真剣で私に恋しなさい! ~果て無き夢を追いかけて~ 作:ソモ産
「よし!」
今、一人の少年が武の総本山の前で、気を引き締めた。
ここは神奈川県川神市、日本有数の工業都市であり、武の総本山『川神院』のある地。
そして、少年は大きな決意を胸に、川神院の門を叩いた。
「たのもーー!」
――――――――――――――――――――
暗い部屋の中、
「ん、んがっ!…」
しかし、拓巳の睡眠はまだ日が昇らないうちに終わりを告げる。
―ドタドタ、ドタドタ―
勢いよく部屋の扉が開かれ、拓巳の腹の上に赤い髪の女の子が飛び込んできた。
「タク兄ー。もう鍛錬の時間よー。早く起きなきゃ」
「ぐっ!?な、なんだ!敵襲か!?」
意味のわからない事をのたまいながら布団から飛び起き、構えを取った。
それも寝起きにもかかわらず、その構えには一分の隙もなく拓巳がとても鍛えているという事がうかがえる。
「おーう。さすが拓兄…。さっきまで寝てたのに、あっと言う間に戦える姿勢になったわ。」
「ん?ワン子?何でお前がここに?」
「あっ!そうだった!拓兄、もう鍛錬の時間よ!急がなきゃ。」
「お、もうそんな時間か。ありがとな、ワン子。それじゃ着替えるから出てくれるか?」
「うん!わかったわ!」
赤い髪の女の子、川神一子が本来の用事を伝え終え、一子が一旦部屋を出て拓巳が着替え始めようとした。
ちょうどそのタイミングで、廊下からなにかがすごい勢いで拓巳の部屋に近づいてきた。
「タクー!朝だぞー。おっきろー♪♪」
「ぐはっ。ちょ!?モモ。おま、急に入ってく…って抱きつくな!!」
一子と入れ替わりの形で、部屋に入って…いや、飛び込んできた
しかも、拓巳の後ろに回された手は、がっちりとホールドされていて簡単には外れそうにない。
「ん?なんだ~?タク、照れてるのか?」
「お、お姉様大胆だわ~」
「照れてなんか無いってーの!いいから離れろーー!それにワン子!お前にはまだ早い、先に行ってなさい!言う事を聞かないと…わかってるな?」
「ぶるぶる。わ、わかったわ。先に言ってる」
「なんだー、ワン子を先に行かせて私に何するつもりなんだー、タク?」ニヤニヤ
「冗談言ってないで、いい加減離れろってーのっ!!」
拓巳は、一子に先に行くようお願い(?)しつつ、自分に貼りついた百代を引き剥がした。
百代は、納得いかなそうに唇を尖らせ、ぶーぶー、と言いながらしぶしぶ拓巳から離れた。
「なんだよー。起こしに来てやったのにー。タクは冷たいなー」
「あぁーもう!わかったよ、ありがとなモモ。お前のお陰で起きられた。それじゃ着替えるから出ろ」
そう言って、拓巳が手早く胴着の上を羽織り、下も着替えようとズボンに手をかける。
しかし、百代が部屋から出る様子はなくそれどころか拓巳が、着替える様子を今か今かと待っていた。
「ん、どうした?着替えないのか?」
「あのー百代さん?何でまだいるのかな?」
「ん?タクが着替えるのを、待ってるだけだが?」
「モモ、俺が悪かっただから外に出てくれ。頼むから、な。組み手もしてやるから」
拓巳の懇願するような、言葉を聞き百代は、ふふん、と勝ち誇ったかのように部屋から出て行った。
「やっと出て行ってくれたか…。それに何しても…早まったかな」
などと口にしながら着替えを完了し、中庭へと廊下を歩き始めた。
時刻は午前4時半。武の総本山『川神院』の門弟達の朝は始まる。
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SIDE 拓巳
ん、んー!いやーさっきはひどい目にあった…俺こと津軽拓巳は、川神院の廊下をモモにホールドされた辺りをさすりながら中庭に歩いていく。
「あの馬鹿力が、どんだけ力入れて…っ!?」
何だ今の寒気は?まぁいいか、とりあえずここは武の総本山『川神院』俺はそこの門弟をやってる。
当然、武の総本山だけあってだれでも門弟になれるわけじゃない。
厳正なる審査やいろいろな試験をクリアして初めてなれる訳なんだが…
そう言えば、今朝はちょうど川神院に入る辺りの頃を夢で見たような…随分と懐かしい夢を見たものだ。
そんなこんなで、本日の鍛錬の場、中庭に到着した。
そこには既に何人もの門弟たちと先ほど俺の部屋に来たモモとワン子もいた。
「あ!拓兄!間に合って良かった。もう始まるわよ」
「まったく…。タク、せっかくこの美少女である私が起こしてやったのに、ギリギリとかあり得ないぞー」
「おう、ワン子。朝起こしてくれてありがとな、今日はマジ助かった。つかモモ、誰のせいだと思ってんだ、誰の!」
などなど悪態をつきつつ俺たちは、中庭に整列していく。
ったく、モモのやろ。お前が抱きついてきたから遅れそうになったんだろうが。
俺たち門弟の前に師範代のルー・イー師範代が立った。
そろそろ始まるかな?さて、それじゃ鍛錬に集中するか。
「はーイ、みんなこっちをみテー。それじゃ、今日の鍛錬はじめるヨー。」
「「「オス」」」
よし!今日も一日勇往邁進で行くぜー!
あれなんか今のワン子っぽいかな
「よーシ、基礎鍛錬はこれでおしまいだヨ。百代と拓巳はわたシと一緒にきてネー、他のみんなハ次の鍛錬に進んデねー」
「「「オス」」」
ふう、やっと体が暖まってきたかな?よし、ここからが本番。
さてさて、今日は何するんだろ。俺とモモは二人でルー師範代の後について院内の道場に向かっていく。
「さーテ、それじゃ今日二人にハ……」
「はい、はいはーい。師範代、今日は組み手をしましょうよ!」
「ン?おおー、それはいい提案だネ。それじゃあ今日ハ、組み手をしてもらうヨ。」
「やったー、よしタクと組み手だ♪組み手だ♪♪」
え?何で朝からそんなに難易度高いの?
確かに俺の夢をかなえるための大きな壁ではあるけれども、朝からモモとの組み手って朝食にいきなりステーキ出てきて完食するくらい難易度高いんだけど!?
って、あれ?なんだかそれってそんなに難易度高くない気が……
「よっしゃー!やってやろうじゃねーか!モモ」
「おーウ、すごイ気合だネ。それじゃ行くヨ?二人とモ、準備は良いかイ?」
「大丈夫です!」「こっちも問題ありません」
「それでハ……はじメ!!!!」
SIDE OUT
二人が激しい組み手を始め、道場内に激しい音が響く中、一人の老人が道場に現れた。
その老人が来ただけで空気がさらに張り詰める。
その名を川神鉄心。ここ川神院の総代である。
「ふぉふぉふぉ。今日も元気がいいのう、あの二人は。どうじゃ?モモと拓巳の様子は」
「はイ、百代も拓巳も絶好調でス。特に今日は百代の調子がいい。」
「そうか、そうか。して、ルーよお前の目から見て拓巳はどうじゃ?」
拓巳と百代、二人が組み手をしている中、鉄心は真剣な顔をしてルーに問いかける。
津軽拓巳は、夢が叶えられるかと。
「うーン…。そうですネ、少しむずかしイかと。ただ、けしテ可能性がなイわけではないとし力
「うむ、わかった。」
「しかシ、総代。まさか拓巳がここまで延びるとは…わたしハ、驚いていますヨ」
「ふぉふぉふぉ、お前も、まだまだということじゃの」
そう言い、鉄心は頬を緩め楽しそうに拓巳が、川神院に入門した時のことを思い出した。
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SIDE 鉄心
「たのもー」
居間でわしが、ほっとこーひーを飲んでおると何か聞こえてきた。
「ん、何じゃ?今玄関の方から何か聞こえたのう?」
近くに誰もおらんし、わしが行くか
そう想い、わしはほっとこーひーをちゃぶ台に置き玄関へと向かった。
ん、さっきの声はあの少年か、年はモモと同じくらいかの?
さて、それじゃ用件を聞くとするかの
「そこの、川神院に何かようかな?」
「は、はい!えと、俺を川神院の門弟にしてください」
「ほう、川神院の門弟にか。ふーむ」
ほうほう、川神院に入門希望か…。
うむ、実によい目をした少年じゃ。この目をしているなら気構えも、問題なさそうじゃの
見たところ、何か武道をやっているようだし
これはもう、試験を受けさせても構わんじゃろ
「少年、名は何という?」
「は、はい!俺は津軽拓巳と言います。」
「年はいくつじゃ?」
「11才です。」
「では津軽!おぬしの気持ちしかと受け取った。この川神院総代、川神鉄心が出す試験に合格したら川神院の門弟にしてやろう、誰か居らんか?」
何やらわしが総代と知って驚いてるようじゃ
そんな事よりふむ、試験は何にしようかの?
そうじゃ少年、津軽はモモと同い年じゃし軽く仕合させればいいじゃろ
危なくなったらワシが止めればいいし
そんな事を考えてる内に釈迦堂、ルーの二人の師範代が来たの
「なんだぁ~じじい?」
「釈迦堂!!総代になんテ、口の聞き方してるんダ!」
「ふぉふぉふぉ、よいルー。して、釈迦堂悪いんじゃがモモの奴を道場に連れてきてくれんかの?」
「はぁー?何で俺が…ルー頼んだ。」
「ナぁ!釈迦堂!まったくわかりましタ、総代。百代を道場に連れて行けばいいんですネ」
「すまんな、ルーよ」
まったく、釈迦堂の奴少しは師範代の自覚を持ってほしいものじゃな。
それは良いとして、行くとするかの道場に
ん?釈迦堂の奴が近づいてきたの、なんじゃ?
「なぁ、じいさん。百代を道場なんかに連れてきて何するつもりなんだ?」
「それはの、そこの、津軽の試験をするためじゃ」
「はぁ?いきなり百代と仕合させるのか?かぁーお前も運がないね、へっへへ」
うむ、やっぱり危険すぎるじゃろうか?
考え直すべきか……
ム?津軽の奴、釈迦堂に近づいて行ったの
なんじゃ?何やら怒ってるようじゃが
「あのっ!!すみません!!」
「あ?なんだぁ?」
「勝手なこと、言わないでくれないですか!やってもいないのに、勝手に判断しないで下さい!!」
「おいおい、悪いことは言わねぇー。おまえは間違いなく才能がないだから、諦めろ。別に入門出来ないって言ってるわけじゃねーんだからな」
「はっ!俺は川神院の総代になるんだ。お前みたいに師範代で満足してるような人間に偉そうなこと言われたくなんかないんだよ!おっさん」
「あ゛?おいガキ!テメー年上に対する言葉使いがなってないんじゃねぇか?」
ほぉー、津軽の奴面白いことを言うの。
川神院の総代になる、か。大きな夢だのう。
それだけのことを言うのなら大丈夫かの
というか、釈迦堂よおぬしが言葉使いに対して説教をするか。説得力ないぞ
さて、そろそろ釈迦堂をとめるかの。
「まぁまぁ、釈迦堂よそんなに怒ることもなかろう?その辺にしておけ。」
「ちっ!命拾いしたな、ガキ」
「ふんっ!」
「それに津軽!釈迦堂も言っておったが言葉使いには気をつけろ。わかったな?」
「はい…すみませんでした…」
「うむ、わかればよい。さて行くかの」
「けっ、じいさん俺は戻るからな。こんなガキの仕合なんか見たって何も面白くねぇ」
む、釈迦堂が行ってしまったか
まぁよい、そろそろ道場に行かんと、モモのやつがうるさいしの。
それに、先ほどの津軽の夢が実現できるのか見極めもしたいしの。
今回の津軽の試験、合否は可能性があるか無いかというところかの。
「おそいぞ、じじい!呼び出しておいて待たせるなよ」
「すまん、すまん」
「まあいい、つまらない事だったら行くからな。遊びに行くところだったんだから」
「そうか、なら早く要件を済ませんとな。津軽来るんじゃ」
「ん?」
「は、はい」
わしの後ろから、ゆっくりと津軽が前に出てくる。
なんじゃ?もしかして、緊張してるのか?ふぉふぉ、面白い奴じゃの
「おい、じじいもしかして私が呼ばれた理由はこいつと仕合をさせるためか?」
「おぉ、モモなかなか察しがいいのう。そうじゃ、今からこの津軽と仕合をしてもらう」
「こいつと…?とても強そうに見えないが、実際はどうなんだ?」
「わからん。川神院の門弟になりたいといって来たばかりでの、これは試験なのじゃ。ただモモは手加減する必要はないからの」
「わかった。それじゃ、おまえ構えろ。私と仕合をするんだ」
「ふぅー…っ!」
ほう、あれだけの事を口にするだけあるの
一呼吸で、空気を変えおった。
あの構えは…中国拳法、八卦掌か?
かなりの修練を積んでいる様子がわかる…努力を積み重ねる事はできる、か
あとは、才能じゃの。その片鱗をわしに見せてくれ
「おー、なかなか強そうじゃないか♪ゾクゾクしてきたぞ」
「まったく、モモの奴しかたないのう。ルー、審判を頼む」
「はーイ、わかりましター。それじゃア、二人とも準備はいいかイ?…でハ、はじメっ!」
「はぁーー!!」
SIDE 百代
なんだこいつ?撃っても撃っても手ごたえが無いぞ
まるでいないみたいだ。ここにいるのにいない…
うぅー、気持ち悪い奴だ!
「これならどうだっ!」
「っく!」
手ごたえありっ!ちゃんと当たるじゃないか
壁際まで吹き飛んだあいつの懐に飛び込んで、すぐに倒してやる!
「これで終わりだ!」
「確かに早いけどッ!ワンパターンなんだよ!」
「ぐっ!このっ…!」
なんだ?今のは?
一瞬消えたように見えたぞ、でも防げた。
かなり強かったが、私には敵わないか
「ふふ、防いでやった……なっ!手が」
「ほう、この年で気を扱うか……」
「ほーウ…気を打ち込んダ」
手が動かない…だと。
じじいと師範代が、なにか話してるがそんなの関係ない。
は、ははは楽しくなってきたぞ。ただ私は負けない、絶対に
「は、ははは。強いなーおまえ。ふんっ!さぁ、次行くぞー」
「なっ!?自分の気で体内の俺の気を掃った!?」
「ははは!そらそらそらー」
SIDE 鉄心
うーむ、ぶちゃけ想像以上の逸材じゃの…
まさかここまでの力を持っていたとは、しかもあの若さで精度は低くとも気のコントロールをして相手に打ち込めるとは……
文句なしで合格じゃ。
これはモモに良い影響を与えてくれそうじゃ
「ははは、楽しくなってきた。」
「ぐっ!こんのっ…!」
さて、モモの奴の歯止めが利かなくなる前止めるかの
試験なんぞで怪我をさせるわけにはいかんしの
お、ちょうど決着がついたようじゃな
ルー、そろそろ止めてくれるか?、一度はやってみたかったんじゃ、あいこんたくと。ふぉふぉ
「はーイ、そこまデー。」
「ふー、楽しかったー」
「勝者は百代だヨ。」
「ちくしょー!」
さすがわし、ちゃんと伝わったぞ
うぉほん、それより試験の結果じゃな
「では、これより津軽拓巳の入門試験の結果の発表する」
「ゴクリ…」
「今回の試験、結果は……合格じゃ!拓巳、川神院は入門を歓迎するぞ、夢に向かって精進を続けていくようにの」
「は、はい!!力の限り、頑張って行きます」
「ははっ、やったな!お前!ところで、おまえの夢ってなんなんだ?」
なんじゃ、モモの奴。はしゃぎおって
それだけ同年代の対等な存在を求めておったと言うことかの
「俺の夢は、川神院の総代になることだ!だから、川神百代!!お前は俺が倒す!」
「ははは、そうか。総代になることか、面白いじゃないか」
ふぉふぉふぉ、津軽拓巳か。なんだか、年甲斐もなくワクワクしてきおったわい。
それに不思議と、こやつならやり遂げるような気がしてくる、つくづく不思議なやつじゃの。
――――――――――――――――――――
SIDE 拓巳
「はーイ、そこまでだヨー」
お、終わったぁ
る師範代の声を聞いて俺たちは手を止めた。
はぁはぁ、モモのやろ。組み手だってのにちょっと本気だしやがって、ちょっと手がしびれたじゃねーか
「ははっ、流石だなタク。」
「当然だってーの、はぁはぁ」
そう、モモについてくのなんて当然なんだ
だって俺は、川神院の総代になるんだから。
はい、皆さんはじめまして!
ソモ産ともうします。
えぇ、みなさんが知っての通り初投稿です(知っての通りじゃねーから
と言うわけでどうでしたでしょうか?
拙い文章で読みづらいかと、思いましたが良かったら感想かなどドシドシお待ちしてます。
ではでは、次の話でお会いしましょうでは