうなのかは、わからない。
でも、きっと間違った考えでもない。
「ねえ、黒。ちょっとこっちを向いて」
「うん? どったのっっ!!?」
そう声をかけてから、私は黒の唇にそっと自分の唇を合わせた。
ここまで書いて心が折れました
前編と言うことは、後編もあるわけで……
できるだけ早く書けるようにはします
次話は主人公視点の予定です
感想・質問はとくにお待ちしておりませんが、励ましの言葉をいただけると嬉しかったりします