東方酒迷録【完結】   作:puc119

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時系列的には、エピローグの続きですが
本編とは関係ありません

ifのお話です

ですので

読 ま な く て も 大 丈 夫 で す





第恋章~おまけ~
第恋話~霊夢ルート~前編


 

 

 目の前には、悩みなんてないような顔をして黒が眠っている。

 わずかに聞こえる寝息。

 

 

 黒の起こした異変から三日。

 あの宴会の日、一眠りしてから縁側へ向かうと、そこで寝ている黒を発見。きっと黒だって、相当疲れていただろうし、仕方無いと思いつつもとりあえず黒を起こしてみる。

 しかし、声をかけても、身体を揺すっても黒が起きることはなかった。

 

 

 とりあえず、眠ったままの黒は布団に寝かせた。それから三日。まだ黒は起きない。

 

 きっと疲れて寝ているだけ、そうだとは思うけれど……いつまでも寝ている黒を見ると、少しだけ心がざわつく。

 

「良い加減起きなさいよね……」

 

 また黒と一緒に生活ができるのは楽しみだった。

 どうしてなのか、自分でもわからないけど。

 

 寂しいのかな?

 

 ん……何か違う気がする。良い答えが見つからない。

 

 はぁ、とりあえずお茶でも飲もうかしら。

 

「こんにちは、博麗の巫女」

 

 そんな声が聞こえ、声のした方を見ると、永琳がいた。む、せっかくお茶を飲もうとしたのに、邪魔が入った。

 

「あら、どうしたの? 黒ならまだ……と言うか、あれからずっと寝たままよ」

 

 たぶん、黒に用事があるのだろう。昔に色々とあったらしいし。詳しいことはわからないけど。

 

「聞いているし、知っているわ。妖怪賢者から念の為、看ておいてと頼まれたから来たのよ」

 

 ああ、そう言うことね。そう言えば紫の姿を見ないけれど、紫は大丈夫かしら? あの時はかなり辛そうに見たけど。

 

「そう、それじゃあよろしく」

 

 ふむ、ここはお茶くらい用意した方が良いのだろう。私も飲みたかったわけなのだし、ちょうど良い。

 

 

 

 お茶の用意をして、再び戻ってくると、何故か永琳は黒をじっと見つめていた。何をやっているのよ……診察は終わったのかしら?

 

「どう? 黒の様子は? ああ、あとお茶ここに置いておくわね」

 

 お茶と急須を台の上に置き、お茶を啜りながら聞いた。うん、今日もお茶が美味しい。

 

「あら、ありがとう。思っていたより気が利くのね」

 

 失礼な。そういうことは口に出さないものでしょうが。

 それに、そこまで常識が欠けてはいないわよ。

 

「この子なら大丈夫よ。呼吸も脈も正常。たぶん、ただ疲れて眠っているだけだと思うわ」

 

 それなら良かった。けれど、少し寝すぎじゃない? あれから三日も経ったというのに。

 

「……私たちみたいな不老不死者はね、怪我や病気には強いの。けれども、疲労なんかはどうしようもないわ。治せるようなものではないし。まぁ、安心しなさいな。そのうち目を覚ますわよ」

 

 わずかに聞こえる、黒の寝息。

 不老不死、か。

 黒の見た目の歳は、私とほとんど変わらない。それでも、一億年以上もの年月を生きてきている。

 ちょっと想像ができない。私にとっての一生は、黒にとって一瞬だなんて……

 

「ねえ、永琳。黒って昔からこんな感じだったの?」

 

 私の淹れたお茶を飲んでいる永琳に聞いてみる。これで昔はやんちゃだったとかなら面白いかも。ちょっと想像ができないけれど。

 

「……いえ、私は知らないのよ。確かに私はこの子と同じ時代を生きていたけれど、この子の存在だって知らなかったのだし」

 

 あら、そうなの? てっきり、昔からの知り合いだと思っていた。

 ああ、そう言えば月に行った時、黒が英雄だとかなんとか言っていたような……その辺りのことと関係あるのかしら?

 

 ふふっ、今さらだけど、黒が英雄って似合わないわね。

 

「へぇ、そうなのね。じゃあ、何で黒は永琳を避けているのよ? 昔、会ったことがないんでしょ?」

 

 私がそう聞くと、永琳の顔が少しだけ厳しくなったように見えた。聞かない方が良いことだったかしら? まぁ、そんなこと知ったことじゃないけれど。

 

「はぁ……そんなこと私が聞きたいわよ。貴方からも言っておいてもらえる? 私はいつまでも待っているから、良い加減来なさいって」

 

 いつまでも、ねぇ……

 私にはできないことだ。どんなに頑張ろうと、絶対に。

 

「わかった。覚えていたら言っておくわ」

 

「そう、お願いね。それじゃあ私は帰るわ。お茶ありがとう、なかなか美味しかったわよ」

 

 それは良かった。

 でも私は黒が淹れたお茶の方が、好きよ。あの味には、なかなか勝てない。

 

 

 永琳のスタスタと歩いて帰る姿をなんとなく、ぼーっと見ていると、急にこちらを振り返った。あら、どうしたのかしら?

 

「ああ、一言忘れていたわ」

 

 突然思い出したかのように永琳が言った。

 なんとなく、嫌な予感。

 

「なによ?」

 

 

 

 

「恋愛に、過ごした時間の長さなんて関係ないわよ」

 

 

 

 

 微笑みながら永琳はそう言って、帰って行った。そういえば最近、誰かにも似たような言葉を言われたっけ。

 

「……だから、余計なお世話だって」

 

 全く、どうして私がこんなことを言われなきゃ、いけないんだか……

 きっと、それもこれも全部黒が悪い。

 

 黒の側まで行き、頬をつついてみる。けれども、やっぱり黒は起きない。ホント、いつまで寝ているんだか。

 

「早く起きなさいよ」

 

 黒の淹れたお茶も飲みたいし、お酒だって飲みたい。それに、このままじゃまた誰かに変なことを言われそうだ。

 

 そんなことを考えていたせいで、せっかく淹れたお茶は冷めてしまっていた。はぁ、淹れ直しだ。

 

 

 

 

 

 そんなことから、二日後。

 漸く、黒が目を覚ました。

 

 お昼を食べ終わり、食後のお茶を飲んでいる時だった。黒が上半身を起こしているのが見えた。

 

「おはよう、黒」

 

 おはようと言う時間でもないけれど、とりあえず声をかけてみる。

 

「んっ……ん~。おはよう、霊夢」

 

 そう言って黒は返事をしてくれた。身体の方はもう大丈夫なのかしら?

 

「んと、俺ってどのくらい寝ていたの?」

 

「五日よ。全く流石に寝すぎじゃない?」

 

 無意識にため息が出る。ホント、のんきなことで。

 

「えっ? 五日も? うわぁ、そりゃあ迷惑かけたね。すまん」

 

 寝ていただけだし迷惑はかかっていないけれどね。ただ、黒のせいで変なことを言われたのは確か。

 でも、まぁ漸く起きてくれたのだし、これからその借りは返してもらおう。

 

「身体の方は大丈夫なの? もう一人で起き上がれる?」

 

「うん、だいぶマシにはなったよ。霊力は空だけど生活はできる……かも」

 

 なんとも曖昧な答え。

 情けないなぁ。

 

「だから、できればもう少し此処に居させて欲しいのだけど……ああ、別に帰った方が良いならそうするよ。あまり世話になるのも申し訳ないし」

 

 そっか、そうだよね。

 いつかまた、黒も帰っちゃうんだ。

 

 ……なんだろうか、心がざわつく。

 

「別に良いわよ。元の状態に戻るまで此処に居ても」

 

「おお、そりゃあ助かるよ。ありがとな」

 

 そう言って、黒は笑った。これで、また暫くは黒と一緒の生活が続く。そんなことを考えると、自然に笑が出た。

 どうしてなのかは、やっぱりわからない。

 

「どういたしまして。それじゃあ、私はお茶を淹れてくるけど黒も飲む?」

 

 とりあえず、お茶でも飲んでゆっくりしよう。

 

「うん、お願いするよ」

 

 

 

 

 

 お茶を用意して、黒のいた場所まで戻ると、何故か黒はいなかった。

 何処へいったのよ……目を離すと直ぐに何処かへ行ってしまう。今度から縄とかで縛っておこうかしら?

 

 そんな、自分でも何を言っているのかわからないことを考えながら、黒を探していると、縁側に座っている黒を見つけた。

 そう言えば、いつも此処にいる気がする。その場所が好きなの?

 

「全く、お茶を淹れてくるって言ったのだから、ちゃんと待ってなさいよ。黒っていつもその縁側にいるけれど、その場所が好きなの?」

 

 

 

「うん、好きだよ」

 

 

 その言葉に、何故か私の心はまたざわついた。

 自分でもわかるくらい、脈が速くなる。ホント、最近の私はどうしたって言うのだろうか。

 

「此処は、俺のお気に入りの場所だしなぁ。昔からここで、ゆっくりお茶を飲むのが好きだったんだよ。最近は霊夢に取られっぱなしだけどさ」

 

 そう言って黒は何が面白いのかわからないけれど、くすくすと笑った。取られるも何も、二人で座っても十分すぎるくらい、空きはあるでしょうに。何を言っているのだか。

 

「別に取ったわけじゃないわよ。はい、お茶」

 

 黒にお茶を渡し、隣に座る。

 いつもの黒と私。

 安心できる距離間。ずっと、ずっとこのままだったら良いのに……

 

「ねぇ、黒はいつ帰るの?」

 

「えっ? え、えと……早く帰れってことかな? うん、じゃあ、あと2,3日くらいで帰ろうかな」

 

 そんなこと言ってないでしょうが。なんだろう、不機嫌に見えていたりするのかしら?

 そんなつもりはないのに。

 

 別に、ずっと此処にいてくれても良いのに……

 

 

『恋愛に、歳の差なんて関係ないんだぜ!』

 

 

 誰かの言葉。

 

 

『恋愛に、過ごした時間の長さなんて関係ないわよ』

 

 

 いつかのセリフ。

 

 そんな言葉たちが、私の頭の中でクルクル回る。クルクル、クルクルと回る。

 最近、こんなことばかり考えてしまう。いまだ、心はざわついたまま。

 

 ――どうして?

 

 ボーっと遠くを見て、お茶を飲みながら考えてみる。

 

 そして浮かんだ一つの答え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、そっか

 

 

 

 私は黒のことが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 好きなんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 好き、か……そっか。

 

 そんな答えがわかると、今までざわついていた心が急に静かになった。心の底へ、すとんと何かが落ちた感覚。

 

 うん、この感覚は悪くない。

 

 いつからそうなのかは、わからない。

 

 でも、きっと間違った考えでもない。

 

 

「ねえ、黒。ちょっとこっちを向いて」

 

 

「うん? どったのっっ!!?」

 

 

 そう声をかけてから、私は黒の唇にそっと自分の唇を合わせた。

 

 

 






ここまで書いて心が折れました
前編と言うことは、後編もあるわけで……

できるだけ早く書けるようにはします

次話は主人公視点の予定です



感想・質問はとくにお待ちしておりませんが、励ましの言葉をいただけると嬉しかったりします
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