東方酒迷録【完結】   作:puc119

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第6話~こんなに月が~

 

 

 扉を開けて真っ赤な館の中へ。お邪魔します。

 

 紅魔館の中は、外見からは予想できないほど広い。咲夜さんが色々と頑張っているらしいけれど、どういう原理かはわからん。時間を司るということは4つ目の次元を司るということ。もしかしたら、26次元目まで見えているかもしれないけれど……

 まぁ、高次元を司る咲夜さんにとって低次元の操作などたやすいのだろう。きっとそんな感じ。低次元に存在する俺には想像もつかない。彼女にこの世界はどう見えているんだろうね?

 真っ赤に見えるこの館だって彼女にとっては違うのかもしれない。

 

「いらっしゃいませ。黒様。本日はどのような要件で?」

 

 うおっ、びっくりした。噂をすればというのだろうか、メイドさんの出現。

 

「様子見かな。んと……レミリアは私室?」

 

「承知しました。レミリアお嬢様は外でモケーレごっこをしております」

 

 んん? モケーレ? モケーレ・ムベンベのことかな。ず、ずいぶんと変わった趣味をしているんだね……

 

 てか、絶対嘘でしょ。咲夜さんのジョークは難しい……

 

「何で外に?」

 

「外にいることでカリスマ度が3割増しになるそうです」

 

 いや、ならんだろ。

 

「そ、そうなんだ……えと、白黒のキュートな魔法使いちゃんが来たと思うけど、その娘は今どうしてるかわかる?」

 

 レミリアの所へは行っていないみたいだけど。

 

「真っ先に地下へと向かい、今はパチュリー様と妹様が対応中です」

 

「咲夜さんは行かないの?」

 

「私は……ほら、裏ボスですし」

 

 ……前から思っていたけどこの人ってかなり自由だよね。

 

 そっか、いきなりフランちゃんの所へ行っちゃったのか。魔理沙ちゃん大丈夫かな?

 

「せっかく来られたのですし何かお出ししたいのですが……ああ、そうだ。最近、良い福寿草が手に入ったのですが紅茶はお飲みになります?」

 

 良い福寿草ってなんだよ。福寿草に旬もなにもない気がするけれど……強いて言うなら3月なのかな? でも花が咲くってだけだしなぁ。

 そもそも、福寿草の紅茶とか飲みたくない。

 

「いや、遠慮しとくよ……」

 

「そうですか、ではお嬢様に飲んでいただくとします……っと、門番がやられたようなので庭の方へ向かいますわ」

 

 ――また、減給ね。

 

 なんて咲夜さんのつぶやきが聞こえた。

 

 多分、霊夢が来たんだろう。戦っていない俺とほぼ変わらないスピードで来やがったよ。理解はできるが納得いかん。

 

「裏ボスなのにもう行くの?」

 

「序盤に現れた敵が、実は裏ボスって設定とか素敵ではありませんか?」

 

 ああ、うん……素敵滅法ですね。いってらっしゃい。

 

 労いの声をかける前に咲夜さんは消えていた。便利な能力なことで……俺のと交換してくれんかな?

 

 ん~、俺はどうすっかね。とりあえずレミリアの所にでも行こうか。

 

 そんなことを思った時だった。

 

 

「あ、クロがいる」

 

 本当の裏ボスが現れた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 うー、まだ体が冷えている。それもこれも全部あの氷精が原因なんだろう。さっさと終わらせて、私は暖かいお茶が飲みたいっていうのに。

 あ、黒に熱燗をもらうのもいいわね。これだけ頑張っているのだから、それくらいの褒美があってもいいはず。

 

 半泣きになった門番曰く、お嬢様っていうのがこの異変の原因らしい。ホント面倒臭いことをしてくれたものだ。

 

「あー、お掃除が進まない。お嬢様に怒られるじゃないー」

 

 赤い館(紅魔館とかそんな名前)に入ろうとすると、えと……なんだっけ? めいど……だったかしら? が現れた。

 

「なんで棒読み?」

 

しかも掃除をしていたようには全く見えない。

 

「マニュアル通りにやったまでよ」

 

 いったい何のマニュアルよ……

 

「そう、この鬱陶しい霧を消してもらいたいのだけれど、あなたを倒せばいいの?」

 

「それはお嬢様に言ってもらえる? 私だけではどうしようもないわ」

 

 勘だけれど、このメイドならなんとかできる気がする。

 

「そ、じゃあそのお嬢様の所へ案内してちょうだい」

 

「ちょうだいだなんて、ケチくさいわね。案内すると思う?」

 

「じゃ、案内させてあげるわ」

 

 ――奇術『ミスディレクション』。

 

 そんなメイドの声が届いた。

 

 全く面倒臭いわね。

 

「霊符『夢想封印』」

 

 さっさと終わらせて次に進みましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メイドを倒して、館の中へと進むと黒と……えと、アレは誰かしら?

 

「お話ねぇ……ん~と、じゃあ記憶をなくした変態が可愛い女の子にぶん殴られるお話をしようか」

 

「それって面白いの?」

 

「10段階評価で8位の面白さらしいよ」

 

 何の話をしているのよ……

 

「おろ、霊夢じゃん。もう来たのか」

 

 どうやら黒がこちらに気づいたらしい。こちらは必死に……ではないけれど、それなりに働いているというのに、黒は少女と呑気にお喋り中。後で、2,3回は蹴っておこう。うん、それくらいは許されるはずだ。

 

「あなたは、だあれ?」

 

 見知らぬ少女が聞いてきた。

 

「博麗霊夢よ。それで? あんたがお嬢様なの?」

 

「私はフランドールよ。んー、レミリアお姉様のことかな? 私は違うわよ」

 

 つまり、お嬢様の妹ってことね。

 

「あんたも私の邪魔するのかしら?」

 

「なんて霊夢は言っているけれど、フランちゃんも弾幕ごっこする?」

 

「私はいい。クロとおしゃべりしているわ」

 

「だってさ、霊夢。俺はフランちゃんと遊んでいるから後はヨロシク」

 

 ……5回は蹴りを入れておこう。

 

「そ、わかったわ。その変わりこれでツケは帳消しね」

 

 元々払う気はなかったけれど、ちょうど良い機会だから言っておいた。黒と妹君を置いて先へと進む。

 

 ――え? ちょっ! 待って!! それは流石に……

 

 後ろから何か聞こえたけれど気のせいだと思う。そういうことにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒と別れてから群がってくる妖精を蹴散らしながら進んだ。多分、こっちであっていると思う。

 

 なんとなく気になってバルコニーから外へ。

 

 そして、紅い月を見上げるとソイツはいた。

 

 

「やっぱり3段笑いのがいいかしら? でも、3段笑いって小物っぽいわよね……紅茶でも飲みながら待つとか……いえ、外で紅茶はおかしいか。腕を組んで仁王立ちじゃバカっぽいし。いっそ紅魔館の中で、足を組んで座っているとか。でも、咲夜は外にいた方がカリスマっぽいって言ってたし……うー。こんなことなら決めポーズでも考えておくべきだったわ」

 

 ……なんだろう、元々やる気はなかったけれど、帰りたくなった。ああ、熱い緑茶が恋しい。

 

「あんたがお嬢様?」

 

「……いつからそこに?」

 

 やっとこちらに気づいたらしい。

 

「そんなこと、どうでもいいでしょ? さっさと終わらせましょう」

 

「ふふふ、終わらせるねぇ。今日はすごく良い天気なの。そうだと言うのに、直ぐに終わらせるなんてもったいない。それにこの霧があれば、私も昼間にお外へ出られるの。素敵だと思わない?」

 

 やっぱりコイツがこの異変の元凶で間違いなさそうだ。

 

「鬱陶しいのよ。この紅い月も紅い霧も。どうせ昼間は寝ているんでしょ? だったらこの霧も意味ないじゃない」

 

「私は早寝早起きが自慢なの」

 

「だったらもう寝なさいな。良い子は寝る時間よ」

 

「たまには悪い子ってのもいいかもしれないわ。それじゃあ始めましょ?」

 

「だから終わらせるのよ」

 

 

「ふふっ、こんなに月も紅いのに?」

 

「こんなに月が紅いからよ」

 

 そして、相手の妖力が膨れ上がった。

 ……どうやら、少しばかり舐めていたみたいだ。ただの箱入りお嬢様ではないってことね。

 

 ――天罰。

 

 声が届いた。

 

 はぁ、永い夜になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

「それで、その変態はその後どうなったの?」

 

「なくした記憶をまた拾い集めに行ったんじゃないかな。まぁ、どうせまた馬鹿やってぶん殴られるんだろうけどさ」

 

 霊夢にやられたはずなのに、いつも通りだった咲夜さんが用意してくれた紅茶とケーキを食べながら、フランちゃんと談笑中。流石に福寿草のお茶ではなかった。ホント、何者なんだろうね、咲夜さんって。

 

 フランちゃんがケーキの交換をしようと言ってきたけれど、丁重にお断りした。流石に血液入りのケーキは……ねぇ?

 俺の分のケーキは食べさせてあげたけどさ。

 

 その後もフランちゃんとお喋りしていたら、視界の端にフヨフヨと飛んでくる紅白が見えた。

 

 どうやら霊夢が帰ってきたらしい。

 

「お帰り霊夢。どうだった?」

 

「流石に疲れたわ。さっさと帰りましょ」

 

 珍しく少しだけだがボロボロになっていた。うむ、レミリアもかなり頑張ったんだな。

 まぁ、流石のレミリアでも弾幕ごっこで霊夢に勝つのは無理か。

 

「お疲れ様。そだね、帰ろうか」

 

「え~、もう帰っちゃうんだ……今度はいつ来れるの?」

 

「ん~、いつ来られるかはわかんないけれど、まぁ近いうちにまた来るよ。咲夜さんに美味しかったって伝えておいてもらえる?」

 

 あ、美鈴にもお疲れ様って言わないとだな。

 レミリアは……まぁまた今度、異変について色々と話さないとだし、その時でいいかな。紅魔館で宴会でも開いてもらうとしよう。

 

 フランちゃんに別れを告げて紅魔館から帰宅。

 

 帰る途中、霊夢からグチグチ言われ、ゲシゲシと蹴られた。異変解決は巫女の仕事でしょうが。

 

 

 後から聞いた話だけれど、魔理沙ちゃんは図書館で魔女さんとお喋りしていたそうだ。同じ魔法を使うもの同士、何か通じるものはあるんだろう。

 それで、暇になったフランちゃんが俺の所へ来たみたい。

 

 帰る途中で魔理沙ちゃんを見かけたけれど、なぜかパンパンになった大きな袋を担いでいた。深くは考えないようにしよう。頑張れ魔女さん、強く生きるんだ。

 

 そんなこんなで博麗神社に到着。

 

「もう夜も遅いのだし、うちに泊まっていけば? 黒の布団もまだ残っているわよ」

 

「いや、自分の家に戻るよ」

 

 博麗神社からなら直ぐに帰ることもできるし。

 

「そ、じゃあお休み」

 

 ん、お休み。

 

 それだけ言うと霊夢は母屋の方へと帰って行った。

 簡単な会話。

 これくらいがちょうど良い。

 

 

「お疲れ様。と言いたいけれど、実際は何もしてないわね」

 

 良いタイミングで紫が出てきた。なんだ、ずっと見てたのか。

 

「珍しいね。紫がこんな時間まで起きているなんて」

 

「流石の私でも異変が起きた時くらいは寝ないわよ」

 

 実は藍に起こしてもらっていたりしてね。

 

「冬に異変が起きたらどうすんの?」

 

「その時は……まぁ、なんとかなるわよ。それに貴方が起こしてくれれば良いじゃない」

 

「いや、冬眠中のお前とか絶対起きないじゃん。起こしたら起こしたで怒りそうだし」

 

 紫の寝てる部屋とか加齢臭キツそうだし。

 なんて思った。

 思っただけだった。口には出さなかった。俺だって成長するのだ。

 

 

「ふふふ……ぶち殺すぞ?」

 

 ごめんなさい、ホントすみません、全力で謝ります。

 

 あ、カメラさん待って、止めないで。

 死んじゃう。

 俺、死んじゃうから。

 

 良い匂いです。紫さん、ホント良い匂いですから!!

 

「それは、それで気持ち悪いわ……」

 

 

 

 

 これで、紅い霧と吸血鬼のお話はお仕舞い。

 振り返ってみると、俺何もしてないね。

 

 まぁ、これくらいがちょうど良いのかもしれない。脇役は脇役に徹するのが一番だしね。

 

 きっとこれから先もこんな感じなんだろう。

 

 暇潰し程度にはなりそうだ。

 

 

 







次元のお話をちょろっと書きましたが、物理学はさっぱりなので聞かれても答えられません
時間軸とか意味わかりません

ここから暫くは日常編となりそうです

では、次話でお会いしましょう

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